安定した大企業なら住宅ローンをボーナス払いにしても良い?

2018年10月28日

ボーナス払い=未知の期間への認識の甘さ

住宅ローンは最長35年です。これから住宅ローンを借りようとする人にとって、35年というのは未知の時間です。物心ついたときから今までの時間にほぼ等しい。場合によってはそれよりも長いかもしれません。

その未知の期間に亘って、住宅ローンの契約書通りの毎月の返済を継続していくこと。

これをリアルに感じることは至難の業です。

  • それを実際よりも重く捉えすぎると、尻込みしてしまいます。
  • 実際よりも軽く捉えてしまうと、リスクの高い返済プランを組んでしまいます。

後者の典型的な例がサラリーマンの『ボーナス払い』です。

シャープ株式会社の創業は1912年、日本を代表する電機メーカーでしたが経営が傾き、 台湾・鴻海精密工業による買収に合意しました。

1875年創業の株式会社東芝もまた、業績の悪化を隠蔽するため不正会計に手を付け、上場廃止の危機に直面しています。

自分だけが今後35年にわたりボーナスを貰い続けることが出来る保証など、どこにもありません。どんな大企業のエリートサラリーマンであってもです。では今日のご相談者です。

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相談:安定した会社なのですがそれでもボーナス払いはだめですか?

千日さん、こんにちは。いつも楽しく拝見させて頂いております。

今回、注文住宅の住宅ローンに関して、二点ご相談させて頂きたくご連絡させて頂きました。

年齢、年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 32
夫の年収(万円) 650
妻年齢 31
妻の年収(万円) 専業主婦
共働き世帯年収(万円)
家の価格(万円) 4,350
住宅ローン(万円) 4,150
頭金(万円) 200
  • 32歳 社歴10年目 貯蓄400万
  • 妻31歳、娘1歳(将来的にもう1人希望しています)
  • 購入物件 注文住宅 4,350万(土地、諸費用含む、頭金200万(支払済))

娘の誕生を期に注文住宅を検討していましたが、某有名ハウスメーカーに妻の友達がおりまして、住宅メーカーが持つ土地が妻の実家に近い方面だったことや、信頼できる会社・営業マンだと感じましたので、5月末引き渡しで注文住宅の購入を決めております。今週末に上棟確認と言うスケジュール状況です。

住宅ローンはハウスメーカーの提携ローンである住信sbiネット銀行で審査を通しております。ハウスメーカーの営業さんのご提案で、

  • 当初10年固定(参考1月金利0.48%)650万
  • 当初35年固定(参考1月金利1.06%)3,500万

の内訳のミックスローンで住宅ローンを借りようかと考えております。提携ローンなので公開されている金利よりも低い数字になっています。

10年と35年のミックスローンで問題ないですか?

まず1点目のご相談が上記住宅ローンの選択肢に問題は無いかということです。

住宅ローン控除が終了する10年後には当初10年固定の分は全額繰上げ返済してしまう予定です。

もし他に有利な条件の選択肢があるのであれば検討したいと考えております。

お知恵をお貸しいただければと思います。

ボーナス払いはそんなにダメですか?

次に2点目のご相談ですが、上記の借り入れですと、ボーナス払い無しですと月々の支払いが約12万円ほどになる予定です。

千日さんの仰る手取り40%以内には収まる計算ではありますが、子供の成長やもう1人を希望していることも考えますと、将来の見えない出費に不安があり、月々の収支にゆとりを持った設計ができないかと考えております。

会社は比較的安定しておりますので、ボーナスが出なくなるということはあまり考えにくい状況であるので、ボーナス払いを視野に入れることを真剣に検討しております…と言うより、現状はボーナス払い前提で考えております。

千日さんはボーナス払いを強く否定されておりますが、僕のような状況でもやはりボーナス払いは避けるべきとお考えでしょうか?

月々もボーナス時もそれほど辛くない出費で対応することの方が魅力的に思えておりまして…

以上2点、ご相談させて頂ければ幸いです。お力をお貸しいただけますよう、何卒宜しくお願い致します。

回答:繰上げ返済資金をボーナスで貯蓄するのはOKです、しかし…

ではお答えしていきます。

まずは、今検討されている住宅ローン(ミックスローン)が無理なく返済可能なものであるかを確認してみますね。

35年固定ではなく30年固定の方が無駄がない

  • 10年固定は10年後に一括返済する。
  • 35年固定は60歳の時に一括返済する。

このような前提をおきました。65歳定年が義務付けられているとはいえ、そうなるとは限りませんし、60歳を境に収入が6割以下に減るのが今の時点の傾向だそうです。

60歳での完済を目指すとなると、現在32歳ですからあと28年ですよね。28年で完済するのであれば、35年間金利を固定する必要はありません。ならば30年固定の方が金利も低いでしょうから、無駄がないと思いますよ。

ボーナスを貯めて一括返済はOKだが約定返済にボーナス払いを入れるのはNG

借りる住宅ローンはハウスメーカーの提携ローンで、住信SBIのホームページで公表されている金利よりも優遇されますね。ザックリとですが10年固定は0.5%、35年固定は1%としてシミュレーションしました。

住宅ローン控除は現在の年収から1年の上限は35万円としました。

  • 10年固定金利0.5%で650万円借入、35年元利均等返済、ボーナス払いなし。
  • 35年固定金利1.0%で3,500万円借入、35年元利均等返済、ボーナス払いなし。
  • 10年固定は10年後に一括繰上げ返済。
  • 35年固定は28年後(60歳)で一括繰上げ返済。

(単位:円)

10年35年ミックス 10年固定
650万円
35年固定
3500万円
合計
4150万円
月支払 16,873 98,800 115,673
10年支払額 2,024,766 11,855,999 13,880,765
住宅ローン控除 -554,875 -2,849,451 -3,404,326
10年後一括返済 4,757,395 0 4,757,395
11~28年支払額 0 21,340,799 21,340,799
28年後一括返済 0 8,012,166 8,012,166
合計 6,227,285 38,359,513 44,586,798

住宅ローンのセオリー

にあるとおり、月の支払いが手取り月収の4割以下になるかを確認しましょう。

年収650万円の手取り年収を500万円とし、毎月の月収は30万円、ボーナスは夏冬合わせて120万円という仮定を置きます。

手取り月収30万円の4割は12万円ですから、月支払いの115,673円は手取り月収の4割以下になりますね。

ただし、10年固定の方は10年後に475万円を一括返済しなければなりません。この貯蓄はボーナスを充てれば可能だと思います。

ボーナスが同じ月に同じ額が何十年と変わらずに出る。

これは幻想です。増えることも減ることも、支給月が変わることもあるのがボーナスです。10年後の一括返済資金の原資にするためにボーナスをあてにするのは問題ありません。不況でボーナスが出ない年があっても、給与規定の改訂で支給される月が変更にになっても大丈夫だからです。

もし繰上げ返済できなくても、それは自分の目標が達成できなかったということになりますが、債務不履行にはなりません。

しかし、毎回やってくる支払いの中にボーナス払いを入れるのは危険なのです。出なかった場合は貯蓄を取り崩して払わなければなりません。支給月がひと月ズレたら、貯蓄を取り崩して払わなければなりません。そのタイミングとアクシデントが重なったら、たちまち詰む可能性もあるのですよ。

現在検討されている、住宅ローン(10年と35年のミックス)の返済計画に対する所見としては以下のような結果です。問題ないと思いますよ。

  • 毎月の返済額に余裕があり、無理なく返済できる。
  • 一括返済額も多額にならず、リスクは低い。
  • ただし定年を考えると、35年固定ではなく30年固定の方が無駄が無い。

 

回答:経営者の目線に立つとボーナス払いなんて『あり得ない』

やはり、ボーナス払いはダメです。

主な理由については、前述したとおりです。また、以下の記事にも詳しく書いていますね。

年収の4割超がボーナスでもボーナス払いはダメですか?

こちらの記事もお読み頂いたのだと思います。

なので、さらに補足しましょう。どんなに大企業であろうと、今後何十年にわたって従業員にちゃんとボーナスを払えると保証できる会社はありません。これは断言できます。

ボーナスは会社が傾くと真っ先にカットされる

ボーナスは利益を出すために一番簡単に調節のできる費用なんですよ。

売上は相手のあることですから、上げたいと思って上げられるものじゃないですよね。

仕入には相場がありますから、値切るのにも限界がありますよね。

経費も同様です。

では人件費はどうか?

基本給(給料のベース)については、労働組合があったり、労基の指導がありますから、そこを下げるのは困難です。ではボーナスは?上記の中で一番減らしやすいんです。だって会社が儲かっているからこそ、ボーナスを払うという建前のものだからです。

ボーナスの支給額の決定は、基本給に人事評価や成果ポイントを乗じる方式になっていると思いますが、それ以前の経済的実態として、全体のパイが決まっていて、それを従業員で分け合うものです。

いままで、幸運にもご自身にしわ寄せが来るような状況に会社が追い込まれたことが無いだけのことなのです。

今後も同じようにボーナスが出るとは限らないという危機感を持った方が良いです

住宅ローンの返済期間中、ボーナスは欠かさず出してもらえますよね…今までもそうでしたし。

もし、社長に会って話す機会があったとしても、普通こんなことは聞かないと思います。もし自分が社長で、会社の方向性の舵を取る立場だったら、こんなことを考えている従業員についてどう思われるでしょうか?

特に今の段階で大きな会社というのは、日本経済の成長期に乗って業績を伸ばし、規模を拡大させてきた会社です。今までとこれからでは全く違うのです。

もちろん、その中でも生き残る会社、力を発揮する人はいます。そういう会社、人にはお金が集まります。

『安定している』『ボーナスが出なくなることは考えにくい』という考え方については、住宅ローンの返済計画という側面でももちろんですが、今後のキャリアと収入を伸ばしていくという観点からも、改めた方が良いと思いますよ。

以上、参考になれば幸いです。

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