変動から変動への借換メリットのシミュレーションと60歳残高をスマホで
変動から変動への住宅ローンの借り換えで資金繰りは良くなるか?スマホでシミュレーションしてみる
住宅ローンの借り換えでは総支払額だけでなく、資金繰りについても気を配る必要があります。銀行などの住宅ローンシミュレーションで総額で安くなると「借換メリットあり」という結果になっても、それだけで借換すべきということにはなりません。
- 資金繰りは「最初の支払い」「毎月の返済額」「定年時の残高」の三つがポイントです。
- 借換費用はキャッシュで払う必要があります(ただし銀行は利息を儲けるために借換費用も借りることを勧めてきます)。
- もし借換費用を借りる場合は今後の住宅ローン控除で割引計算が必要になります。
資金繰りを判断するには、「定年時の残高」も知る必要があります。住宅金融支援機構のシミュレーションならば、現在年齢を入力することで60歳の残高を計算してくれます。定年が65歳の場合は今の年齢からマイナス5歳して入力すればいいですね。
スマホで簡単にできますよ。
では今日のご相談者です。
相談:変動金利から変動金利への借り換えを検討しています
はじめまして。最近こちらのブログをよく読ませていただいております。現在、住宅ローンの借換を検討しておりますが、もっと良い選択肢や見落としたデメリットがあるのではないかととても不安なので、千日様のご意見をお伺いしたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
家族構成と年収
- 夫 会社員 34才 手取年収370万
- 妻 会社員 32才 手取年収160万
- 子 3才、1才
現在のローン
- 変動金利1.015(保証料0.14含む)
- 残31年2ヶ月 2755万
- 月返済額 86000円 ボーナス払いなし
借換検討中のローン
- りそな銀行 変動金利0.44
- 31年 2780万(借入費用85万円のうち25万円を借入)
- 月返済額 80000円 ボーナス払いなし
お恥ずかしながら、購入時はほとんど住宅ローンについて勉強せずに契約してしまいました。
家計の見直しをしていく中で、少しは貯蓄も増えてきたので多少費用がかかっても借り換えた方が毎月の負担が減るのではないかと考えはじめた次第です。
もちろん今後の金利に左右されますが、月6000円支払額が減り、8年くらいで取り戻せるのでメリットがあると計算しました。
千日様のブログにあるように支払額の4分の1を貯蓄に回すと、合計額は手取月収の25%を少し越えますが家計のやりくり上は問題ありません。
夫は「変動から変動に借り換えて意味があるのか?」「何十万も最初に払うならその分金利上昇にそなえて残しておいたほうがいいのではないか?」と心配しています。
なんだか私もよく分からなくなってしまったので、千日様のご意見をぜひ参考にさせていただきたいです。
回答➀:資金繰りも大事ですし、借り換えと同時進行で金利交渉してみてはいかがでしょうか
冒頭にも書いたように、借り換えの場合は最初に借り換え費用が必要になります。特にいま変動金利が安いりそな銀行や住信SBIは融資事務手数料が借入額の2.2%必要ですので、借り換え費用が高くなる傾向があります。
結構この支払いがキツいと思う人は多いです。
それもあって、借り換え費用の一部を融資したケースを考えておられるのかな?と思いました。「利息を節約したい」ということが第一であれば、借入元本を増やすというのはそれに逆行していますよね。
そこで、一旦以下のようにお答えしました。
りそな銀行の変動金利0.44%であれば、確実に借り換えによってメリットのあるケースです。また、りそな銀行の仮審査に通過したならば、今の銀行に対して金利交渉が可能です。電話するだけですよ。
いきなり借り換えるのではなく、いったん候補となる銀行で仮審査に通してから、今の銀行に金利交渉することをお勧めします。そうすれば、条件変更の手数料だけで、支払の負担を減らすことが可能になります。
今後の方針としては以下をご提案します。
- りそな銀行の仮審査に通す。
- 現在の銀行にその旨を伝えて金利の見直しを依頼する。
- その上で、両者の条件を比較してどちらにするか判断する。
もし、既に途中までされているとのことでしたら、現時点の状況を補足頂けましたら、さらに検討致します。よろしくお願いします。
これに対してすぐに補足の情報を頂きました。
相談②:借換と金利交渉ではどちらがメリットがあるか?60歳残高を計算する方法は?
- りそな銀行の仮審査は通過。
- 現在借りている銀行については、新規借入の金利が0.625となっており、保証料0.14上乗せすると0.765とあまり低くない。
添付していただいた記事、我が家と似た状況だと思い、ブログで拝見しておりました。
固定金利の安心感は魅力ですが、資金繰りという観点で見れば我が家も小さいこどもがおりますので、やはり変動金利で月の返済額を抑えて貯蓄をしていくのがベターかと思いました。
今後金利が上がったとしても、現在のままにするよりは支払額が抑えられると認識していますが正しいでしょうか?
しかし、定年時の残高については、なかなか自分で計算することができません。現在のローンとりそなのローンではいくらくらいになるのか、教えていただけますでしょうか?再雇用はありますが60歳が定年です。
回答②:総支払い額では借換が最も有利になる可能性が高い
金利引き下げの場合は、借り換えの手間がかかる分も加味した回答になることが多いです。つまり、手間を惜しまないのであれば、借り換えした方が得になる可能性があります。
あくまで可能性の話ですので、逆転する可能性も無きにしもあらずです。銀行が公表している金利より下がるケースもありますし、逆に全く交渉に応じてもらえないケースもあります。
『安くして欲しい』と言うのはタダですし、現実に借り換えのアテもあるなら、一応やっておくことをお勧めします。
回答③:60歳残高ならば住宅金融支援機構のシミュレーションがお勧めです
定年時の残高を知りたい場合、住宅金融支援機構の返済プラン比較シミュレーションがお勧めですよ。借換比較シミュレーションもあります。
今回は3つのケースを比較しますので返済プラン比較シミュレーションを使います。
- プラン1 現在のローン
- プラン2 りそな借換(借換え費用850000円)
- プラン3 現在の銀行の公表金利まで引き下げ出来たと仮定(条件変更手数料54400円)
このように、三つの条件を入れます。借入額は同じにしないとエラーになるので、ここでは借換費用をキャッシュで払う前提としました。(これで結論が変わることは無いと思います)
金利タイプは変動金利ですが、変動金利を選択すると何年後に何パーセントとか、予測不能なことをやらせようとしてきますので、ここでは全期間固定金利を選択しています。
色々いじってみても面白いと思いますよ。
60歳の残高を知りたい場合は、その下に年齢を入れます
PCでもスマホでも使えます。スマホだとちょっと入力がやりにくいですが、拡大できますので、やろうと思えばできます。
最後に『試算する』をクリックすると、このように結果が出ます。
総支払額ではプラン2のりそな銀行への借換が最も安くなりますよね。
また、それぞれのケースでの60歳残高も出てきます。定年までにこれだけ繰り上げ返済すれば良いということです。
回答④:今後変動金利が上がった場合のリスクと資金繰りのポイント
変動金利は基準金利からの引き下げ幅で差が付きます。
りそな銀行の基準金利は2.475%でそこから2.035%引き下げになっているから0.44%ということです。つまり『今後変動金利が上がった場合』というのは、この基準金利が上がった場合のことを言います。
ですから、引き下げが多いということは、今後変動金利が上がった場合にそれだけ少なく済むということなのです。そういう意味で、変動からより引き下げ幅の多い変動への借換は意味があります。
次に資金繰りで比較します。現在のローンを基準にりそな借換と金利交渉を比較しますね。
(単位:円)
- りそな借換は最初に85万円払う代わりに、毎月の返済は7千円減り、定年時の残高は35万円減る。
- 金利交渉は最初に5万4千円払う代わりに、毎月の返済は3千円減り、定年時の残高は15万円減る。
金利交渉というのは、中間の位置づけなのですね。
回答⑤:借換費用を借りる場合の住宅ローン控除の注意点
借換費用を借りると住宅ローン控除の計算が少し面倒になります。住宅ローン控除は家の購入代金の借入について、税を優遇する措置です。
今回のように借換費用によってローン残高が増えると、ローン残高の中に家の代金以外のものが入ります。悪知恵の働く人なら車のローンの借入なんかも一本化しちゃう人もいるでしょう。
つまり、そのままでは不公平になるんですよね。
そこで借換の場合、直前の借入額より大きくなる場合は、その分の割合を毎年度計算して差し引いてから、年末調整で申告する必要があるということです。
詳しくは、国税庁のホームページをご一読下さい
No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき|国税庁タックスアンサー
まとめ
まとると、借換は、今多くのキャッシュを払う代わりに、かなり将来の支払いが楽になり、総額で支払いが減るというものです。
これに対して金利交渉は今のキャッシュの払いを抑えて、そこそこ将来の支払いが楽になり、総額でそこそこ支払いが減るというものです。
金利交渉での条件が揃えば、金額的な比較も出来て検討しやすくなると思います。どのような条件が出るか確認してシミュレーションしてみれば、自ずと答えは出てくると思いますよ。