10年前の住宅ローンの借り換えで今の残高より少ない額しか借りられない場合はどうする?

2017年10月26日

借り換えでは担保価値が足らずに全額融資できない場合もある

りそな銀行のウェブ限定借換ローンの10年固定は0.55%です。またフラット35の金利も0.02%上がったとはいえ20年までなら1.01%、35年までなら1.21%とまだまだ低い水準です。

10年以上前に住宅ローンを組んだ時の金利は2~3%位が普通でしたから、それこそ今の金利であれば、どの住宅ローンに借り換えても確実にメリットがあるんですよね。

利率がいくら安くなったら借換費用を取り戻せるか?についてはこちらをご一読ください。

借換と金利交渉のセオリー

しかし、意外な落とし穴があるんです。

担保評価額の不足で満額融資を受けられないケースがあるんです。

高い金利で元利均等返済で借りると、最初の方の支払いというのはほとんどが「利息」なんですよ。

例えば3,000万円を35年元利均等返済で返す場合の1回目の元本と利息を比べてみましょうか。

  • 金利0.55%:利息13,750円、元本64,790円、合計78,540円
  • 金利3.00%:利息75,000円、元本40,455円、合計115,455円

金利0.55%の時の元利均等返済額の合計7万8千円と3%の時の11万5千円の差も大きいですけど、それより注目すべきは利息の占める割合です。

金利0.55%の時の支払い額は3%だと利息しか払えないような額だということですよね。

つまり、今から10年位前に住宅ローンを借りた人は、

  • 担保となる家は10年の経年劣化で価値を下げているのに対して、
  • 住宅ローンの残高はあまり減っていない。

こういう状態になっているということです。

では、今日の相談者です。

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相談:譲渡価格よりも多めの住宅ローンを借りた場合の借換について

住宅ローンを借りてから16年目に借り換えを考えていて、参考になるものはないかと検索していたところ、こちらにたどり着きました。40代です。

  • 物件 築25年のマンション
  • 変動金利3.3%
  • 残債1,130万円程
  • 当初35年で借り入れ、残りは19年弱

これに対して、現在の借換候補は以下の3つです。

  • りそな銀行のウェブ限定借換ローン10年固定0.55%
  • 優良住宅ローンフラット3520年1.01%
  • 従来から利用している地元の地銀

譲渡価格よりも200万円多く借りている

マンションは中古で購入したため、当初はリフォームも考えて物件価格に200万円上乗せしました。その後、金消契約直前に親から資金援助の話があり、上乗せの200万円については不要となったため、直前に減額を申し出ました。

しかし、融資担当者から手続きのやり直しを嫌がられた挙句にその200万円で車でもお買いになられたらどうですか?などと言われ、そのままの金額で融資実行しました。

さすがに車は買わず、仲介手数料75万円、残りは室内の修繕等に125万円使いました。

残債全額は借り換え融資金額の対象になりますか?

フラット35だと諸費用の他に10%の自己資金が必要だと思っておりましたが借り換えの場合は必要ないのでしょうか。

回答:借り換えはその時の不動産の担保価値で査定が行われます

ご質問にお答えしますね。

借り換えというのは、新しく借りる金融機関から融資されたお金で、現在の住宅ローンを完済することです。

ですので、

  • 現在の住宅の担保価値が十分か。
  • 現在の自分の信用力が十分か。

この二つを審査されることになります。

かつて借りたときはどうだったか?というのは置いておいて、今現在借りたいお金=住宅ローン残高を借りられるだけの担保価値と信用力があるか?がポイントです。

フラット35に借換の際10%の頭金は不要

借換の場合は頭金という概念がありませんので、頭金は不要です。借換のために新たに借りる住宅ローンの残高に対して、抵当権を設定する物件の価値が十分か?また、債務者の返済能力は十分か?という査定を行います。

この二つの要素を勘案して、金融機関が「足りない」と判断すれば満額融資されません。

別途現金が必要になることはありますが、一律に10%以上の頭金を用意しなければならない、ということはありません。

当初の借り入れ時に物件価格に上乗せして借りても同じこと

今の家の担保価値と債務者の返済能力を査定して幾らまで貸せるか?という判断を行います。ですので、当初に200万円余分に借りていたとしても、住宅ローンの残高よりも家の担保価値と自信の返済能力が高ければ全額融資されますし、足りなければその分は現金で用意しなければなりません。

ただし、住宅ローンの使い道には注意が必要です。

住宅ローンの資金で車などを買うと契約違反になります

今回は少し微妙な問題点がありますね。

住宅ローンで借り入れた資金を住宅関係ではなく、例えば別の用途(自家用車の購入など)に使っていると、契約違反となり、確実に借り換えの審査でマイナスポイントになります。

融資担当者自身がそれを勧めているので、なかなか質が悪いです。

その当時の融資担当者が「お車でも買われたらどうですか?」などと言ったとしても、それは記録としては残っていませんので、言った言わないの話になり、結局損を被るのはこちらです。

200万円分のリフォーム工事をしなかったという事実は今から変えようがありませんので、金融機関との面談を行う際には以下の回答を準備しておく必要があるでしょう。

  • 当初はリフォームを行うことを予定していたが中止となった。そのやむを得ない理由。
  • 物件代金よりも多め融資を受けたお金は、もとの住宅ローンの金銭消費貸借契約書に記載の範囲内の用途に使ったこと。

例)部屋の軽微な修繕費用やホームクリーニング、家の購入諸費用、住宅ローン手数料、引っ越し費用など。

領収書などが残っていれば良いですが、10年以上前の事ですからそこまでは要求されないと思います。

なので、おっしゃるように、仲介手数料や家の修繕料に充てたということを銀行の融資担当者との面談でも、しっかり説明する必要があるでしょう。

 

回答:借り換えの審査基準は金融機関によって様々なので一つだけで判断しては損

その後、このご相談者から連絡がありました。

当初リフォーム資金を上乗せして借りた部分については、口頭で仲介手数料と家の修繕等に使った旨を説明しました。

なんでそんなことを説明しないといけないの?

と思われるでしょうが、住宅ローンとは住宅の購入資金を借りる商品だからなんですね。住宅の代金だからこそ、債務者が最優先で返済にコミットすることが担保されるんです。

また、物件に第一順位の抵当権を設定して、万一債務者が払えなくなっても物件を処分してローンを完済させることが出来るのです。

だからこその、この金利の安さなんですよ。

この方の場合は、当初の物件価格以上の住宅ローンがスタートで16年間返してきたので、少しハンデがあるんです。

結果どうなったかというと…

最初に面談した地銀の融資担当者によると、購入価格と諸費用等との比率で2本に融資を分けることになると言われたそうです。

利率は同じですが契約を分けることで諸費用(印紙代や司法書士の報酬)が少し余計にかかるそうです。

他の銀行でも同じでしょうか?

というご質問を受けましたが、こればかりは金融機関によって取扱いに差が出てくるところだと思います。審査に出して見なければ分からない点です。

金融機関の審査の最新のトレンドについてはこちらをご一読ください。

金融機関の審査ラボ

利率は同じで契約を分けるというのは変則的な契約です

この地銀の場合は、ちょっと変わった取扱いですね。

家の購入代金部分と諸費用等の部分で適用する利率は同じということは、結局は(内訳がどうであれ)住宅ローンとして融資ができるという意味です。

もし担保価値が足りないと判断したのであれば、手数料部分については融資できない、すなわち減額して物件価格に対応する部分だけ融資するという結論になるでしょう。

融資をするけど、あえて契約を分けるというのは、ちょっと変則的なやり方です。

 

まとめ~一つの金融機関だけで判断してはダメ

今回のように、自分の方にちょっとハンデがあると気後れしてしまいがちなんですが、そもそも相手が変な処理をしようとしている可能性もありますよ。

銀行の融資担当者を全面的に信用するのは考え物です。

だって住宅ローンで『お車でも買われてはいかが?』なんていうような契約違反を勧めてくるような輩もいるのですから。

もし千日がこんなこと言われたら、ソッコーで支店長を呼んでその場で説教します(出てこないとは思いますが)。

なので、一つの金融機関で言われたことを真に受けて、あきらめるのではなく複数の金融機関で試してみることをお勧めします。

  • 特にフラット35は、そもそもの審査のルールが民間金融機関とは違います。
  • りそなは積極的に借換融資案件を獲る姿勢ですから方針が異なります。

それぞれ違う状況の商品、金融機関なのでトライする価値はあるのです。

特に、フラット35は営利目的ではありませんので、民間金融機関とは違う結果が出ることが多いです。こちらは是非やっておくべきですよ。

以上、参考になれば幸いです。