今の自分の年収から身の丈を超えた家を買うにはボーナス払いか?

2018年10月28日

今の年収で買える家の価格と組める住宅ローンを知った上で身の丈を超えた家を買う

自分の生涯賃金が幾らか、家を買う時点で知ることは出来ません。分かるのは今の自分の年収と定年退職までの年数です。この後、自分の年収が順調に上がっていくのか?それは神のみぞ知ることです。

住宅ローンは早い時期から返済を開始することで、早く完済できますので、早い方が有利といえば有利です。でも、若い時はまだ頭金も十分に貯められていないことがありますし、今後良くも悪くも収入がどうなっていくのか?幅があるんですよね。

そして、分かっている今の年収というのは、若いですから低めです。今の年収をベースにシミュレーションしたら、返済期間を長く取れても自分の欲しい家は買えない…そんなジレンマに陥る人が多いです。

そこでまず考えるのが『ボーナス払い』なのですが、千日はボーナス払いだけはお勧めしません。

  • ボーナス払いのリスク
  • 身の丈を超えた住宅ローンのリスクの大きさ

この二つを的確に把握すれば、自ずとどうすれば良いのか?は見えてきます。今日はそんなご相談者です。

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相談:ボーナス払いを前提として固定か変動か?どっちにすべきでしょうか

初めまして。ブログを拝見させていただきました。表記の件についてご相談させていただきたく、よろしくお願い致します。

現在、新築住宅の売買契約が完了した状態で、住宅ローンをどうするかというところで、フラット35sにするか、変動金利にするか決めかねております。

年齢が若く、将来子どもも増える可能性があることから、フラットがいい気がしていますが、変動金利が低金利であり、お金のない若い時期に月額を抑えられる点に魅力を感じています。

フラット35sの場合、フラットを9割以下に抑えるため、一部を別のサポートローンを組む予定です。
ボーナス払いは、どちらも15万円/回を予定しております

どちらにすべきか客観的な視点からアドバイスをいただきたく、よろしくお願い致します。

年齢、年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 27
夫の年収(万円) 600
妻年齢 29
妻の年収(万円) 専業主婦
共働き世帯年収(万円)
家の価格(万円) 5,300
住宅ローン(万円) 5,200
頭金(万円) 100
  • 職業 会社員
  • 年齢 27歳
  • 月収 額面40万円 昇給年1回
  • ボーナス 額面85万円/回(年2回)
  • 妻 29歳 専業主婦 子 1歳
  • 物件金額 5300万円(内370万円は太陽光発電設備)
  • 入金済み金額 100万円
  • 残額 5200万円
  • 売電収入 平均3万円/月(モデルハウスであり、半年間の実績)

フラット35Sで頭金をサポートローンか地銀の変動金利か?

引き渡し時期は9月末の予定となっておりますので、フラットリニューアル前かと存じます。

1)ハウスメーカー提携フラット35s+サポートローン

ハウスメーカーの提携フラット35Sで借り入れ4770万円

  • 当初10年金利 0.79%
  • 11〜35年目金利 1.09%
  • 事務手数料 0.4%
  • 団信 団信の代わりに収入保障保険5000円/月 見込み

サポートローンで借り入れ430万円

  • 変動金利2.15%
  • 支払期間 20年
  • 事務手数料無し
  • 団信費用込み

2)地銀変動金利ローン

  • 基準金利 2.475%
  • 優遇幅 1.975%
  • 適用金利 0.5%(ガン団信費用込み)
  • 保証料 金利0.16%上乗せ
  • 事務手数料 64500円

 

回答①:ボーナス払いはお勧めしませんが諦める必要も無いと思います

9月実行で提携ローンということでしたら、お急ぎですね。では早速お答えしていきます。

1)9割ハウスメーカー提携フラット35s+1割サポートローン2.15%
2)10割地銀変動金利ローン0.5%

どちらか?というご相談ですが、ボーナス払いで一回15万円を予定されているとのことです。どちらの場合であってもボーナス払いはお勧めできません。

なぜボーナス払いがそんなにダメなのか?

自分が買える価格の家ならば、ボーナス払いにしなくても返済できます。

ボーナス払いにしなくても買えるのに、払えなくなるリスクだけを増やしている。

選ぶメリットが全く見当たらないのが、住宅ローンのボーナス払いなんです。

年収の多くをボーナスが占めているならしょうがない?

若い時はまだ月給が低く、ボーナスが高い傾向があるのは確かです。しかし、ボーナス払いを入れるということは、35年で合計420回の支払いに加えて、1年に夏冬2回で合計70回の支払いを加えることになります。ということは合計490回です…難易度がハネ上がるんですよ。

それに、支払額の違う月を入れるリスクを甘く見てはいけません。

  • 毎月同額の返済である。
  • 年2回返済額が高くなる。

このリスクは同じではありません。

35年420回ノーミスでやり遂げるタスクにアクセントを入れるのは、それだけで危険なのです。一定のペースで跳ぶ縄跳びより、ペースが早くなったり遅くなったりする縄跳びの方が引っ掛かりやすいのと同じです。

  • 収入に変動があっても返済は一定にする。
  • 最も収入の少ない月に合わせて住宅ローンの支払いを決める。

これが収支の構造的に一番安全なのです。何も無い時に楽が出来るモデルよりも、イレギュラーな出来事やアクシデントに強い資金計画を立てましょう。

それに、住宅ローンの約定は最後まで変わりませんが給与の規定は結構変更になります。年俸制になってボーナスではなく毎月均等額になることもあり得ます。そういう会社もあります。

また、昇進によってボーナスが無くなり月収のみになるというケースもあります。

出向や転籍、転職などによってボーナスの支給月が変わることだってあり得ます。

しかし、一度決めた住宅ローンの約定返済額というのは、最後まで変わらりません。

今の自分にとって最適に見えるボーナス払いが今後35年間の自分にとってもずっと最適であり続けるのか?そういう視点で、再度考えてみてください。

安定した大企業で必ずボーナスが出るならいい?

だめです。過去35年ボーナスが出たということが、今後35年ボーナスが出る理由にはならないです。

どんなに大企業であろうと、今後何十年にわたって従業員にちゃんとボーナスを払えると保証できる会社はありません。これは断言できます。

多くの会社は営利企業ですよね。赤字になるのはイヤなんです。景気が悪くなって会社が赤字に転落しそうになったら、黒字を維持するためにまず真っ先にカットされるのがボーナスです。

儲かっているから支給するのがボーナスだからです。

会社が赤字になりそうなのに、儲かっている時と同じようにボーナスを払う経営者はいませんよね。経営者の立場に立って考えてみたら、35年の住宅ローンの返済を、ボーナスが出る前提で計画するなんて『あり得ない』ことなのですよ。

ボーナス払いは少額に抑えれば大丈夫?

本当に『少額だ』というのであれば、毎月の返済額に均してしまえばもっと少額になります。『少額でリスクが無い』というのが本当であればボーナス払いにする必要など無いのです。

ボーナス払いにしなければ…と思うのは、その金額が今の自分にとって少額ではないからです。

将来の自分にとっては少額になるかも、という期待もあると思います。

それは良いと思うんです。年齢や職種によってはまだまだ年収が伸びるはずという考え方はアリです。特に若い人は少しくらい背伸びするくらいで丁度良いんですよ。

しかし、自分の年収が上がっても会社がピンチになればボーナスは出ません。自分だけの頑張りでどうにもならない要素があるんです。そういう不確定要素を長期間の住宅ローンに入れるのは、リスクが高すぎるんですよ。

住宅ローンの一番のリスクは『自分』です

ボーナスを減らすのは他でもない自分なんです。これまで計画的に貯金が出来ている人は頭金も多く、ボーナス払いにする必要も無い場合が多いです。ボーナス払いを検討する人は、どちらかというと貯金が苦手な人に多いのかもしれません。

だとすると、ボーナス払いを選ぶ動機は、自分の性格上の弱点を良く知っているからなのかもしれません。しかし、いざという時に貯金が無い(少ない)というのは、住宅ローンの金利変動リスクなどよりも遥かに大きなリスクです。

ボーナス払いはけしてこのリスクをカバーしてくれません。むしろそのリスクを増幅させるものなのです。

ボーナス払いなしで幾らまで借りられるか?のシミュレーション

では、シミュレーションに移ります。まず、ボーナス払いなしでこの住宅ローンを借りるポテンシャルがあるか?を判断します。毎月の返済は手取り月収の4割以下にすることをお勧めしています。手取り月収を30万円とすると、その4割は12万円ですね。

  • 毎月の返済額は12万円以下にする。

次に何年の住宅ローンで何年で完済するかを計算します。現在27歳ですと、最長の35年ローンが組めます。また、定年までの年数は33年~38年です。

  • 35年ローンで35年で完済する。

シミュレーションの金利は固定金利で行います。変動金利の方が低い金利ですから、より多く借りられるという結果が出ますが、変動金利には金利上昇リスクがあります。利用者はこのリスクに貯蓄で対応しなければなりません。千日メソッドでは毎月の返済額の25%を貯蓄していくことをお勧めしています。毎月の返済額と貯蓄を合わせて手取り月収の4割以下にするのが条件です。

今は固定金利が低いですから、固定金利の方がハードルが低くなるのです。それにこれで金利上昇リスクを完全にカバーできるわけではありません。最低限これくらいはやっておきましょう、というラインなのです。

なので、シミュレーションの金利としては1.09%(7月のフラット35金利)を充てて計算します。

(単位:円)

固定金利
1.09%
借入
4200万円
借入
5200万円
毎月返済 120,330 148,980
10年後残高 31,585,890 39,106,340
返済総額 50,538,509 62,571,487

現在計画している借入は5200万円ですが、それだと毎月の返済額が14万9千円となりますので、2万9千円足が出てしまいますね。この2万9千円が現時点の収入に対して身の丈を超えた部分ということです。

身の丈を超えた家を買ってはいけないのか?そんなことはない

私のどのエントリーでも『ボーナス払いはダメ』とは書いていますが、身の丈を超えてはいけないとは一言も書いていないと思います。『身の丈を超える』大いに結構なんです。重要なのは、幾ら超えているのか?その測定をリアルに行うことです。

大事なのは、1000万円超えているということではなく、毎月2万9千円超えているという物差しです。借入金額というのは単に住宅ローン契約書に書いてある、ただの数字です。毎月幾らかというのが、我々利用者にとってのリアルな数字なんですよね。

ですから、毎月2万9千円というのをよく覚えておくことが重要なんです。毎月の収入がこれに追いつくまでにいかにして家計からこの金額をねん出するのか?というのが現実的かつ建設的な問題解決のポリシーです。

 

回答②:実際の金利でシミュレーションして判断

では、実際の適用金利でシミュレーションしましょう。

1)ハウスメーカー提携フラット35s+サポートローン2.15%

  • フラット35S借入4770万 当初10年金利 0.79% 11〜35年目金利 1.09%
  • サポートローン借入430万 金利 2.15% 支払期間 20年

(単位:円)

フラット35S
サポート
サポート
2.15%
フラット35S
0.79→1.09%
10年毎月返済 22,060 130,032 152,092
11年~毎月返済 22,060 134,816 156,876
10年後残高 2,380,034 35,388,554 37,768,588
返済総額 5,294,345 56,048,826 61,343,171

当初の10年間はさきほどのボーナス払いなしのシミュレーション結果とほぼ同じ返済額になりますね。毎月3万2千円の足が出ています。

  • 家計の支出を見直す。
  • ボーナスを貯金しておき、そこから払えるようにしておく。

このようにすれば、可能です。『ボーナスを貯金しておいて払うのもボーナス払いも同じ』ではないことは最初に述べたとおりです。

2)10割地銀変動金利ローン0.5%

  • 変動金利借入5200万円 変動0.5%

(単位:円)

地銀
変動金利
変動
0.5%
毎月貯蓄
10年毎月返済(貯蓄) 134,984 33,746 168,730
10年後残高(貯蓄) 38,059,159 4,049,532 42,108,691
返済総額(貯蓄総額) 56,693,446 14,173,361 70,866,807

毎月の貯蓄25%を足すと16万8千円というのが、金利上昇リスクに対応するための最低限のラインです。この『計』はリスクを金額に換算したものという見方をして頂ければ良いと思います。

フラット35よりも高いハードルです。

最後まで金利が上がらなければ、返済総額は5669万円となるため、フラット35Sの6134万円より約5百万円少ない支払いで終わります。しかし、これを獲りにいくには毎月貯蓄の14百万円を余分に払えるだけのバッファーが必要だということです。

自分の収入が毎月16万8千円のレベルになれば、良いという考え方もありますね。4割で割り戻すと、手取り月収42万円です。額面年収にすると約900万円です。

自分の年収が900万円に達するまでの時限的なリスクを取るんだ、という考え方で変動金利にするというのも合理的な判断かと思います。

 

まとめ

ボーナス払いを前提としたご相談でしたが、千日が回答すると以上のような結果となりました。他の専門家が回答すると、あるいは違う結果になるかもしれません。

あくまで一つの考え方として、参考にして頂ければよいのかなと思います。

以上、参考になれば幸いです。

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