31歳共働き世帯年収1250万で6000万の新築マンションは買えるか?

2023年4月14日

30代50:50の共働き夫婦がワンランク上の物件を買う住宅ローンのリスクと対策

近年は女性が出産後に職場に復帰して仕事を継続できる環境が整ってきていまして、夫婦の年収に大きな差のない50:50に近い割合の共働き夫婦が増えています。

出産後の妻が正社員で勤務するとなると、世帯年収は大きくなりますよね。ごく一部の富裕層だといわれてきた年収1000万円を、若くして世帯年収で超える若い夫婦が増えてきています。

そうすると、購入できる家の価格=組める住宅ローンの金額もそれなりに高いものになります。ワンランク上の物件に手が届くのです。しかも一回上を見てしまうと、なかなかそこから下げるのは難しいです。

  • 一生に一度の買い物であって、
  • 今のところ、それを購入できる能力がある。

ならばチャレンジしよう!ということになるんですよね。これはおおいに結構だと思います。

ただ、一方で一抹の不安も感じます。それぞれ単独の収入で考えたら、明らかに身の丈を超えた値段だからです。

今後はこうした、50:50の共働き夫婦特有の住宅ローンのリスクと、その対策法が求められる世の中になってきます。今日はまさにそんなご夫婦からの相談です。

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相談:立地も設備も申し分ないが身の丈を超えた価格…このマンションを買っても大丈夫でしょうか?

家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本を拝読してこちらのブログにたどり着きました。新築マンション購入しており是非とも相談に乗っていただきたく、ご連絡差し上げました。

家族の年齢と年収 夫(31歳)税込年収:800万(手取り650万(内ボーナス120万))
妻(31歳)税込年収:450万(手取り360万(内ボーナス72万))
子供3歳(今後予定なし)
自己資金の額 950万
物件価格 6000万+諸費用400万、管理費・修繕積立金3万
物件のタイプ 新築マンション、2020年3月入居
借入予定額 5350万円
住宅ローン 不動産会社から提案されたプラン
住信SBI :35年固定金利1.31%
借入額:5350万(夫4000万、妻1350万)
⇒月々 夫9.4万+妻3.2円=12.6万
ボーナス 夫15万、妻5万≒20万
相談内容 千日様の4つのルールは満たしている(ボーナス払いなしでも毎月の支払いが手取り月収の4割以内)認識ですが、上記計画におけるリスクの度合いや、住宅ローンの組み方についてご意見頂戴できますでしょうか。
なお住宅ローンにつきましては、妻の会社が財住金フラット35利用時の利子補給制度(1%超過部分が会社から支給)を有しています。こちらの活用方法についてもご意見頂戴できれば幸いです。

不動産会社の住信SBIの金利についてはHPで公開されている金利よりも、かなり安い金利になっています。

恥ずかしながら概算ということで、あまり詳細を聞いていなかったのですが、「提携ローンなら優遇できますよ」といったトーンだったかと記憶しています。

立地や設備は満足しており、資金面も素人なりに試算して問題なさそうでしたので申込書を提出済、来週末には契約予定です。

ただ共働きが前提の計画ということ、漠然と「自分たちには高いのではないか」という印象が拭えないこともあり、見送ろうか悩んでいます。

回答①:無理なく完済できて老後資金も残す住宅ローンの4つのルール

本を読んでいただきまして、ありがとうございます。本の中で紹介している4つのルールは「完済できる住宅ローン」「老後資金も残せる資金計画」を突き詰めたものです。

基本的に右肩下がりの人口減少社会では、長期的に不動産の価格が上がるということは期待できません。どんな人気の地域であってもです。なので価格が上がったら売って、新しい家を買うなんて想定は取りません。

  • 右肩下がりの社会経済でも完済できる住宅ローン。
  • 完済した上で、老後資金も残せる資金計画。

これがこの少子高齢化社会で家を買う人が取るべき方法だと思っています。私の家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本ではそれを具体的な住宅ローンのシミュレーションのルールとして落とし込んでいます。

それが無理なく返済できる住宅ローンを見積もる4つのルールです。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利(1.38%)
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

この4つのルールを、30歳35歳の各年収でスタートし、無理なく完済できる住宅ローンの金額として、表にすると以下のようになります。

不動産会社のシミュレーションではボーナス払いをお勧めしていますが、私は絶対おすすめしません。下記のリンクでも解説していますし、本でも書いてます。

ボーナス払いについての今までの相談事例集

(単位:万円)

年収 月収 30 35歳
400 20 2663 2663
600 25 3329 3250
700 30 3995 3755
900 35 4661 4255
1000 40 5327 4714
1200 50 7996 7031
1500 60 9509 8317
2000 80 12449 10860

高年収になると、住居費が5割以上になっても生活に支障は出てきませんので、年収1200万からは月収の5割でシミュレーションしています。なので、1200万から上は返せる住宅ローンの金額が上がっています。

回答②:財住金フラット35で利子補給してもらえる会社の福利厚生の恩恵を受ける方法

年収は参考です。判断は手取りの月収で行います。旦那様のボーナスを除く手取りの月収は45万円です。だとすると4714万円から5327万円ですね。

借入額5350万円なら旦那様だけでも不可能ではないレベルです。これはあくまで概算で把握する表です。1.38%よりも低い金利で借りられるならレンジ内に入る可能性があります。

奥様の会社の福利厚生で、財住金フラット35であれば1%を超える利息部分は会社が支給してくれるのですね。ならばそれを使えば1%の35年固定金利で借りられるということになります。

奥様の450万円の年収では5350万円はちょっと足りないので、旦那様との収入合算となるでしょう。その場合は連帯債務者となります。

なので、お勧めする方法としては奥様が主債務者で財住金フラット35で借りて、旦那様も収入合算して連帯債務者として入る方法です。

住信SBIネット銀行のペアローンでも、相互に連帯保証人にならなければならず夫婦の両方が総額の責任を負っているので、リスクは同じです。

リスクが同じなら利息は少ない方が良いです。奥様の名義で財住金のフラット35で借りれば、会社から1%を超える部分の利子補給がもらえますから実質的に1%の金利と同じです。なお会社の利子補給について、夫婦収入合算だと減ってしまうのかどうかは会社に確認してください。

なお、住宅ローン減税は旦那様も連帯債務者となりますので持分の分だけ債務者ということですから、奥様はもちろん旦那様も減税を受けることが出来ます。

財住金フラット35で利子補給と変動金利の比較

不動産会社のシミュレーションだと1.31%です(しかも実際はそれより高いかもしれない)が、財住金フラット35で利子補給を受ければ実質1%ですから、私なら固定金利は財住金フラット35一択です。これ以上に有利な固定金利はありません。

それと変動金利との比較を行います。変動金利は最安の住信SBIネット銀行としましょう。こちらは0.457%(2018年12月現在)で団信の「全疾病保障」が金利上乗せなしで付帯します。これは全ての病気やケガで1年以上入院又は就業不能状態になったら住宅ローンがゼロ円になる保険です。

死亡と高度障害に加えてこの特約が金利に込みになっているのですから、これは変動金利なら外せないですね。

《前提条件》

  • 財住金フラット35の金利1(1%を超える部分は利子補給)、住信SBI変動金利。
  • それぞれ35年元利均等返済、ボーナス払いなし。
  • 住宅ローン減税は13年(延長する3年は建物価格の2%)。
  • 60歳のときに全額繰り上げ返済する(2020年には33歳でスタートするとしました)。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

5350万円35年 財住金フラット35 1.33%で利子補給0.33%(2018年12月時点) 住信SBIネット銀行0.457%(2018年12月時点) 差異
毎月返済 159,390 137,863 21,527
利子補給平均 -8,402 0 -8,402
10年後残高 40,660,859 39,077,024 1,583,835
60歳残高 14,507,762 12,993,635 1,514,127
住宅ローン控除 5,257,900 5,162,100 95,800

毎月の返済額では21千円変動金利が安くなりますが、フラット35では利子補給があります。これは1%を超える部分ということで、元利均等返済だと毎月の利息だ最初は大きくてだんだん減っていきますので、ここでは平均額としています。平均は8千円ほどです。

なので、実質的に毎月の差ということでは約13千円ということになります。

4つのルール「手取り月収の4割以下」について判定しましょう。旦那様の手取り45万円の4割は16万円です。旦那様の単独で、固定金利は範囲内に収まっていますね。

変動金利の場合は「2つの四」をクリアする必要があります。

  • 毎月返済の4分の1を貯金する。
  • その貯金と毎月返済の合計で手取り月収の4割以下にする。

137,863×1/4=34,465円を貯金するということです。これと毎月の返済を合計すると、137,863+34,465=172,328円ですね。これは旦那様単独だと超えてしまいますね。しかし夫婦合算すれば範囲内です。

次は60歳残高です。固定金利も変動金利も1000万円を超過しています。なので、貯蓄についてはスタートから計画的にやっていきましょう。

住宅ローン減税がある13年間(消費増税後)は繰上げ返済しませんので、その間にお金を貯めるということになります。1年に100万円ずつ貯蓄していけば、13年後には1300万円貯まる計算ですね。

住宅ローン減税が終わった時点で60歳の残高を貯蓄できていれば、完済のメドが付きますね。こちらも参考にしてください。

最初の10年で住宅ローンの完済資金1000万円を貯める方法を教えます -千日のブログ

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

5350万円35年 財住金フラット35 住信SBIネット銀行 差異
借入費用 868,000 1,390,500 -522,500
60歳まで返済額 51,642,360 44,667,612 6,974,748
60歳残高 40,660,859 39,077,024 1,583,835
住宅ローン控除 -5,257,900 -5,162,100 -95,800
利子補給合計 -3,291,052 0 -3,291,052
合計 84,622,267 79,973,036 4,649,231

借入費用は概算、財住金フラット35の手数料率は1%(税別)としています。60歳まで利子補給の福利厚生が続いたとすれば、それによって入るお金は329万円です。これは大きいですよね。

それでも変動金利の方が総支払額で464万円少なくなります。これは金利が上がらないという前提を取っているからです。では、金利変動リスクはどのくらいの大きさなのか?を把握しておきましょう。

変動金利の金利変動リスクのボリュームを把握する

変動金利で借りるのであれば、金利が上がった際の5年ルールと125%ルールを理解しておく必要があります。

  • 5年ルールとは、金利が変動しても5年は元利均等返済額を変えないというルールです。
  • 125%ルールとは、1度に上げる元利均等返済額は125%を上限とするというルールです。

このように変動金利は、金利が変動しても毎月の返済額は変動しないようになっています。それはいいのですが、毎月の返済額が増えなければ元本が底だまりに残ってしまい結局は最終回に一括で返済しなければなりません。

なので、変動金利が上がったときに毎月の返済額を維持したまま予定の年数で完済するには、金利が上がった時点で繰上げ返済する必要があるのです。

例えば、5350万円を変動金利0.5%で35年元利均等返済で借り入れた場合、毎月の返済額は138,878円です。金利があがってもこの支払いを維持したまま、当初の35年で完済するには、その時点で幾ら繰上げ返済すればいいか?という金額を計算するのです。

(単位:万円)

5350万借入から金利上昇したら繰上返済すべき金額(万円)
残期間 30年 25年 20年 15年
残高 4,649 3,921 3,176 2,411
0.5%→1.0% 325 231 151 88
0.5%→1.5% 618 443 294 171
0.5%→2.0% 886 640 427 250
0.5%→2.5% 1,128 820 552 326
0.5%→3.0% 1,349 988 668 397
0.5%→3.5% 1,552 1,143 778 466
0.5%→4.0% 1,736 1,286 881 531

5年後には残り30年になっていて、そのときの残高は4,649万円です。その時に4,649万円でこの家が売れれば残債なしです。

ここではこれがリスクの規模だという見方をします。

その時点で金利が0.5%から2.5%に上昇したとしたら、1,128万円を繰上げ返済することで、今後も138,878円の毎月の返済で完済できるということです。見方を変えれば、金利が上がらない前提のシミュレーションよりも1,128万円総支払額が増えるということです。

  • 金利が上がったら1,128万円の支払い増を受け入れるか?
  • それがイヤ(無理)なら4649万円で売れるなら売ってしまうか?

金利が上がったら、そうした意思決定を随時していくのが変動金利です。

変動金利は今後5年~10年の間に上昇する可能性があると、個人的には考えています。今の基準金利である2.5%くらいまでは上がるとして、貯金として備えておく必要があると思います。

今回のケースだと、財住金フラット35なら、1%を超える利息については会社から補助があるので、固定金利で増える金額は464万円ですね。いわばこの464万円は金利が上がった際の保険料みたいなものです。

回答➂:50対50の共働き夫婦に特有のリスク

ちなみに、ご相談者の年収は夫800万、妻450万円で世帯年収の合計1250万円です。なので収入を合算すると5割でも可能というゾーンに来ますね。そうすると8000万円の住宅ローンでも組むことが出来る…?かというと、そうじゃないんですよ。

この表はあくまで住宅ローンを組むのが一人の場合を想定して作っているからです。

例えば、この共働き夫婦が8000万円の住宅ローンを無理なく完済するには以下の2つ前提が必要なのです。

  • 夫婦の両方が失業しない。
  • 夫婦が離婚しない。

ずっとニコイチで最後まで行くという前提が必要なんですね、この保証はあるでしょうか?そんなのないです。

  • 夫婦の片方で1200万の収入がある場合。
  • 50:50共働きで1200万の世帯年収がある夫婦の場合。

これは明らかに違います。リスクの質量としては同じですがその傾向と対策が異なるのです。

前者は収入とリスクが一人の大黒柱に偏っているので、そこに保険をかけるということになります。団信がその好例ですよね。その方法はちゃんと開発されて先輩たちがその有効性を実証してきています。

後者は最近増えてきたパターンなので、「コレで間違いない」という方法がまだ無いのです。収入とリスクが二人に分散されている。でもどちらが無くなっても住宅ローンの継続は難しくなる。

ちゃんと準備していなければ、リスクだけが倍になっている、と言えなくもないタイプなんですよ。生活が立ち行かなくなるようなことは無いですが、家に関しては売却した方が良い状況になるということです。

収入が半減したところで、無理に続けようとしてサラ金などで借りるとかえって首を絞め、最終的に自己破産に追い込まれます。

夫婦どちらかの収入が無くなったとき=マイホームを売るときだ。

そうした想定と覚悟をもって臨んでください。なお、死亡と高度障害の場合は団信で保障されます、この場合のリスクは離婚や失業、想定外の減収などです。

回答④:視野は広く複数の金利タイプで審査を通しておく

2020年3月というと、まだ1年以上先です。例えば今回の回答としては、財住金フラット35で会社の利子補給を得られる方法とお勧めしましたが、それは現時点での経済情勢を前提にした回答です。

2020年に千日太郎に全く同じ質問をしたら、全く違う回答が返ってくる可能性は十分にあり得ることです。

自分のポリシーとして「固定金利で借りたい」というものを持つのは良いことです。

しかし、早い段階で一つに決めてしまうのは禁物です。今は固定金利が有利ですが、実際に自分が買うときに固定金利はとうてい選べないような状況になることは十分にあり得るからです。

固定金利が3%くらいになってしまって、会社が福利厚生のルールを変更して1%超の利息のサポートを廃止してしまったら、今回のプランはゴミ箱行きですよね。

ですから、固定金利で借りる場合はどうするか?変動金利で借りる場合はどうするか?それぞれで実行可能なプランをもっておくことが重要です。

今回住信SBIネット銀行の変動金利を比較として提示しましたが、SBIマネープラザというリアル店舗での相談を行っている唯一のネット銀行です。「自社の商品を勧めないケースはこっそりそのように教えてくれる」など、フラットな立場で意見をくれるとのことで、すごく評判が良いです。

金利は今後どうなるか?というような質問についても、決して適当なコメントはしないですので、プロだなと思います。おすすめします。

以上、参考になれば幸いです。

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