変動金利を選んだ人の悩みポイント 借り換えるなら今?

2018年10月9日

住宅ローンの借換と家計の見直し

住宅ローンの金利タイプでは変動金利が1番人気です。住宅金融支援機構の調査によると、2016年3月~9月にかけて民間金融機関で住宅ローンを借りた人の中で変動金利を選んだ人は49.2%、固定期間選択型は36.9%、全期間固定型は13.9%であったそうです。

全期間固定型が少ないのは、おそらく民間金融機関の利用者が母集団になっていて、フラット35を入れていないからなんですけど、それでも半数近くが変動金利を選択しているのです。

2016年11月にトランプ氏が大統領に当選してからアメリカの長期金利が高騰し、2016年12月と2017年3月の2度にわたってFOMC(アメリカの中央銀行)は利上げを行いました。

この調子でいくと、日本の利上げも遠い話ではないのか?

去年までに変動金利を選んだ人からは、そんな不安が出てくるのですよね。

また、借入の当初は「とりあえず」35年のローンを組む人が多いですが、家を買うのは30代半ば位が多いですので、実際の定年までの年数は35年も無い人がほとんどです。何年か返済をしながら貯蓄が思うように増えないと、不安になってきます。

さて、今日のご相談者です。住宅ローンの借換と家計についてのお悩みです。

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相談:変動から固定に借り換えるかはたまた手放すべきか?

初めまして、35歳専業主婦です。今借りている住宅ローン変動から、固定金利に変更するべきか、はたまた、手放すべきか相談です。

現在の住宅ローン

借入:2015年

物件:3,890万円(頭金100万円)

住宅ローン:千葉銀行変動金利0.67%、35年元利均等返済ボーナス払いなし

年収と家族構成

主人40歳(借入当時650万、現在700万)

妻35歳

子供3人(6歳女の子、2歳双子男の子)

固定資産税を月割りで積立をしており、含めて12万4の住居費となります。

物件を決めた背景は、色々ありますが、主人の通勤の問題、子育て支援が手厚い(子供3人おり、公立幼稚園充実)などもありますが、賃貸を退去せざるを得ない事情があり、転勤続きで貯金も厳しい中、分譲マンションが出にくい土地に新築が建ち、購入に踏み切りました。

少し手取りが増えたので(現在年収約700万 手取り47万)、長期固定金利が低い今のうちに借り換えねばと、試算をしておりますが、計算しているうちに、ローン破産まっしぐらだと今更ながら気付いた所です。

住信SBIネット銀行の全期間固定30年1.28%にしても、月の負担は23000円増。安心ではありますが、住居費が手取りの31%となり、貯蓄ペースも下がります。

主人の年齢的に、短期で繰り上げ返済するべきなのですが、教育費と老後資金、全て同時です。2馬力するとしても、先の話。

ならば手放す事も選択肢として持っておかないと。とも考えるようになりました。

そうすると、このままの変動金利で行くか、諸費用払って短期固定0.5%なとに借り換えるかも悩むところです。

この住宅ローンはやはり無謀だったのでしょうか。

人生相談のようになってしまいましたが、某アドバイス頂ければと思います。

宜しくお願いいたします。

回答:借換や売却よりも家計の見直しの方が合理的です

ではお答えしますね。結論から申しますと、老後破産になる要素は少ないとお見受けしました。また、借り替えによってさほどのメリットも無いと思います。

以下、借換の候補と今後完済までのシナリオについてお話していきますね。

借換の最有力候補はりそな借換専用10年固定0.55%

今の千葉銀行の条件は店頭金利2.475%から1.805%優遇の0.67%です。変動金利であるため今後上がる可能性があるとしても優遇幅が大きいので、十分に有利な条件と言えます。

これと比較できるものは、私の知る限りではりそな銀行の借換専用10年固定です。

当初10年は0.55%で、固定期間が終了したら店頭金利から1.906%の優遇となります。店頭金利は千葉銀行と同じ2.475%ですので、これをベースにすると0.569%です。

つまり、

  • 千葉銀行よりも低い金利の0.55%で10年間固定される。
  • 固定期間終了後の優遇も千葉銀行よりも多い1.906%である。

ということです。

しかし、金利の下がり幅は微妙ですよね。もとの千葉銀行がそれだけ優遇しているからです。

この2行を比較しながら完済までのシナリオを立ててみました。

 

千葉銀行とりそな銀行の完済までの支払いは同じ位

まずは下の表を見てください。

(単位:円)

借換比較 千葉銀行
33年
りそな借換
30年
月返済 101,257 108,395
今後10年支払(50歳) 12,150,807 13,007,408
残り8年住宅ローン控除 -2,519,893 -2,474,003
11年~20年(60歳) 12,150,807 13,031,776
60歳残高 15,123,636 12,665,037
支払い合計 36,905,357 36,230,219

今の月返済額とほぼ同額に固定しながら、期間を短縮するということで、りそなに借り換える場合は30年の返済期間としました。

月の支払い額は7千円高くなりますが、固定されるという安心があります。50歳までは金利の変動リスクは無くなります。

住宅ローン控除については、少し減りますね。これは金利が下がることで元本の減りが早くなり、住宅ローン控除も少なくなるためです。

11年目~20年(60歳)まではその時の店頭金利がベースになります。表では今の店頭金利をベースにしていますのであくまで仮定です。

60歳での残高は千葉銀行では15百万円、りそな借換では12百万円ですね。最後の一括返済が3百万円軽減されます。

支払い総額はどうなるかというと、りそな借換の方が67万円安くなります。借換費用が別途かかりますので、おそらく両者トントン位に近づくでしょう。

つまり、最も有利と言われるりそな銀行に借り換えたとしても、支払総額に大した差が生じないということです。

目に見えるメリットは10年間の金利の固定のみということですね。

3人のお子さんの大学入学は後半の10年に集中

完済までのシナリオを立てるにあたって、ポイントになるのは3人のお子さんの大学入学が後半の10年に集中しているという点でしょう。

近く年収が12百万円に上がるということですが、外資系は上がるときと下がるときの差が激しいですので、安定的とは言えません。ただ、40歳を超えてからキャリアアップの転職を考えておられるのでしたら、旦那様の能力が担保となるでしょう。

後半10年の時期には年齢的に50を超えて身体の色々な部分にそれまでの、激務のツケが出やすい時期です。40というと、そろそろご本人でも自覚し始めるころだと思います。また、支出の面でもリスクが高い時期に入りますので、後半に向けて保障の厚い保険に入っておくことをお勧めします。

お子さんの教育費は両親の援助や奨学金も視野に入れる

高収入ですし、お子さんの教育にも多くの投資をされることと思います。3人おられますので、ご両親の援助などもうまく利用しながら、お二人の老後資金を着実に貯めておくことをお勧めします。

お子さんが成人される頃はさらに今よりも少子高齢化が進み、社会保険料が重くのしかかっていることと思います。成人になってから親への仕送りをする余裕はなかなか無いでしょう。

教育費については、奨学金ということも選択肢として考えておいても良いと思いますよ。教育費で老後資金を減らすよりは、将来の働き手への投資でもあるわけですから、国に一時負担してもらう方が合理的だと、個人的には思います。

相談:支払いが増えても固定金利の安心を買いたい

詳しく教えて頂き、ありがとうございます。

誰にも相談出来なかったので、本当に心強く、有難かったです。

悩んでいる友人にも是非お勧めさせて頂きます。

最後に一つ質問ですが、

変動金利のリスクを背負っているのが怖かったのですが、総支払額の借り換えメリットが無くても、全期間固定に変更するのは、あまり賢くないのでしょうか?

全期間固定にする目的は、支払額が増えても、安心を買う意味と、変動金利が将来支払い困難になるリスク回避?でも必要だと思っていました。

繰り上げ返済も、さほど出来ないのに(出来たとしても少額)、このまま千葉銀行で良いのでしょうか?

どこまで想定するか、と言うことになってしまいますが、千日さんはどう思いますか?アドバイス頂きたいです。

回答:変動金利の支払いは固定されている

そうですね、そこ大事でした。失礼しました。

お答えします。ポイントは2点です。

  • 変動金利はそれほど危険じゃありません。
  • 売却するタイミングでもありません。

変動金利には5年ルールと125%ルールがある

変動金利には、5年は直前の元利均等返済額を上げない。そして一度に上げるのは直前の125%までというルールがあります。

なので仮に今、金利が高騰してもこれから先5年は今の10万円位の支払いのまま固定されるのです。

そして5年後に上がる時は、今の125%が上限になっています。

ですから、金利が上がっても支払いに関しては手厚く保護されているんですよ。

もちろん、金利が上がって支払いが一定なら元本は減りません。

そこで初めて、売るか、繰上げ返済するかを考えれば良いと思います。

5年の猶予期間が与えられますので、その間に繰上げ返済資金を貯めるも良し、有利な価格で売却出来るなら売却するも良しです。

なお変動金利では月の支払いの25%を貯蓄しておく事をお勧めしています。

住宅ローンのセオリー

2015年の新築マンションということは、利便性が高く、売却価値も考えて購入されたと思いますので、大きく損をする可能性は低いでしょう。

元々旦那さまの収入は高く、変動金利の元利均等返済額の25%を(固定資産税とは別に)積み立てておくことは十分可能です。

それが難しいと言うのであれば固定金利に変えるとやはり苦しくなります。何かが家計を通常以上に圧迫しています。その原因はおそらく住宅ローンではありません。

現在の世帯収入だと本来は変動金利でも固定金利でも、どちらも可能です。

 

新築だと2年で売却すると損です

新築から中古になった最初の時点で売却価値がガクッと落ちます。その後、経年劣化により少しずつ落ちる感じです。2年で売るのは損ですよ。

頭金が少ないですから残債が多く残るでしょう。それに家族5人が住める家を賃貸でとなると、家賃は恐らく変動金利での住宅ローンの支払いを遥かに超える金額です。

借金を残して、支払いを増やす。

こういう事になりがちです。今の住まいに不満が無いのであれば売るのは得策ではありません。

子供の成長とご主人の収入増加に合わせて、自然と必然的に住み替えたいとなる時がベストなタイミングです。

そういう時なら、ある程度の出費を伴っても前向きな動機ですから後悔はありません。

まだ3人のお子さんは小さいですから、まだパーソナルスペースの必要な年齢ではありませんよね。

まとめ

前半にも書きましたが、住宅ローンよりは家計を見直して貯蓄を捻出し、リスクに備える方が長い目で見れば安全かつムダの無い資金計画になると思います。

貯蓄を捻出する工夫と手間をかければ、変動金利は、それほど怖くは無いのですよ。

以上、参考になれば幸いです。

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