派遣社員の妻の名義で購入する家の住宅ローン資金計画

雇用形態を重視する金融機関は77.1%

民間金融機関に対して住宅金融支援機構が行った調査によると、住宅ローンの審査では、雇用形態を重視すると回答した金融機関の割合は77.1%だそうです。

これを高いと見るか、低いと見るかは意見の分かれるところですが、少なくとも「正社員でないと融資してもらえない」という先入観は捨てた方がいいですね。

また、所有資産の重要性が最近になって急上昇しています。平成26年度(24.4%)から平成27年度(68.0%)にかけて急上昇しています。なお、貯金残高は申込書にも書きますが、審査の際には残高証明書の提出が求められますので、あんまり水増し申告しても後でバレますよ。

つまり、雇用形態がどうであれ、頭金が十分にあれば住宅ローンを組むことが出来るチャンスが拡大しているのです。

最近の審査の傾向については、 金融機関の審査ラボに詳しく書いていますので、ご一読ください。

しかし、その頭金は全て住宅の購入に充ててよいものでしょうか?もはや年金だけでは生活できない時代になりつつあります。老後は基本的に貯蓄を取り崩しながら生きていく。

貯蓄が底を突けば、老後破産。この点をよく検討して決断する必要があります。では今日のご相談者です。

質問:夫は転職活動中、派遣社員の妻名義での住宅ローンの資金計画は?

初めまして。千日様のブログを拝見し住宅ローンについて勉強させて頂いております。

現在、中古マンションの購入を検討しており、資金計画など適確なアドバイスを頂けましたら幸いです。お忙しい中申し訳ございませんか宜しくお願い申し上げます。

購入予定物件

築30年のマンションですが、住宅ローン控除は受けられる予定です。

  • 物件価格:2,950万円
  • 管理費・修繕積立費:2万円
  • 駐車場費:2万円(現在車は不所持)
  • 固定資産税:約11万円/年

家族構成

  • 夫48歳(転職活動中)
  • 妻48歳(派遣社員 年収300万円)
  • 自己資金:2,100万円

自己資金の内訳

  • 物件頭金1,200~1,400万円
  • 諸経費(契約、融資、その他関係費用)約220万円
  • その他(引越し費用、家具など)約100万円
  • 残金400~600万円を貯金予定

夫が転職活動中のため、妻が住宅ローンを組み、自己資金は夫が出資する形で共同名義購入になる予定。

妻名義で住宅ローンを4社事前審査(不動産会社の選定)しました。

日本モーゲージサービス(フラット35)

  • 融資金額2,300万円
  • 金利1.12%(9割以下)
  • 耐震基準適合証明書を取得できる予定であり、フラット35S(当初5年金利引下げ)も対象可
  • 借入年数31年

りそな銀行

  • 融資金額1,740万円
  • 変動金利0.80%(保証料金利上乗せ型)
  • 変動金利0.60%(保証料一括払型)
  • 変動金利0.57%(融資手数料型 手数料375,840円)
  • 借入年数31年

三井住友銀行

  • 融資金額2,650万円
  • 金利1.64%(超長期固定金利型)
  • 借入年数31年

上記より日本モーゲージサービス、りそな銀行の2社で検討中。住宅ローン控除も受けられる予定です。

このような条件の中、31年ローンで月々5~6万円の返済、管理費などを含め住宅費用を月々11万円程度で考えております。

夫の再就職は大前提で、60~65歳での完済も含め資金計画を考えていくことも理解しております。

現在の条件での銀行及び金利のプラン選び、また頭金に出資する費用、返済期間、繰り上げ返済の時期及び金額の考え方など、資金計画シュミレーションのアドバイスを頂けましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。

回答:完済は可能ですが老後資金にイエローシグナルが出ています

ではお答えしていきます。まずは大きな視点から考えていき、資金計画の重要部分を浮彫にしていこうと思います。

この家を購入してよいのか?

まず、資金計画以前の問題として家の購入の是非からです。奥様の就業形態が派遣社員であり、現時点で2,100万円の貯蓄があるとこから鑑みて、元の大黒柱は旦那様であると推測します。

元の年収をうかがっておりませんが、もしも元の年収があれば購入可能な価格帯の家であると思います。それもあって再就職が大前提であるとのお考えであるのですね。

しかし、48歳での再就職は困難を極めます。「次」を決めずに、又は決められずに退職した人間に対して、世間は厳しいです。前の年収の半分に下げたとしても、就ける職場を見つけるのは難しいでしょう。「再就職が大前提である」という前提で購入されたのであれば、この家は買ってはいけない家だと私は考えます。

金融機関が融資をした理由は2,100万という自己資金があるためです。この貯金は奥様が現役の間に住宅ローンの返済に充てられる計算であり、完済後の生活がどうなるかについては、関知していません。あくまで奥様の名義ですから金融機関は奥様の収入とその自己資金で完済できるという判断で融資を行います。つまり、旦那様の再就職の可能性は考慮に入っていないのです。

資金計画の前提=奥様の収入だけで完済し老後資金を残す

奥様が「買いたい」という希望が強いのであれば、旦那様から説得してやめさせることがベストです。もしも旦那様の希望であるとするならば、再就職の可能性とその後の年収について、ご自身の見込みを前述のように下方修正してください。

旦那様が頭金を出し、連帯保証に入ったとしても、今後の支払いについて無収入の旦那様に支払い能力は無く、実質的には奥様の責任負担のもと、奥様の収入によって購入される家です。つまり、頭金を出した後の旦那様は、ほぼ戦力外ということです。

従って、奥様の収入だけでこの家を購入し、その上で老後破産しないための資金計画を考えることになります。

ここまでお読みになって、ご気分を悪くされたと思います。「そんな資金計画はあり得ない」と思われるかもしれません。しかし、家の購入について妥協の無い決断をするなら、そういうものになります。

住宅ローンの金利タイプと完済までの年数からのシミュレーション

全て借入年数が31年になっているのは住宅ローンを組めるのが80歳までという審査基準によるものです。現在48歳の奥様が65歳までの16年間で住宅ローンを払いながら、生活費と貯蓄をねん出しつつ払える金額を考えてみましょう。

年金に関しては夫婦それぞれ加入している期間がありますので、住宅ローンの負担が無ければ生活できるものという前提を置きます。

住宅ローンのセオリー

  • 固定金利であれば元利均等返済額を税込み月収の4割以下にします。
  • 変動金利であれば元利均等返済額の25%を貯蓄した上で月収の4割以下にします。

税込み年収が300万円の月手取りを20万円とするとその4割は8万円ですね。条件として候補のフラット35S(金利Bタイプ)とりそな銀行の変動金利0.57%で比較しましょう。変動金利は3タイプありますが、毎月の支払を少しでも下げることでリスクを下げることを優先させました。

以下のようになります。

(単位:円)

資金計画比較 フラット35S
2,300万円
28年
0.82%1.12%
りそな変動
1,740万円
25年
0.57%
5年間の月返済 76,634 62,244
6年目~月返済 79,231
諸費用 3,200,000 3,200,000
頭金 6,500,000 12,100,000
16年後残高 10,671,090 6,551,357
夫の出資金計 20,371,090 21,851,357

方針としては、融資額いっぱいまで借ります。家族を守る城壁となる貯蓄を減らさないことが優先されるためです。

その上で、前述した月の返済額に抑えるように年数を決めます。フラット35Sならば28年で8万円以下に抑えられます。変動金利ならば25年で25%を貯蓄した上で8万円以下に抑えられます。

こうすれば、16年間(192カ月)、派遣社員の給料を維持できたとして、リスクはありますが、支払を継続可能ということです。

そうすると、16年後の残高はフラットで1,067万円、りそな変動で655万円です。これは一括返済します。その財源は現在ある自己資金から賄われるものと考えました。

つまり、表の諸費用と頭金と16年後の一括返済額は旦那様の出資額からということです。奇しくも現在用意されている自己資金に近似します。

つまり、今までに貯蓄した2,100万円の貯金と今後16年間の妻の労働が、これから購入する家に変わるということです。

固定か変動か?

いかがでしょうか。銀行の審査における判断は、冒頭で私が述べたこと、そのままになっているということがお分かり頂けたと思います。彼らが見ているのは虎の子の2,100万円と奥様の派遣労働収入だけです。

では、このケースで固定金利か変動金利かどちらが良いか?という点をかんがえましょう。総支払額で比較をします。

(単位:円)

支出額比較 フラット35S
2,300万円
28年
0.82%1.12%
りそな変動
1,740万円
25年
0.57%
諸費用 3,200,000 3,200,000
頭金 6,500,000 12,100,000
16年支払総額 14,977,285 11,950,918
16年後残高 10,671,090 6,551,357
合計 35,348,375 33,802,275

変動金利の方がより少ない金額で完済できますね、これは金利変動リスクとして貯蓄すべしとしている25%の貯蓄を考慮に入れていないからです。16年間の25%貯蓄の総額は16年支払総額に25%を乗じたら出てきます、約300万円となります。

金利変動リスクを負うことで、約300万円を老後資金にオン出来る可能性があるということですね。もし金利が上昇しても、現時点で655万円の一括返済資金があります。私ならば、あえて金利変動リスクを取って300万円の老後資金をプラスしに行くでしょう。

固定資産税、管理費修繕積立金、駐車場代

なお、住宅ローン控除はフラット35Sの場合は10年間で171万円、変動金利の場合は137万円です。これによって当初10年は固定資産税と管理費修繕積立金を賄えると思います。

そして、やはり再考した方が良いと思うのが駐車場代の2万円です。空の駐車場に月に2万円を払うのであれば貯蓄の足しにした方が良いです。また、月に2万円というのは立地的には生活に自動車の必要が無い地域の相場ですね。

現時点の状況で、住宅費用を合計で11万円と見積もるのは老後破産に一直線です。再度、保守的な観点から家計の見直しをしてください。

冒頭から、かなり不躾なことを申しました。

申し訳ございません。

しかし、仮にも専門家として家の購入という重要な事項について助言を行う以上、またメールのように限られた方法で必要なことをお伝えするという状況から、どうしても直截な表現にならざるを得ないのです。

これを読んですぐのタイミングでは、なかなか冷静に考えるのは難しいかもしれません。少し時間を置いて、一度冷静になり、その後ゆっくりと再検討していただければと思います。

あとがき

今回は、厳しい回答となり、また随所に配慮を欠いた表現もありました。上記は私が回答した文面そのままです。

しかし、この方はその後すぐに感謝のメッセージを送って下さいました。とてもありがたいことです。

あえて、私が歯に衣を着せない理由は、無料だからというのも大きいと思っています。これは決して「無料なんだから、少々粗い対応でもいいだろう」というような理由ではありません。

どうしても、お金をもらうと相手はお客様になりますので、言いたいことが言えなくなるものなんですよね。私なんかは、そういうタイプです。というか、お金をもらわなくても、なかなか言いにくいものです。

でもご相談者にとっては、その時は耳ざわりの良いことだけを聞いて、大事な決断でリスクに気づけず失敗してしまうより、少々イヤな話しであっても聞けるということが、バリューなんだと思っています。

メールだけのやり取りで私が把握できることは限られていますし、伝えられる内容も限られています。しかし、このような事を言うサービスというか、存在というのは、おそらくこの無料相談ドットコムの他にはありません。

それが、このサイト、またインターネットでの「千日」の存在理由だと思っています。皆さまのご相談をお待ちしています。

以上、参考になれば幸いです。

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