定年まであと12年で今から借り換える住宅ローンは変動か固定か?

2021年3月2日

定年退職が見えてきたら住宅ローンもラストスパートです

これから借り換えるなら変動金利か固定金利か?というのも悩ましい問題ですよね。

千日の住宅ローンメソッドでは定年退職までに完済することをお勧めしています。定年までの期間が短かければ、それだけ金利の変動リスクも小さいですよね。

だったら変動金利がいいだろう?と思うんですが、それでもまだ1千万円以上の残高が残っている場合に、できれば金利変動リスクを負いたくないという人は多いです。

人生の後半にさしかかってくると、病気のリスクもだんだん上がってきますし、子どもの学費や親の介護費用など、出費が増えていきますからね。

では、今日のご相談者です。

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相談:40代後半公務員、親の介護もしながら住宅ローンの完済を目指す借り換え

借り換えを検討していますが、変動か全期間固定か悩んでいます。

居住家族の年齢と年収 夫47歳と妻48歳と小5の子ども1人の3人家族です。
生計は妻(公務員)で年収670万です。
主人は実家の親の介護をしており無収入です。
物件のタイプ 新築戸建
当初借入日と借入年数 2011年3月 30年
当初借入額 1800万円
当初の住宅ローンの銀行金利タイプ フラット35当初10年 1.74% 残り25年 2.74%
現在の借入残高 - 1438万円
現在の住宅ローンの銀行、金利タイプ、金利 変わらず当初のままです。
繰上げ返済など ありません。
相談 主人は実家の親の介護で働いておらず、収入が安定している私が働いています。
主人の実家にお金がとてもかかり、貯蓄しても、どかんと支出することがあります。
貯蓄の自信はありますが、実家に支出直後に現金が必要になったとしたら、変動にした場合リスクに備えられるか心配です。
また私が一時的に働けない場合、一定期間は貯蓄から支払い可能なように返済額を低めにし、繰り上げ返済できるとき返すようにしたいのです。変動か全期間固定かどっちがいいですか?

回答:固定期間は定年退職までの12年で必要にして十分

30年の住宅ローンで残り22年ですね。しかし現時点で48歳ですから公務員の60歳定年まで残り12年です。つまり12年で完済する資金計画を立てる、ラストスパートのタイミングを計る時期にあります。

変動か全期間固定か?というご相談ですが、定年までの期間が12年であれば当初固定金利タイプが必要にして十分ではないかな、と思います。

そこで、以下の3つで比較シミュレーションしてみたいと思います。

  • アルヒスーパーフラット借換:フラット35の金利から0.05%引き下げになるので、8月の実行金利は1.29%。
  • 住信SBIネット銀行20年固定:1.26%とフラット35より低金利で全疾病保障団信が無料で付く。
  • auじぶん銀行10年固定:0.65%と上記2つの半分程度の金利で、ガン50%保障団信が無料で付く。ただし固定期間が終わるとけっこう金利が上がる。
1438万円残り22年 現状 スーパーフラット借換 住信SBI20年固定 auじぶん銀行10年固定
当初 1.74% 1.29% 1.26% 0.650%
その後 2.74% 1.29% 1.26% 1.541%※
固定期間 22年 22年 20年 10年

※auじぶん銀行の固定期間終了後の金利は基準金利から0.8%引き下げです。現時点の変動金利の基準金利2.341%を前提にすると、1.541%になるという仮定を置いてます。

固定期間が短いほど金利も安くなりますので、定年までの期間が12年なら10年固定にしておくのがもっともお得な選択ということになります。

では具体的にシミュレーションしていきましょうか。

資金繰りのシミュレーション

(単位:千円)

1438万円残り22年 現状 スーパーフラット借換 住信SBI20年固定 auじぶん銀行10年固定
毎月返済 64 63 62 57
その後毎月返済 70 63 62 62
60歳残高 8,022 7,043 7,032 6,850

固定期間で比較すると、やはり金利が安い分だけauじぶん銀行10年固定への借り換えメリットが目立ちますよね。

その後の毎月返済額は大して変わらない感じですが、それは10年後~12年の2年間だけです。なのでほとんどの期間でauじぶん銀行のメリットを享受できるということです。

定年時の残高(60歳の残高)も最も少なくなります。これは金利を固定している間に多くの元本を減らせているからです。

総支払額のシミュレーション

(単位:千円)

1438万円残り22年 現状 スーパーフラット借換 住信SBI20年固定 auじぶん銀行10年固定
借換費用 0 415 415 415
60歳まで返済額 9,600 9,013 8,985 8,308
60歳残高 8,022 7,043 7,032 6,850
合計 17,623 16,472 16,431 15,573
メリット 0 1,151 1,191 2,049

借り換え費用ではこの3つにほぼ差はありません。

60歳で完済することを前提とした場合の借り換えのメリットは…

  • アルヒスーパーフラット借換:115万円
  • 住信SBI20年固定:119万円
  • auじぶん銀行10年固定:205万円

auじぶん銀行は固定期間が終わると金利が結構上がってしまうのですが、その期間はたったの2年間しかないということでこのような結果になりました。

回答:後半は健康リスクにも気を配ろう

おりしも千日のブログでは次のような記事を公開しました。

定年延長70歳で完済予定の住宅ローンは老後破産リスクと病気のリスクをカバーせよ!

主に60歳を超えた後も定年を延長して住宅ローンの完済を目指す場合の注意点なのですが、40代の後半から50代にかけて、急激に体の衰えを感じる人は多いです。

わたくし千日もまた同じです。

フラット35の団信は身体障害保障つき

2017年10月以降のフラット35の団信には民間銀行の一般団信には無い魅力があります。

死亡に加えて身体障害(身体障害者福祉法1級or2級)についても保障の範囲に含まれるのです。一般の団信は死亡と高度障害になっています。

項目 フラット35団信 一般団信 備考
死亡 住宅ローンがゼロ円  
身体障害 身体障害者福祉法に定める障害等級(1・2級)の「身体障害者手帳」を交付されれば住宅ローンがゼロ円になる。保障の要件が具体的。 高度障害よりも軽い障害であってもフラット35団信で保障される。
高度障害 非常に重い障害状態でその後の生活に重大な支障をきたす状態になると住宅ローンがゼロ円になる。保障の要件が抽象的。 高度障害の一部についてフラット35団信では保障対象ではなくなるものもある。

かなり、保障が厚くなったと言えると思います。

注意点としては『身体障害』と『高度障害』ではそもそもの定義が異なるので、単純に範囲が広がったということではなく、備考にあるように逆に保障対象でなくなってしまうものもあるということですね。

  •  ペースメーカを植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される場合(1級)
  • 人工透析を受けており、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される場合(1級)

ちなみに前述したアルヒスーパーフラット借換の団信はこの新団信ではなく、従来型の一般団信です。アルヒの普通のフラット35への借り換えの場合は新団信です。






ネット銀行の疾病保障団信

おすすめした二つのネット銀行の住宅ローンの詳細を書いておきます。

20年固定では住信SBIネット銀行、10年固定ではauじぶん銀行でしたね。それぞれで無料で付帯する疾病保障特約は次の通りです。

住信SBIネット銀行全疾病保障 auじぶん銀行がん50%保障
精神障害等を除く全ての病気やケガで働けなくなったらローン返済がゼロ円になる。 6カ月の余命宣告をされたら住宅ローン残高がゼロ円になる。
8疾病で12カ月継続して働けなくなったらローン残高がゼロ円になる。 医師にガンと正式診断されたらその時点のローン残高が50%になる。
8疾病以外の病気やケガの場合でも入院により12カ月継続して働けなかったら、ローン残高がゼロ円になる。 入院などの条件なし。

住信SBIネット銀行の全疾病保障

病気になって入院費が高額になっても、高額医療保険制度で自己負担の上限は数万円です。長期間就業できず勤め先からの収入が途絶えた場合でも最長1年6カ月までは傷病手当金で生活を維持できます。

そして、この入院期間が12カ月を超えればローン残高はゼロ円になります。ご相談者の場合は奥様が大黒柱ですし、さらに公務員の共済と組み合わせればかなりの防御力となるでしょう。

auじぶん銀行のガン50%保障

夫婦の収入がほぼ同じくらいで、妻も定年までフルタイムで働くというライフスタイルであれば、早い段階で保障が受けられるauじぶん銀行がマッチします。

6カ月の余命宣告を受けたらローン残高はゼロ円になります。

また、がんと診断された時点でローン残高が50%になります。つまり、今後は返済が半分に軽減されるので、今の家に住みながらパートナーの看病を続けることが出来ます。その後の住宅ローンの負担は大きく軽減されるでしょう。

ご相談者の場合は奥様が大黒柱ですが、ローン残高の半額の貯金を繰上げ返済用に確保しておけば、リスクに対応できますね。貯金もまた保険なのです。

回答:一時的に返済を減らす新生銀行の安心パック

住宅ローンを一時的に払えなくなった場合に、待ってもらうということは、原則として出来ません。

契約で決まった支払を継続できない場合は、個別に銀行に相談して、毎月の返済額を減額してもらうという交渉をしなければならないんですね。

そういうことが有り得るという前提で考えると、ネット銀行はお勧めできません。そうした交渉に対応する人員に人を割くということが無いからです。

その点、フラット35であれば住宅金融支援機構が債権者であり、要するに国ですのでかなりの融通が利きますね。

こちらもご一読ください。

フラット35の知られざるメリットと銀行や営業マンがなぜお勧めしないのか?プロが答えます

また、新生銀行は「安心パック」というユニークな住宅ローンで、所定の要介護状態になっても保険で住宅ローンがゼロ円になる「安心保障付団信」と出費が続く間は返済額を減らせる「コントロール返済」が無料で付帯するのです。

過去、借り換えで利用された人の体験談がありますので、こちらも参考にしてみてくださいね。

新生銀行に乗換えて借換費用がゼロ円以下になった

借り換えを実行しました

その後、借り換えを実行されたというご報告を頂きました。

ご相談させていただき、ありがとうございました。
おかげさまで、本日借り換えの契約をしました。

住信SBIさんの20年固定、実行金利1.36で契約しました。
目先や、支払い総額のお得に左右されず、生きる上で人生を楽しみながら返済できること、返済リスクの体力をつける借り換え選択ができたと思っています。

借り換えで繰り上げ返済が、容易になったので励みたいです。

何を選んでも未来は、わかりませんよね。
何もしないよりは、よかったと思っています。

千日様のご活躍をお祈りしております。

フィードバック頂きまして、ありがとうございます!

そうですね、ちょうどご相談のタイミングは金利が低い時だったので、借り換えのタイミングとして良いタイミングだったと思います。

1.36%でも借り換えメリットは十分にありますし、金利変動のリスクも無いですから良い決断をされたと思いますよ!

何もしないよりは…なんてことは無いと思います。

完済を目指してお互いに頑張りましょうね!

以上、参考になれば幸いです。

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