住宅ローンで中古住宅を買ってリノベーション 引っ越しまでの住民票はどっち?
ローンの実行時には工事中でまだ住めないけど住民票を移しておくべきか?
住宅ローンとは住居として使用する家屋の購入資金を融資する金融機関の商品ですね。
そして金融機関は住宅ローンの契約時に必ずその購入する家を担保に取ります。つまり、銀行は我々が購入した土地と建物に保証会社を抵当権者とする抵当権を設定します。
この抵当権とは何か?
『住宅ローンを返済できなくなった場合には、担保にとった土地と建物を売却して、優先的に返済してもらう』という権利です。
我々が住宅ローンを返済できなくなった場合は、保証会社が銀行に住宅ローンの残高を一括返済します。その後保証会社は、我々から少しずつ回収していくのですが、『この人はもう払えない』と判断したら最終的に土地と建物を売却して回収するんです。
もともと返済が滞った人から回収するのは時間がかかりますし、費用もかかります。できれば保証会社としても抵当権の実行まではやりたくないんですよ。
ですから、保証会社としては我々が『マジで死に物ぐるいで支払う』という保証が欲しいわけです。
これが、お金を貸す時点で住民票が新住所に移っていることを条件とする理由です。自分や家族の生活の基盤となっている家であれば、何がなんでも返済にコミットするはずだということなんですね。
しかし、最近は中古住宅に大規模なリフォーム工事をして(リノベーションといいます)住むというスタイルが増えてきました。『フラット35リノベ』のように、条件に合う一定の中古住宅を購入してリフォーム工事をすると、金利が0.6%も引き下げられる補助金事業もあります。
つまり、
家を買う=融資の実行のタイミングではまだその家に住んでいない。
こういった、従来なら例外的なケースが最近は増えてきているんですよね。家を住むために買ってはいるんだけど、買った時点から工事がスタートするので、まだ住めないというケースです。
では、今日のご相談者です。
相談:中古住宅リノベーション工事で代金決済時の住民票は新住所?旧住所?
中古住宅を購入し、リノベーションして住む予定です。
売買決済から、実際の引っ越しまでは最大で6か月程度はかかるかな と想定しています。
- 決済後、リフォーム業者様数社と現地打ち合わせ・・・1か月
- 見積もりが出てきて、業者様を選択・・・2か月
- 詳細な仕様調整を経て、リフォームの契約・・・3か月
- 業者様の段取りが済み、着工・・・4か月
- 完成・・・ 6か月
- ある程度余裕をもって、引っ越し ・・・7か月
さて、この時に問題になるのが、売買決済時の住所を、旧住所とするのか、新住所とするのか? です。自分なりにいろいろと調べてみましたが、まだまだ見落としていることがありそうで、、相談した次第です。
今のところの結論は、決済時点は旧住所。住宅ローン控除の期限となる年末には住民票を新住所に移動させ、子供が小学校に入学する直前の3月末までには、実際に引っ越しを行う。と考えております。
住宅ローンの銀行が、旧住所での決済・抵当権登記を認めるか?
- 三井住友信託銀行:旧住所でOK。リフォーム完了後、速やかに少なくとも世帯主の住民票を提出要。家族分の住所移動は、別途提出要だが、遅れてもよい。
- 三菱UFJ信託銀行:旧住所でOK。住宅ローンの制約で12/E迄に住民票移転であれば、特に条件なし。
- auじぶん銀行:旧住所でOK。引っ越し後の住民票すら提出不要。
- 住信SBIネット銀行:旧住所でOK。但し、引渡し1か月以内に、最低、世帯主の新住民票は提出要。
- イオン銀行:旧住所での決済はNG。新住所で決済・登記を行わない場合、融資できない。因みに、他行さんの動向(旧住所決済を認める)をお知らせしましたが、うちは他行とは違います と、きっぱりNG回答が返ってきました。
税金で損をしないか?
- 住宅ローン控除: 決済から6か月以内に居住する必要あり。税務署に確認した所、基本は6か月以内だが、事情があれば、6か月を超えても控除対象となる場合がある、詳細は所轄の税務署に相談のこと、と言われました。12月末迄に居住しない場合は、2017年の確定申告は対象外になりそう。
- 登録免許税減額: 市役所に相談した所、リフォーム後の引っ越し旨、申し立てをすれば、住宅用家屋証明書は発行可能とのこと。家屋証明書があれば、減税対象。
- 不動産取得税減額: 司法書士に相談した所、こちらも、事情を申し立てれば、減税対象になるだろう とのこと。
生活で不便が生じないか?認定こども園は?
住民票を先に移動した場合、認定こども園などに通えなくなる可能性がある。私の場合は、市内で、区をまたいだ引っ越しとなる為、旧住所の子供園に継続して通えるとのこと。
決済と同時に住民票を移動した場合、約6か月間は、現住所と住民票住所が食い違うことに。何らかの証明で、住民票を求められると、不都合が生じそう。
決済と同時に住民票を移動し、銀行や免許書の住所も変更した場合、転送不要の郵便は定期的にリフォーム中の家に取りに行く必要がある。また、書留郵便の場合、住んでいない家で受け取る or 新住所での免許証を提示し、郵便局で受け取る必要が出るなど、不便を極める。
その他の考慮事項
- 住所変更の登記費用が無駄? : 住所変更登記は、自前でもできるレベルで、費用も2000円程度なので、あまり気にしなくてもよいか。
- 抵当権の住所変更費用は?: 銀行に問い合わせたが、住所変更の費用を請求する という銀行さんは無かった。
- 社会保険上の扶養 : 夫は早めに住民票を移動し、家族はあとから住民票を移動すると、一時的に世帯が分かれ、扶養の取り扱いがよくわからなくなりそう・・・。避けたい。
- 所得税法上の扶養: 税理士に確認した所、夫と妻、子供の住所が異なっていても、特に問題は無いそうです。
見落としや注意点は無いか?
他に何か見落としが無いか、注意点など教えて頂ければと思います。
どうぞ宜しくお願い致します。
最後になりましたが、ホームページを拝見して、いろいろ勉強させて頂きました。
当初は、ネットバンクばかりがお得だと勘違いしておりますが、繰り上げ時に保証料の実質負担が安くなる、三井住友信託さん にも申し込みを行い、ご縁を頂けそうです。
分かりやすい説明や、具体的な事例での紹介、大変感謝しております。ありがとうございます。
回答:住民票と住宅ローン、税金の実務について知るところをお伝えします
では、お答えして行きます。まずはシミュレーションにつきまして、候補の順位が変動するような誤差や見落としは無いと思います。
なので金額的な部分については割愛しまして、質的な部分について少し補足します。2017年6月1日から住信SBIネット銀行の団信が8疾病保障から『全疾病保障』に変わりました。
これをどう見るかですね。どんな病気、怪我でも12カ月働けない状態になったら住宅ローンがゼロになります。
この背景として、住信SBIの企業努力もあるのですが、医療の進歩や健康保険料の収入減から、よほどの事が無い限りは1年以上入院する事が無くなって来ているという統計があるためと思われますね。
しかし「8」が「全部」になったのは、利用者としては大きな変化でしょう。我々には統計など関係無いですからね。
また、前払いした保証料が全額繰上げ返済によって返金される額については、こちらが参考になるかと思います。
https://jutakuloan-muryousoudan.com/2017/05/02/知ってて良かった住宅ローン千日メソッド五七五/
続いては住宅ローンと住民票の取り扱いについてですね。番号に沿って知るところをコメントして行きます。
1.住宅ローン(銀行、保証会社)と住民票の実務的判断
住宅ローンは文字通り『住宅』購入代金の借入金です。その不動産の使用用途を『住むためのもの』という条件付きで貸すものです。
ですから、賃貸したり転売する事を目的とした資金の借入には使えません。逃げられる恐れがあるからです。『自宅』を押さえているからこその低金利という側面もあるのですね。
ですから、原則として銀行がカネを貸す時点でそこが住居であることが求められます。住民票が移ってなければ貸さない『イオン銀行』の回答は真っ当なんですよ。
しかし、住民票を移してさえいればそこが住居か?というとそうとは限らないですよね。役所で住民票を移すときに、役人が本当に住んでいるか家を確認しに来たりはしません。
つまり住民票は、通常はそこに住んでいる事が推定されるというニュアンスの書類です。あくまで実態が優先されるのです。
なので三井住友信託銀行や三菱UFJ信託銀行、住信SBIなどは利用者が『そこを住居として購入する意思がある』という実態を優先して融資をOKしているんです。
しかし、そのままずっと住民票を移さなかったら、住居として使用する意思は無いと判断されるでしょう。つまり一括返済を迫られます。
2.住宅ローン控除と住民票の実務的判断
住宅ローン控除は12月31日の住宅ローン残高の1%を税金からマイナスする減税措置ですよね。
住居として使用するための不動産(一定の要件あり)を借入金で購入したことが条件です。
https://jutakuloan-muryousoudan.com/words/tax/
6カ月以内に住む(=住民票を移す)というのは、納税者がそれを住居として購入したことを客観的に確認するための手段という事です。
これもあくまで形式なんですよね。ですから実態が優先されます。税理士が言ってる通り、実態として住居として使うために購入した不動産であり、リフォーム工事という合理的な理由で工事中は住めない事を証拠も付けて客観的に証明できれば、大丈夫です。
証拠としては家の売買契約書、住宅ローン契約書、リフォーム工事契約書、工事完了引渡書などです。
『だってこの時に買ってそのあと工事して、工事が終わったのがこの日なんだから住める訳が無いよね?もちろん住むために買ったから、今は住民票を移してるよ。』
という事を相手から交付された書類で証明するんです。その書類の日付とハンコが重要です。
3.多くの住所証明では3カ月以内の住民票が求められる事務を利用する
住民票がある住所に本人が住んでいることが推定されるので、リフォーム工事前に住民票を移すと色々と不便が生じるのは致し方ない部分があると思います。
ただ、あくまで推定なので、いざとなればちゃんと説明できれば問題ありません。面倒だというだけです。
出来るだけ面倒を避けるという観点では以下の対応かなと思います。
- 住宅ローンの開始から3カ月は現住所のままにする。
- 3カ月経過したら住宅ローンの名義人だけでも新住所に移す。
- 新住所に移す前に何枚か旧住所の住民票を取っておく。
色々な証明で要求されるのは発行から3カ月以内の住民票であることが多いですよね。ですから、出来るだけ3カ月超のタイムラグが発生しないようにしておくんです。
新住所に住民票を移した後にどうしても旧住所で手続きしたい場合は、住民票を移す直前に取っておいた住民票を利用すればやり過ごせます。
名実共に新居に移った時に改めて住所変更の手続きを行えば良いんです。現住所も新居も、ある意味両方が住居なのですから。
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