金融機関の審査ラボ
金融機関の審査項目と最新の審査のトレンド
金融機関の審査は我々にとって、ほぼブラックボックスです。特にこれから家を買おうという人にとってはなおさらですよね。
ここでは、金融機関の審査で見る項目について、国土交通省が金融機関に対して実施した民間住宅ローンの実態調査(平成27年度)から、最近の審査のトレンドを分析します。
調査対象は国内の金融機関1,264機関です。
回答機関数 | |
---|---|
都銀・信託銀行他 | 14 |
地銀 | 63 |
第二地銀 | 37 |
信金 | 253 |
信組 | 135 |
労金 | 13 |
農協 | 729 |
生保 | 4 |
損保 | 1 |
モーゲージ等 | 15 |
合計 | 1,264 |
殆どの金融機関が回答していますので、これを見ればどの金融機関か分からなくても、ほぼそのトレンドが読み取れるというわけです。
金融機関は何を審査しているか?
これは公表されません。しかし、国土交通省は知ってます。なんてったって「お上」なんですから。
その審査項目を知っている国土交通省が調査した結果ということは?
この調査結果の項目というのが、すなわち金融機関の審査項目のほぼ全てだと推定出来るんです。そういう見方でこの調査結果を見ていくと金融機関の審査の実態というものが見えてきます。
では始めますね。
どの金融機関も重視する項目
27年度調査 | 26年度調査 | |
---|---|---|
完済時年齢 | 99.3% | 99.3% |
健康状態 | 98.4% | 96.3% |
担保評価 | 97.8% | 96.3% |
借入時年齢 | 97.5% | 97.6% |
勤続年数 | 96.4% | 95.9% |
年収 | 95.6% | 94.8% |
連帯保証 | 92.6% | 90.3% |
どの項目も9割以上の金融機関が審査している項目です。特に知識が無い人でもなんとなく、こういうところは見てるんだろうなと思うような項目ですよね。
最も重視しているのは完済時の年齢と健康状態
完済時の年齢は最も多くの金融機関が見る項目です。以下はさらに何歳を上限としているかという結果です。
完済時の年齢の限度(回答数1,255)
- 65歳未満:12
- 80歳未満:989
- 75歳未満:98
- 70歳未満:15
- なし:1
- その他:152
数字は回答している金融機関数です。
完済時の年齢上限を80歳未満としている金融機関が最も多いですね。これは誰もが80歳まで借りれられるという意味ではありません。実質的に資産や収入がなければ無理です。
殆どの人は定年までに完済しますが、借入期間は定年以降までにして借りる人が多いというのもあります。期間は長くしておいて、毎月の元利均等返済額は低くしておき、実際は繰上げ返済しているんですね。
なお、健康状態というのは団信に加入できるかどうか?というポイントです。年齢としては借入時の年齢が一つのラインになります。これについても上限を設けている金融機関が多いです。
借入時の年齢の限度(回答数1,233)
- 75歳未満:16
- 70歳未満:179
- 65歳未満:303
- 60歳未満:42
- 55歳未満:4
- その他:197
数字は回答している金融機関数です。
住宅ローンを借りるなら65歳までという上限を設けている金融機関が一定数あります。ただ、この項目については回答している金融機関が少ないので、全体を反映しているかというと、少し疑問ですね。
担保評価は融資判断に「影響しない」と答えた金融機関もある
住宅ローンは購入する物件に第一順位の抵当権を設定するんです。我々が払えなくなった場合は、その物件を処分(任意売却したり競売したり)して払うということになります。
当然、その担保評価は大事ですよね。調査の結果もそれを反映しています。しかし、ごく一部ですが「融資判断に影響しない」と答えている金融機関が67機関もあるんです。
担保評価は融資判断に影響するか(回答数1,236)
- 融資判断に影響する:736
- 融資判断に影響せず:67
- 融資判断の参考にする:440
- その他:4
数字は回答している金融機関数です。
担保評価が低くて審査に通らない、または、希望の融資額に達しないという方には朗報ですよね。もう少し視野を広くとって金融機関を探してみることをお勧めします。
勤続年数は半数以上の金融機関で1年以上で可
なんとなく、勤続3年は必要だというのが定説のようになっていいますけど、勤続だけでいうとそんなことはないみたいですよ。
審査って一つの要素だけで決まるものではありません。
最低勤続年数(回答数1,218)
- 3年以上:366
- 2年以上:94
- 1年以上:639
- その他:199
数字は回答している金融機関数です。
一年以上と回答しているが半数以上を占めていますね。また、これまでは転職したら勤続がゼロからスタートという金融機関が多かったですけど、最近のトレンドでは条件を満たせば前職の勤続も合算して実質的に判断する金融機関も増えています。
年収が少ないという理由だけで落ちることはない
年収が多いに越したことはありませんけど、年収だけで審査に落ちるということはありません。ネットのウワサなどでは「〇〇が理由で落ちた」などと、さも理由が一つであるかのように言っていますけど、一つ一つのハードルはそんなに高くないのです。
この結果を見ればわかると思います。
融資可能な最低年収(H29年度回答数1,170)
- 100万以上:292
- 150万以上:586
- 200万以上:71
- 250万以上:11
- その他:210
数字は回答している金融機関数です。
すごく低いですよね、この理由は年金生活で貯蓄は沢山あるような人も対象としているからです。住宅ローン控除がありますから、借りた方がトクということもあるのですよ。
保証会社による連帯保証が必要
殆どの住宅ローンでは、フラット35を除いて保証会社による保証が必要になります。そして、その保証料は住宅ローンの利用者が負担することになっています。
保証会社による連帯保証(回答数1,170)
- 系列保証会社の保証が必要:803
- 連帯保証は不要:47
- 外部保証会社の保証が必要:518
- その他:189
数字は回答している金融機関数です。
大半が系列保証会社なり外部の保証会社なりの補償が必要と回答しています。この保証料が結構高いんですよね。金利上乗せだと0.2%位です。
しかし、ごく一部に保証が不要と答えている金融機関もあります。新生銀行などは保証料を取らないことで有名ですよね。しかしそういう金融機関は、その分だけ金利が高いとか、変動金利の変動リスクが高いというB面があります。
そう簡単に美味い話は無いのです。
どの金融機関も比較的重視する項目
27年度調査 | 26年度調査 | |
---|---|---|
営業エリア | 92.4% | 91.9% |
融資率(購入の場合) | 90.7% | 91.6% |
融資率(借換の場合) | 88.4% | 91.5% |
返済負担率 | 87.4% | 96.6% |
カードローンなど信用情報 | 77.5% | 85.6% |
雇用形態 | 77.1% | 74.9% |
所有資産 | 68.0% | 24.4% |
フルローン(融資率100%)でも大半の金融機関で審査は通る
年収のところでも述べましたが、一つの要素だけで審査の判断をしているわけではありません。融資率とは「物件価格」に対する「借入れ」の割合です。
購入の融資率上限(回答数1,147)
- 80%以内:137
- 90%以内:21
- 100%以内:819
- 110%以内:34
- 120%以内:19
- 150%以内:6
- その他:163
数字は回答している金融機関数です。
融資率100%というのは物件価格の全額を借り入れるということですね。大半が融資率100%以上でも融資するという回答結果です。
100%超という回答もありますけど、これは手数料についても借り入れることが可能ということです。ただし、金利は全く優遇されません。場合によっては住宅ローンの金利の5倍以上の金利が適用されますので、お勧めしません。
返済負担率は45%以内が目安ですが貯蓄も出来るように計画を
返済負担率とは、1年間の返済金額の総額が年収に対してどの程度の比率になっているかを言います。この返済負担率については注意が必要なんです。
返済負担率の上限(回答数1,105)
- 50%以内:3
- 45%以内:187
- 40%以内:29
- 35%以内:37
- 30%以内:20
- 20%以内:2
- その他:46
数字は回答している金融機関数です。年収は税抜きか税込みかは不明。
なるほど、返済負担率は45%までという金融機関が多数派ですね。
金融機関は返してもらえさえすれば、住宅ローン利用者の老後資金がゼロでもいいのです。
ですから、返済負担率を45%以内の計画を立てれば融資してもらえるかもしれませんが、老後破産へ一直線ということになりかねないということです。
なので、当サイトでは、このように推奨しています。
- 1カ月の返済額は税抜き月収の40%以内に抑える。
- ボーナス払いは絶対にしない。
ぜひこちらもご一読くださいね。
https://jutakuloan-muryousoudan.com/theory-jutakuloan/
カードローン等の他の債務の状況や返済履歴
カードローン等の他の債務の状況や返済履歴というのは、全国銀行個人信用情報センター(KSC)や、株式会社 シー・アイ・シー(CIC)などの信用情報です。
他の借入残高があると、フラット35などでは概ねその10倍の金額だけ融資可能金額が減ってしまうようですよ。住宅ローンを借りる時は車のローンなどはキレイにしてからの方が良いですね。
ただ、この信用情報を参考にする金融機関は26年度85.6%から27年度77.5%に減少しています。この回答率が下がっているということは、過去に延滞などをしたことがあり、その情報が時効(1年~5年)で消えてない状況であっても住宅ローンの審査を通す金融機関が増えているということですね。
また、こんなウワサがあるそうです。
複数の金融機関に審査を出すと不利になるらしい。
そんなこと、まったくありません。デマです。
こういうデマを流すのは、おそらく悪質な不動産屋ですね。
不動産会社は、お客を提携銀行に紹介すると紹介料を銀行から受け取ります。マージンを不動産会社に多く払う住宅ローンというのは、その費用が金利に乗ってくるということです。つまり利用者にとってメリットの少ない住宅ローンということになります。
お客が提携銀行以外の金利の安い有利な住宅ローンで審査に通ってしまい、そっちの方で融資が実行されると、紹介マージンが入ってこなくなってしまいます。
こういうことを言う営業マンには注意しましょう。けして油断してはいけません。
派遣社員や契約社員であっても融資可能な金融機関がある
上記の結果から、4行に1行の割合で雇用形態を重視していない銀行があるということがわかりますよね。派遣社員や契約社員であることが原因で審査に通らなかったからといって諦めるのは早計ということです。
雇用形態での制限(回答数974)
- 派遣社員は融資の対象外:569
- 契約社員は融資の対象外:507
- 自営業者は融資の対象外:25
- その他:333
数字は回答している金融機関数です。
信金、信組など営利を目的としていない金融機関や、フラット35などの国の出先機関が取り扱う住宅ローンであれば審査に通る可能性が上がると思われます。
所有資産の重要性が27年度になって急上昇
絶対に無ければならないということは、ないのですが26年度から27年度にかけて最も重要度が増したのが所有資産ですね。
グラフの中でもひときわ目立っていますね。
つまり、自己資金です。他の項目でハンデがあったとしても、自己資金が十分にあれば挽回できる可能性が広がったと考えられます。常々言ってますけど、マイホームの購入に必要なのは十分な自己資金と冷静な判断です。
その他の審査上の参考とする項目
27年度調査 | 26年度調査 | |
---|---|---|
国籍 | 64.9% | 63.1% |
取引状況 | 59.5% | 64.8% |
業種 | 38.4% | 42.5% |
雇用先の規模 | 30.1% | 32.8% |
家族構成 | 29.9% | 29.5% |
性別 | 21.1% | 19.8% |
その他 | 6.6% | 10.1% |
雇用先の規模は意外と重要性が低い
当サイトに様々なご相談が寄せられますが、一部上場なのに審査に落ちたということも聞きます。雇用先の規模は意外と重要性が低いのです。
これよりも重要な要素でハンデがあると、勤め先の会社がいかに良くても挽回は難しいということです。
つまり、
- 勤め先が一部上場の大企業だからといって過信は禁物です。
- 逆に中小の有限会社だからといってビビる必要もありません。
意外に性別も見ている
男女雇用機会均等法が施行されて久しいですが、男女差というのは住宅ローンにはまだ残っているのですね。「正味のはなし、この人返せるかな?」という判断の指標ですから、これは規制の対象になりません。
ただ、低い水準ではあります。ですから、妻が外で働いて夫は専業主夫でという家庭でも、ほぼハンデなく住宅ローンを借りることが出来るということですね。