30代妻が産休に入る共働き夫婦におすすめの住宅ローンは?

2024年2月26日

妻の出産によるリスクと収入減を住宅ローンの選択で加味する

近年は女性が出産後に職場に復帰して仕事を継続できる環境が整ってきていまして、夫婦の年収に大きな差のない50:50に近い割合の共働き夫婦が増えています。

共働きで購入できる家の価格=組める住宅ローンの金額もそれなりに高いものになり、ワンランク上の物件に手が届くようになります。

そして、初めての家を買う人の年齢は30代が一番多いです。その時期は妻が出産する時期とも重なります。妻の出産によるリスク、産休による収入の減少も考えて住宅ローンを選んでおかなければ、早い段階で破綻してしまうリスクがありますね。

今後はこうした、30代の共働き夫婦特有の住宅ローンのリスクと、その対策法が求められる世の中になってきます。今日はまさにそんなご夫婦からの相談です。

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相談:今後もう一人子どもが欲しい30代共働き夫婦におすすめの住宅ローンは?

土地を購入して住宅ローンの組み方について調べている際にこちらのサイトに行き着き、家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本も購入して勉強させていただいております。
自分達で検討するのに限界を感じ、お忙しいところ大変申し訳ありませんがお知恵を頂けると幸いです。

家族の年齢と年収 夫 会社員 37歳 年収 940万
妻 会社員 34歳 年収 480万 (現在育休中 育休前の年収 4月時短にて復帰)
子 1歳 ※2人目も検討中です
自己資金の額 1800万
物件価格 6880万(土地 4080万建物 2800万)
物件のタイプ 注文住宅で(引き渡し月は未定ですが一年以内)
借入予定額 5380万円
住宅ローン ローンは変動と固定で悩んでおり、変動であれば、ハウスメーカー紹介の埼玉りそなのローン(HP掲載のものと変わりません つなぎ融資をする為りそなにしています)
固定であれば2割の頭金を入れることで0.1%金利が引き下げになる、ARUHI(アルヒ)のスーパーフラット8を検討しております。
相談内容 千日様のメソッドに従い、変動金利で当初支払いを抑えて10年後には1500万を繰り上げ返済しようと計画しております。
しかし夫の年収の変動や妻の育休、時短が予想されるためどちらがいいか決められずにいます。
上記のローン以外に検討すべきローンがあればご教示頂けると幸いです。

夫の年収は会社の業績によって左右される為800万から900万で年ごとに変わります。現時点の年収より上がる可能性は低いと思います。

回答①:夫単独では身の丈を超えるが夫婦の合計収入では余裕のある住宅ローンです

本を読んでいただきまして、ありがとうございます。本の中で紹介している4つのルールは「完済できる住宅ローン」「老後資金も残せる資金計画」を突き詰めたものです。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利(1.38%)
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

この4つのルールを、35歳40歳の各年収でスタートし、無理なく完済できる住宅ローンの金額として、表にすると以下のようになります。

(単位:万円)

年収 月収 35 35歳
400 20 2663 2440
600 25 3350 2860
700 30 3755 3248
900 35 4255 3680
1000 40 4714 4103
1200 50 7031 5982
1500 60 8317 7049
2000 80 10860 9160

高年収になると、住居費が5割以上になっても生活に支障は出てきませんので、年収1200万からは月収の5割でシミュレーションしています。なので、1200万から上は返せる住宅ローンの金額が増えています。

当てはめると、ご主人の年収約1000万→4103~4714万円ですから5380万円の住宅ローンは安全圏を超えています。しかし、ご夫婦の収入を合算すると約1500万円→7049~8317万円ですから余裕ですね。

つまり、ご主人単独ではレンジを超えていますが、共働き夫婦の収入を合わせればレンジ内という、今の共働き夫婦に多いケースです。

このケースの場合、妻が産休に入り収入が減るとか、そもそも出産により生命のリスクを負うという場合には、共働きの収入をベースとして家の購入を決めるのは危険なんです。

とはいえ、現に働いていて、出産後も働く意思があり、それだけの収入があるのにそれを無いものと考えて計画するのは、石橋を叩き過ぎて叩き割っていると考える人も居るでしょうね。

その中間位の折衷案で、しっかり確立した住宅ローンの組み方、返し方というのは、まだ今のところこの世にはありません。それを考え、実践していくのが今の時代に家を買おうとする私たちなのだと思っています。

回答②:収入面にリスクがあるなら金利面でリスクを取らない

個別の数字を計算する前の大きな方針として、許容範囲を超えるリスクを取らないことをお勧めします。家を購入するという仕事はチャレンジではないからです。むしろディフェンスだというのが私の考え方です。

家ってそういうものですよね、自分と家族の人生を守るイレモノです。これが原因で家計が破綻する可能性があるなら、そんなもの買わない方がマシです。

なので、計算する前の段階ですけど、基本的には固定金利をお勧めします。変動金利は今は低いですが、6か月ごとに金利の見直しをして、銀行がいつでも上げることができる金利タイプです。今までたまたま上がらなかっただけのことです。

ただし変動金利でも5年ルールと125%ルールがありますので、すぐに毎月の支払が増えるわけではありません。5年間は据え置かれますし、一旦上がっても125%までが上限です。

なら安心か?というとそうでも無いのが人間ですよね。産休中に金利が上がっても「復帰してから稼ぎまくればイイや」と平然としていられる人ならいいですが、そういう人は少ないと思います。

出産の期間のみ金利を固定するという考え方

しかし、出産を予定している夫婦は絶対に変動金利を選べないのか?というとそれは極端に過ぎるように思うんですよね。

そこで、以下のような当初固定金利があれば、出産の期間だけ金利変動リスクを取らない変動金利にできるんじゃないの?と考えたわけです。

  • 出産、産休の期間だけ金利を固定する短期間の当初固定金利。
  • 当初固定期間が終わった後も金利の引き下げが大きい。

この条件にちょうど当てはまるのが三菱UFJ銀行の3年固定です。ご覧のとおり、当初の3年間はメガバンクの変動金利よりも低金利です。

固定期間が終わった後も基準金利から1.85%も引き下げになるので、今の変動金利ならば0.625%です。全くそん色の無い低金利です、もちろんつなぎ融資にも対応しています。

資金繰り面の比較シミュレーション

《前提条件》

  • アルヒのスーパーフラット8(1.23%)と埼玉りそな変動(0.525%)と三菱UFJ銀行の3年固定(0.39%→0.625%)の3つを比較する。
  • それぞれ35年元利均等返済、ボーナス払いなし。
  • 住宅ローン減税は10年(経過措置で消費税は8%)。
  • まず10年後に1500万円繰上げ返済し、60歳のときの残高を全額返済する。

(単位:円)

5380万円35年 アルヒスーパーフラット1.23% 埼玉りそな0.525% 三菱UFJ3年固定0.39%→0.625%
毎月返済 157,704 140,252 137,057
当初終了後 157,704 140,252 142,175
10年後残高 40,711,089 39,423,255 39,478,028
繰上返済 15,000,000 15,000,000 15,000,000
60歳残高 5,419,146 5,284,216 5,208,940
住宅ローン控除 4,000,000 3,994,200 3,994,700

毎月の返済額では17千円変動金利が安くなります。3年固定ではさらに安くで2万円少ない支払です。

出産、産休にかかる期間について、最も少ない支払で固定されるというのが3年固定のメリットです。

通常の当初固定金利は固定期間を過ぎると金利の引き下げ幅が大幅に減ってしまうのですが、三菱UFJ銀行は固定期間経過後の金利引き下げ幅が大きいので、埼玉りそなの変動と比較して毎月2千円しか増えません。

月に2千円ならば、妻の復帰後の家計に影響するような差ではないですね、誤差の範囲だと思います。

住宅ローン減税がある10年間(消費増税後)は繰上げ返済しませんので、その間にお金を貯めるということになります。1年に150万円ずつ貯蓄していけば、10年後には1500万円貯まる計算ですね。

最初の10年で住宅ローンの完済資金1000万円を貯める方法を教えます -千日のブログ

この1500万円の繰上げ返済によって期間を短縮することとします。10年後には48歳でそろそろ定年が視界に入ってきますので、ラストスパートですね。

そうすると、60歳の残高は500万台となりますので、ムリなく完済できるでしょう。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

5380万円35年 アルヒスーパーフラット8 埼玉りそな変動 三菱UFJ3年固定
借入費用 1,435,880 1,355,018 1,355,018
60歳まで返済額 56,633,856 52,026,528 52,349,952
60歳残高 5,419,146 5,284,216 5,208,940
保証料戻り 0 -112,380 -112,380
住宅ローン控除 -4,000,000 -3,994,200 -3,994,700
合計 59,488,882 54,559,182 54,806,830

借入費用は概算ですが有意な差にはならないです。

アルヒスーパーフラット8と埼玉りそなの変動金利との差は約493万円です。これは60歳までの金利を固定させる保険料のようなものです。

そして、埼玉りそなの変動金利と三菱UFJ銀行3年固定の差は約25万円です。これは出産と産休にかかる3年間だけ金利を固定させる保険料ということになりますね。

なので、以下のような使い分けになります。

  • 全体的に金利変動に保険を掛けるならアルヒスーパーフラット8。
  • 出産と産休の期間だけ重点的に保険を掛けるなら三菱UFJの3年固定。

(参考)変動金利の金利変動リスクのボリュームを把握する

変動金利で借りるのであれば、金利が上がった際の5年ルールと125%ルールを理解しておく必要があります。

  • 5年ルールとは、金利が変動しても5年は元利均等返済額を変えないというルールです。
  • 125%ルールとは、1度に上げる元利均等返済額は125%を上限とするというルールです。

このように変動金利は、金利が変動しても毎月の返済額は変動しないようになっています。それはいいのですが、毎月の返済額が増えなければ元本が底だまりに残ってしまい結局は最終回に一括で返済しなければなりません。

なので、変動金利が上がったときに毎月の返済額を維持したまま予定の年数で完済するには、金利が上がった時点で繰上げ返済する必要があるのです。

例えば、5380万円を変動金利0.5%で35年元利均等返済で借り入れた場合、毎月の返済額は139,657円です。金利があがってもこの支払いを維持したまま、当初の35年で完済するには、その時点で幾ら繰上げ返済すればいいか?という金額を計算するのです。

(単位:万円)

5380万借入から金利上昇したら繰上返済すべき金額(万円)
残期間 30年 25年 20年 15年
残高 4,675 3,943 3,193 2,425
0.5%→1.0% 326 232 152 88
0.5%→1.5% 622 446 295 172
0.5%→2.0% 891 643 429 251
0.5%→2.5% 1,135 825 555 328
0.5%→3.0% 1,357 994 672 399
0.5%→3.5% 1,560 1,149 782 469
0.5%→4.0% 1,746 1,294 886 534

5年後には残り30年になっていて、そのときの残高は4,675万円です。その時に4,675万円でこの家が売れれば残債なしです。

ここではこれがリスクの規模だという見方をします。

その時点で金利が0.5%から2.5%に上昇したとしたら、1,135万円を繰上げ返済することで、今後も139,657円の毎月の返済で完済できるということです。見方を変えれば、金利が上がらない前提のシミュレーションよりも1,135万円総支払額が増えるということです。

  • 金利が上がったら1,135万円の支払い増を受け入れる。
  • 固定金利にしておけば493万円の支払い増で確定できる。

変動金利は6か月ごとに、このリスクに晒されています。少なくとも出産期間についてはリスクフリーとするための保険を買うのは悪くない選択だと思います。

まとめ:アルヒのフラット35と三菱UFJ3年固定から選ぶことをお勧めします

ということでアルヒのフラット35と三菱UFJ3年固定から選ぶことをお勧めします。

ARUHI(アルヒ)はフラット35では国内最大手、住宅ローン全体でも取り扱い高で5位ですので信頼度があります。全国170か所以上の支店があって対面で相談できるのも強みです。今のフラット35の金利で借りられる人は少なくとも過去最低の金利で借りていると言えます。基本的におすすめです。

三菱UFJ銀行は3年固定と10年固定に力を入れています。ここ最近はずっと金利を下げて来てますね。12月18日から、住宅ローンの申し込みから契約までインターネットで完結できるサービスを開始しています。

これは大手行では初の導入で、店舗への訪問や書類の郵送が不要になり、銀行もコスト減となるものです。

ネット銀行では、申し込みはネットでできますが紙の契約書に署名押印して郵送する必要がありますが、三菱UFJ銀は電子署名の認証を行うセコムトラストシステムズの技術を活用し、その電子証明書で個人認証ができるようにしています。

住宅ローンの申し込みはネット上で済ませるケースが増えており、三菱UFJ銀行でもネット経由が1割程度に増えましたが、さらに増やしていかなければこの投資を回収することは出来ないでしょう。

なので、今後の三菱UFJ銀行の営業方針としてはネット専用住宅ローンの件数を増やすことで、できるだけ店舗での人件費を減らすということになりますよね。

また、今のところ他行に住宅ローンを奪われている状況です。これから巻き返しを図っていくはずです。金利を下げてくるでしょう。

以上、参考になれば幸いです。

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