頭金ゼロで家を買ったその後の貯金と家計も考えよう

2018年10月28日

フルローンで家を買ったら遅ればせながら貯金を始めよう

頭金ゼロでも住宅ローンは借りられます。しかし、その後の貯金の計画を考えておかないと、いざという時に住宅ローンが命取りとなりますよ。

住宅ローンって何?と訊かれたら千日はこう答えます。

合計420回銀行に決まったお金を払うことだよ。

これが正確な定義でないことは、百も承知です。が、本質です。

420回というのは35年ローンの場合の月の元利均等払いの回数です。なんだかんだ言って420回払えば終わるのが住宅ローンです。

元本が幾ら多くても、一回一回の金額はたかだか家賃相当の金額です。その一回に遅れたら債務不履行であり、債権者=銀行から払える見込みがないと判断されたら抵当権が実行され、家を取り上げられます。

その一回一回の金額が払えるか?ということを実質的に判断して住宅ローンを決めるのですね。

ですから、貯蓄はその一回から自分を護る城壁のようなものです。運悪く収入が途絶えても、貯蓄があるうちは元利均等返済の攻撃が直撃することはありません。

ですから、貯金無くフルローンで家を買うのは正直お勧めしません。

今日は、それでもこの家が欲しい、もしくは、もう買っちゃったという人に読んで欲しい記事です。

今回は2本立てです。

  1. 前回ブログの続き、ペアローンで10年固定をお勧めした方
  2. 親から譲渡された土地にフルローン貯金なしで家を建てる方

まずは、こちらの相談者の続きからです。

頭金ゼロで6千万円の新築マンションをペアローンで買う

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相談1:住宅ローンを頭金ゼロ10年固定で借りたら10年間で幾らの貯金が必要か?

千日さま

お返事ありがとうございます。

まず、10年固定というのは、これまでの検討の中では、10年間で繰り上げ返済をガンガンできる見込みのある人や10年後にまとまった収入が期待できる人が選択するものであるという前提でおりました。

従って現在の有力候補からは外れていたのですが、よくよく考えてみると最初の10年間が産休等により最も返済が苦しい時期と思われ、現在の我々夫婦の状況に1番ミートする方式なのかも、と思いました。

追加質問させてください。

ペアローンの妻の方にボーナス払いを入れてはいけない理由は?

どちらの持ち分を多くしようとも、あるいはどちらにボーナス払いを入れようとも、夫婦2人の合算収入で返済をしていきます。ですので、妻側に寄せた構図になっていたとしても大きな問題はないのかと思っていました。

ですが千日さまのメールを読むと、やはり妻側に寄せるのは危険だということですね。それは、離婚等により、「夫婦2人の合算収入で返済」という前提が崩れることがなきにしもあらずだからということでしょうか?

あるいは他に、私が見落としている危険性がはらんでいるのでしょうか?

10年後の借換を前提にした場合幾ら貯蓄が必要か?

10年固定にするということは、11年目からは変動金利に等しく、また一気に優遇幅が狭くなってしまうということを考えると、借り換えを前提とすべきということですね。

11年目からの返済をどのようなケースであっても(借り換えるとしても、そのまま変動に移行するとしても)問題なくしていけるようにするために、10年間でなるべく備えを蓄えておきたいですが、その際には月々どのくらいを貯蓄していれば十分に備えられると考えられますか?

回答:ボーナス払いの危険性と必要な貯蓄のセオリー

ではお答えしますね。

妊娠と離婚が同時に来ることもあります

まず基本的にボーナス払いが危ないという事です。月の支払いにボーナス払いが重なると1人分の月収入を超えます。

貯蓄を前提として、その貯蓄が使えないとか、アクシデントでゼロになるタイミングでボーナス月が来るとたちまち詰みます。

百歩譲ってボーナス払いを混ぜる場合でも、どちらかの収入だけで払って、かつ最低限の生活が可能となるようにしておかないと危険過ぎますよ。

その様に考えると、奥様側だから、というのはあまり関係ないかもしれません。ただ夫婦が一枚岩で無くなった場合、まず困るのはこのケースでは奥様です。

千日による追記:妊娠と離婚が同時に来ることもあります。類似の例は私の周囲でも起こっており、それは出産1年後の離婚です。離婚となれば家は処分する方向になるでしょうが、売れるまでの間。賞与の無い状況でボーナス払いが直撃するのはこの場合、妻の方です。

必要な貯蓄についてのセオリー

貯蓄については、当初10年は「最大限に」行いましょう。

最低ラインは物件価格の2割です。普通は1割から2割は用意してから購入します。

それを10年遅れて始めるという考え方です。

10年遅れるのですから、3割という見方も出来ますよね。ですから最低ラインとして、2割です。ボーナスに手を付けなければおそらく可能です。

 

相談2:貯金ゼロのフルローンでの借入は変動か固定か?

はじめまして。

新築を予定しており、住宅ローンについていろいろ調べていくうちにたどりつきました。

今週末あたりに住宅ローンを決める必要があり悩んでおりアドバイスを頂けると幸いです。

年齢、年収、共働き世帯年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 33
夫の年収(万円) 400
妻年齢 不明
妻の年収(万円) 100
共働き世帯年収(万円) 500
家の価格(万円) 2,500
住宅ローン(万円) 2,500
頭金(万円) 0

定年は65歳、子ども8歳と6歳の2人です。

<物件>

新築の注文住宅(5月頃完成予定)

  • 借入2,500万を予定
  • 頭金なし
  • 貯金ほぼなし

土地については、両親より譲り受ける予定で諸経費等を含め約100万になります。建物、諸経費を含め約2100万です。

<住宅ローン>

検討しているのは以下の銀行です。

  • ARUHIのフラット35S(タイプA)当初10年0.82%その後1.12%

※9割をフラット35S、残り1割をARUHIフラットα(変動金利2.550%)で借りる想定です。

  • 地方銀行(変動金利0.675%)

どちらも工務店の提携ローンです。

その他の銀行等につきましても検討しておりましたがつなぎ融資がなかったりし、期日も迫っているので上記二つより選ぶ可能性が高い状態です。(検討するのが遅かったです・・・。)

変動か固定か?

どちらの銀行がよいかで悩んでおります。

妻は少しでも安い地方銀行の変動がいいのでは?

と言っていますが、私はフラット35Sのほうがいいかと思っております。

※元利均等返済額の4分の1を貯蓄する想定だと変動金利よりフラット35Sのほうが若干安くなります。

ですがトランプ氏による経済政策によって実行される5月は今より金利が上がるかも等、考えていると決めきれません・・・。

家計的には現在でも厳しい状態です・・・。

いろいろ考えすぎて訳が分からなくなっているのでアドバイスをいただけると幸いです。

宜しくお願い致します。

回答:金利変動リスクを安価に回避可能なフラット35のメリットと貯蓄の必要性

ではお答えしていきます。ARUHIのフラット35αという商品で残高の10%借りると、借入9割でフラット35が借りれるんですね。

  • まずはフラット35と地銀の変動金利ではどっちを選ぶべきか?にお答えします。
  • また、今の状態というのは貯金がほぼゼロということで、大変に危険な状態です。住宅ローンの返済だけでなく、これから貯蓄を進めていく方が良いでしょう。

その貯蓄の必要性も考えてシミュレーションしました。

頭金ゼロの住宅ローン返済ポリシー

世帯年収では500万ですが、あえて旦那様の収入400万(ボーナス除く月収はおよそ20万円)のみで考えます。奥様の収入は、あくまでプラスαの貯金用と考えました。

変動金利とフラット35sのAタイプ(ただし1割はフラット35α)の当初10年を比較します。

どちらも最長の35年元利均等返済ボーナス払いなしです。

当初10年間を量の側面から比較する

(単位 千円)

当初10年まで 借入 月返済 利息総額 住宅ローン控除 差引費用
変動

0.675%

2,500万 67 1,471  2,095 △ 625
フラット35A

0.82%

2,250万 62 1,613  1,962 △ 184
フラット35α

2.55%(5年)

250万 44 165

変動金利については、金利変動リスクに対して自分で対応するため、返済額の25%を貯蓄して、税抜き月収の4割に抑えるという方法を推奨しています。

こちらの金利タイプ選びのセオリーはお読みいただいていますよね。

金利タイプ選びのセオリー

月6万7千円の25%を貯蓄するとなると、月8万4千円が住宅費用として拘束されるということですね。これは税抜き月収の42%です。ちょっと超えるくらいですが、月収20万なら35%位に抑えたいところですので、これは少々しんどい支払いになります。

フラット35sのAタイプについては月6万2千円ですね。固定ですから金利変動リスクなしです。月収20万円の31%は無理なく払えて、お子さんや老後の貯蓄を行う余裕もある金額です。

フラット35αは金利が高いので5年で返済する方針としましたので、月4万4千円です。もちろんこれを旦那様の収入だけで払うと無理です。そこでこの分だけはプラスαの奥様の収入で払うこととします。

5年という期限付きであれば、また250万という上限つきであれば無理の無い金額です。

当初10年は住宅ローン控除がありますね。これも支払利息と控除で比較しました。

差引費用はどちらもマイナスになりますね。逆にお金がもらえるような状態になっています。なお、年収400万円の場合の住宅ローン控除の上限となる借入残高は約2,220万円としています。ですから当初の何年かはこの上限以上には控除を受けられません。

詳しくはこちらをどうぞ。

税金のセオリー

変動金利の方がオトクに見えますが、これは金利が変わらないことを前提にしていますので、実際はどうなるか分かりません。

11年目以降を量の側面から比較する

11年目以降は、こんな感じですね。

(単位 千円)

11年目以降 開始残高 月返済 利息総額
変動

0.675%

1,844万 67 1,606
フラット35A

1.12%

1,671万 64 1,613
フラット35α

2.55%

変動金利は当初の10年と変わらずです。住宅ローン控除は無くなります。

フラット35sのAタイプは金利が0.3%上昇します。しかし、借入残高が減っているので元利均等返済額は変動金利よりも安くなりますね。

フラット35αは5年で完済してますから、とっくにありません。

変動金利とフラット35で支払い利息の額はほぼ同じです。

金利変動リスクを回避する費用は

当初の10年と11年目以降を合算した表です。

(単位 千円)

合計 借入 月返済 利息総額 住宅ローン控除 差引費用
変動

0.675%

2,500万 67 3,076  2,095 981
フラット35A

0.82と1.12%

2,500万 106

64

3,392  1,962 1,429
費用差額 △ 448

一番右下に注目してください。費用の差額は44万8千円です。これは、固定金利にすることで35年間の金利変動を無くすためのコストです。

月に換算すると1,066円という費用になります。

これをどう見るか?ということでご判断いただければと思います。私的にはフラット35です。

当初の5年間で貯蓄すべき目標金額

始めにお話ししましたが、やはり今貯蓄がゼロというのは危ないですね。何かの時のためにまずは貯蓄をしていく必要があります。

当初の5年間がポイントです。

一番支払がキツイ時期ですが、まだお子さんも小さいですし、お金のかからない時期です。この時期にどれだけ貯蓄できるかで今後の辛さは全然違ってきますね。

  • 当初5年間はボーナスは全額貯蓄にまわす。
  • 当初5年間は奥様の収入のうち、フラット35αの支払にあてた金額以外は貯蓄する。

この方針で頑張ってみてはどうでしょうか。

フラット35αは奥様の収入から払いますので、旦那様の収入で払うのはフラット35だけです。この範囲で生活費を抑えるべく家計の見直しをしてみてください。

以上、参考になりましたら幸いです。

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