2017年に住宅ローンを完済したマンションは賃貸か売却か?売り時は?
完済したマンションは貸して家賃収入or売却どっちが有利?
住宅ローンを完済した上で、新しく家を購入する場合のお悩みポイントです。
もとのマンションや家が築浅で立地も良ければ、賃貸に出すこともできますね。サラリーマン大家さんとして副収入を得る方が有利なのでしょうか?それともサッサと売却して現金に換えてしまった方が良いのでしょうか?
これに関しては、一概に『こうすれば間違いない』という答えはありません。
ただし、考え方としての定石というものはあります。
もう一軒の家を購入する前、その家は『自分が住むために所有』する資産です。
しかし、新たに家を購入し、そちらに住まいを移すということになると、どうなるか?
その家は『自分は住まないが所有』する資産になります。
当たり前と言えば当たり前の話ですが、身体は一つですから、どちらかにしか住むことは出来ませんよね。
売るか貸すかの2択
自分が住んでいない家をどうするか?
- 売るか
- 貸すか
この2択しかありません。空き家としてただ持っているというのは最も損な選択になります。
住んでいなくても、所有者の責任として維持修繕費がかかります。マンションならば管理費や修繕積立金は区分所有者の責任で支払う必要があります。
また、所有者には固定資産税が課税されますね。毎年1月1日時点で固定資産を所有している人に課税される税金です。家はもちろん固定資産ですから、住んでいなくても所有していれば、課税されます。
所有に伴う責任と費用を免れるための売却
住んでもいないのに、そんなの払いたくない。
そう考えるのが普通です。これらの責任や費用を免れるには、所有していない状況にする必要があります。つまり、譲渡するんですね。
無償(タダ)であげても、貰ってくれる人がいればこの義務から逃れることは出来ますが、どうせならお金をもらわないと損ですよね。普通はタダで手に入れられるものでは無いのですから。
つまり、売却する(有償譲渡)ということです。
所有に伴う責任と費用を賄う収入を得る為の賃貸
あくまで所有していたい。
その家を手放したくない事情もあるでしょう。家を収益化して所有にかかる責任や費用を賄えるようにすればよいのですね。
賃貸すれば、賃貸収入が入ります。
これによって固定資産税や管理費、修繕積立金を払い、更に儲けを得る事も可能です。
年金の足しになるかも?
そんな甘いものではありません。賃貸する事によって、新たに2つのお荷物を負う事になります。
賃貸収入には納税義務が伴う
まず賃貸収入は不動産所得として課税の対象になります。
毎年の収入(賃料、権利金、更新料、礼金など)から支出(固定資産税、都市計画税、修繕費、管理費、仲介業者への報酬など)を差し引いて申告納税しなくてはならないのです。
『マンション一部屋だけだから』とか『全然儲かってないから』なんて関係ありません。
賃貸していれば、たとえ赤字でも、赤字である事を申告しなければならないのです。
サラリーマンならば年末調整の時に簡単な書類にサインしてハンコを押すだけでしたが、それだけでは済まないのです。
賃貸収入が入ってくる保証など無い
当たり前ですが、放っておいても確実に賃料収入が約束される訳ではありません。
空き室になったら収入はゼロですが、税金や管理費、修繕積立金はきっちり定額取られます。少子高齢化の昨今、将来的に不動産賃貸業のパイが拡大する要素は無いのです(日本人のみを対象とした場合)。
それに、空き部屋にならなくても、賃借人がちゃんと賃料を払ってくれるとは限りませんよ。
物件が古くなってくれば賃料を下げざるを得ないですが、費用面では物件が古くなればなるほど修繕費が増えていきます。
- 賃貸収入には常にリスクが付き物。
- 賃貸収入は右肩下がりに下がる。
- 費用は確実にかかり、尻上がりに増えていく。
不動産賃貸業とはこうしたものです。
もちろん、人が居る限り需要がゼロになる事はありません。
しかしパイが縮小する中で長く収益を獲得し続けるには、賃貸物件として他より魅力的であり続ける必要があります。
それは『貸しておけば左団扇』などという姿勢で実現するものでは無い、という事は容易に想像できると思います。
前置きが長くなりましたが、今日のご相談者です。
相談:今年住宅ローンを完済した築15年のマンションは売却か賃貸か?売り時はいつ?
来月に中古の戸建て住宅を購入予定のものです。
- 購入予定額は諸費用合わせて、4300万
- 住宅ローン3000万
- 貯蓄額2000万
現在、ローンなし所有の築15年のマンションに住んでいます。
年齢は49歳。
子供は私立高校生で、できれば私立理系の大学に進みたいと希望しています。
当初、今住んでいるマンションを売却して購入資金に充てるつもりでした。
千日さんのブログを読んで、意識が変わり、住宅ローンを借りたほうが良いかもしれないと2カ所ほど10年固定のローン審査を通してあります。10年後には退職金もある予定ですので完済もしくは大部分を返済できると考えています。
マンションを売却するか、否かなのですが当初10年ほどは賃貸して、将来居住者がいないタイミングで売却しようか、今売却して現金化しておいたほうが良いか迷っています。
また、住宅ローンを組むことも、これでよいのか今一度確認したいと思い相談させていただきました。
よろしくお願いします。
回答:賃貸の事業リスクをよく考えた上での決定を
ご相談ありがとうございます。
住宅ローンについては、十分な自己資金をお持ちですので、10年固定で借りて一括返済ということでベストな選択だと思います。
- 不動産は売りたいときに売れるとは限らない。
これがポイントですね。相手のあることですから、売りたい時に売れるとは限りませんし、メールで対応出来る内容には限りがございます。
一般論として、思うところと要点を申し上げます。
築25年を超え住宅ローン控除の条件に当たらなくなると売れにくくなる
築15年のマンションは25年まであと10年です。25年というのは住宅ローン控除を受けられる築年数の限度です。さしあたり、今の住宅ローン控除は2021年12月31日までですが、まだ延長される可能性はあります。
つまり、これから10年賃貸に出すと(10年位で賃借人が出て行ってくれるかどうか分かりませんが)住宅ローン控除の条件に当てはまらなくなり、かなり値段を下げなければ売れにくくなってしまうということです。
また、そもそも住宅ローン控除の減税措置が2021年12月31日からさらに延長されなかった場合は、それによって売れにくくなることも考えられます。
つまり、現時点での売り時は、この2段階です。
- 第1段階であと4年(現制度の住宅ローン控除がある間)
- 第2段階であと10年(仮に住宅ローン控除がさらに延長されたとして、物件が築25年以内になっている間)
これを過ぎるとかなり売りにくくなると思われます。
今、ご自身が住宅を買おうと考えているのも、低金利と住宅ローン控除が無関係ではないと思います。
賃貸に出すと売りたいときに売れない
賃貸に出すと、売りたいときに売れにくくなってしまいます。また、すでに15年経過していますので、今後の大規模修繕のコストも右肩あがりに上がっていきます。
賃貸の場合は賃料が入りますが、空き室リスクと維持コストがあります。いわゆる事業リスクですね。こういう商売ごとが好きだという人の場合は良いのではないでしょうか。
しかし、放っておいても一定収入、と考えるとそうではありません。売却してキャッシュにしておいた方が良いということになります。
家は、持っていると税金、維持修繕、空き家リスクがあります。お金はいくら持っていても、そういうわずらわしさはありません。
もちろん中には、今売ってしまうよりも、賃貸にして事業化した方が有利な物件もあります。
そこの判断は、私も専門外ですのでわかりませんが、昨今の少子高齢化社会においては、今後賃貸マンションに入居しようという人自体が減っていきます。
このあたりをよく勘案して決定されることをお勧めします。