分割融資のみずほor土地購入時に一括融資の北日本銀行か?共働き夫婦ペアローンのシミュレーション

2018年10月28日

注文住宅の住宅ローン 地銀では土地購入時に一括融資という選択も出来る

 

土地を買って注文住宅を建てる場合、まず土地の購入代金を払わなければなりません。ただし土地の購入では住宅ローンを使えないという銀行がほとんどです。

まだ家が建っていない土地だけを担保にお金を貸すというのは、リスクが高いのです。なので、つなぎ融資という形で無担保のローンを借りるケースがあります。家が建つと住宅ローンへ借り換えます。

つなぎ融資は、無担保ローンの期間は金利が高いのがデメリットです。

そして、もう一つのパターンが分割融資です。家が建つことを前提として土地の購入時と家の建築時の2回に分けて住宅ローンを融資するという方法です。リスクが高いのでメガバンクではみずほ銀行だけがやっています。

分割融資は、金利は安いですが1回目に土地に抵当権を設定し、2回目に建物に抵当権を設定するので2回の司法書士報酬がかかるのがデメリットです。

そして、第3の選択肢として、一部の地銀では「土地購入時に一括融資」という対応をしているところもあるようです。東北地方の地銀では土地購入時に一括または分割融資の対応をする例が比較的多く、宮城県の七十七銀行、山形県のきらやか銀行などがあげられます。

2回の司法書士報酬がかかるのは分割融資と同じですが、土地の購入時点で建物代金も借りることになるので、少し支払利息が多くなるのがデメリットと言えばデメリットでしょう。

今日は、分割融資と「土地購入時に一括融資」の比較のご依頼です。最近増えている収入がほぼ対等の共働き夫婦の連帯保証のケースです。

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相談:40代共働き世帯年収1330万円で注文住宅を建てます分割融資か一括融資か?

注文住宅のため、土地購入、住宅着工時などにお金を払う必要があり、分割融資が必要になります。ネット銀行は保証料がない分事務手数料が高く、分割融資が出来ないなど融通が利かなそうなので今のところ考えていません。

つなぎ融資は利率が高いので、フラット35も我が家には合わないと感じています。

補足情報が必要でしたらご指示ください。どうぞよろしくお願いいたします!

家族の年齢と年収 夫会社員42歳 年収700万、妻会社員41歳年収630万
子供2人(4歳、2歳 今後出産予定なし)
自己資金 祖父母から700万円。夫婦の貯蓄は3300万円
物件価格 6700万円(諸費用込み)土地は3100万、建物は3600万円
物件のタイプ 注文住宅。 10月中に契約、土地の引き渡しは来年1月、建物引き渡しは来秋~冬ごろを予定。
借入予定額 5000万円~6000万円
住宅ローン ・みずほのペアローン 分割融資 変動金利0.525%。事前審査5600万で通りました。
・北日本銀行の住宅ローン 土地購入時に一括融資 「安さん」の連帯債務(借り入れ上限5000万円、当該地域だけのキャンペーンで変動金利0.55%、保証料なし。事務手数料も格安だが、ネットバンキングがなくて繰り上げ返済の手数料が3~5千円だったり、融通利かなそうです。現在事前審査中)。この場合、足りない分は貯蓄から出します。
相談内容 貯蓄もある程度あるので変動で考えているのですが、固定金利がじわじわ上がってきていることから不安になっています。夫は貯蓄をイデコやニーサなどの運用に回したいので貯蓄からはなるべく出したくないと言っています。今考えているプランでの比較分析や、注意点がありましたらお願いします。

住宅ローン控除の恩恵を10年間受けてから早めに返済したいと思ってはいるのですが・・

回答①:みずほの分割融資と北日本銀行「安さん」の土地購入時一括融資を比較シミュレーション

分割融資と土地購入時一括融資の比較をしてみましょう。

  • 土地取得~完成までの支払額は分割融資の方が少ない
  • 融資手数料は北日本銀行「安さん」が安い
  • その後の繰上げ返済などの融通はみずほの方が良さそう

ということですね。まず金額面で比較をしてみましょう。

  1. 資金繰り面
  2. 借入費用
  3. 支払総額

この3つの面から比較をします。

資金繰り面の比較シミュレーション

  • 元利均等返済、35年、ボーナス払いなし。
  • 夫の定年時に一括返済する。

みずほ銀行だと5600万円ですが、北日本銀行だと5000万円ですので、頭金の金額が違いますね。

(単位:円)

みずほ分割融資 5600万 0.525% 北日本一括融資 5000万 0.55% 差異
頭金 11,000,000 17,000,000 -6,000,000
建設中返済 52,138 130,900 -78,762
完成後返済 145,987 130,900 15,087
60歳残高 29,170,490 25,487,756 3,682,734
住宅ローン控除 4,783,400 4,273,500 509,900

最初にいくら頭金に入れるか入れないかという違いがありますが、夫婦の貯金として3300万ありますので、どちらでも大丈夫ですね。

建設は8カ月とし、借入額はみずほ借入2000万円、北日本銀行は5000万円という前提にしています。短い期間ですのでこれが有意な差異になるとは思いません。総額で考えましょう(後述します)。

60歳残高はどちらも1000万円を超えますね。夫婦それぞれで分けたとしても1000万円を超えます。なので、繰上げ返済のための貯蓄は計画的に行ってください。

住宅ローン控除は借入の多いみずほの方が51万円多くなりますね。これも総額で考えましょう(後述します)。

まとめますと、毎月の資金繰りという側面では、両者にそんなに差は無いです。

借入費用の比較シミュレーション

(単位:円)

みずほ分割融資 5600万 0.525% 北日本一括融資 5000万 0.55% 差異
印紙 60,000 20,000 40,000
登録免許税 56,000 50,000 6,000
保証料 1,154,160 0 1,154,160
事務手数料 64,800 108,000 -43,200
司法書士報酬 130,000 130,000 0
合計 1,464,960 308,000 1,156,960

借入費用がぜんぜんちがいますね!配偶者が連帯保証人となる代わりに保証料が不要になるというのが大きいです。

繰上げ返済することで保証料の返金があり、それはこの後の総支払額の比較で出てきますが、さすがにこの差が縮まるほどのものじゃないです。

また、繰上げ返済などの手数料を気にされていますが、100万超の違いの方が遥かに大きいですので、問題にならないと思います。

普通の銀行は連帯保証人にした上で保証料も取りに来ますからね。みずほ銀行は普通の銀行ということです。

また、地味な違いではありますが、5000万円を超えると印紙税が一段高くなってしまいます。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

みずほ分割融資 5600万 0.525% 北日本一括融資 5000万 0.55% 差異
頭金 11,000,000 17,000,000 -6,000,000
借入費用 1,464,960 308,000 1,156,960
18年返済 30,782,400 28,274,400 2,508,000
60歳残高 29,170,490 25,487,756 3,682,734
住宅ローン控除 -4,783,400 -4,273,500 -509,900
保証料返金 -152,936 0 -152,936
合計 67,481,514 66,796,656 684,858

総支払額では、北日本銀行の方が684,858円少なくなるという結果になりました。収支の考え方としては以下のようになります。

最初に600万円の自己資金を多くいれることにより、18年間に684万円の支出が減る。

これを年利とすると、約1.5%ほどの利回りになります。なので、頭金を入れるというのも、自己資金の「運用」として考えられても良いと思いますよ。悪くない運用方法です。

但し、上記の利回りというのは、みずほ銀行と北日本銀行の比較という限定された条件で出てくるものです。つまり、借入手数料が安いということも込みでのものですから、あらゆる銀行で600万円多くいれたら1.5%の利回りがあるということではありません。

回答②:長期金利がジワジワ上がっている…変動金利で借りるリスクは?

2018年7月を境として日本の長期金利が上昇に転じで、今もジリジリと上がっていますよね。

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短期的には変動金利は上がりませんが、完済までの18年というスパンで考えると、ちゃんと上がったときのためのケアをしておく必要があります。

以下の表は5500万円を変動金利0.5%、35年元利均等返済で借りる人の金利上昇リスクを金額にしたものです。

例えば5500万円を金利0.5%で35年元利均等返済ボーナス払いなしであれば、毎月の返済額は142,772円です。金利が上がったときに毎月142,772円の返済で当初の予定通りに完済するには幾ら繰上げ返済しておけばいいか?という物差しです。

(単位:万円)

5500万借入から金利上昇したら繰上返済すべき金額
残期間 30年 25年 20年 15年
残高 4772 4025 3260 2475
0.5→1.0% 339 237 156 89
0.5→1.5% 639 455 303 176
0.5→2.0% 916 656 440 257
0.5→2.5% 1164 841 567 334
0.5→3.0% 1389 1014 688 408
0.5→3.5% 1599 1171 799 478
0.5→4.0% 1785 1320 906 545
0.5→4.5% 1957 1457 1004 609
0.5→5.0% 2119 1582 1099 671

例えば借入から5年後には、残期間30年になっていて、そのときの残高は4772万円です。

その時点で金利が0.5%から2.5%に上昇したとしたら、1164万円を繰上げ返済することで、今後も約14万の毎月返済で完済できるということです。

このように、金利が上がったときに即座にこれだけの金額を繰上げ返済して元本をコントロールすることが出来るなら変動金利も怖くないのですね。

現時点の自己資金で頭金を入れた後に2900万円残る計算となっていますので、変動金利の金利上昇に対応できると思います。

回答➂:夫婦対等の共働き世帯の住宅ローンのリスクの考え方

最後は夫婦連帯保証のリスクについて、検討しておきましょう。「連帯保証」という言葉とは裏腹なのですが、これはそれぞれ単独の個人としてのリスクです。

  • 債権者の立場:別個の個人を連帯して責任を負わせることで債権を強く保全できる。
  • 債務者の立場:それぞれの個人の責任が重くなる。

債権者の利益は債務者の損失なのです。そういうものなんですね。

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千日は「無理なく完済できる住宅ローン」をシミュレーションするために、4つのルールを提唱しています。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

これをざっくりあてはめて無理なく返済できる住宅ローンの金額をマトリックス表にすると以下のようになります。
(単位:万円)

 年齢/月収 15万 20万 25万 30万 35万 40万
25歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
30歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
35歳 1997 2663 2972 3535 4125 4714
40歳 1997 2357 2630 3043 3550 4057
45歳 1768 2029 2263 2515 2934 3354

この表に当てはめると、

  • 夫(42歳)単独の場合は、月収30万円として、3043万円。
  • 妻(41歳)単独の場合は、月収27万円として、2630~3043万円。

となるとこれから借りようとしている5000~6000万円は夫婦の収入を合算すればOK、それぞれではオーバーしているということになります。

毎月の支払という側面ではそれぞれが分担して払えばいいので、「何か」があったときにしかそのリスクは顕在化しませんが、リスクはリスクとしてあるということを肝に銘じておかなければなりません。

みずほのペアローンも、北日本銀行の連帯保証も「最終的な支払の責任」という側面ではそれぞれが全額の責任を負っています。

既に審査に通ったみずほのペアローン場合、その総額は5600万円ですね。これに対して、残っている自己資金の額は2900万円あります。

これを貸借対照表という財政状態を表す決算書の形で表現すると、以下のような図式になります。

つまり…

  • 夫婦のどちらかが働けなくなった場合や、
  • 夫婦が離婚した場合、

2100万円という金額がそれぞれ夫婦単独で負う責任の額ということになります。2100万円ならば、それぞれ単独でレンジ内にあると思いますよ。

以上、参考になれば幸いです。

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