融資実行日の交渉と実例について教えてください

2017年10月26日

引渡し日と融資日は同じ日が原則です

住宅ローンは物件に第一順位の抵当権を設定します。つまり債務の返済を物件の処分価値で担保するためです。

その抵当権を設定せずにカネを出すとどうなるか?

後でちゃんと設定しますから信用してください。

なんて言われたとして、です。翌日銀行員が家に行くと会ったことも無い人が住んでいて、『ハァ?誰おまえ?』なんて言われたら、貸したお金は返ってきません。

このとき住んでいた人は法律上、『善意の第三者』という地位にいて、法律はそういう人の権利を守るようになってます。

ですから、融資の実行の日というのは、物件の所有者と必ず対面で抵当権の設定手続きを行い、その上でお金を振り込むというのが実務なんですよね。

物件の所有者であることを示すために、その前もって住民票を移すとか色々な手順はありますけど、

抵当権の設定と融資の実行(お金の振り込み)は同時に行う(抵当権が一瞬先)。

これは大原則なんです。

工務店や売り手との関係でも同じことです。銀行から融資が下りないと物件の代金を払えませんよね。土壇場で融資が下りない、という可能性だって十分考えられんす。

なので、物件の引き渡しと所有権の登記は、融資の実行日でないとダメなんです。

今日は、融資の実行月の交渉をする方からのご相談です。

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相談:良く理解できない理由で2月の実行を拒まれている

はじめまして、フラット35についてご相談です。

工務店にて新築中で2/11に引き渡し予定です。

2/20前後に金消契約をすると聞いています。

3月の金利がどうなるかわからないため2月の金利と3月の金利どちらでも選べるような状態にしたいと考えています。

営業マンからは引き渡し後に建物登記等を行うので、2月の金利で実行は難しいかもと言われています(この辺曖昧ですが)。
私としては引き渡しの日の金利実行されるものだと思っていたので混乱しています。

以上からなぜ引き渡し日の金利が実行とならないのか、2月か3月どちらの金利か選べるようにする方法はありますでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが、ご返信お待ちしております。

回答:説明がよく分からないのは、本当の理由を隠しているからです

ご相談ありがとうございます。

引渡しと実行についての基本的な実務については、ご理解の通りであり、誤解はありません。

なのに、なんだかよく分からない理由で断ってきた。

その答えはとてもシンプルです。

客に面と向かって説明できない理由で2月に引渡しできない。

いかがでしょうか、これならば全てに納得がいくのではないでしょうか?

私もその場にいて彼の説明を聞いていたら『?』となったでしょう。

実務や法律について詳しくないと、『どうせ聞いても理解できるかわからないし…』と引いてしまって、先方の思惑どおりに進んでしまうということです。

基本的な部分に誤解はありませんので、徹底的に『分かる説明』を順を追って丁寧に聞いていけば、相手は折れるか『実は…こういう理由で』と本当のことを話し始めるパターンです。

ですので、明日あたりに『やっぱりこの前言っておられたことがよく理解できなかったんですが…』と切り出して、ジリジリと詰めていけば2月引渡しの具体的な方法が見えてきます。

聞いていてその時『?』となってたことは、相手もよく分かっています。ちゃんと説明できる理由など無いのですから。

なお、今月の引渡しと融資実行を予約しておけば、次月に延期するのは簡単です。

本人と実印が無ければ、所有権の登記も抵当権の登記も出来ません。キーは購入者が握っているのです。こちらも先方が突っ込めないような理由を作って、『融資の実行日』を延期してしまえばいいのです。

抵当権の設定が出来ないのに、カネを払う銀行はありません(原則として)。

引渡し前に融資額をデベロッパーに払う銀行もあった

ただね、原則としてということは例外もあるのです。

こんなのあり得ないと思っていたんですが、過去のご相談でこういうのがありました。

新築マンションで、提携ローンの住宅ローンを組んだ方のケースです。

翌月の金利が上がりそうだったので、引渡しを翌月にしたいと交渉していたのですが、提携ローンの銀行がデベロッパーに先にお金を払ってしまったんです。

もちろん鍵の引渡しも受けてませんし、抵当権の設定もしてません。

信頼ベースなんでしょうか?私も頭が変になりそうでしたが、事実です。その方は数日間ですが、住宅ローンの契約書にハンコを押さないままにマンションのカギを受け取り、数日早く入居してしまいました。

早く住みたい。という気持が勝ったんですよね。気持はすごく分かります(笑い)。多分私も同じ立場なら、そうしたでしょう。

結果として翌月の金利は上がったので、さらに結果オーライでした。

と、こんなこともありますので、あまり構えずに再度正面から交渉すればよいと思いますよ。

まとめ~登記は『対抗要件』です

物件の引き渡しや住宅ローンの実行にあたっては、『登記』という馴染みのない実務が入ってきます。この登記って何なんでしょうね。

法律上は『対抗要件』と言われているものの一つです。何に対抗するのか?

善意の第三者です。

冒頭に挙げた例では『何も知らずにその家を買った人』が善意の第三者です。

もしも登記が無ければ、銀行員がその家に、貸した住宅ローンの抵当権を設定したくても、『オレはそんな話は知らずに昨日この家を買ったんだよ』と言われたら対抗できないんですね。

銀行はお金を貸した相手を探すしかないです。とっくにどこかに姿をくらましているでしょう。

しかし、登記していれば、『ホラもう抵当権を登記しているでしょ?家を買う時は登記を確認するのが常識でしょ?住宅ローンを返さないと家を処分しますよ。』と言えるのです、つまり対抗できるということです。

つまり、そんなことが無い限りは、別に登記しなくても問題ないのです。しかし、世の中には悪い人が多いですから『そんなことがある前提』で動くのです。

以上、参考になれば幸いです。