住宅ローン控除の全て

2019年7月8日

住宅ローン控除の全パターンを分かりやすく解説

住宅ローン控除(正式には住宅等借入金特別控除といいます。)の恩恵で当初10年間は逆に利息がマイナスになるような状態になっていますね。

でも、それはあくまで住宅ローン控除を満額受けられることが前提です。もしも控除が受けられないことが後から分かっても後の祭りです。

住宅ローン控除は住宅を取得した年の年末調整又は翌年の確定申告で申告しますので、『実は控除を受けられなかった』とか『満額受けられなかった』ということが分かるのは後からなんです。

ここでは、住宅ローン控除=住宅借入金等特別控除について税金や法律に詳しくない人でもわかりやすく説明します。

納める税金からマイナスすることを控除というんですね。

各年の12月31日のローン残高×1%をその年の所得税からマイナスする減税措置で、新築・中古マンションの購入又は要件を満たすリノベーションやリフォームをして、6カ月以内に住み始め、住宅又はリフォームローンを借りている人は、以後10年間の各年分の所得税から年度末の借入金残高の1%の額をマイナスすることが出来ます。

 

《目次》

住宅ローン控除を受けられる人

住宅ローン控除の条件には、控除を受ける人の条件、家屋の条件、借入金の条件の3つがあります。ここでは控除を受ける人の条件を説明します。

  • 取得の日から6カ月以内に住み、なおかつ12月末まで住み続けている
  • 合計所得金額が3,000万円以下

取得の日から6カ月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいる人

新築でも中古でも取得の日=引渡しを受けた日ということです。住宅ローン控除では所有権移転登記した日を取得の日とすることが通常の事務です。

居住の用に供したのを証明するのは住民票です。ですから移転登記の日付から6カ月以内に住宅ローン控除を受ける人(世帯主)の住民票を移しておかなければなりません。

住民票の日付はどうしようもありませんが、取得の日については、登記の日以外でも証明する書類が別途あれば登記の日以外にすることが出来ます。

契約書の引渡し日付、鍵引渡し証の日付などです。

法律の世界で不動産の登記は自分の所有権を第三者に知らしめる手段(対抗要件といいます)ですので、『実質的な所有権の取得の日と同じとは限らない』という考え方があるからです。

控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下の人

これだけ稼いでいるなら、減税してあげる必要ないでしょ?という主旨です。多くの説明はいらないと思います。

住宅ローン控除の上限

住宅の種類による控除の上限は以下のように定められています。

  • 一般の住宅:最高40万円(売主が個人で消費税が非課税の場合20万円)
  • 認定長期優良又は低炭素住宅:最高50万円

所得税額よりも住宅ローン控除の方が多い場合は翌年度の住民税から控除することが出来ます。住民税から控除できる上限は13万6,500円です。

住宅ローン控除の上限は1年で40万円(認定長期優良又は低炭素住宅は50万円)ということですが、もう一つの上限は所得税+翌年度の住民税(上限13万6,500円)です。税金がマイナスになるということはありません。

税込み年収と所得税、住民税、住宅ローン控除の上限の一覧は次の通りです。

(単位:万円)

年収 所得税 住民税 住宅ローン控除
200 2.80 6.35 9.15
300 5.53 11.81 17.34
400 8.64 18.02 22.29
500 13.94 24.44 27.59
600 20.36 30.86 34.01
700 31.91 38.08 45.56
800 47.54 45.90 50
900 62.76 53.50 50
1000 79.93 62.09 50
1100 99.20 71.53 50
1200 120.77 80.91 50
1300 142.97 90.56 50
1400 174.64 100.22 50
1500 205.12 109.45 50

なので、各年収に対応するローン残高の上限を並べると以下のようになりますね。

  • 年収200万円→住宅ローン上限915万円
  • 年収300万円→住宅ローン上限1734万円
  • 年収400万円→住宅ローン上限2229万円
  • 年収500万円→住宅ローン上限2759万円
  • 年収600万円→住宅ローン上限3401万円
  • 年収700万円→住宅ローン上限4556万円
  • 年収800万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収900万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1000万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1100万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1200万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1300万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1400万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1500万円→住宅ローン上限5000万円

上限を5000万としていますが、もちろん建物の種類がによって上限が2000万ないし4000万となることもあります。

上記は、あくまで目安ですので正確には源泉徴収票と納税証明書でご自身の納税額を確認しましょう。配偶者控除とか扶養控除などがあると上記の目安よりも税額は低くなりますので、家を買おうという人はたいてい上記よりも税金は少ないはずです。

  • 所得税は源泉徴収票の「源泉徴収税額」の欄の金額を見てください。
  • 住民税は役所で「納税証明書」を発行してもらえば確認出来ます。住基カードがあればコンビニでも取れます。各自治体によって書式は違いますけど「住民税合計」が書かれている欄が下の方にあるでしょう。

住宅ローン控除の対象となる家屋

家屋とは、不動産登記法上の「建物」と同じ意義のものです。

つまり、屋根と壁があり、基礎によって土地に定着し、住もうと思えば住めるような建物ならば、元が倉庫だろうが馬小屋だろうがこの大前提はクリアできるということです。

それ以降の条件については、新築マンションの場合も中古マンションの場合も殆ど同じです。新築・中古に共通の条件と中古住宅特有の条件があります。

  • 床面積50㎡以上の家屋であること。
  • 総床面積の半分以上が自己居住用の家屋であること。

床面積が50平方メートル以上の家屋であること(新築・中古共通)

壁芯面積が50平方メートル以上でも、内法面積が50平方メートルに満たない場合は住宅ローン控除を受けることが出来ませんので注意が必要です。

特にマンションでは区分所有する部分の床面積で注意が必要です。それは登記簿上表示される、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分を意味します(内法面積)。

マンションのパンフレットに載っている専有面積は壁の中心から内側の面積です(壁芯面積)。この面積の計算方法の違いで微妙に50㎡を満たさないケースがあるのに気づかず購入してしまうケースがあるんですよ。

柱が1本で約1平方メートルです。もしも壁芯面積で50平方メートル台前半なら、内法面積では50平方メートルに満たない可能性が高いですので、注意してくださいね。

床面積の2分の1以上が専ら自己の居住の用に供される家屋であること(新築・中古共通)

店舗兼住宅や賃貸アパート兼住宅の場合でも住宅ローン控除を受けられますが、住宅として使用する部分の面積が半分以上なければ、住宅ローン控除を受けることが出来ません。

あくまで、住宅の取得について減税しようというのが、この法律の趣旨なんです。

ですので、住宅以外の利用に供する部分がある場合は、居住用の床面積の割合までしか住宅ローン控除を受けられないことになっています。

注文住宅で、自宅の中にお店や工房を作ろうと考えている場合は、自己の居住用スペースが半分以上なければいけません。例えばガレージは居住用スペースではありませんのでそれも合わせてということになります。

続いて中古住宅特有の条件を見ていきましょう。

中古住宅の場合は、建築後使用されたことのある家屋であること(当たり前ですね)に加え以下の条件があります。

中古住宅特有の条件

(1)次のいずれかに該当すること

  • イ)家屋が建築された日から取得の日までの期間が20年(耐火建築物については25年)以内であること。
  • ロ)地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるもの(耐震基準)に適合する建物であること。
  • ハ)イ又はロの要件に当てはまらない家屋で、その家屋の取得の日までに耐震改修を行うことについての申請をし、かつ、居住の用に供した日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること。

(2)その家屋の購入時において自己と生計を一にし、その購入後においても引き続き自己と生計を一ににしている親族等から購入したものでないこと。

築年数の上限(中古住宅)

のイの条件については、あまりに古い建物ではだめということですね。もちろん、建築から取得の時点で20年(マンション等の耐火建物は25年)以内なら10年分きっちり控除を受けられます。マンションは通常、耐火建築物ということになりますので25年以内であれば大丈夫です。

ロには書類での証明が必要になります。読者様からの情報によると、新耐震基準(1981年〜)のマンションならば3〜5万円で耐震基準証明書が取得出来るようです。

それに現所有者が証明書を取っていれば、書類を建物と同時に引渡してもらえば費用はかかりません。

ハは工事費用が掛かります(そもそもマンションでは無理です)。

古民家を改修して和モダンでオシャレにリノベーションして住もうというような場合には考えることになります。

同居している家族から購入したら控除できない(中古住宅)

これを許してしまうと、例えば夫名義で10年間住宅ローン控除を受けて、その後同居している妻に売却したことにして、今度は妻が住宅ローン控除を受けるなんてことを繰り返して税金を安くするということが出来てしまいます。

それはダメということです。

住宅ローン控除の対象となるリノベーションとリフォーム

2009年の改正前は居住中の住宅へのリフォームしか認められませんでしたが、改正後は中古住宅を購入してリノベーション・リフォームする場合の工事代金の借入金でも住宅ローン控除できるようになりました。

増改築の場合の住宅ローン控除の条件

  1. 増改築等工事証明書の提出。
  2. 工事費用100万円以上であること。
  3. 工事費用の半分以上を居住用スペースにかけたこと。
  4. 工事をした後の床面積が50㎡以上であること。
  5. 工事をした後の床面積の半分以上を居住用スペースとしていること。
  6. 工事をした後の家屋が主に居住用と認められるものであることこと。

もちろん、取得する中古マンションや戸建てが前述した中古住宅の条件に当てはまっていれば、住宅の購入資金の借入にも住宅ローン控除が受けられます。

1.増改築等工事証明書の提出

リノベーション・リフォーム工事が建築士による証明書によって証明されていることが必要です。工務店に工事を発注する段階で、この証明書が取れるか確認しておく必要があります。

この工事証明書の発行を請け負う建築事務所もあるようです。安い所だと、だいたい2万~3万円位で出してくれるみたいですが、工事の規模にもよるでしょう。

この点、リノベーションの専門業者ならこの条件についてもちゃんと対応して貰えるので安心です。

2.工事の費用の額(補助金などがある場合はそれを差し引いた額)が100万円を超えること

水回り以外の中古マンションの床と壁紙を全部新品にして間取りを少し変えれば、100万円位にはなるでしょうね。また、補助金を申請している場合はそれを差し引きます。

割引券を重複して使えないのと同じ趣旨ですね。まあそうでしょう。

リフォームやリノベーションの工事にあたっては、良い工務店を探して相見積もりを取りましょう。値段があるようで無い世界です。

3.工事費用の半分以上が居住用部分にかけたものであること

店舗兼住宅や賃貸アパート兼住宅のような場合です。リフォームやリノベーションにかかった工事費用の半分超が店舗や賃貸部分にかけたものだったら、住宅ローン控除は受けられません。

購入の時と同じ趣旨です。あくまで住宅として工事する場合にだけ減税の恩恵があるんですね。

4.工事をした後の家屋の床面積が50㎡以上であること

これは、新築・中古のマンションと同じ事です。リフォーム後に内法面積で50平米を下回ってしまうと住居ローン減税を受けられません。そもそも狭くなるようなリフォームをする人は少数派でしょう。

5.工事をした後の家屋の床面積の2分の1以上が居住用であること

これも、新築・中古マンションと同じ趣旨です。リノベーションやリフォームによって、店舗部分や賃貸アパートの床面積が2分の1を超えてしまうとアウトです。

気になるのは新築・中古住居の取得時点では100%居住用とし、その後リフォームによって半分以上を店舗にした場合ですね。

こういう場合、本体の住居ローン控除はどうなるかというと、連動して住宅ローン控除が受けられなくなってしまいますので、リフォームやリノベーションの際には注意が必要です。

6.工事をした後の家屋が主として居住の用に供すると認められること

これは何の為の条件?って思う人は多分悪い人ではありません。実質的に店舗用に使っているのに『オレはここを住居として使ってるんダよ、なんか文句ある?』と主張して不正に住宅ローン控除を受けようとする行為を禁止しているんです。

これまでの『居住の用に供する』という条件はあくまで納税者の主張なんですよね。リフォームやリノベーションをする場合は、その使用目的が恣意的になる危険が高いんです。

そこで、常識的に『ああ確かに居住の用に供しているよね』と認められるということを要件に設定している、というわけです。

住宅ローン控除の対象となる借入金の範囲

借入金の条件には、2つのポイントがあります。

  • 10年という返済期間の条件
  • 住宅の購入又は増改築等の資金に充てるという用途の条件

なお、その借入金が住宅ローン控除の対象となる場合には、その借入金の貸付をした金融機関や工事業者から「住宅のみ」、「土地等のみ」又は「住宅及び土地等」の内訳に応じた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が発行されます。

返済する期間が10年以上の割賦返済のローンである必要があります。つまり、1か月に一回分割返済するとして120回以上で返済する事を意味します。

例えば借入期間が10年であっても、最初の6ヶ月は返済を据え置き、その期間は利息だけを払う条件で住宅ローンを借りたら?返済する期間は9年6ヶ月になるため、住宅ローン控除を受けられません。

繰上げ返済で10年未満にならないように注意

例えば当初の借入期間35年で毎月元利均等返済する住宅ローンを借りていて、5年目位に繰上げ返済して返済期間を9年11ヶ月に短縮したら?

短縮した年から住宅ローン控除が受けられなくなります。残りの返済期間は10年未満になっても良いですが、トータルの返済期間が10年未満になってはダメです。

資金の用途は住宅資金に限られる

家屋の新築や購入をした場合は、その家屋の新築や購入に要する資金に充てるために借り入れた借入金である必要があります。

家屋の新築や購入とともにその家屋の敷地を購入した場合は、その敷地の購入に要する資金に充てるために借り入れた借入金である必要があります。

増改築等の場合は、その増改築等に要する資金に充てるために借り入れた借入金又は施工業者等に対する請負代金の債務である必要があります。

誰から借りるかによって控除の対象とならない借入金もある

ここまでの要件に当てはまる債務であっても、次の4つに該当するものは住宅ローン控除の対象にならないので注意が必要です。

住宅ローン控除の対象にならない借入金の例

  1. 家屋の新築の日より前に購入した土地のローンだけが残っていて、家屋の新築に係るローン残高が無い場合
  2. サラリーマンが会社から住宅資金を借りている場合で、それが無利息又は利率が1%未満の場合
  3. サラリーマンが会社から住宅資金を借りている場合で、その利率が1%以上であっても、別途会社から利息相当の手当を受けるなどして実質的に利率が1%を下回る場合
  4. サラリーマンが会社から時価の2分の1未満の価格で家屋又は敷地を買った場合

戸建ての場合は1.に注意が必要ですが、普通に建売住宅やマンションを購入して、銀行などの金融機関から住宅ローンを借りていれば、問題になることはありません。

状況が変わることで住宅ローン控除が受けられない年もある

いったん住宅ローン控除の条件を満たせば、全額繰り上げ返済したり、繰り上げ返済して総返済期間が10年未満にならない限りは、原則として10年間は控除を受けることが出来ます。

しかし、次のケースに該当する年分については住宅ローン控除を受けられなくなりますので、注意が必要です。

  1. 自己の合計所得金額が3,000万円を超える年分
  2. 転勤で家屋を居住の用に供しなくなった年以後の年分
  3. 賃貸等で家屋を居住の用に供しなくなった年以後の年分
  4. 認定住宅の認定が取り消された場合

1.合計所得金額が3,000万円を超えたらその年は控除なし

こんな心配をしてみたいものですが…サラリーマンなどの給与所得者の場合の年収に換算すると約3,336万円を超えた年は住宅ローン控除を受けられなくなります。

でも、3,000万円以下になれば再び控除が再開されます。ただし、控除期間の10年は控除がストップした期間を含めて合計10年間という計算になります。

ストップした分、期間が延びるということはありません。

2.転勤などによって誰も住んでいない場合

取得後6カ月以内に入居し、各年の12月31日まで引き続き住んでいることが条件です。ですので、転勤期間が年をまたいで、12月31日に誰も住んでいない状態になると、その年分の住宅ローン控除は受けられません。

ただし、転勤命令が解除されて再び家に戻ってくれば、残りの年分について住宅ローン控除が受けられます。ストップした分は延びないです。

また、単身赴任であり、かつ転勤先が国内である場合は、扶養家族が住んでいるということで転勤中も住宅ローン控除を受けられます。

3.自宅を賃貸等に出して自分は住んでいない場合

「自己居住のための住宅であること」が条件の一つですから、誰かが住居として使っていても、本人以外の場合は住宅ローン控除がストップします。

これもストップした分は延びません。

友人などに長期にわたって無償で住まわせても、本人が住んでいない限りは住宅ローン控除を受けられません。

4.認定住宅の認定が取り消された場合

長期優良住宅、あるいは低炭素住宅を取得して「認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例」で最大50万円の控除を受けている人の注意点です。

この認定には法律に定める認定基準をすべて満たさなければなりません。そのため、これに違反して認定の取り消しを受けた場合には、長期優良住宅と認められなくなります。