借換と金利交渉のセオリー

2019年10月1日

借換(銀行の乗換)と金利交渉の3か条

以下は当サイトに寄せられた様々な借り換えの事例から導き出された3か条です。

  1. 平日に銀行まで行かなくても電話だけで交渉を進められる。
  2. 明確な数字を示さないと、銀行に有利な条件しか出して来ない。
  3. 借り換えが面倒でも、安くなるなら借り換える明確な意思を示す。

金融機関の乗り換えと金利交渉は表裏一体です。乗り換えるという意思を明確にしないと、先方も本気にはなりません。先方を本気にすれば、簡単に話は進みます。

ここではどうすれば、金融機関の担当者から利下げを引き出せるか?という一点に絞ってお話ししましょう。当サイトに寄せられた借換交渉の実例については、

借り換えのカテゴリー記事一覧

をご参照ください。基本的にこちらの意思を伝えるだけですから電話で十分なんです。特に一回目の電話はこちらの要件を伝え、本人確認するだけの時間ですから、長くても15分程度でしょう。

  • 他行の方が安いことは融資担当者も十分承知しています。

メールなどは証拠が拡散するので、銀行側も全て口頭のやり取りを望んでいます。電子データで利率の引き下げ例が拡散すると収拾がつかなくなるからです。

借換コスト<借換えによる返済減という客観的データを入手します。

銀行のホームページにあるシミュレーションで、実際に幾ら元利均等返済が減るかを把握しておき、その総額が借り換え費用を上回る事が条件です。

  • 借り換えた方が具体的に幾ら得かいうことを確認しておきましょう。

実際に借り換えを検討している銀行で仮審査を通しておき、新旧両方の銀行から借り換えにかかる費用の実費見積りを聞いておくと間違いないです。

経済的に合理的な判断をする姿勢を示します。

  • 借り換える金融機関の仮審査を通しておく。
  • 借り換えにかかる費用の見積もり(手数料や返還される保証料)を問い合わせる。

仮審査を通したからといって必ず本審査にしなければならないという事はありません。 また本審査に通ったからと言って必ず借換えなければならないという事もありません。違約金もありません。

いつでもストップがきくのに、やってないと相手も甘く見ます。経済的に合理的な決断をしないと見られると、相手からギリギリの条件を引き出せません。 信用情報を照会すれば、実際に他行で審査を受けているか、他行の照会履歴で分かるようになってます。

借換で得する借入残高と残期間と金利引き下げ幅の関係

ある相談者からこんな質問を受けました。

借り換えについてですが
①残り期間10年以上
②残り残高1000万以上
③現状の金利と借り換え後の金利差が1%以上
この3つの条件に当てはまらなければ得することができないのでしょうか?

誰かが言い始めたんでしょうけど、間違った情報です。特に金利差が1%以上というところがほとんど間違いです。間違った情報で、借換の機会を奪われている人が実に多いです。

金利が下がれば下がるほど借換費用を取り返しやすい。というのは誰でも想像できますよね。

それだけではありません。

  • 借入残高が多いほど、利息の節約効果が高くなるので借換に有利
  • 残り期間が長いほど、利息の節約効果が高くなるので借換に有利

こういうことです。

実際に借換費用を取り返すために必要な金利の引き下げ幅を、借入残高と残り期間で表にしてみました。

借換費用を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅の表

借換費用を取り戻すのに必要な金利差をマトリックス状の表にまとめました。縦の列が借入残高、横の列は残り期間です。

借入残高が多いほど、借換費用を取り戻すのに必要な金利の引き下げ幅は少なくて済むということが分かりますよね。

また、残り期間が多いほど、借換費用を取り戻すのに必要な金利の引下げ幅は少なくて済みますよね。

  • 借換費用10万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
10 0.40 0.20 0.14 0.10 0.08 0.07
15 0.27 0.13 0.09 0.07 0.05 0.05
20 0.20 0.10 0.06 0.05 0.04 0.04
25 0.16 0.08 0.06 0.04 0.03 0.03
30 0.14 0.07 0.05 0.04 0.03 0.03
35 0.12 0.06 0.04 0.03 0.03 0.02
  • 借換費用20万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 1.56 0.79 0.53 0.40 0.32 0.27
10 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
15 0.53 0.27 0.18 0.14 0.11 0.09
20 0.40 0.20 0.14 0.10 0.08 0.07
25 0.31 0.16 0.11 0.08 0.07 0.06
30 0.27 0.13 0.09 0.07 0.05 0.05
35 0.23 0.12 0.08 0.06 0.05 0.04
40 0.20 0.10 0.06 0.05 0.04 0.04
  • 借換費用30万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 2.32 1.17 0.79 0.59 0.47 0.40
10 1.17 0.59 0.40 0.30 0.24 0.20
15 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
20 0.59 0.30 0.20 0.15 0.12 0.10
25 0.48 0.24 0.16 0.12 0.10 0.08
30 0.40 0.20 0.14 0.10 0.08 0.07
35 0.34 0.17 0.12 0.09 0.07 0.06
40 0.30 0.15 0.10 0.08 0.06 0.05
  • 借換費用40万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 3.07 1.55 1.04 0.78 0.63 0.52
10 1.56 0.79 0.53 0.40 0.32 0.27
15 1.05 0.53 0.36 0.27 0.22 0.18
20 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
25 0.63 0.32 0.22 0.16 0.13 0.11
30 0.53 0.27 0.18 0.14 0.11 0.09
35 0.45 0.23 0.16 0.12 0.10 0.08
40 0.40 0.20 0.14 0.10 0.08 0.07
  • 借換費用50万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 3.82 1.93 1.29 0.97 0.78 0.65
10 1.94 0.98 0.66 0.49 0.40 0.33
15 1.30 0.66 0.44 0.33 0.27 0.22
20 0.98 0.50 0.33 0.25 0.20 0.17
25 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
30 0.66 0.33 0.22 0.17 0.14 0.12
35 0.56 0.29 0.19 0.15 0.12 0.10
40 0.49 0.25 0.17 0.13 0.10 0.09
  • 借換費用60万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 4.56 2.30 1.54 1.16 0.93 0.77
10 2.32 1.17 0.79 0.59 0.47 0.40
15 1.56 0.79 0.53 0.40 0.32 0.27
20 1.17 0.59 0.40 0.30 0.24 0.20
25 0.94 0.48 0.32 0.24 0.19 0.16
30 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
35 0.68 0.34 0.23 0.17 0.14 0.12
40 0.59 0.30 0.20 0.15 0.12 0.10
  • 借換費用70万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 5.29 2.67 1.79 1.34 1.07 0.90
10 2.70 1.36 0.91 0.69 0.55 0.46
15 1.81 0.92 0.61 0.46 0.37 0.31
20 1.37 0.69 0.46 0.35 0.28 0.24
25 1.10 0.56 0.37 0.28 0.22 0.19
30 0.92 0.46 0.31 0.24 0.18 0.16
35 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
40 0.69 0.35 0.24 0.18 0.14 0.12
50 0.55 0.28 0.19 0.14 0.12 0.10
  • 借換費用80万円を取り戻すのに必要な金利引き下げ幅

(単位:%)

百万円 5年 10年 15年 20年 25年 30年
5 6.01 3.03 2.03 1.52 1.22 1.02
10 3.08 1.55 1.04 0.78 0.63 0.52
15 2.07 1.04 0.70 0.53 0.42 0.35
20 1.56 0.79 0.53 0.40 0.32 0.27
25 1.25 0.63 0.42 0.32 0.26 0.22
30 1.05 0.53 0.36 0.27 0.22 0.18
35 0.90 0.46 0.31 0.23 0.19 0.16
40 0.79 0.40 0.27 0.20 0.16 0.14
50 0.63 0.32 0.22 0.16 0.13 0.11

いかがですか?少なくとも1%は下がらないと損だというのは全く何の根拠も無い、間違った情報であることがお分かり頂けたら幸いです。

実際に借換費用を計算してみよう

借換費用の内訳についても、ご相談者の実例によって当サイトに蓄積されています。随時ブログにアップしています。読めば概ねこちらの早見表と近似していることがお分かりいただけると思います。

民間銀行から民間銀行への借換費用の内訳と計算方法

借換とは、元の銀行に対するローンを一括返済して次の銀行で新しくローンを借りることです。その時にかかる費用とは2つに分類できます

元の金融機関に払う一括返済手数料と保証料の返金

  • 一括返済手数料は3.3万円(税込み)
  • 住宅ローン保証料の返金額(後述)

元の銀行に対しては、元の金銭消費貸借契約で規定していた借入期間よりも短い期間で完済することになります。 銀行(債権者)としては、受け取れたはずの利息が、債務者の都合で受け取れなくなる訳ですから、一定の手数料を取る訳です。 手数料の金額は銀行によって微妙に違いますがだいたい32,400円(税込み)くらいです。

また住宅ローン保証料を一括前払いしていた場合、期日前に全額繰上げ返済することで残り期間に相当する部分が返金されます。詳しくは後述します。

借換先の金融機関で払う新規借入手数料

  • 融資手数料は3.3万円(税込み)
  • 印紙税は1万円から2万円
  • 登録免許税は一律0.1%
  • 司法書士報酬は5万円~10万円
  • 住宅ローン保証料

利息の清算や住宅ローン保証料の清算があります。これらはその時に払ったり返ってきたりするのでお金が動いている感じがありますけど借換の損益に影響しません。もともと払うものだからです。ただし保証料については、完全に返金されず『敷引き』のような感じで取られる部分がありますので差引3万円としています。

これは最も一般的な都銀の住宅ローンでの借換費用の例です。例外もあります。

例えばネット銀行など金利や手数料の安さを売りしている金融機関だと、住宅ローン保証料は無しというところもありますね。

その場合は融資手数料という形でほぼ住宅ローン保証料に相当する金額を取られます。少し割安にはなりますが融資手数料ですから借換時に返ってこないというカラクリです。

もしも元の銀行で保証料が無かったという場合は、乗り換え先の銀行で借りるときの保証料が上乗せとなります。乗り換え先の銀行で保証料が無い場合は、おそらくその分融資手数料が保証料並になっているでしょう。

民間銀行からフラット35への借換費用の内訳と計算方法

フラット35への借換も、基本的には同じですけど、フラット35特有のポイントがあります。確認しておきましょう。

元の金融機関に払う一括返済手数料と保証料の返金

  • 一括返済手数料は3.3万円(税込み)
  • 住宅ローン保証料の返金額(後述)

民間銀行のところで説明したのと同じです。

借換先のフラット35取扱い金融機関での新規借入手数料

  • 融資手数料は3.3万円(税込み)
  • 印紙税は1万円から2万円
  • フラット35検査手数料は一律6.6万円
  • 登録免許税は一律0.1%
  • 司法書士報酬は一律5万円~10万円
  • 住宅ローン保証料はゼロ円

フラット35は住宅ローン保証料はゼロ円です。なので、もし逆にフラット35から民間銀行へ借り換える場合には保証料の返金はありませんので、注意してくださいね。前述のネット銀行と同じパターンです。

フラット35に特有の借換費用のポイント

フラット35に特有の借換費用のポイントは、以下の二つです。

  • 住宅ローン保証料がゼロ円であること。
  • 団信は金利に込みになっている。団信を抜くオプションもあり、その場合は金利から0.2%引き下げになる。

住宅ローン保証料は不要

利息以外の住宅ローンの費用で特に大きいのが、銀行の系列の保証会社に払う住宅ローン保証料です。住宅ローン保証料とは、債務者が返済不能となったときに保証会社が銀行に代位弁済することを保証してもらうための手数料です。

保証料は債務者の条件によっても異なりますが、おおむね元本の3~4%くらいを考えておけば、当たらずとも遠からずと言われます。

フラット35に借り換える場合は、住宅金融支援機構がローンを保証又はローンを買い取りますので、この保証料が不要となるんです。

団信を無しにすることもできる

万が一、返済の途中で加入者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金で住宅ローンの残額が返済される保険で、普通の住宅ローンは加入が義務でその保険料は金融機関が負担してます。

フラット35では、もともと加入が融資の条件になっていませんが、2017年10月の申込からは、金利に団信保険料が込みとなっていて、0.28%となっています。

  • あえて団信に加入しない場合(民間の生命保険の方が安い場合)
  • 健康上、団信への加入ができない場合(大きな病気をした)

このようなケースでは団信に加入しないこともできます。その場合は団信込みの金利から0.2%引き下げとなります。

なかなか複雑ですが、これらのソロバンを弾いて借換先を考える必要があるんですね。

全額繰上げ返済で前払いした保証料はどのくらい返ってくるか?

前述の保証料の返金額がいくらか?を計算する表です。銀行としては途中で一括返済(解約)することを前提にした情報開示はあまり好みませんし、保証会社とは別会社ですから銀行の担当者も自分では計算できないです。

しかし、業界としての共通の計算式があります。こちらはご相談者からいただいた資料から作成した表です。参考になると思います。

元利均等返済で借入金額100万円あたりの戻し保証料の一覧表

(三菱東京UFJ銀行)

(単位:円)

借入期間 経過年数 1年 2年 3年 4年 5年
保証料総額
5年 4,500 2,889 1,583 695 170 0
10年 8,544 6,747 5,201 3,887 2,790 1,895
15年 11,982 10,158 8,528 7,079 5,797 4,672
20年 14,834 12,998 11,331 9,822 8,458 7,231
25年 17,254 15,411 13,724 12,181 10,772 9,487
30年 19,137 17,291 15,593 14,032 12,599 11,284
35年 20,610 18,765 17,060 15,489 14,042 12,709
借入期間 経過年数 6年 7年 8年 9年 10年
保証料総額
10年 8,544 1,168 656 288 73 0
15年 11,982 3,692 2,848 2,131 1,531 1,040
20年 14,834 6,130 5,146 4,271 3,498 2,819
25年 17,254 8,318 7,256 6,293 5,423 4,639
30年 19,137 10,078 8,975 7,966 7,045 6,205
35年 20,610 11,482 10,354 9,317 8,365 7,492
借入期間 経過年数 11年 12年 13年 14年 15年
保証料総額
15年 11,982 653 361 159 40 0
20年 14,834 2,227 1,716 1,285 923 627
25年 17,254 3,935 3,306 2,746 2,250 1,814
30年 19,137 5,440 4,745 4,116 3,547 3,034
35年 20,610 6,691 5,958 5,288 4,676 4,118
借入期間 経過年数 16年 17年 18年 19年 20年
保証料総額
20年 14,834 393 217 96 24 0
25年 17,254 1,435 1,107 829 596 405
30年 19,137 2,574 2,162 1,796 1,472 1,187
35年 20,610 3,610 3,149 2,731 2,353 2,013
借入期間 経過年数 21年 22年 23年 24年 25年
保証料総額
25年 17,254 254 140 62 16 0
30年 19,137 939 725 543 390 265
35年 20,610 1,707 1,434 1,191 976 767
借入期間 経過年数 26年 27年 28年 29年 30年
保証料総額 31年 32年 33年 34年 35年
30年 19,137 166 92 40 10 0
35年 20,610 622 480 350 258 175
110 61 27 7 0

以上、参考になれば幸いです。



Posted by sennich