ソニー銀行のミックスローン部分固定金利特約はどうですか?

2017年10月26日

ソニー銀行の部分固定金利特約は得か損か?

ソニー銀行ではミックスローンを組むことができないのですけど、その代替のような『部分固定金利特約』という商品があります。

ソニー銀行のホームページでは以下のように書かれていますね。

  • ひとつの住宅ローンで変動金利と固定金利を同時に利用できる。
  • 複数の固定金利期間を設定できる。(最大3つまで)
  • 固定期間適用期間中でも変動金利に変更ができる(ただし所定の手数料がかかります)
  • 『部分固定金利特約』のご利用により、金利変動リスクのポジションを自在に操り、将来の変化にもフレキシブルに対応することが可能となります。

このようにフレキシブルに対応するには、その本質的なところをよく理解した上で利用する必要があります。

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部分固定金利特約は金利スワップ

ポイントは『金利だけ』を固定金利に交換するという点です。

  1. 契約は変動金利のままで、いったん借入れ元本の全部を変動金利で計算した元利均等払いで返済します。
  2. そして部分固定金利特約によって、固定金利にした部分はソニー銀行から変動金利の利息を受取ります。
  3. そして部分固定金利特約によって、固定金利にした部分は固定金利で計算した利息を支払います。

上記の1から3を一度にやるんで、受取利息と支払利息は相殺するんですね。

結局、固定金利で払ったのと同じ結果が得られるのです。これが金利スワップ=金利の交換というものです。

変動金利を固定金利に交換した。

という感じになるわけです。一見固定金利と変動金利の二つにミックスして住宅ローンが組めたような雰囲気になりますけど、あくまで元は変動金利のまま、というところがミソなんです。

  • 元本は1つのままですから、例えば固定金利だけを、変動金利だけを先に繰り上げ返済することはできません。
  • 元本の返済部分の計算は変動金利のままです。その元本に固定金利をかけて利息を計算するので元利均等返済になりません。(月の返済額は少しずつ減るか増えるかします)
  • 元本の返済部分の計算は変動金利のままです。金利が変動すると、元本の返済ペースもそれに連動して変動します。

確かに『金利』は固定されるのですけど、元本の返済ペースは変動金利のままですから、金利の変動の影響を受けるということです。

これがどういう事か?にわかには判断できなくて当然だと思います。

では今日のご相談です。

相談:ソニー銀行の部分固定金利特約はどうですか?

大変お世話になっております。

私の質問をソニー銀行の金利タイプ変更手数料の仕組みと裏技をすべて解説します-千日のブログに取り上げて頂き、誠にありがとうございました!!

あのブログでご説明されているような内容まで突っ込んで解説している媒体が見当たらないので、
大変ためになりました。

遅ればせながら、ご報告をさせて頂きたくご連絡致しました。

千日さまのご高配、全く腑に落ちる説明で十分に理解が出来ました。

個人的には、20年超固定1.231%の総支払額と10年固定0.742%の予想総支払額の差が、将来のリスクヘッジの料金と比べて割安かどうか、と言う視点で検討を行っていました。

12月27日まで悩みに悩んだ末、一度は全額を20年超固定1.231%に変更すること致しました。

こんなに住宅ローンで真剣に悩んだ事が無かったので、悔いのない選択が出来たと自負があったのですが、最近住宅ローンブログの「ミックスローン」に関する記事を読んでいまして、若干考えが揺らいでおります。

ソニー銀行ではミックスローンは無いのですが、代替サービスとして部分固定金利設定特約という制度がございます。

これは、例えば変動でローンを組んでいた人が残債の50%を10年固定、50%を15年固定で組み直したいといった場合に、

  • 主契約は変動金利のまま
  • 元本部分については変動金利時の元本返済額から変わらない
  • 利息部分は、元本返済額×{(10年固定利率)×0.5+(15年固定利率)×0.5}と計算されます。

現在私は、部分固定金利設定特約で100%を20年超1.231%と設定しておりますが、これを、50%を10年固定0.787%、50%を20年超1.231%とし、10年固定と20年超固定を半分づつ契約することを検討しております。

因みに理由はよくわからなかったのですが、上記オペレーションをしても、金利変更手数料はゼロ円で契約変更が可能でした。

これにより削減された支払額は繰上げ返済時の引当金として積立を行うことを考えております。

但し、ソニー銀行の部分固定金利設定特約は、通常のミックスローンと違って、特定の金利プランの元本を先に繰上げ返済する、といった事が出来ません。

以上、ご賢察を頂けると幸いです。

回答1:元本は一つなので『ミックスローン』のメリットは少なめです

ありがとうございます(o^^o)順調そうで私も嬉しいです。

ソニー銀行も金利をミックスさせる事が出来るのですね!これはノーマークでした。

普通のミックスと違うのは契約があくまで一本で金利だけを調整する方式なのですね。書かれているように、10年固定だけを一括返済することが出来ないのは、契約が一本だからだと思います。

今回の金利タイプ変更で手数料がゼロ円となったのは、ベースレートが前回の12月27日から上がっているからでしょう。

詳しくはソニー銀行の金利タイプ変更手数料の仕組みと裏技をすべて解説します-千日のブログをどうぞ。

ベースレートは上がっても住宅ローンの金利を上げていなかった場合は、そういう事になるはずです。結果オーライですけど、無料で変更出来てラッキーでしたね。

という事は、ベースレートが上がってもソニー銀行が店頭金利を政策的に下げた場合(例えば3月のかきいれどき等)は無料で安い金利に借換が出来る…?

いや。そんな美味い話は無さそうですが(^^)

さて本題のミックスですが、やはり10年固定だけを先に一括返済出来なければ、本来のメリットは享受出来ないと思います。

回答2:元本はあくまで変動金利である点に注意が必要です

昨日から気になってソニー銀行の部分固定金利特約をしらべてみたのですが、これはナカナカの曲者である事が分かりました。

どういう事かというと、元本の返済額はあくまで「変動金利」だという点です。

ソニー銀行のホームページでは変動金利について以下のように書かれています。

※ソニー銀行では、いわゆる「5年ルール」や「125%ルール」に基づく約定返済額の計算を行っていません。したがって、適用金利が上昇した場合には、その上昇幅に応じて約定返済額が見直されますので、最終ご返済額にしわ寄せされることはありません。
【5年ルール】返済額を5年間一定とし、その一定の金額の範囲内で、元本、利息の定期的な見直しを行うルール
【125%ルール】5年ルールにより、5年後に返済額を見直す際に、前回返済額の125%を上限とするルール

金利変動リスクなどに関する説明書-ソニー銀行

ですから、仮に変動金利が上がったとしたら、元利均等返済の元本の返済ペースもそれに従うという事ですね。

例えば金利が0.7%のときの元本の減少と2.7%のときの元本の減少をグラフにすると以下のようになります。

金利が上がるとはじめの方の元本の返済ペースが遅くなります。

もしも変動金利のままであれば、上がった金利の元利均等返済額になるので、返済額が急に上がるんですよね。


(前提条件)
借入元本10,000,000円35 年ボーナス払無し。変動金利で借入。

金利0.7%の場合の元利均等返済額

  • 元利均等返済額26,852円
  • 初回の元本返済21,019円
  • 初回利息5,833円

金利が2.7%に上がった場合の元利均等返済額

  • 元利均等返済額36,830円
  • 初回の元本返済14,330円
  • 初回利息22,500円

ですからこの金利を部分固定金利特約にしてたら安心か?というとそうでもありません。

借入元本10,000,000円35 年ボーナス払無し。100%部分固定金利特約1.2%で借入。

金利0.7%の場合の初回(固定金利1.2%)

  • 元利均等じゃない返済額31,019円
  • 初回の元本返済21,019円
  • 初回利息10,000円

金利が2.7%に上がった場合の初回(固定金利1.2%)

  • 元利均等じゃない返済額24,330円
  • 初回の元本返済14,330円
  • 初回利息10,000円

金利が上がった初回は元利の減りが遅いので返済額は少なくなります。

『わーい楽チン』ではありませんよね?後にしわ寄せが来るという事です。

金利が2.7%に上がった場合の全期間(固定金利1.2%)

固定特約1.2% 利息 元本 合計
初回 10,000 14,330 24,330
10年 7,411 18,725 26,135
20年 4,611 24,521 29,132
30年 1,609 32,112 33,721
最終回 27 36,748 36,775
合計 2,190,639 10,000,000 12,190,639

まとめ~クセモノたるゆえん

いかがでしょうか。

変動金利の元利均等返済というベースでの払いになりますので、元本の減りが遅くなる分だけ後にしわ寄せが来てますね。

元本が変動金利に依存しているという点で、金利変動リスクが残っているという点に注意しておく必要がありますよ。

では金利が上がったら結局損なのか?

そうでも無いのですよね。これがこの部分固定金利特約が曲者たるゆえんです。

金利が高い方が元本の減るペースは速く、全期間で合計すると部分固定金利特約で返した方が返済額の合計は少なくなるという結果になりました。

下記は固定金利1.2%で元利均等返済した場合のシミュレーションです。

固定金利1.2% 利息 元本 合計
初回 10,000 19,170 29,170
10年 7,579 21,591 29,170
20年 4,827 24,343 29,170
30年 1,725 27,445 29,170
最終回 29 29,141 29,170
合計 2,251,496 10,000,000 12,251,496

いかがでしたでしょうか。結局得なの?損なの?というと得だという結論になるのでしょうね。返済額の合計は12,251,496円ですね。部分固定金利特約の合計は12,190,639円でしたから、全期間終わってみると、部分固定金利特約の方が約6万円利息を節約できたという結果になりました。

だって金利が上がっても『金利』は固定されますし、最初から固定金利で払った場合よりも少ない利息で完済できるわけですから。

ちなみに金利が2.7%に上がった場合の変動金利でのシミュレーションは以下のようになります。

変動金利2.7% 利息 元本 合計
初回 22,500 14,330 36,830
10年 18,106 18,725 36,830
20年 12,309 24,521 36,830
30年 4,718 32,112 36,830
最終回 83 36,748 36,830
合計 5,468,787 10,000,000 15,468,787

当然といえば当然ですが、固定にしておいた方が断然、支払いは少なくなりますね。

以上、参考になれば幸いです。