税金のセオリー
住宅ローン控除の2つの上限と賢い繰上げ返済
住宅ローン控除とは各年の12月31日のローン残高×1%をその年の所得税と翌年の住民税からマイナスする減税の措置です。
新築・中古マンションの購入又は要件を満たすリノベーションやリフォームをして、6カ月以内に住み始め、住宅又はリフォームローンを借りている人は、以後10年間の各年分の所得税から年度末の借入金残高の1%の額を控除することが出来ます。
なお、10%の消費税適用で家を買い、かつ、2020年12月31日までに居住の用に供した場合は控除の期間が13年間に延長されます。
現行法の住宅ローン控除では建物の種類によって4種の上限が定められています。
10年間の住宅ローン控除の上限 | 新築 | 中古 |
一般の住宅 | 40万円 | 20万円 |
長期優良住宅 | 50万円 | 30万円 |
所得税額よりも住宅ローン控除の方が多い場合は翌年度の住民税から控除することが出来ます。住民税から控除できる上限は、前年の課税所得の7%と13万6,500円の低い方です。
つまり、納める税金以上に控除することが出来ないということです。
税込み年収と住宅ローン控除の上限とそれに相当する年末借入残高は以下のようになります。
税込年収⇒控除上限(年末借入残高)
- 200万円⇒6.9万円(690万円)
- 300万円⇒13.6万円(1,360万円)
- 400万円⇒18.6万円(1,860万円)
- 500万円⇒27.6万円(2,760万円)
- 600万円⇒34.0万円(3,400万円)
- 700万円⇒45.6万円(4,560万円)
- 800万円⇒50.0万円(5,000万円)
上限40万円(又は50万円)という情報だけで借入残高が多い方が得だと判断するのは早計であるということですね。
控除しきれないなら頭金を入れて借入残高を減らした方が得です。
住宅ローン控除のメリットを最大限得るためには、初めの年のローンの年末残高が上記のカッコ内の残高を超えないように住宅ローンを借りる金額を調節する必要があります。
千日のブログでは最新の税制改正に対応した節税の記事を公開していますので、どうぞ参考にしてください。
住宅ローンの千日メソッド-税金と補助金のおトク情報|千日のブログへ移動します
自分の前年の所得税と住民税の調べ方
あくまで目安ですので正確には源泉徴収票と納税証明書でご自身の納税額を確認しましょう。配偶者控除とか扶養控除などがあると上記の目安よりも税額は低くなります。
- 所得税は源泉徴収票の「源泉徴収税額」の欄の金額です。
- 住民税は役所で「納税証明書」を発行してもらえば確認出来ます。各自治体によって書式は違いますけど「住民税合計」が書かれている欄が下の方にあるはずです。
当初10年の金利によって借入が多い方が得か損かが変わる
納税額の範囲内なら「借入残高が高いほうがお得」かというと、それは借入金利が1%未満の場合に限られます。
金利と住宅ローン控除の関係性
- 当初10年の金利が1%超の場合は、払う金利の方が大きくなるので、借入額が多いほど費用は多くなります。
- 当初10年の金利が1%以下の場合は住宅ローン控除の方が大きくなるので借入額が多いほど費用は節約できます。
具体的に計算してみれば一目瞭然ですよ。
例えば金利が1.17%で35年固定金利で借りた場合のシミュレーション結果がこちらです。元利均等返済、ボーナス払いなしです。
当初の10年の支払利息と住宅ローン控除の差引費用に注目してください。
住宅ローンの借り入れ額が多いほど、差引費用も多くなっていますよね。
これに対して、金利が1%未満の場合でシミュレーションしてみます。当初10年は0.45%で10年経過後に一括返済するというシミュレーションです。
差引費用がマイナスになっているところに注目してください。
支払利息<住宅ローン控除となりますので差引費用はマイナスです。逆に儲かっちゃうんですね。それも住宅ローンの借入額が多いほどおトクです。
つまり10年後の金利にリスクを取って繰上げ返済したり、借り換えたりする前提なら頭金は温存しておいた方が得ということです。
住宅ローンは『良い借金』 返してしまうのは勿体ない
ここまで読ん人のなかには『じゃあ、10年固定1択だな、10年後に一括返済して儲けようか』と思われる人も多いかもしれません。
実はそんなに単純な話ではないですよ。借入が多かった場合は、本来ならもっと沢山の利息を払わないといけないところが、その分助かるというのが住宅ローン控除の本来の形です。
「借金は良くない」と教えられてきた人が大半だと思いますが、住宅ローンは「良い借金」です。
生活の基盤になる住宅の調達資金で、利息が桁違いに安いんです。
なので、利息を節約できたとしても、多額の繰上げ返済によって貯金が極端に減ってしまうのであれば、本末転倒ですよ。
なんだかんだ言っても住宅ローンの金利は安いですので、いざという時の為や、教育費などの為に貯金は残しておきましょう。
教育ローンの金利は1.81%〜です。無担保ローンの金利は5%〜です。貯金が無くなって、必要に応じて借金するくらいなら、住宅ローンをあえて借りておいた方が得だったということだってあります。
収入のある間はあえて住宅ローンを借りておいた方が、様々な人生のイベントやピンチに対応しやすいのですよ。
以上、参考になれば幸いです。