自己資金0で10年固定を借りるときの心構え

2017年10月26日

フルローンで10年固定を借りるリスクを正しく把握しましょう

最近、提携ローンの事務手数料と並んで相談が増えているのが、フルローンでの10年固定でも大丈夫ですか?というご相談です。

自己資金がたっぷりあって、10年後に一括返済しても良し、売って住み替えても良し、という考え方で10年固定を借りるのが王道です。

もう一つ、自己資金ゼロで10年固定を借り、10年後の年収増によってその時に有利な借り換えを行う、という考え方で10年固定を借りるのもアリです。

違うのは、前者はリスク回避型であり、後者はリスク選好型ということです。

ただ、好んでリスクを取る人もいれば、好まずとも自己資金がゼロであるためにリスクを取る人もいるのです。

今日は、

後者の場合にどんなリスクがあるのか?

それはどの程度のリスクになるのか?

ということについて、あるご相談者の例でお答えしたいと思います。

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ご相談:自己資金ゼロで10年固定を借りるのってリスクが高すぎますか?

千日さま

お返事が遅くなり申し訳ありません。平日はずっと仕事でバタバタしておりました。

ボーナス払いは本当に、ゼッタイに、ダメですか?

ボーナス払いと貯蓄の関係については、以下のような認識ですが、間違いないでしょうか?

①ボーナス払いありの場合

月々の支払いに余裕を持たせて貯蓄をし、ボーナス月に備える

②ボーナス払いなしの場合

月々の支払いはカツカツになり貯蓄がほとんどできなくなるが、ボーナスを貯蓄に回す

という理論だと思っているのですが、一回でも期日までに支払いができなくなれば家を取り上げられるのがローンというものなので、やはり①の方がそのリスクが高いということですよね?

10年固定でも支払が結構カツカツです

10年固定にしたとして、UFJのキャンペーン金利0.65%かつボーナス払いなしでシミュレーションしたのですが、月々の支払いが管理費込みで19万を超えました。

10年固定にして10年間は貯蓄を増やすことにフォーカスしたいと思っていた矢先だったのですが、想定以上の額だったので衝撃を受けてしまいました。

月々がこの金額だと、10年間で貯蓄できたとしても、物件価格の2割は厳しいかもしれません。

ちなみにこの金額は、2人とも35年固定にしてボーナス払いを15万ほど付けた場合とほぼ同じ水準でした。

→ということは、2人とも35年固定にするというのは、ますますあり得ないということになりますよね?

千日による追記:このご質問に対して回答が漏れておりました。お見込みのとおり、ますますあり得ないということになると思います。

10年後の借換時に金利が上がっていることもありますよね?

10年の固定期間終了後の借り換えを前提としていますが、借り換え時にそれまでの10年間より金利水準が悪くなっていることも考えられますよね?

ただし、ネットバンクや信託銀行など選択肢がごまんとある中で、どれを選んでも悪くなる、というような最悪のケースはほとんどないと考えて良いものでしょうか?

なんとなく、将来の借り換えを前提に考える、というのもリスクなような気がしていて、ただしそこのリスクくらいであれば取れるよね、という話なのかどうかを知りたいです。

一方で…

今回は提携ローンの、しかもメガバンクしか検討対象に入れていなかったわけなのですが、もっと視野を広げれば(ネットで調べるだけでも)より低金利で融資してくれるところもありそうなので、10年固定にせずとも、今後どこかのタイミングで借り換えを検討する必要が出るのでは?とも思っています。

保証料について

今回はデベロッパーの提携ローンでして、保証料は前払いで決定しています。借り換え時に一括返済したとしたら、この前払いした保証料が返ってくるのか確認します。

いろいろとブレブレな質問をしてしまい、申し訳ありません。

どうぞよろしくお願い致します。

回答:リスクは10年後のローン残高とその時の年収です

いえいえ、大丈夫ですよ(^^)ではお答えして行きますね。

自己資金ゼロで10年固定を借りるということの意味

住宅ローンの10年固定とは、当初の固定期間の後にその時点の金利を反映した変動金利か固定金利かを利用者が決める金利のタイプです。

これは、10年後にならないと契約の全体が確定しないということです。

言い換えるとこういうことです。

先にお金を借りて返済条件は10年後に確定する。

考え方を整理しますと、借入時点で大半の条件が決まっていないという、極めて特殊な金銭消費貸借契約です。

まずリスクを定義します。リスクという時、二通りの使われ方があるのをご存知ですか?

  • 危険性
  • 不確実性

危険性は、ある行動に伴って損をする可能性を言います。

不確実性は、資産運用でのリターンの変動性、その振れ幅を言います。大きなリターンを得ようとすればリスクは大きくなります。

リスクを危険性と言う意味で使う時は「リスクを負う(負わない)」という言い方をします。文字通り回避するべきモノなんです。

リスクを不確実性という意味で使う時は「リスクを取る(取らない)」という言い方をします。プラスになることもマイナスになることもある、その振れ幅を言うんです。

10年固定のリスクと費用の関係をグラフにすると以下のようになります。

 

  • 当初10年は安い金利でリスクを負いません(リスクを負わない期間を青い線で表現)。
  • 10年経過後は高い金利でリスクを負います(リスクを負う期間を赤い線で表現)。
  • 当初10年は住宅ローン控除(緑の線)があるので逆に利息分お金が入ってくる。

つまり、借入当初は「住宅ローンについてほぼ半分以上が決まっていない」というスタートなんですよ。10年後の決定を有利にする為の準備をするのが、当初固定の10年です。

この期間に貯金に失敗したら、10年後に売却してローン残高を大幅に減らすのが、最も傷の少ない損切り手段かなと思います。

立地や広さ、設備を勘案すると、そのレベルのマンションの部屋を賃貸で借りたら、その位はするんじゃないでしょうか?

ボーナス払いのリスク

ボーナス払いについては、まだ見込みが甘い部分がありますよ。

ボーナス払いの前提が成立するには、以下の3つの仮定が必要です。

  • 月給が必ず出るという仮定。
  • 必ず貯蓄ができるという仮定。
  • 10年に渡りボーナスが出る仮定。

ボーナス払いにしない場合は以下の1つの仮定ですみます。

  • 月給が必ず出るという仮定。

これがあれば、貯蓄が出来なくても返済は出来ますし、ボーナスが出なくても返済が出来ます。

一度遅れた位で家を取り上げられる事はありませんが、延滞によって信用情報が汚れます。これは10年後の借換時に確実に不利な材料になります。

10年固定で月に幾ら貯蓄すべき(出来る)か

19万円は現時点の世帯収入の4割未満です。なので、理論的には貯蓄しながら、ローンを返せるはずです。

家計の見直しが必要ですね。残りの手取りは約30万円です。世には手取り30万で住宅ローンを払いながら貯蓄する人も居ます。

共働きですし、ご友人との交際費や冠婚葬祭などもかさむ年代ですが、何かを諦めなければ得られない。今回のはそういう条件の家です。

家計を見直しましょう。具体的な方法については、スミマセン。専門外ですm(__)m

10年後のリスクはローン残高と年収に分解できる

通常の借換は、金利が下がった時にするものですが、①で述べましたように、10年固定の場合は保留期間の終わりを意味します。

リスクがあることが前提なんですよね。

誤解を恐れずに言えば「10年後に住宅ローンを借りる事を今から決める」ようなものです。そのかわりに安い金利で10年も固定されるのです。

そこから、どのくらいのリスクなら取ってよいのか?という問いの答えが導かれます。つまり、10年後のローン残高と年収のバランスです。

  • 10年後のローン残高は、10年後に借りる住宅ローンの金額です。
  • その金額がどの程度プレッシャーになるかは、10年後の年収によるのです。

この考え方で、再考してみてください。

10年固定の最安は私の知る限りでは、三井住友信託銀行の0.5%ですね。続いて十六銀行の0.6%です。三菱東京UFJ銀行の0.65%は3番目ですのでベスト3位には入ってます。しかし三井住友信託銀行と比べたら、見劣りすることは否めませんね。

今の金利を見てすぐに借り換えるのであれば、はじめからそこで借りておく方がいいですよ。それが間に合わないのであれば、諦めて前を向いた方がよいです。借換もお金がかかります。計算したわけではありませんが、その分貯蓄に回した方が得策だと思います。

保証料について

ありがとうございます。10年後にどの程度(概ね何パーセント)返ってくるのかというところを確認しておいてくださいね。概ね半分位返ってくるのであれば、あまり損はしないと思います。

まとめ~10年固定の特殊なリスク

いかがでしたでしょうか。10年固定のリスクの考え方です。理解すれば理解するほど、この住宅ローンの商品って特殊だということが分かってきますよね。

この10年固定については、その金利の決まり方も変わってるんですよ。この金利の決まり方については、こちらに詳しく書いてますので、検討されている方は合わせて読んでください。

金利ラボ

以上、参考になりましたら幸いです。