妻が負う住宅ローンの連帯債務のリスクとリターン

2018年10月28日

連帯債務・連帯保証はアンフェアな上に収入の少ない方がより大きなリスクを負うからお勧めしない

基本的にはお勧めしていません。というのも、得られるメリットに対して負うリスクが高すぎるからです。

  • 夫婦の収入を合算して連帯債務にする
  • ペアローンにしてお互いに連帯保証する

こうすることで、一人では借りられなかった額の融資を受けることが出来ますね。さらに住宅ローン控除も2人分受けることが出来ます。しかし、連帯保証(連帯債務)の場合、夫婦の一人一人が住宅ローンの全額の責任を負うことになります。

夫の収入ではあと少しだけ融資額が足りない…

収入合算やペアローンを検討する場面はこんな場面だと思います。借りたいのは『あと少し』なのに二人分の人生を人質に取られるのが連帯保証(連帯債務)です。この仕組みからしてアンフェアなものです。

そして、より大きなリスクを負うのは、夫婦のうち収入の少ない方です。統計的には女性です。

男性の方は、年齢を重ねるに従い給料が増える傾向にありますが、女性の方は30代で頭打ちになっています。もちろんこれは平均でしかありませんので、全ての夫婦に当てはまることでは無いでしょう。

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相談:年収が同じ共働き夫婦の住宅ローンでも連帯保証、連帯債務はダメですか?

はじめまして。

現在、新築一戸建てを検討しており、住宅ローンについても色々勉強しており、ブログも読ませていただいております。

ご相談したいのは、共働きの住宅ローンの組み方についてです。

年齢、年収、共働き世帯年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 33
夫の年収(万円) 300
妻年齢 31
妻の年収(万円) 300
共働きの世帯年収(万円) 600
家の価格(万円) 3,200
住宅ローン(万円) 2,500
頭金(万円) 700

夫33歳、妻31歳、子6歳です。

結婚してからもずっと共働きで頑張ってきました。

年収は夫婦とも300万くらいです。

今、住宅メーカーで間取りなど検討しているところで、総額3200万くらい、頭金を準備して、ローン借入は2400~2500万の予定です。

頭金が2割準備できそうなので、アルヒのスーパーフラットかスーパーフラットSを考えています。団信も入りたいので10月以降に申し込みの予定です。

連帯保証、連帯債務のリスク

夫一人の年収ではローン審査が厳しいと思うし、私も正社員で働いていくつもりなので、それならば住宅ローン控除も受けた方がいいかなと思うので、フラット35で私(妻)が連帯債務で借りた方がいいかと考えていたのですが、千日さんのブログで連帯保証はリスクが高いと読み、躊躇しています。

私が仕事を夫婦で協力して続けていく!と思えば、気持ちの問題かなとも思うのですが・・・
(そもそも夫1人の収入ではちょっと厳しいので、私も今の正社員なりパートなり仕事はずっとしていくんだと思っています)

我が家のような共働きの住宅ローンの考え方について教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

回答:連帯保証、連帯債務でなくても融資を受けられる可能性はあります

では、お答えします。

結論から申しますと、連帯保証、連帯債務でなくてもフラット35であれば融資を受けられる可能性はあります。これが民間金融機関であれば、まず間違いなく連帯保証を求められるでしょう。

ただ、審査の合否については私がここで何を言っても詮無いことですので以下の2つの面から整理したいと思います。

  1. 単独で融資が受けられる場合でもあえて連帯債務にして住宅ローン控除を受けるべきなのか?
  2. 単独で融資が受けられる金額では家が建たない場合はどうするか?

では始めますね。

単独で住宅ローン控除を受けた場合と夫婦2人で住宅ローン控除を受けた場合を比較

まず連帯債務とすることで、住宅ローン控除の恩恵がどれだけ増えるのか?を計算してみました。つまりこの金額が連帯債務を負うことに対するリターンです。

アルヒスーパーフラット35Sの場合10年で32万円のリターン

  • 住宅ローンの借入額2400万円
  • 35年、元利均等返済、ボーナス払いなし
  • フラット35の金利1.08%

(単位:円)

スーパーフラット35S ペアローン 単独
当初10年0.98% 67,525
その後1.28% 69,988
住宅ローン控除 2,072,699 1,750,000

アルヒのスーパーフラット35は頭金を2割入れることでフラット35の金利から0.1%引き下げとなります。

そしてフラット35Sと同時に受けることもできますね。フラット35Sは省エネルギー基準や耐震性などで一定の基準以上の住宅を取得する場合に適用可能なもので、当初の5年又は10年にわたりフラット35の金利から0.3%引き下げとなる補助金制度です。

アルヒのスーパーフラットで団信を付ける場合は金利に0.3%上乗せとなります。適用金利は…ちょっとややこしいですので計算式で表すと以下のようになります。

フラット35の金利を1.08%とした場合の当初10年の金利

0.98%=1.08%-0.1%(スーパーフラット)-0.3%(S)+0.3%(団信)

11年目以降の金利

1.28%=1.08%-0.1%(スーパーフラット)+0.3%(団信)

機構団信は10月の申し込みから金利に上乗せで0.28%となりますが、アルヒのスーパーフラットに付いている団信は、住宅金融支援機構の団信ではなく、アルヒの団信なのです。

ですから、10月の申し込みから住宅金融支援機構の団信が0.28%となりますが、アルヒのスーパーフラットについては、今のところはあくまで別物なので、0.3%という前提で計算しました。

もしかしたら、住宅金融支援機構の団信の変更に合わせてアルヒも変えてくる可能性はありますが、今のところは未定ということではないでしょうか。

スーパーフラット35の場合10年で33万円のリターン

  • 住宅ローンの借入額2400万円
  • 35年、元利均等返済、ボーナス払いなし
  • フラット35の金利1.08%

(単位:円)

スーパーフラット35 ペアローン 単独
金利1.28% 70,925
住宅ローン控除 2,087,164 1,750,000

少し、ストレスをかけてフラット35Sの適用を受けられない場合でも計算してみました。あまりリターンの金額に変化は無いようです。この金額はあくまで目安ですが、だいたい1年あたり3万円のリターンですね。

ですから、単独で住宅ローンを組めるのであれば、単独にしておくことをお勧めします。

夫婦二人の連帯債務でなければ家が建たない場合は諦めるべきか?

この若さで、2割の頭金を用意できるほどに貯蓄を貯められたこと、感服致します。最近の住宅ローン審査のトレンドでは『所有資産』の重要性が上がってきています。

金融機関の審査ラボ

ですから、可能性として単独での融資が難しい場合であっても、希望額に近い金額を借りられるのではないかと思っています。年齢、年齢と家族構成に対する貯蓄の多さとしては、かなり審査上プラスに働くでしょう。

値引き交渉と減額調整を組み合わせて、家を建てる可能性は十分に残っていると思いますよ。

それでも、もし夫婦二人の連帯債務でなければ家が建たない場合はいよいよ連帯債務を呑むかどうか?という選択になってきますよね。

既に私の記事を読んで頂いていると思いますが、念のためリンク設置いたします。

自分にはこの家が買えるのか?買えないのか?の答え-千日のブログ

一旦待つことをお勧めします。先ほどの計算結果のとおり、夫婦2人で返済することが出来ると思います。しかし夫婦2人で返済できるということは、夫婦2人が連帯債務を負ってよいということでは無いと思っています。

諦めるのではなく準備しながら待つ

のです。

 

回答②:連帯債務を負って良いかどうかに『夫婦』を持ち出してはいけない

連帯債務を負っていいのは、夫婦で協力すれば返済できると考える人ではなく、たとえ一人であっても返済できると考える人だと思います。

夫婦が互いに協力するのは、当然のことだと思っています。

夫婦でなくなっても、無くならないのが連帯債務です。

夫婦だからこそ負っても良いと思う連帯債務ですが、一度負うと夫婦かどうかなんて関係なく、住宅ローンが残る限り残るものです。

ですから夫婦で居続けることを前提として決断すべきことではなく、夫婦で無くなったとしても、一人になってもこの住宅ローンを払っても良いと思えるかどうかなんですよ。

住宅ローンについて連帯債務を負うかどうかを考えるときの判断基準は、そういうものです。

度を超して保守的な判断基準だ。

現に夫婦なのに夫婦でなくなった場合なんて想定できない。

根本的に間違っている。

このように思われるかもしれません。その通りかもしれません。

しかし、住宅ローンで夫婦に連帯保証(債務)を要求することが、そもそも度を超して債権を保全しようとする態度であり、元は他人であり財産も別々の婚姻制度を無視したものであり、根本的に間違っているんじゃないか、と思っています。

住宅ローンの連帯保証の問題点とその抜け方-千日のブログ

以上、参考になれば幸いです。

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