住宅ローンを量と質で決めるセオリー=千日メソッド

住宅ローンをどうやって決めるかという教科書はありません。なぜかというと住宅ローンの決め方についての巷の情報は、基本的に売り手によってつくられたものだからです。

それらは決め方・選び方ではなく、『ウチの住宅ローンを利用してください』という遠まわしなメッセージです。

世の中にはそんなメッセージがあふれているので、私たちはいつの間にかそれが『住宅ローンの決め方』だと錯覚してしまっているんです。恐らくですけど、銀行の融資担当者もそうだと錯覚しています。

でも、その決め方で住宅ローンを選ぶと、彼らの利益を最大化するような住宅ローンしか組めません。

住宅ローンの全体像を知る

ほとんどの人は、いきなり各銀行の住宅ローンから調べていきます。しかし、定石としては以下のプロセスを踏むことが重要なんですね。

  • まず、住宅ローンにどれだけの選択肢があるのか?全体を俯瞰する。
  • そして、それぞれの特徴とメリットデメリットを知る。
  • その上で、自分に合った住宅ローンを選ぶ。

ではまず、住宅ローンを取り扱う金融機関の全体像を俯瞰しておきましょう。

民間融資の全体像

民間融資の資金は外部から調達して貸しています。資金を調達するには、コストがかかります。分かりやすく言えば銀行だってお金を借りて利息を払っているんです。

例えば、我々にとって預金は資産ですよね、しかし銀行にとって預金は負債です。我々預金者に利息を払っています。普通預金の利息はすごく安いですよね。0.001%とかです。住宅ローンの金利よりも二つほどケタが違います。ですから銀行は預金の獲得に血眼になるんです。

  • 銀行が借りる時の金利が安ければ、貸すときも安く貸せます。
  • 銀行が借りる時の金利が高ければ、その分高い金利で貸さないと儲けがありません。

ですから、普通預金の安い金利でおカネを貸してくれる我々は銀行にとって『お客様』なんです。そして銀行が借りる金利よりも高い金利で住宅ローンを借りてくれる我々も銀行にとって『お客様』なのです。非営利組織であっても収支がマイナスになってしまっては事業を継続していくことが出来ませんので、この考え方は同じなんです。

民間融資
都市銀行 メガバンクとも呼ばれるメジャーな銀行で、住宅ローンの金利も低い反面審査が厳しめ
信託銀行 メガバンクが信託業務を行うために設立している。メガバンクと同じく金利は低めで審査も厳しめ
地方銀行、第二地方銀行 地方密着型の銀行。住宅ローンの金利は総じて高めであるが、比較的審査に通りやすい
ネット銀行 メガバンクや一般事業会社が設立した店舗を持たない銀行。店舗コストが掛からないので金利は低いが、審査は厳しめ。保証料ゼロ円という銀行が多いが、その代わり融資手数料が高く設定されているので、結局最初のコストは都銀などと大差ないというカラクリになっている。
モーゲージバンク 住宅ローン専門の金融機関。自社の資金からの貸出ではなく、フラット35を中心とした他の金融機関の住宅ローンを取り扱い、その事務代行手数料によって成り立っている。
信用金庫 会員等の出資により設立された非営利法人。営利を目的としていないが、金利は高め。会員の利益を目的とするため審査は通りやすい
信用組合
労働金庫
農業協同組合

民間融資と公的融資の中間に位置するフラット35

フラット35は住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が取り扱う長期固定金利の住宅ローンです。この仕組みには『買取型』と『保証型』があるのですが、現在のフラット35はほとんどが買取型です。

住宅金融支援機構は銀行やモーゲージバンクからフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という金融商品として販売しています。

機構債の表面利率は毎月の中旬から下旬ごろにホームページで公開されていますので、機構と銀行の手数料率を推定すれば翌月のフラット35の金利を予測することが出来るのですよ。具体的なやり方については、 金利ラボ で詳しく説明しています。

フラット35の審査基準は住宅金融支援機構のルールで行われるため、民間融資とは一線を画す通りやすさがあります。

中間
住宅金融支援機構(フラット35) 旧住宅金融公庫が民営化されたもの。従来取り扱っていた全期間固定型住宅ローンを「フラット35」として引き続き取り扱うこととなった。
フラット35は民間金融機関やモーゲージバンクが融資した住宅ローン債権を買い取る又は保証するものであるが、買取型が主流である。
なので、契約の窓口は民間金融機関やモーゲージバンクであっても、実質的には住宅金融支援機構が債権者になっている。
審査においては、団体信用生命保険の加入が任意、勤続年数を問わないなどかなり通りやすいのが特徴。

知らずにいると損する公的融資

公的融資は国や自治体またはその関係機関が住宅ローンを融資するものです。公的融資について、住宅ローンの財源の元をたどるとそれは税金ということになります。民間融資との大きな違いは、日本国政府が、税金を使って国民のために住宅ローンを融資しているという点ですね。

自治体が直接融資するだけでなく、申請することで利子を負担してもらえるようなケースもありますので、知らない人はそれだけで損をしています。

公的融資
財形住宅融資 勤務先で財形貯蓄を1年以上行っていて、残高が50万円以上ある人が利用できる融資。借入時の金利は1%前後(5年固定)で、財形貯蓄額の10倍まで借り入れできる(最高4000万円)。
民間融資や住宅金融支援機構のフラット35と併せて利用することも可能
自治体融資 都道府県や市町村が独自の融資制度を行っている場合もある。直接自治体が融資を行うタイプのほかに、フラット35など所定の金融機関での借り入れ利子を一定期間補給するタイプなど様々ある。

 

量~月々の支払と住宅ローン控除の限度

このサイトでは住宅ローンの売り手ではない千日が、住宅ローンを無理なく確実に完済し、なおかつ老後の資金を貯金できる合理的な決め方を量と質の2つの側面から解説します。

  • 量とは元利均等返済額です。
  • 質とは金利変動等のリスクです。

住宅ローンを選ぶとき、どうしても金利に目が行きますよね。しかし、金利ばかり見ていると思わぬ失敗をしますよ。金利は割合です。金利が高くても元本が小さければ大した負担にはなりません。逆に金利が安くても元本が大きければ大きな負担になります。

金利で判断せず必ず元利均等返済額に引き直す

金利で判断するのではなく、必ず月々の元利均等返済額に引き直して判断してください。金利が安いという理由で選んだ住宅ローンは、ひょっとしたらリスクが高いかもしれません。

そのリスクと引き換えにして妥当なのか?そういうことは単純に金利を比較して決められることではありませんよ。

返済額は月収の4割未満にし、ボーナス払いにはしない

また、住宅ローンの返済額は月収の4割未満が一つの判断ラインです。これを超えるとちょっとづつ辛くなってきますし、老後やいざという時の貯蓄が難しくなってきます。

また、ゼッタイにボーナス払いにしてはいけません。住宅ローンは一度でも返済が遅れたら債務不履行です。

35年ならば420回一度も遅れず払いきればクリアです。420回やってくる約定日にその金額を払えるか?という判断が必要です。自分が420回ノーミスで出来そうなことを考えてみてください。

  • 自分の住所を420回ノーミスで書く
  • 縄跳び420回ノーミスで跳ぶ

かなりハードルを下げなければ、出来るとは言い切れませんよね。これが、ミスできないミッションにボーナス払いを入れることの危険性なんです。

住宅ローン控除の恩恵を受けられる上限

また、もう一つ量のポイントは住宅ローン控除(10年間にわたり年末のローン残高の1%が所得税と住民税から控除される減税措置)の限度額です。下手したら払う金利よりも大きいので当初の10年間は住宅ローンを借りていることで逆に儲かってしまう人も少なくありません。

まず購入する住宅によって以下の上限があります。

  • 一般の住宅で40万円
  • 認定長期優良又は低炭素住宅で50万円

これは有名ですね。しかしもう一つの所得による上限があることは見落とされがちです。

もう一つの上限とは所得税+翌年度の住民税(上限13万6千500円)です。つまり、納める税金以上に控除することが出来ないということです。

税込み年収と住宅ローン控除の上限とそれに相当する年末借入残高は以下のようになります。

税込年収⇒控除上限(年末借入残高)

  • 200万円⇒9万円(900万円)
  • 300万円⇒17.5万円(1,750万円)
  • 400万円⇒22.2万円(2,220万円)
  • 500万円⇒27.5万円(2,750万円)
  • 600万円⇒34.1万円(3,410万円)
  • 700万円⇒40.0又は45.2万円(4,000万円又は4,520万円)
  • 800万円⇒40.0又は50.0万円(4,000万円又は5,000万円)

つまりどういうことかというと、住宅ローンを借りる名義人の年収が300万円なら住宅ローン控除できる上限は17.5万円で頭打ちなので、恩恵を受けられる住宅ローンは1,750万円が上限だということです。

この住宅ローン控除の恩恵を受けられる金額の範囲内で住宅ローンを借りるようにすれば、身の丈を超えた住宅ローンを背負って生活が苦しくなってしまうことが防げます。

例えば年収600万円の上限は3,410万円ですね。

元本3,410万円を金利1%で35年元利均等返済ボーナス払い無しで返済するとすれば月の元利均等返済額は9万6千円ですね。

年収600万円の人の手取りはボーナスを除くと26万円から30万円ですね。住宅ローンの返済は手取り月収の35%位になります。

住宅ローンの返済額は月収の4割未満が無理なく返済できるラインだと書きました。住宅ローン控除の面でもこれは有効だということです。多分ですけど、住宅ローン控除があるからといって無謀な住宅ローンを組もうとするのを抑制しようという考えがあるのかもしれません。

質~住宅ローンのリスク

質とは住宅ローンのリスクの側面です。このリスクには測れるリスクと測れないリスクがあります。一番に目につくのは金利変動リスクだと思います。

この金利変動リスクは測定することが出来ます。何パーセントの確率で上がるか?というじゃありません、それはもともと分かりっこないという前提を置きます。分かるのはこのリスクに幾ら払うのかということです。

お金で回避できるようなリスクは、大したリスクではありません。

もう一つは人生のリスクです。人生のリスクは何パーセントか分かりませんし、幾ら払っても回避できません。

金利変動リスクは全期間固定金利との元利均等返済額で測る

変動金利には金利変動リスクがありますよね。

当初固定金利も当初の期間が終わればその時の金利水準で変動か固定かを決めますので、リスクという面では変動金利に分類されます。

変動金利や当初固定金利がフラット35などの全期間固定金利よりも安いのは、その分金利の変動リスクに利用者が対応しなければならないからです。つまり、全期間固定金利というのは金利変動リスクを銀行に負ってもらう代わりに高い金利を払うというのが利用者側の経済的な判断です。

銀行には大きな資本がありますから、金利の変動リスクへの対応力は個人よりも大きいですので、銀行がリスクに対応する方が個人よりも容易いです。

ここで交換条件が成り立つんですね。

  • 変動金利:金利変動リスクを負う住宅ローンの値段
  • 固定金利:金利変動リスクを負わない住宅ローンの値段

ですから、利用者としては変動金利と固定金利との元利均等返済額の差額を計算して金利変動リスクという質に幾ら払うのか?という検討をするんです。

この場合も量がポイントですよね、金利を比較するんじゃありません。元利均等返済額という量で比較するんです。

つまり、金利変動リスクについては、その値段を測定できるということです。

将来の金利動向は予測するものではない

このサイトを始めてから、今後の金融市場の動向や金利動向についての見解を聞かれることが増えました。

基本的に将来の金融市場の動向についてのご質問にはお答えしません。なぜなら、誰も予測できないからです。

金融市場の動向を予測して備える。

聞こえは良いですけど、前提がオカシイのです。まず、予測できないので最初につまづきます。にわか経済学者の当てずっぽうの『予測』で備える内容なんて、そもそも備えにならないのですよ。

ですから、金融動向がどのようになってもある程度対応できるように『備える』んです。

予測してよいのは、自分にコントロールできることだけです。

例えば、以下のことは予測していいですし、予測すべきでしょう。どっちかというと予定や計画という概念に近いです。

  • 一括返済用の積立貯蓄額を予測(計画)すること。
  • 仕事での自分の付加価値を高めて収入を増やしていくこと。

もちろん100%自分の思い通りには行かないかもしれませんが、自分の事なんですからある程度はコントロールできるのです。金利の動向を読む場合よりも遥かに現実的かつ、的確な予測になるでしょう。

人生のリスクはお金でどうにもならない

これに対して、カネを払って回避できないのが人生のリスクです。

リストラで収入がなくなる。

病気にかかってしまう。

離婚して家族を解散してしまう。

地震や火災で家を失う。

これについては事前に回避することは出来ません。どうにもならない事については、いくら考えても答えは出ません。

しかし、そうなったときに備えられることについては、ある程度備えておくべきだと思いますよ。

定年時の残高は幾らになるか?1千万円を超えるなら要注意

不動産屋や銀行で住宅ローンのシミュレーションをしてもらうと、たいてい最長の35年で計算されますよね。なぜかというと、毎月の返済額の負担を減らしハードルを下げるためです。毎月の返済額が少ないと、年収に対する住宅ローンの負担が小さくなりますから、金融機関の審査にも通りやすくなります。

しかしながら。

多くの人は住宅ローンのシミュレーションの年数より先に定年退職を迎えるはずですよね。ですから、実際には繰上げ返済することを前提にしたシミュレーションなんです。

ですから、定年の60歳の時の残高が幾らになるか?というのは重要です。その金額を60歳になるまでに繰上げ返済しないと、収入のある現役のうちに住宅ローンが終わらないからです。

退職金で払えばいいよ。親もそうして住宅ローンを完済したし…

もしもこのように考えているのであれば、今すぐ考えを改めてください。

親世代は良いんですよ。少子高齢化社会ですが、まだ働き手の方が多いですからね。団塊の世代の子供である団塊ジュニアが現役で働いて、税金や保険料を払っています。退職金を使い果たしても、年金で普通の生活ができているんです。

しかし、彼らがリタイアして年金を受け取る立場になったら?現在、よほどの高給取りで多額の年金を払っていない限りは、今の親世代が受け取っているレベルの年金はもらえません。

自分の親と同じ位の収入レベルだという場合は「親がそうしたから」という理由で、親が今の老後を維持するためにやったことと同じことをやっていると、我々の時は老後破産してしまうのです。

現役時代に稼ぐ給料を貯蓄して完済し、退職金には手を付けず、住宅ローンとは別に貯める老後資金にオンするような返済計画を立てましょう。ですから、60歳のときの残高で1千万円を超えるというのは、結構危ないんです。老後の資金とは別に、一般的なサラリーマンの給料で1千万円を貯めるというのは結構な年数が必要です。

定年退職の直前期というのは、子どもの年齢的に大学進学などで出費がかさみ易い時期です。また自分の年齢的にも健康上の問題などが表面化しやすい時期でもあります。定年の数年前に何らかのアクシデントが発生して貯金が底を尽いた場合、そこからさらにどれだけの金額を貯蓄できるか?

不動産屋の営業マンや銀行の融資担当者が出してくる35年の住宅ローンシミュレーションをただ、受け身で眺めていてはダメなんですよね。自分が老後を生きるための繰上げ返済の計画をしっかり立てる必要があるんです。

それは受け身のシミュレーションでは提供してもらえません。

4つのセオリー

このページでは以下の4つのセオリーに分類しています。これを一通り読めば、ファイナンシャル・プランナー並に住宅ローンのポイントが身に付きます。

法律や金利は常に最新のものにアップデートされています。

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