地銀のつなぎ融資・分割融資からの借り換えで住信SBIネット銀行で借りる方法

2021年3月2日

土地の取得から家の完成までの間には金利の変動リスクがある

土地を購入して注文住宅を建てる場合、土地をまず買わなければなりませんが、土地の購入代金は住宅ローンでは借りることが出来ません。

住宅ローンは「住居として使用する家屋」が対象のローンだからです。土地の段階や家を建てるまでの中間金には「住宅ローン」を借りられないのが原則です。

そこで、二つの方法があります。つなぎ融資と分割融資です。

つなぎ融資とは建物が完成して住宅ローンの融資実行が出来るようになるまでの「つなぎ」として借りる融資で、基本的には無担保で融資を受けるものです。なので、金利は住宅ローンよりも遥かに高くなるのが特徴です。

家が完成したら、つなぎ融資分と残代金の合計で住宅ローンを借りて、つなぎ融資のローン残高を返済します。そこから先は普通の住宅ローンです。

分割融資とは建物が完成する前に住宅ローンを申し込み、完成前から分割して融資を受ける方法です。この回数は通常2回までとされているようです。契約は住宅ローンの一部となりますので、金利は住宅ローンの低い金利が適用されます。

しかし、融資を受けるタイミングで土地に対して抵当権を設定する必要があります。そのため、住宅購入時の優遇税率は受けられず、少し割高な登録免許税となります。また抵当権の設定を代行してもらう司法書士への報酬も融資のタイミングで必要になります。

つなぎ融資と分割融資に共通する問題として、土地を買ってから家が完成するまでの間には数か月の期間があり、その間に金利が上がると高い金利で借りなければならなくなるということですね。

  • つなぎ融資:全額が完成時の金利の適用となる。
  • 分割融資:家の建築代金の金額が完成時の金利の適用となる。

なので、ある程度の金利変動リスクを負う覚悟は必要となります。分割融資の方は家の建築代金(約半分)だけとなるのでいくらかリスクは少なく済みます。

注文住宅はつなぎ融資と分割融資どっちがトクか?|千日のブログ

家が完成するまではつなぎ融資や分割融資で借りて完成してから住信SBIネット銀行に借り換える方法

つなぎ融資や分割融資に対応している金融機関は限られています。特に金利の低い住信SBIネット銀行では取り扱いをしていません。対応してくれるのは、主に地銀です。しかしちょっと金利が高いケースがあります。

そこでお勧めしているのが、家が完成するまではつなぎ融資や分割融資で借りて完成してから住信SBIネット銀行に借り換えるという方法です。

家が完成すれば、つまりそれは住宅ですから、住宅ローンが借りられるのです。つなぎ融資や分割融資からの借り換えで融資を受ける条件は2つです。

  1. 借入内容がわかる資料(契約書や返済予定表)を提出すること。
  2. 住宅ローンの実行日当日に抵当権を抹消すること。

1.借入内容が分かる資料を提出する主旨

住宅ローンは住居の購入代金のための借入金です。つまり、その分割融資やつなぎ融資の借入というのが、本当にこのマイホームの土地や建物の代金として借りたものだということを証明する資料が必要だということです。

なので、土地の売買契約書やその土地代金の借入契約書があれば良いのですね。普通、これが無いということはあり得ないので、問題なくクリアできる条件です。

2.住宅ローンの実行日当日に抵当権を抹消する主旨

住宅ローンには「第一順位の抵当権」を設定する必要があります。「第一順位の抵当権」とは、債権者(銀行)がその貸金を回収するために、対象の不動産を処分(売却や競売)した代金を一番に受け取る権利です。

つなぎ融資や分割融資をした地銀の抵当権が付いたままだと、第2順位になってしまいますよね。

第2順位ではお金を貸しませんよ。第1順位にするために、先に設定した抵当権がある場合はこれを抹消してくださいね。

というのが、この条件の主旨です。「なんだか難しそうだな…」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

「住宅ローンの借り換え」というのは一般的に行われていますよね。この抵当権の抹消は住宅ローンの借り換えで当たり前に行われている定型的な業務なのです。いつ借り換えるのか?という日にちをフィックスすれば、あとは借り換え先の金融機関の司法書士にお任せです。

住信SBIネット銀行はSBIマネープラザというリアル店舗での対応もしていますので、より具体的な条件について対面で相談することが出来ます。ネット銀行の金利の安さに加え、全疾病保障が金利上乗せ無しで付きます。お勧めですよ。

相談:つなぎ融資や分割融資での金利変動リスクを減らす方法は無いでしょうか?

千日さんの著書家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本を購入後、色々と勉強した限りでは、銀行に金利変動リスクを負わせる固定金利が良いのかなと思っています(妻も同意見)。

また、つなぎ融資よりは分割融資の方が良いとの事で、分割融資をしてくれる千葉銀行で借りようと考えておりました。ネット銀行では、分割融資などのきめ細かな対応は難しいと聞いていたので・・・。

分割融資では、土地の融資を受ける際に住宅併せた総額を決めると聞いていた為、固定で借りれば土地購入時点での金利でFIXすると思っておりました。

しかし、住宅の代金は完成時点での金利が適用(こちらが金利変動リスクを負う)と聞き、困ってしまい、御相談させて頂いた次第です。

家族の年齢と年収 夫(41)病院勤務医 年収1500万,妻(41)専業主婦
子(3)
自己資金の額 頭金0の予定(タイミング的に出費の重なった時期で現金化し易い預貯金は100万円くらい、その他はNISAで運用し、現金化は考えていません)
物件価格 6500万(土地3000万、住宅3500万)
物件のタイプ 木造注文住宅です。土地を数ヶ月以内に購入する予定ですが、住宅の方のメーカー等は未定です。
1年程度で決定し、住宅ローン控除を土地+建物併せて受けられるように、2020年12月までには住めるようにする予定です。
借入予定額 6500万
住宅ローン 自身が口座を所有している5銀行(みずほ・三井住友・千葉興業・千葉・京葉)のうち、土地を購入してから建物建築まで1年以上猶予があるのは、千葉銀行と京葉銀行でした。
土地の先行取得の為、確認すると千葉銀行は分割融資可であり、京葉銀行はつなぎ融資です。

  • 千葉銀行1.28%(35年固定)
  • 京葉銀行1.9%(35年固定)
相談内容 千葉銀行の分割融資ほぼ1択で検討しておりましたが、建物が建った時は実行月の金利になるとの事でした。将来のリスクを取るということで、困ってしまい、御相談させて頂いた次第です。
ちなみに、金利が安い千葉銀行でも、恐らくつなぎ融資は可能かと思います。

保険については、かなり見直しましたが、死亡・高度障害時及び、障害等級1~4級・介護度1で50万円/月が65歳まで出る収入保障・就業不能保険に加入しております。

その上で、住信SBIネット銀行の全疾病保障があれば、心強いですね。

回答:複数の選択肢を用意しておき、金利が上がったら別の金融機関で借りる準備をしておく

土地を取得してから完成まで1年を見ておられますが、できれば6か月程度になるように、土地の選定と業者選定を同時進行にした方が金利変動リスクを抑えられるものと思います。

期間が短い方が単純に変動要因は少ないですからね。ただ、将来のことは誰にも予測は出来ません。期間を長くとった方が結果的に安い金利で借りられる可能性だってあります。

ただ、私のアプローチは未来を読むことではないです。所詮そんなものは、当たるも八卦当たらぬも八卦のレベルにしかならないからです。

視野を広くとって複数の選択肢を用意しておき、状況が変わったときに即座に修正できるようにしておくことをお勧めします。

今の金利水準で1年が経過する場合のシミュレーション

まずプランAですね。今の1.28%という低金利で全期間固定金利で借りられるならばつなぎ融資か分割融資のどっちが安くなるか?というシミュレーションをしてみましょう。

前提条件は以下のとおりです。

  • つなぎ融資:1年間は土地代金3000万円を2.475%の変動金利で借りて毎月利息だけを支払う(金利は上がらないとする)。完成時には土地建物合計6500万円の住宅ローンを35年固定1.28%で借りる。
  • 分割融資:1年間は土地代金3000万円を1.28%の35年固定で借りる。家の完成時には3500万円を1.28%の35年固定で借りる。

なお、医師の場合は制度としての定年がありません。シミュレーション上の定年を70歳とし、35年元利均等返済、ボーナス払いなしで支払って70歳のときにその残高を一括返済するものとします。

また、ご相談者は2018年の現在41歳ですが完成の2020年には43歳になっていて、43歳から住宅ローンをスタートするものとします。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

6500万円35年 千葉銀 つなぎ融資 千葉銀 分割融資 差異
土地代毎月 61,875 88,657 -26,782
毎月返済 192,089 192,089 0
10年後残高 49,293,869 48,441,524 852,345
70歳残高 17,519,010 16,459,577 1,059,433

つなぎ融資と分割融資にそれほど差はないです。つなぎ融資は変動金利の利息だけを払います。金利変動リスクに晒されているのですが、利息だけの支払いなので、それほど敏感になる必要は無いと思います。

土地代だけを払う間は、今の家賃(約12万)とのダブルになりますが、仮に利息が倍になっても、一応は払える範囲内になっています。

分割融資ならば固定金利ですので、土地代金だけの1年間についても金利が固定されているのが魅力ですね。金利変動リスクを抑えられる点で、分割融資がお勧めです。

なお、定年時の残高は現在の年収くらいですので、問題なく貯蓄できるでしょう。

借入費用の比較シミュレーション

(単位:円)

6500万円35年 千葉銀 つなぎ融資 千葉銀 分割融資 差異
印紙 120,000 40,000 80,000
登録免許税 65,000 155,000 -90,000
保証料 1,344,720 1,344,720 0
事務手数料 54,400 109,000 -54,600
司法書士報酬 100,000 250,000 -150,000
合計 1,684,120 1,898,720 -214,600

印紙代はつなぎ融資の方が高くなります。借入金額5000万円以下の印紙代は2万円、5000万超は6万円だからです。つなぎで6万円、本融資で6万円の合計12万円になります。これに対して分割融資は土地代金で2万円、建物で2万円の合計4万円になります。

登録免許税については0.4%ですが、住宅用土地建物については軽減税率の0.1%となります。つなぎ融資は抵当権の設定をしないので本融資の時に軽減税率0.1%が一回だけです。これに対して分割融資の土地に抵当権を設定するときは軽減税率が無く0.4%、その後家については軽減税率の0.1%となります。

事務手数料、司法書士報酬については概算ですが、分割融資の方が割高となりますね。

トータルでは約20万円分割融資の方が高くなりました。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

6500万円35年 千葉銀 つなぎ融資 千葉銀 分割融資 差異
借入費用 1,684,120 1,898,720 -214,600
70歳まで返済額 62,979,336 63,300,720 -321,384
70歳残高 17,519,010 16,459,577 1,059,433
保証料戻り -31,200 -31,200 0
住宅ローン控除 -4,600,000 -4,600,000 0
合計 77,551,266 77,027,817 523,449

借入費用では、つなぎ融資が約20万円少ないです。70歳までの返済額でも、つなぎ融資の方が約32万円少ないです。

しかし、70歳残高でつなぎ融資の方が約106万円多くなります。これは、分割融資が1年間にわたり土地代金の返済を行い元本を減らしているのに、つなぎ融資では高めの利息だけ払って元本が減っていないためです。

トータルとしては、分割融資の方が約52万円少なくなるという結果になりました。

最初はつなぎ融資が安くて、後で追いぬかれるという形ですので、もっと早期に繰上げ返済するなどすれば順位が逆転することがあります。

また、土地を買ってから3か月ほどで家が完成するような工場生産ユニット系ならば分割融資よりもつなぎ融資の方が総額でも安くなるでしょう。

なので、ある仮定を置いた条件では分割融資が有利となりましたが、これがあらゆるケースに当てはまるものではないということは、覚えておいてくださいね。

金利情勢が変わり住信SBIネット銀行の変動金利で借りる場合

長期金利は日々変動しています。一時的に高騰する場合は住宅ローンの金利も上がってしまいます。そこで変動金利についてもBプランとして持っておくことをお勧めします。

変動金利では住信SBIネット銀行が最も低金利ですね。さらに、直近の決算を見る限りにおいて、財政状態は良好です。この低金利でも十分に利益を出せている、三井住友トラストホールディングスの子会社です。

まだ金利を下げる余力を残していると見ています。

参考記事

【予想的中】2019年1月の住宅ローンが最大0.1%下がりました!年齢年収別最適な住宅ローン・先読みランキングも更新! -千日のブログ

そこで冒頭にもご紹介した、完成と同時に住信SBIネット銀行へ借り換えるなら?という前提でシミュレーションしてみましょう。

前提条件は以下のとおりです。

  • つなぎ融資:1年間は土地代金3000万円を2.475%の変動金利で借りて毎月利息だけを支払う(金利は上がらないとする)。完成時には土地建物合計6500万円の住宅ローンを住信SBIネット銀行の変動金利0.457%に借り換える。
  • 分割融資:1年間は土地代金3000万円を1.28%の35年固定で借りる。家の完成時には土地建物6500万円を住信SBIネット銀行の変動金利0.457%に借り換える。

あとの前提は同じです35年元利均等返済ボーナス払いなし。現在41歳ですが完成の2020年には43歳になっていて、43歳から住宅ローンをスタートするものとし、70歳で完済します。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

6500万円35年 つなぎ融資から住信SBIへ借り換え 分割融資から住信SBIへ借り換え 差異
土地代毎月 61,875 88,657 -26,782
毎月返済 167,498 165,900 1,598
10年後残高 47,476,661 47,023,842 452,819
70歳残高 15,786,380 15,635,922 150,458

さっきと同じく、有意な差はないですね。

変動金利の場合は2つの「四」をクリアすることをお勧めしています。

  1. 毎月の返済額の4分の1を貯蓄する。
  2. 貯蓄と毎月の返済額の合計を手取り月収の4割以下にする。

詳しくはこちら。本の方にも書いてますよね。

金利タイプ選びのセオリー

手取り月収60万として、ちゃんとクリアできているので、変動金利で金利が上がっても資金繰りで困るということは無いでしょう。

借入費用の比較シミュレーション

(単位:円)

6500万円35年 つなぎ融資から住信SBIへ借り換え 分割融資から住信SBIへ借り換え 差異
印紙 120,000 80,000 40,000
登録免許税 65,000 185,000 -120,000
保証料 0 57,690 -57,690
事務手数料 1,451,600 1,470,360 -18,760
司法書士報酬 100,000 250,000 -150,000
合計 1,736,600 2,043,050 -306,450

分割融資の保証料の57,690円の意味は最初に前払いする土地の3000万円の保証料620,640円から1年後に借り換える際に返戻される562,950円を差し引いた金額です。

借り換えるので借入費用は、そのままストレートに千葉銀行で借りるよりも多くかかりますが、その増加分に違いが出てきます。

つなぎ融資から住信SBIへ借り換える場合は、約5万円の増加です。これは千葉銀行で借りる場合の保証料と住信SBIの融資手数料の差だけです。

分割融資から住信SBIへ借り換える場合は、約15万円の増加になります。千葉銀行のために設定した抵当権を抹消して住信SBIのために抵当権を設定しなおす費用がオンされるためです。

つなぎ融資は無担保(抵当権を設定しない)ので借り換えがスムーズで費用も少な目になるのですね。このことが、総支払額にどう影響するのか?やってみましょう。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

6500万円35年 つなぎ融資から住信SBIへ借り換え 分割融資から住信SBIへ借り換え 差異
借入費用 1,736,600 2,043,050 -306,450
70歳まで返済額 55,011,852 54,815,484 196,368
70歳残高 15,786,380 15,635,922 150,458
住宅ローン控除 -4,600,000 -4,600,000 0
合計 67,934,832 67,894,456 40,376

分割融資がつなぎ融資よりも4万円ほど少なくなりましたが、本当に僅差ですよね。借入費用は概算の部分が多いですから、厳密に計算すると逆転している可能性もあります。

一旦設定した抵当権を消してまた設定し直すという手間がかかっているのが大きいです。


以上、参考になれば幸いです。

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