10年固定と変動のミックスローンへの借換はアリですか?

2019年4月5日

ミックスローンを安易に選ぶと損をします

今日は、大手の都銀や信託銀行で力を入れているミックスローンについての質問です。ワンライティングミックスローンという、借入手数料が1本の契約で出来る商品もあり、選び易くなっていますね。

しかし、安易にミックスを選ぶのは禁物です。早速本題にいきましょう。

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相談:10年固定から10年固定と変動のミックスローンを検討しています

はじめまして。年齢は30代です。

2017年1月中に借り換え予定(1/22契約予定)の金利の選択についてご相談したくメールします。

現在の住宅ローン

  • 三井住友信託の住信SBINetbank住宅ローン
  • 期間25年
  • 10年固定
  • 1500万
  • 固定期間適用金利1.4%
  • 2012年7月に契約

借換予定の住宅ローン

  • 住信SBINetbankのミスター住宅ローンReal(Aruhi)
  • 計1270万(借り換え諸経費込み)を以下2つ(ミックスローン)に分けて契約予定。
  • 内640万を期間20年10年固定、固定期間適用金利0.54%
  • 内630万を期間20年変動、適用金利0.447%

迷っているのはそもそも金利は変動か期間固定どちらが有利か、このミックスで良いか、というところです。

千日さんのブログを拝見しながらいろいろ考えますが、なかなか踏ん切りがつかず、一度ご相談しようと思いメールしました。ざっくりした内容ですが、宜しくお願いします。

回答:ミックスローンは住宅ローンのセオリーとしてお勧めしません

ではお答えしていきます。

ミックスローンって単純に言うと1つの住宅を担保にして2つの金銭消費貸借契約を結ぶことです。

  • 住宅は一つ
  • 借入は2本

こういうことですね。でもこれは家を処分して返済することを前提とした考え方で、実態に即していないです。住宅ローンの利用者の視点から、より戦略的にミックスローンを捉えるとこうなります。

  • 収入は一本
  • 金利変動リスクは2種類

いかがですか?『危ないじゃん』と思いませんか?その通りなんです。

自分の収入についてのリスクは上がる、下がるというものですね。全く違う収入タイプで兼業してない限りは、自分一人の浮き沈みで収入が上下するというリスクを抱えています。

これに対して金利タイプの異なる住宅ローンは、というと…同じ金融市場の動きに対して2通りの動きをするということです。

一方で、銀行からミックスローンを勧めてくるケースがあると思います。銀行にとっては立場が逆だからです。

以下は住宅金融支援機構が民間の金融機関に対して行ったアンケート調査の結果です。

民間住宅ローンの貸出動向調査-住宅金融支援機構ホームページより棒グラフに加工。

『今後、重視する商品(金利タイプ)』というアンケートに対し、都銀・信託銀行ついては固定・変動の金利ミックス型と回答している金融機関の数が明らかに多いのです。

ミックスを選んでくれたら当行は儲かります。(笑顔)

つまり、ミックスローンを選ぶ人は、良いお客さんなんですよ。

ですから、一般のサラリーマンの方について、ただミックスするということは原則としてお勧めはしていません。

住宅ローンにおいて、将来の金融市場の動向は『予測する』ものではなく『備える』ものです。予測してもいいのは、自分のコントロールが及ぶ要素だけです。金融市場をコントロールできるなんて誰も思ってないでしょう。

例えば以下のようなことは予測しても良いと思います。

  • 一括返済のために積立貯金していくこと。
  • 今後のキャリアアップによって収入が増加していくこと。

もちろん、100%思い通りにはいかないかもしれませんが、自分のことですから、まだコントロール出来る範囲に入ってきます。

是非、こちらもご一読ください。

住宅ローンのセオリー

金利タイプ選びのセオリー

10年固定の変動金利のミックスの量的側面と質的側面

では、いよいよ実際のケースですね。

お示し頂いた条件では、借換の費用がすごく安い感じになるんです。もしよろしければ、借換費用を参考として教えて頂ければ他の方にとても参考になると思いますのでよろしくお願いします。

千日による追記:まずは量の側面から10年固定と変動金利を比較します。金利の比較ではなく、支払額で比較するのがポイントです。

現状から10年固定に借換えた場合の向こう10年

(単位:円)

金利タイプ 月返済 10年利息 10年支払 10年後残高
借換前1.4% 59,288 1,385,787 7,114,589 6,943,435
10年固定0.54% 55,837 521,868 6,700,498 6,521,370
差額 3,451 863,919 414,091 422,065

住宅ローン控除の違いは『誤差レベル』でしたので、無視しました。

  • 月返済額では3,451円安くなる。
  • 10年間で利息の節約額は863千円。
  • 10年間の元利均等返済額の節約額は414千円。
  • 10年後のローン残高は422千円少なくなる。

​現状から変動金利に借換えた場合の向こう10年

(単位:円)

金利タイプ 月返済 10年利息 10年支払 10年後残高
借換前1.4% 59,288 1,385,787 7,114,589 6,943,435
変動0.447% 55,327 419,557 6,639,256 6,491,872
差額 3,961 966,230 475,334 451,563

同じく、住宅ローン控除の違いは無視しました。

  • 月返済額では3,961円安くなる。
    10年間で利息の節約額は966千円。
    10年間の元利均等返済額の節約額は475千円。
    10年後のローン残高は451千円少なくなる。

10年固定と変動を比較

(単位:円)

金利タイプ 月返済 10年利息 10年支払 10年後残高
10年固定0.54% 55,837 521,868 6,700,498 6,521,370
変動0.447% 55,327 419,557 6,639,256 6,491,872
差額 510 102,311 61,243 29,497

量的には​月にワンコイン500円程度の違いです。両者の量の側面では大して変わらないですね。

ただし、質の面(金利変動リスクの側面)で以下の違いがあります。

  • 10年固定は10年間は金利が固定され、11年目からいきなり変動になり5年ルールと125%ルールがない。
  • 変動金利は10年間でも金利変動リスクがあるが、5年ルールと125%ルールで5年は返済額が固定される。

量の面であまり変わらないのに、質の面で複数バージョンのリスクを負うのは、得策ではありません。

もし仮に10年固定と変動金利について、それぞれ収入の面や金融資産などによって、それぞれに対応した策がとられているということでしたら話は別です。

千日による追記:つまり質の面(金利変動リスクの側面)から、自分がどんな準備を行うのか?というところを決めれば10年固定にすべきか変動金利にすべきかという答えは自ずと出てくると思います。

まとめと補足

いかがでしたでしょうか。ミックスローンはいわば飲み物のミックスみたいなものだと思ってます。

変動金利と固定のミックスは炭酸飲料とお茶を混ぜるようなものです。普通は不味くて飲めたもんじゃありません。しかし、ティーソーダなんていうジャンルもありますよね。例外もあるんですけど、極めて例外ということです。

変動と10年固定のミックスはというと、炭酸飲料同士のミックスですね。一見大丈夫な感じもします。コーラとリアルゴールドとか、漫画喫茶とかでやったりしますし。

でもコーラとリアルゴールドにしたってある意味考えられた組合せですよね。

ペプシとコーラを混ぜてもイマイチ何のためにやってるか分からないようなこともありますし、微炭酸コーラと強炭酸コーラを混ぜて何やってるか分からないような状態にもなります。

混ぜる場合、やはり何らかの明確な根拠が必要なんですよ。

住宅ローンの場合は、支払いのリスクを二つに分けることに対応する収入のリスクについて、その根拠が求められるということです。

以上、参考になれば幸いです。