共働きで注文住宅を建てる場合の住宅ローンの借り方について

2018年10月28日

注文住宅のお金の払い方と夫婦ペアローンにするかどうかの分かれ目

土地を購入して注文住宅を建てるまでには、家が完成する前からある程度のまとまった現金が必要になります。なので、手持ちに現金が無ければ、家が出来る前からかなりのお金を金融機関から借りなければなりません。

また、夫婦共働きであればペアローン(家を担保として夫婦それぞれが住宅ローンを組む)という選択肢もあります。夫婦それぞれが住宅ローンを組むことで、より多く住宅ローンを借りられて、さらに夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられます。

しかし一方で住宅ローン全額について、夫婦がお互いに連帯保証しなければならず、特に妻の方に過重な責任となりやすい、というデメリットがあります。前述のメリットに対するこのデメリットをどう考えるか?ということも悩ましいところです。

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注文住宅ではほとんどの代金を前払いしなければならない

注文住宅の場合は、家の予算の大半を前払いしなければならないのですが、その理由をご説明しておきましょう。

まず、土地の購入代金が必要です。家を建てる土地は自分の所有のものでなければならない、ということもありませんけど、自分が地主さんの立場になってみたら『家が完成して住宅ローンが借りられるまで代金の支払いは待って欲しい』なんて言われても、承服しかねますよね。

相手からすれば、そこは先に耳を揃えて払ってよと考えるのが普通です。

また、家を建築する工務店に対しては、着手金、中間金(1回~2回)、完成時に残代金、と建築費用を複数回に分けて前払いしなければなりません。なぜなら、工務店と結ぶ契約は売買契約ではなく請負契約だからです。

両者の違いはこんな感じです。

  • 売買契約とは、売主が特定の財産権を買主に引き渡すことを約し、買主は売主に対して代金を支払うことを約する契約
  • 請負契約とは、請負者がある仕事の完成を約し、発注者がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約

売買契約であれば、家を引き渡してもらうまでは、代金を払う義務はありません。建売住宅や新築マンションを不動産会社から購入する場合や、中古住宅を前の持ち主から購入する場合などはこれに当たります。

しかし、注文住宅は請負契約です。請負契約の場合、工務店は家を建てる仕事をすることが義務ですので、家の材料費や下請けに払う必要経費などは都度注文者が払うという建前なのです。ただ、その都度お金を払うのは煩雑になってしまうので、数回に分けて払うということになっています。

住宅ローンは家を担保にするので完成前に借りることは出来ない

住宅ローンの要件は金融機関によっても様々ですが、必ず共通して課される条件があります。

  1. 主に住居として利用する家の購入(建築、修繕)資金であること
  2. 目的の家(土地と建物)を担保にすること

土地の代金や着手金、中間金を支払う段階ではまだ家は存在しないので、原則として住宅ローンを借りることが出来ません。しかしその一方で、残代金を除く大半の代金(土地代金、着手金、中間金)を家が完成する前に支払わなければならないのです。

つなぎ融資とは

つなぎ融資は建物が完成して住宅ローンの融資実行が出来るようになるまでの「つなぎ」として借りる融資で、基本的には無担保で融資を受けるものです。金利は住宅ローンよりも遥かに高くなるのが特徴です。

家が完成したら、つなぎ融資分と残代金の合計で住宅ローンを借りて、つなぎ融資のローン残高を返済します。そこから先は普通の住宅ローンです。

分割融資とは

分割融資は建物が完成する前に住宅ローンを申し込み、完成前から分割して融資を受ける方法です。この回数は通常2回までとされているようです。契約は住宅ローンの一部となりますので、金利は住宅ローンの低い金利が適用されます。

しかし、融資を受けるタイミングで土地に対して抵当権を設定する必要があります。そのため、住宅購入時の優遇税率は受けられず、少し割高な登録免許税となります。また抵当権の設定を代行してもらう司法書士への報酬も融資のタイミングで必要になります。

ちなみに通常の抵当権の設定税率は0.4%で、住宅購入時の優遇税率は0.1%ですので、0.3%割高になるということです。1000万円の土地なら3万円です。これに加えて司法書士の報酬、銀行への融資手数料などが追加費用となります。

注文住宅を建てるにあたって、つなぎ融資と分割融資どちらが良いか?というのはケースバイケースで実際に計算してみればわかります。

つなぎ融資と分割融資どっちが有利か?シミュレーションで比較

前置きが長くなりましたが、今日のご相談者です。

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相談:共働きで注文住宅を建てます車のローンもある場合の住宅ローンの借り方について教えてください

初めまして。今後土地を購入し家を建てようと考えています。ローンの借り方について是非ご意見をいただければと思いご連絡しました。

年齢、年収、共働き世帯年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 33
夫の年収(万円) 500
妻年齢 32
妻の年収(万円) 320
共働き世帯年収(万円) 820
家の価格(万円) 5,100
住宅ローン(万円) 5,100
頭金(万円) 0
  • 夫 33歳 公務員 2016年の年収500万
  • 妻 32歳 公務員 2016年の年収320万(※)
  • 子 4歳、2歳、9月に第三子誕生予定

※子の産休育休等で2017年度まではこのくらいの年収、2018年度からは400万ほどになる予定です。

総予算は5500万ほどです。土地2700万(いい土地が見つかり次第、購入に動く)、家2400万、諸経費400万を想定しております。頭金は600万用意で、つなぎ融資を利用します。できるだけローンで借りたいと思います。

車を成約しており、総額310万を5年ローン(月額53000円)を借りようと考えてます(夫負担)。

つなぎ融資とペアローンについて、基本的なことから教えてください

どのようなローンの借り方をするのがよいのかご教示いただけると幸いです。夫婦50:50の割合でペアローンを組みたいと思っております。

つなぎ融資は夫婦それぞれのローンで借りなくてはいけないのか、それとも一人で総額分借りることができるのかが気になっています。

今のところは漠然と以下の2つの方法のどちらかと考えていますが、つなぎ融資や夫婦それぞれで借りる方法をいまいち理解してないため、そのあたりも詳しく教えていただけると幸いです。

  1. フラット35Sを子育て支援型で夫婦それぞれ借りる、
  2. 一人が20年固定で借りて、固定期間が終わったら繰り上げ返済する、

つなぎ融資期間は現在の家賃の支払いと車ローンの支払いもあり、かなり厳しい部分があると思います。なんとか乗り切りたいと思ってはいますが、実際どうなのか不安です。

お力添えいただけますと幸いです。

 

回答①:つなぎ融資は住宅ローンとは別個の無担保融資です

ではお答えしていきますね。冒頭にかいてありますように、つなぎ融資は住宅ローンとは別個に銀行が融資をするもので、通常は無担保のローンです。もしも利用者が返済できなくなった場合に担保を取っていないので、金利が高くなるのですね。

ですから、住宅ローンとして出しているペアローンという『商品』の設定はありません。銀行の判断として『この人に幾らまでなら貸せるか?』という判断をして、その限度額までなら融資をするということになります。

共働きであれば、夫単独の場合で貸せる金額よりは、妻の連帯保証が付いている方がより多額の限度額になるでしょう。

あえて、夫婦それぞれにつなぎ融資を受けるという選択肢もあるにはありますが、つなぎ融資の時点では、未だ家は出来ていませんから住宅ローン控除を受けることが出来ませんので、いわゆるペアローンにするメリットが無い状態となります。

 

回答②:ペアローンで異なる金利タイプをミックスすることは出来ますがフラット35と民間の住宅ローンをミックスすることは出来ません(例外あり)

住宅ローンは、自分が住む家を買うため、その家を担保にして銀行などの金融機関からお金を借りる借金で、その家に住みながら借金を返済する事が出来ます。銀行は、我々が返せなくなったらその家を売却(又は競売)した代金で貸金を回収するために抵当権というものを要求します。

住宅ローンの場合は第一順位の抵当権でなければなりません。

なので、同じ銀行から夫婦それぞれが異なる金利タイプをミックスして住宅ローンを借りることは出来ます。二つの抵当権が設定されますのでどちらかが第二順位になりますが、同じ銀行なら実質的に第一順位ですからね。

しかし、A銀行とB銀行というように別々の銀行で夫婦それぞれが住宅ローンを借りることは出来ないのです。どちらかが、第二順位になってしまうからです。

フラット35は住宅金融支援機構が債権者で銀行は事務の代行だけ

フラット35は住宅金融支援機構という半民半官の団体が行う公的な融資で、銀行はその事務を代行しているだけなんですよ。なので、手続きの窓口が同じ銀行であってもフラット35とその銀行の20年固定をミックスするということは出来ないわけです。

なぜなら住宅金融支援機構か銀行かのどちらかが、第二順位の抵当権に甘んじなければならなくなるからです。第二順位ということは、第一順位が回収した残りから回収するということですから、回収できなくなる可能性が増えます。

なのに、他の第一順位と同じ低金利の住宅ローンでお金を貸すということは通常考えられませんよね。

例外的に第二順位で民間金融機関が住宅ローンを融資するケース

しかし例外的に民間金融機関が第二順位に甘んじて住宅ローンの融資をする場合が2パターンあります。

  1. フラット35の頭金10%や融資手数料を融資する場合と
  2. 特別な稟議を通して融資する場合です。

ポピュラーな例としては、事務代行する金融機関が頭金の10%や融資手数料を融資する場合です。フラット35は担保評価額の90%までしか借りることが出来ません。平たくいいますと、住宅の代金のうち、1割は自己資金で払わなければならないということです。

自己資金は無いけどフラット35で住宅ローンを借りたいという人のために、事務代行する銀行が住宅金融支援機構のフラット35とは別に融資をするケースです。1割なのであまり多額にはならないということもあり、一つの商品として成立しています。

もう一つ、あまり知られていない例として、銀行が特別に第二順位の抵当権で住宅ローンを貸すケースもあります。なぜそんなことをするのか?身も蓋もないですが、第二順位でも貸した方が得だと銀行が判断した場合です。

超例外ですから、行内でも特別な稟議を通して融資を実行します。もちろん、こういう方法があることが正式に公開されることはありませんが、ご相談者の実例としてありました。

 

回答③:フラット35は車のローンに厳しいです

住宅ローンの審査のトレンドについては

金融機関の審査ラボ

に一通り書いておりますので、ご一読ください。

車のローンが残っているというのは『カードローンや信用情報』という項目になるかと思います。過去に返済遅延などの履歴が残っていればもちろんマイナス評価となりますが、そういうことが無くても『他に借入金がある』ということもマイナスポイントとなります。

特に住宅金融支援機構はこの他の借入金に対して厳しめの評価をする傾向があるようです。年収から借入可能額を計算-住宅金融支援機構でシミュレーションしてみてください。だいたい借入額の5倍近く、借入限度額が減ってしまうイメージですね。

なので、住宅ローンを組む前に車のローンなどは完済しておく、出来れば買わないことが、転ばぬ先の杖です。

  • せっかく良い土地を見つけても、融資額が足らずに購入できない。
  • 工事に着工してから、融資額が足らず工事がストップする。
  • 工事が完成してから、融資額が足らず引渡しを受けられない。

こういったリスクがあります。顕在化するのが後になるほど、取り返しが付かなくなっていきます。

建築工事代金に目的外の支出を水増しするのは違法です

まいったな…どうしようか?

そこで『ちょっとグレーなんですけど…』なんて言う風に工務店とか銀行の担当者が言ってくることがあるんですよね。車の購入代金を建築工事代金に加算して契約書を作ってもらい、それを銀行に提出してつなぎ融資とフラット35の融資を受けるという方法です。

こうすれば…

  • 他の借入金は無くなりますので、審査のマイナスポイントは無くなります。
  • 家が完成して住宅ローンに置き換われば、低金利の住宅ローンの金利で車のローンを借りられます。
  • 車のローンの部分についても住宅ローン控除を受けられます。

もうお分かりだと思いますが、これはグレーではなく真っ黒な違法行為で、脱税に加えて、銀行に対する詐欺罪も加わるでしょうね。

 

回答④:ペアローンを『お勧め』できるケースはかなり限られます

私のこれまで書いた記事では基本的にペアローンについてはお勧めしていません。もちろん最終的には奥様ご自身で決めることですが、やはりお勧めはしません。

ご質問を読んでいて懸念しているのが、車のローンがあることで、結果としてペアローンにせざるを得なくなってしまうということです。車なんてタダの道具ですし、耐用年数もせいぜい数年ですよね。

ペアローンの割合が半々でも連帯債務は全額です。実際問題として、奥様単独の収入では完済できない金額です。

こちら、是非ご一読ください。

ペアローン、収入合算、クロスサポートのメリットデメリット-千日のブログ

奥様の方にそこまでの覚悟が無かった場合、『たまたまそのタイミングで車のローンが残っていたから』という理由だけで、何十年もの住宅ローンの返済期間にわたって連帯債務を負うことになるのは、全く割りに合わない話だなと、第三者的には思います。

ほとんどのケースでお勧めしないと答えているのですが、いままでに唯一わたしが異を唱えなかったのは、10年固定金利で借りて10年後に奥様側の親からの贈与で完済するプランを立てられていたケースです。

以上、参考になれば幸いです。

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