35歳夫婦共働き住宅ローン、夫単独なら厳しいけど夫婦合算なら大丈夫?

2021年3月2日

夫婦共働きで収入が対等な場合の住宅ローンは変動か固定か?

少子高齢化に伴って生産年齢人口の減少してきており、人口減少社会で働き手を少しでも確保する必要性が高まっています。

そこで、育児や介護と仕事を両立できるようにして、労働人口が減らないようにしようとするのが安倍内閣の働き方改革の狙いです。

ですから、今後ということでかんがえていくと、妻の妊娠出産によって専業主婦(主夫)になるのではなく、また職場に復帰してフルタイムで働くということが多数派になるように政府は誘導しようとしているのです。

もちろん、強制しているわけではないです。家事と育児に専念したいという人はそうすればいいと思います。しかし、また職場に復帰したとして、ちゃんとその能力に応じたキャリアパスが用意されているならばまた働きたいという人は、そうすることを奨励されるようになっていくでしょう。

現時点で共働きであり、子供を産んだ後も両方がまた働きたいという意欲があるならば、夫婦の収入を合算して住宅ローンの返済計画を考えることは、理にかなっていると思います。

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相談:35歳同い年夫婦、共働きでの住宅ローンは変動か固定か?

居住予定の家族の年齢と年収 家族:わたし(35)、妻(35)
<将来子供一人ほしいと思っています>
年収:私 正社員700万(手取り年収約500万)、妻 正社員600万(手取り年収約450万)
自己資金の額 頭金1200万円(諸費用も払ったうえで600万円ほど残す予定)
物件価格 5700万円
物件のタイプ 23区内新築マンション
借入予定額 4500万円
住宅ローン ローン期間は35年、ボーナス払いなし、元利均等で契約する予定です。
変動金利0.6%の本審査申し込みをしておりますが、心配性の性格のため固定金利も視野に検討しています。
固定金利の第一候補がアルヒのスーパーフラット8Sで、5年の金利優遇を受けられる予定です(当初5年が1.02%、それ以降1.27%(団信込み 6月時点))。
ただ、住信SBIネット銀行の当初固定30年で1.24%というのも気になっている次第です。
相談内容 今の家賃(10.5万)からは住宅ローン返済(固定金利)が2.5万ほど増える、かつ修繕・管理費が2.5万~3万ほどとなると、家計に占める住宅費の割合が増加します。将来子供ができても、妻は産休・育休後復帰予定です。少し妻の収入に頼ったローンになってしまった感じがしており、ここ1か月不安と希望が交錯するような状態です。客観的にみて借りすぎ感はありますでしょうか?
住信SBIネット銀行の当初固定30年で借りて、早期返済した(期間短縮型で繰り上げ返済(5年以上短縮))場合、事実上固定金利になるのではと思ったのですが、どうでしょうか?

共働き期間中は毎月10万繰り上げ返済資金をプールし、かつボーナスも固定資産税や住宅関連保険費用を除いて余った分のある程度は当該プールにいれて、ローン控除も全額プールしていく予定です。

控除終了後にまとまったお金を繰り上げ返済するつもりです(家計と収入をみてですが、軽減返済型で返して毎月の負担を軽くしてさらに繰り上げを進めていく・・・と考えています)

回答①:夫単独では借りすぎ、夫婦共働きなら余裕な場合の考え方

千日は「無理なく完済できる住宅ローン」をシミュレーションするために、4つのルールを提唱しています。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

これをざっくりあてはめて無理なく返済できる住宅ローンの金額をマトリックス表にすると以下のようになります。
(単位:万円)

 年齢/月収 15万 20万 25万 30万 35万 40万
25歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
30歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
35歳 1997 2663 2972 3535 4125 4714
40歳 1997 2357 2630 3043 3550 4057
45歳 1768 2029 2263 2515 2934 3354

この表に当てはめると、夫(35歳)単独の場合は、月収33万円ですので、3535万円から4125万円ですよね。となるとこれから借りようとしている4500万円は少しオーバーしているということになります。

これに対して、冒頭に書いたように夫婦共働きを前提にするのであれば、月収はほぼ2倍になりますよね。となると、4500万円は超余裕で返せる住宅ローンということになります。

「じゃあ問題ないの?」

というと、そうでもないんです。働き方改革っていうのはあくまで政府が育児もしながら夫婦両方がフルタイムで働けるような環境を作っていきたい、という、まだまだ目標段階の話です。実際問題としてそれを実現して、なお、気分よく働き、すくすく子供を育てられるのか?というのは多分に、その人の個別の環境や、資質や、夫婦の協力関係によるものだと思います。

  • 今後の共働きをめぐる労働環境は不確定で流動的です。
  • 今後、共働きしていく夫婦関係は不確定で流動的です。
  • しかし住宅ローン契約によって毎月支払う金額は35年にわたって確定的です。

ですから、もしも共働きということを前提に計画するのであれば、他の要素についてはリスクを基本的に回避するような計画にするのです。つまり、金利変動リスクについては負わない=固定金利にすることでリスクのバランスを取ります。

これに対して、夫単独で返済することを前提に計画するのであれば、収入の面については保守的に悲観的に考えるということです。逆に金利変動リスクについては取りに行くという考え方ができます。「妻の収入はあてにはしていないけど、棚ぼた的に入ってくるもの」という考え方になります。これをもし金利が上がったときのために貯蓄として備えておくという方針です。

回答②:共働きで固定金利で返済するシミュレーション

固定金利についてはアルヒのスーパーフラット8Sと住信SBIネット銀行の30年固定を候補とされています。どちらも固定金利としては甲乙つけがたく、最も有利なタイプの住宅ローンと言えます。

まず金額面で比較をしてみましょう。

  1. 資金繰り面
  2. 借入費用
  3. 支払総額

この3つの面から比較をします。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

4500万円 ①スーパーフラット8S1.02%/1.27% ②住信SBI30年固定1.24% 差異
当初5年返済 127,448 132,123 -4,675
その後毎月返済 132,044 132,123 -79
10年後残高 33,925,452 34,066,978 -141,526
60歳残高 14,873,140 14,904,148 -31,008
住宅ローン控除 3,804,500 3,815,200 -10,700

アルヒのスーパーフラット8Sの方が総じて支払額や60歳の定年時の残高が少なくなるという結果になりましたね。

夫単独の月収が33万とすると、その4割は13万2千円です。ギリギリちょうどというライン上にある感じですね。しかし、60歳の残高は1000万円を超えています。つまり千日のセオリーで考えると、夫単独では、ちょっとしんどい借入金ということになるのです。

ただし夫婦二人で、という考え方でいくと楽勝ですよね。

60歳の完済までの大部分の期間について、基本的に夫婦共働きで生きていくということが前提であれば固定金利がマッチします。

借入費用の比較

借入費用ではほとんど違いはありません。どちらも事務手数料で2%プラス消費税です。そしてフラットの方にはフラット35物件検査手数料がかかります。

(単位:円)

住宅ローン経費 ①スーパーフラット8S1.02%/1.27% ②住信SBI30年固定1.24% 差異
印紙 20,000 20,000 0
登録免許税 45,000 45,000 0
保証料 0 0 0
事務手数料 972,000 972,000 0
フラット35物件検査手数料 64,800 0 64,800
合計 1,101,800 1,037,000 64,800

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

4500万円 ①スーパーフラット8S1.02%/1.27% ②住信SBI30年固定1.24% 差異
借入費用 1,101,800 1,037,000 64,800
60歳まで返済額 39,337,440 39,636,900 -299,460
60歳残高 14,873,140 14,904,148 -31,008
住宅ローン控除 -3,804,500 -3,815,200 10,700
保証料払い戻し 0 0 0
合計 51,507,880 51,762,848 -254,968

わずかにですが、アルヒのスーパーフラット8Sの方が総支払額で有利という結果になりました。

60歳になるまでは25年間ですので、住信SBIネット銀行の30年固定で借りて繰上げ返済すれば実質的に全期間固定金利と同じことになります。

となると自動的にアルヒのスーパーフラット8Sが有利ということになりそうですが、両者の違いはそれだけではありません、団信におおきな違いがあるのです。

住信SBIネット銀行は全疾病保障団信、アルヒスーパーフラットは通常の団信

住信SBIネット銀行の団信には「全疾病保障が無料で付帯する」という、数字にならないメリットがあります。

アルヒのスーパーフラットの団信は通常の団信であり、死亡又は高度障害となった場合にその時点のローンがゼロ円になる保険です。通常のフラット35の団信は身体障害保障も付いてくるのですけど、スーパーフラットの場合はそれが身体障害保障の付かない普通の団信なのでその点注意が必要です。

住信SBIネット銀行全疾病保障 アルヒスーパーフラット
死亡と高度障害のほか、精神障害等を除く全ての病気やケガで働けなくなってもローン返済がゼロ円になる。 死亡と高度障害で住宅ローンがゼロ円になる。
8疾病で12カ月継続して働けなくなったらローン残高がゼロ円になる。 ゼロ円にならない。
8疾病以外の病気やケガの場合でも入院により12カ月継続して働けなかったら、ローン残高がゼロ円になる。 ゼロ円にならない。

ですから、支払が多い分というのはこの場合全疾病保障の値段という風に捉えられると思います。

回答➂:夫単独で変動金利で返済するシミュレーション

すでに0.6%(メガバンク?)の変動金利で審査に通っておられますが、住信SBIネット銀行の変動金利であれば0.457%で現時点では最低金利ですよね。さらに全疾病保障が無料で付帯しますので、変動金利であれば住信SBIネット銀行が有利です。

ただ、現時点で既に審査に通っている0.6%変動金利で検討しましょう。固定金利のスーパーフラット8Sと比較をします。

  1. 資金繰り面
  2. 金利が上がったらいくら繰上げ返済すべきか
  3. (借入費用と)総支払額

この3つの面で解説します。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

4500万円 ①スーパーフラット8S1.02%/1.27% ②メガバンク変動0.6% 差異
前半毎月返済 127,448 118,813 8,635
後半毎月返済 132,044 118,813 13,231
10年後残高 33,925,452 33,091,680 833,772
60歳残高 14,873,140 13,834,743 1,038,397
住宅ローン控除 3,804,500 3,767,500 37,000

変動金利の場合は2つの「四」をクリアすることをお勧めしています。

  • 毎月の元利均等返済額の4分の1以上を貯金する
  • 上記の貯金と元利均等返済額を手取り月収の4割(40%)以下にする

この2つの四を満たすかどうかを確認したうえで借り入れ金額を決めます。変動金利の上昇リスクに対する最低限のラインです。

変動金利の毎月返済額118,813円の4分の1は29,703円です。これと毎月の返済額を足すと148,516円ですね。この148,516円で手取り月収の4割以下になってないと変動金利ではしんどい、ということです。

夫単独の手取り月収は33万円ですからその4割は132,000円です。オーバーしています。金利が上がると厳しくなるということですね。なので、金利が上がったときには、繰上げ返済して残高を減らすことを考えます。

金利が上がったら繰上げ返済する金額はいくらか?

(単位:万円)

4500万円借入から金利上昇したら繰上返済すべき金額
残期間 30年 25年 20年 15年
残高 3910 3298 2671 2028
0.5→1.0% 273 194 127 74
0.5→1.5% 520 373 247 144
0.5→2.0% 745 538 359 210
0.5→2.5% 949 690 464 274
0.5→3.0% 1135 831 562 334
0.5→3.5% 1305 961 654 392
0.5→4.0% 1460 1082 741 447

例えば借入から5年後には、残期間30年になっていて、そのときの残高は3910万円です。

その時点で金利が0.5%から2.5%に上昇したとしたら、949万円を繰上げ返済することで、今後も約11万の毎月の返済で完済できるということです。

このように、金利が上がったときに即座にこれだけの金額を繰上げ返済して元本をコントロールすることが出来るなら変動金利も怖くないのですね。共働きしている短い間に、この表にあがっているくらいの貯金を用意しておけば、たとえ変動金利が上がって夫単独の収入で返済を続ける場合でも耐えることが出来るということです。

目安としては1000万くらいというところでしょう。

総支払額のシミュレーション

では総支払額を比較してみましょう。借入費用は冗長になるので割愛しますね。

(単位:円)

4500万円 ①スーパーフラット8S1.02%/1.27% ②メガバンク変動0.6% 差異
借入費用 1,101,800 1,024,850 76,950
60歳まで返済額 39,337,440 35,643,900 3,693,540
60歳残高 14,873,140 13,834,743 1,038,397
住宅ローン控除 -3,804,500 -3,767,500 -37,000
保証料払い戻し 0 -34,515 34,515
合計 51,507,880 46,701,478 4,806,402

この合計のところを比較してみると、変動金利の方が480万円ほど少ない金額で完済できるという結果になりますね。しかし、もちろんご存知のとおり、変動金利は上がる可能性がありますので、これは絵に書いた餅です。

  • もし金利が上がった場合のときのために、約1000万円は余裕を見ておく必要がある。
  • もし金利が上がらなければ、変動480万円得する。

金利が上がるとは限りません、これは誰にも分かりませんが、変動金利は銀行がいつでも上げることができる金利タイプである以上は、金利の上昇に備えておかなければならないです。

そう考えると、安全を取るのであれば固定金利の方が安心であるということになりますね。

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以上、参考になれば幸いです。

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