アラフィフから夫婦共働きでスタートする住宅ローンの考え方

2018年10月28日

老後資金に子どもの学費も考えながらの住宅ローン

 

この住宅ローンは大丈夫でしょうか(無謀ではないですか)?というご相談を頂くことがあります。

年収と年齢からわかる、「無理なく完済できる住宅ローン」をシミュレーションするために、4つのルールを提唱しています。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

これをざっくりあてはめて無理なく返済できる住宅ローンの金額をマトリックス表にすると以下のようになります。
(単位:万円)

 年齢/月収 15万 20万 25万 30万 35万 40万
25歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
30歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
35歳 1997 2663 2972 3535 4125 4714
40歳 1997 2357 2630 3043 3550 4057
45歳 1768 2029 2263 2515 2934 3354

※定年60歳を前提としていますので、定年が65歳の場合は年齢から5歳マイナスして当てはめます。

この金額を超えると、超えた分だけリスクが高くなってくるということです。この一覧表は、完済できるか?というハードルより厳し目に作っています。

おそらく、この金額以上でも住宅ローンを借りることは出来るでしょう。金融機関としては貸金を回収できればOKだからです。その後の老後資金が無くなってしまっても彼らは関知しません。

なので、この表を超えた金額を借りる場合、まず気を配らなければならないのは、老後資金に幾ら残せるのか?ということです。

では、今日のご相談者です。

関連記事
今後50:50の共働き夫婦が住宅ローンの主流になる!年収と世帯年収のギャップでリスク増大 |千日のブログ

広告

相談:身の丈を超えた住宅ローンだと思います白紙に戻すべきでしょうか?

主人の年収から考えますと、かなりの身の丈超えの借入となること。妻である私も正規で勤務していますが定年(60歳定年、65歳まで延長可能)までの期間が短いことなど、不安要素が多くあり、ご相談させて頂きました。

居住予定の家族の年齢と年収 夫46歳・年収460万円(税込)、妻51歳・年収370万円(税込)、子供1人(中学3年生)
自己資金の額 自己資金500万円(残りの貯金は500万ほどになります)
物件価格 3750万円
物件のタイプ 注文住宅 11月末着工、引き渡しは来年3月
借入予定額 3250万円
住宅ローン 具体的な金融機関や金利等を比較することも出来ていない状態です。ハウスメーカーの担当営業マンからは変動金利を勧められていますが、私達は固定金利での融資を考えています。

又、ネットでのやりとりがあまり得意ではありませんので、ネット銀行は避けたいと考えています。

相談内容 現在の生活も主人の収入だけでは生計が成り立たないため、私(妻)の退職後の生活を考えますと、少ない貯蓄額で住宅ローンを抱え、老後破綻してしまわないかと不安になります。
まだ打ち合わせ中ですので、金額を下げるための仕分け作業中ですが、思ったほど下げることが出来ずにいます。
白紙に戻したほうが良いのでは…と考えることもあります。

相談内容も漠然としたもので申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願い致します。

回答①身の丈を幾ら超えているかで、そのリスクを測ります

まずこの住宅ローンが無理なく返済できるのか?ということを最初の表にあてはめてみましょう

ご主人は46歳で月収24万円とすると、表では2263万円が一番近い数字になります。奥様は51歳で表にはありませんが、定年を65歳とすると年齢から5歳マイナスできます。つまり奥様は46歳で月収19万とすると、表では2029万円が一番近い数字になります。

両方を足せば4292万円となりますが、この表は一人で返済する場合の表です。足すのはダメです。

月収を24万円と19万円で合計43万円とするとどうでしょうか?45歳で40万円とすると、表では3354万円のところになりますね。そうなると、一応はレンジ内ということになります。

回答②:資金繰りと総支払額のシミュレーションをしてみます

では実際にシミュレーションしてみます。シミュレーションは二つの側面から行います。

  • 資金繰りの面:毎月の返済は大丈夫か?定年時までに繰上げ返済できるか?
  • 総支払額の面:総支払額ではいくらか?

資金繰りの面が一番大事です。結局、完済できなければ売却するしかなくなるのですから。総支払額の面は手数料も合計した総額でどの住宅ローンが一番支払が少ないかの計算をするものです。できれば安い方がいいね、という見方で考えるためのものです。

今回は3つの住宅ローンを比較してみます。

  • フラット35:金利1.38%(おおむね2019年までこの位の金利で推移すると予想しています)
  • フラット35S:一定以上の性能の住宅であれば当初10年は0.25%引き下げになります。
  • メガバンク変動金利:ネット銀行ではなくリアル銀行の変動金利で低金利を出しているのは三菱UFJ銀行で0.525%です。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

3250万円33年 フラット35 フラット35S メガバンク変動
10年毎月返済 102,218 98,359 89,403
11年以降返済 102,218 101,096 89,403
60歳残高 20,490,382 20,265,713 19,396,161

変動金利は固定金利に比べて毎月1万円ほど安くなります。これは割と大きいですね。しかし、変動金利は金利が上がる可能性がありまして、金利上昇に対応できなければなりません。

つまり、繰上げ返済用の資金を(老後資金とは別に)持っているということが条件です。だいたい600万円から700万円の現金を使えるのであれば変動もアリです。ただ、現状ですと頭金を入れた後に残る貯金が500万円で、これからお子さんの学費も増えていくということを考えるとそうした余裕は無いです。

そうなるとフラット35かフラット35Sということになります。

ただ、もう一つ、大きなハードルは60歳残高ですね。どちらにしても約2000万円です。これから、14年で2000万円の貯蓄を行うことが目標となります。ということは1年で142万円です。

この家を購入するのであれば、ボーナスは一切手を付けずに貯蓄してなおかつ、毎月の月収からお子さんの学費と老後資金をためていく必要があるということになります。

もちろん、14年後に2000万を一括返済せず定年を延長して返済を継続するということも考えられますが、それが可能かどうかは現時点では分かりません。出来なかった場合のことを考えて資金計画を立てる必要があるのです。

総支払額の面のシミュレーション

(単位:円)

3250万円33年 フラット35 フラット35S メガバンク変動
借入費用 575,800 575,800 862,225
60歳まで返済額 17,172,624 16,655,688 15,019,704
60歳残高 20,490,382 20,265,713 19,396,161
住宅ローン控除 -2,800,800 -2,784,800 -2,744,600
保証料払い戻し 0 0 -115,278
合計 35,438,006 34,712,401 32,418,213

※借入費用は概算です。

フラット35とフラット35Sの支払い総額の差額は72万ほどになりました。フラット35Sは一定以上の省エネやバリアフリー性能を有する住宅の購入で受けられますので、建築予算にも影響します。

もちろん、断熱などはその後の光熱費や家での過ごしやすさに影響しますから、あまりケチらない方が良いですし、バリアフリーについても、終の棲家としてお考えであればできるだけ長く我が家で生きるために妥協すべき点ではないと思います。

フラット35Sというのは、全期間固定のフラット35から金利が安くなるものですが、他にもフラット35リノベという制度もあります。

フラット35「リノベ」2018年4月から金利引き下げ幅0.5%になるが、適用範囲は拡大します!|千日のブログ

これはフラット35の借入金利を当初10年間(Aプラン)、または10年間(Bプラン)にわたり0.5%引下げる制度です。フラット35Sよりも大きな引き下げになるのでお勧めです。

丁度良い中古物件を見つけることが出来れば、こちらの方が満足度は変わらず、支払は少なく抑えられる可能性もあるかと思います。いろいろ検討してみてはいかがでしょうか?

以上、参考になれば幸いです。

40代世帯年収600万以上1200万未満の最適住宅ローンランキングを見る

年収400万円台の相談事例とシミュレーションを見る

共働き世帯年収800~1000万円の相談事例とシミュレーションを見る