トランプ政権下のフラット35金利動向の読み方

トランプ大統領就任と機構債の利率

当初は1月16日に発表予定だった住宅金融支援機構の月次債(MBS)の利率の発表が遅れています。トランプ大統領の就任式は日本時間の土曜日です。

これはもう来週になっちゃうんじゃないでしょうか。条件決定は1月中旬とホームページには書いてますけど、この調子だと下旬になっちゃいますよ、もう。

トランプ氏の当選直後に見られた世界的な株高や長期金利の上昇は年を越えてから一服し、これまで期待先行で動いてきた市場の目線が大統領就任後の実際の政策に向いて来ている「無風の状況だ」と識者は言ってますね。

そうならば、2月のフラット35の金利が上がるような風向きでは無いということでしょう、ムフー。

また、一方では主要金融機関への住宅ローン申込み件数が2016年12月には日銀がマイナス金利政策を導入する前の水準まで低下しているというニュースも流れています。

記者は12月に主要行がトランプ相場の煽りで長期金利が上がった事を理由に住宅ローンの金利を引き上げた事が要因だと言ってます。うーん。金利が0.05ポイント上がったからって、それまで買う気だった人が急にやめますかね?

当サイトには日々色んな方から相談メールが寄せられますけど「金利が上がったから止めた方が良いですか?」なんて相談は皆無です。

では始めましょう。

質問1:フラット35の金利を予想する際の心配事

はじめまして。

いつもブログ楽しみにしてます。千日さんのブログで住宅ローンの勉強ができて感謝しております!

現在フラット35の契約開始を1月か2月かで迷ってます。

千日さんはどちらがいいと思われますか?

もちろん金利ラボ-フラット35の金利を予測する方法についても読ませていただいていますよ~。

2月金利を予想する際に心配事がありまして、12月の表面利率は0.07%上がったのに、実際は0.02%しか上がっていないので、今回もし表面金利が下がったとしても…

  • 前回金利を上げなくて損した分を取り戻すために金利を下げない、
  • もしくは金利を上げてしまう、

というような、調整をする可能性はありえますか?

変な質問してしまい申し訳ございません。

宜しくお願いします。

回答:フラット35金利予測の不確定要素を説明します

予測はあくまで予測ですので、不確定要素は付き物ですが今回のはちょっと様相が異なりますね。今回は、書下ろしで回答を書きたいと思います。

フラット35の仕組み(スキーム)

まず35年に渡り金利を固定するというフラット35という住宅ローンの仕組みについて触れておきましょう。

こういう超長期間に亘って貸し出し金利を固定するというのは、本当は民間の金融機関では困難なんです。

そこで、国(住宅金融支援機構)が金融機関からその債権を買い取る、若しくは回収を保証するという事で成り立っているのがフラット35です。

  • 国が債権を買い取ってくれる。
  • 債務者が払えなくなっても国が保証してくれる。

これが金融機関にとってのメリットです。

そして、国(住宅金融支援機構)はその買取資金を「機構債」という形で証券化して機関投資家に販売して調達しているのです。

住宅ローンラボ-金利ラボより

今回の機構債の表面利率の発表が遅れている要因は、この利回りがなかなか決められないということです。

市場が無風状態で、どのくらいの利率で成立するか、なかなか決められないんじゃないでしょうか。

お客さん!今月も良いネタ入ってますよ

うーん、ああ、今ねーちょっとね〜

と鈍い反応なんでしょう。

 

フラット35の金利には投資家の利回りと機構の費用に金融機関の利益が乗る

なので民間金融機関がフラット35を貸す時の資金の調達には、機関投資家が買う「機構債」の利率と住宅金融支援機構の事務コストが乗ってくるのです。

機関投資家の利回りと住宅金融支援機構の事務コストを足したものがフラット35の金利の原価です。

民間金融機関はこれに自分の利益を乗せてフラット35の金利が決まるのですね。この利益は各金融機関が独自の判断で決めてます。

なので、同じフラット35でも事務代行する金融機関によって金利が異なるのですね。

 

2016年12月から2017年1月にかけての利率構成の変化

投資家の利回りに相当する表面利率は毎月の発行ごとにその時の長期金利を反映して決められます。ですから、長期金利の動向によって上がったり下がったりします。

これに対して機構の事務コストは一定ですし、民間金融機関の利益も結局は事務コストですからほぼ一定だったんです。

なので、前の月の半ばから20日前後に発表される機構債の利率(表面利率といいます)を見れば、ほぼ正確に翌月のフラット35の金利が予測出来たのです。

今までは。

「今までは」と言うのは、この2017年1月のフラット35の金利については下記の前提が崩れてしまったからです。

  • 機構の事務コストは一定。
  • 金融機関の利益も事務コストだからほぼ一定。

実際にその推移を図で見てみましょう。

2016年12月の実際のフラット35の金利(21年~35年)は1.10%でした。

このときの機関投資家の利回り=機構債の表面利率は0.41%でした。つまり、差額の0.69%が住宅金融支援機構のコストと取扱金融機関の利益というわけです。

この0.69%の内訳は分かりませんけど、これまではほぼ0.69%で一定だったのです。

そして2016年12月16日に発表された2017年1月分の機構債の表面利率は0.48%でした。ですから単純に0.48%+0.69%で1.17%が2017年1月のフラット35の金利になると皆が予測したのです。

しかし、実際の2017年1月のフラット35の金利は1.12%でした。

機関投資家の利回りは0.48%のまま変わりません。その条件で既に発行しているのですから。

ということは、住宅金融支援機構のコストと取扱金融機関の利益率がその分減っているということなんですね。赤字で表記している0.64%です。

つまり、今までの予想の前提が崩れてしまっているのです。

フラット35の構成利率の変化を分析します

このような結果になった理由はどこにあるのか?

国(住宅金融支援機構)と取扱金融機関のどちらか一方、若しくは両方が利益率を安くしたからこういうことが起こったのです。

千日としては、民間の金融機関がこの手数料を安くするなんて考えにくいです。そうでなくてもマイナス金利政策と低金利競争で収益悪化ぎみなんですから。

民間の金融機関はこの利益の悪化を食い止めるために、3大とか8大とかの成人病疾病保障付団信のような金利以外の付加価値を売る戦略を進めている位なんですよ。

さらに主要銀行は10年固定金利を12月から1月にかけて軒並み横並びで金利を上げましたよね。

ですから、

2017年1月のフラットが上がらなかった理由は、その分を国(住宅金融支援機構)が損をかぶったからだ、というのが千日の見立てです。

懸念される「調整」の可能性はゼロではありません。しかし、優先順位からは金利を抑えるという事が優先されると考えています。

表面利率はいわば「市場金利」ですよね。機関投資家が買う投資商品の利回りですから。

これが上がった場合は下げるバイアスがかかるでしょう。ですから、表面利率が上がった場合はフラット35の金利は横ばいか微増になると思います。

下がった場合は、下がった分だけフラット35の金利を下げるでしょう。

仮に銀行側が自分の取り分の利益を上げてきたとしても問題ないくらいに大幅に下がれば簡単なんですけど、そこまで大きく動くとは考えにくいですね。

いずれにしても、予測に過ぎないので一定のリスクを伴う事は否めませんね。

もう一つこの記事を公開後にご質問がありましたので、追加しました。

質問2:機構債の利率発表後の金利の変動はフラット35に影響するか?

理屈としては、利率が公表された後にアメリカ、日本の株価が急騰もしくは急落(景気がどちらかに変動する傾向)しても来月のフラット35の金利には影響しないんでしょうか。

それとも、急落する場合は、来月1日までに国が損を被ってフラット35の金利を下げる方向の調整をするといったことがあり得るんでしょうか。

何卒よろしくお願いします。

回答:実行前までは影響することがありますが実行後は絶対に変動しません

公表された通りの利率で機構債の発行を行うことを予定しています。これはあくまで募集要項なんです。公表時点ではあくまで『こういう条件で募集しますから買いませんか?』ということです。

ですから、公表後にあまりに大きな金利の変動があり、その条件での発行を行うことが実態に適していないということになれば、当然に募集の条件が変更されるんです。

これは、民間金融機関の住宅ローンも同じですよ。

余談ですが、民間金融機関の固定金利については、未曾有の金融事件などにより、異常な金利の変動があった場合は金利を変えることが出来る旨が契約に謳われています。こんな条文です。

金融情勢の変化その他相当の事由が発生した場合、適用金利が見直される場合があります。

固定金利でも、こういう逃げ道を用意しているんですね。ただ、フラット35についてはこのような約款は無く、一度決まった金利は『本当に』最後まで適用されることになります。

以上、参考になれば幸いです。



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