住宅ローンは10年固定期間中でも繰り上げ返済するべきですか?
住宅ローン控除を使いきれないなら繰り上げ返済した方が得なのか?
10年固定金利が1%を大きく下回っている今の金利環境では、単に利息の払いが安いという以上のメリットがあります。住宅ローン控除で年末残高の1%まで、その年の所得税等から税額控除される(税金が返ってくる)からです。
払う利息よりも返ってくる税金の方が大きくなるという現象が起こっていて、当初の10年間は元本が多い方がお得なのですね。
しかし、返ってくるのは払った税金の額が上限になります。
払った税金が少ない人は、住宅ローンの残高が高くても、払った税金の額が控除の上限になり、元本が多いことによるメリットが頭打ちになってしまいます。
詳しくは
をご一読ください。
そういう場合は積極的に繰上げ返済していった方が良い…のでしょうか?
金利の面だけ見ると、確かにそうなりますけど、実際に自分のケースでは、
- いくら繰上げ返済したら
- いくら利息が減るのか?
を把握してから判断しても遅くはありません。
相談:住宅ローン控除があまり無いので繰上げ返済した方が良いのでしょうか?
千日さま、はじめまして。いつもブログ等読ませていただきとても参考にし勉強させて頂いております。感謝しております。
早速ですがうちの状況をご相談させてください。
最初の住宅ローン
平成26年の7月31から契約しました。
期間は28年、全期間固定金利2.37%で借りました。ガン保障付きでした。
借換後の住宅ローン
借り換えは平成28年の12月29で1,510万円、最終返済日は平成54年(2042年)7月30日です。
イオン銀行の10年固定金利0.690%でボーナス払いなしです。
返済計画について相談させてください
私は現在41歳なのでどのくらい働くか不安定ですが、給与は手取り16万〜17万です。
ボーナスはほぼ無いです。
あと5年はこの会社にいた方が良いかも知れません。
今の会社を辞めても月10万くらいは何だかしらパートとかでも働く予定で考えています。
主人の年収は500万くらいですが自営です。
年齢も同年代です。
娘は下の子の残り大学2年間のみ300万くらいを予定しています。
うちは主人が自営のため私がローンを組み、乗り換えました。住宅ローン控除は私のお給料が少ないため、5万円ほどしか控除されません。イオンの10年固定金利は0.59%ですがガン家系のため0.69%でガン保険を付けました。
そこで質問なのですが今後ガンになるかも知れないから、10年間は繰り上げ返済しないで返済し続け、10年の固定が終わる段階で一括返済するほうが賢いのか、それとも1年終わるごとに頑張って100万ずつ繰り上げ返済していき、10年で終わるように返済していくのがどちらが賢いのかわからなくなり相談させて頂きました。
子供は今下の子のみ大学2年生であと2年大学費がかかる予定です。
アドバイス頂けましたら幸いです。
回答:繰上げ返済は10年後の残高をまっすぐ見据えて行いましょう
ではお答えしていきますね。
住宅ローン控除が収入の上限によって、満額受けられない場合は繰り上げ返済した方が利息の面でお得です。
以下の法則になります。
- 早く繰上げ返済した方が得。
- 繰上げ返済の金額は大きい方が得。ただし、繰り上げ返済によってローン残高が住宅ローン控除の収入での上限以下にならないようにする。
これを解説していきます。
能書きは後にして、まずシミュレーション結果を見てみましょう。以下の前提でシミュレーションしました。
- 2016年12月末残高は1,510万円
- 当初固定期間の10年間の固定金利は0.69%
- 借入期間25年7カ月 元利均等返済 ボーナス払いなし
- 住宅ローン控除は2016年12月末を含めて残り8回で最終は2023年12月31日。収入による上限は5万円。
(単位:千円)
1,510万円 25年7カ月 |
繰上げ返済なし | 2017~2022まで100万円ずつ繰上げ返済 | 2022に600万円繰上げ返済 | 2017に600万円繰上げ返済 |
---|---|---|---|---|
当初10年月返済 | 54 | |||
10年利息 | 853 | 581 | 731 | 472 |
住宅ローン控除 | 400 | 400 | 400 | 400 |
差引費用 | 453 | 181 | 331 | 72 |
2023/12末残高 | 11,182 | 5,035 | 5,182 | 4,929 |
10年後残高 | 9,513 | 3,241 | 3,391 | 3,132 |
①繰上げ返済なしの自然体で10年を過ごした場合
毎月の返済は53,669円で10年間の利息は85万円、住宅ローン控除は40万円ですから差引費用は45万円です。
住宅ローン控除の最終回2023年12月末の住宅ローン残高は1,118万円です。
ローン残高の上限としてはその1%の11万1千8百円の住宅ローン控除が受けられるのですが、収入(課税所得)の上限に引っかかるので5万円までしか控除が受けられないのですね。
- 収入面(住宅ローン控除)は5万円に固定されている。
- 元本が高いほど利息は多く取られる。
こういうことですから、元本を減らして利息の負担を積極的に減らす方が利息費用を減らせるということになります。
②毎年100万円ずつ繰上げ返済する場合
2017年12月末から2022年12月末までの6年間にわたって、年末に100万円を繰上げ返済した場合のシミュレーションです。
このようにすると、住宅ローン控除の最終回の2023年12月末の住宅ローン残高が503万円になり、最後の住宅ローン控除の計算ではその1%で5万3百円となります。収入(課税所得)の上限は5万円ですから、最後の年でロスがほぼ無くなりますね。
なので、『毎年100万円ずつ繰上げ返済する』という前提を置かれているのだと思います。
こうすると、10年間の利息は58万円、住宅ローン控除は40万円ですから差引費用は18万円です。繰上げ返済しない場合よりも10年間で27万円の利息を削減できます。1年で2万7千円、1カ月で2千2百円の節約です。
毎年100万円もの貯金を返済する割りには、大した費用の削減にはなりません。
むしろ、繰上げ返済の効果は10年後の残高を減らすことにあるのです。
10年固定は10年後の金利にリスクを取るタイプですね。その時の金利がメチャメチャ高かった場合はグンと返済額が増えて家計を圧迫してしまいます。
- 繰上げ返済しない場合の10年後残高:951万円
- 100万を6回繰上げ返済した場合の10年後残高:324万円
繰上げ返済した方が遥かに「安心」ということです。10年固定のセオリーは10年後の残高をコントロールすることです。
こちらもぜひご一読ください。
10年固定で10年後の金利動向に左右されない返済方法を教えます-千日のブログ
三菱東京UFJ銀行の10年固定0.5%で借りても大丈夫?その返済方法は?
③繰上げ返済するなら早い方が少しお得
10年固定では残高をコントロールするわけですから、とにかく固定期間が終わるまでに残高を減らせばいいんですね。
もともとの金利が低いので支払い利息面よりも、10年後の残高が優先されます。
そこで、後でまとめて返済する場合と先にまとめて返済する場合でどれだけ利息の負担が変わるかをシミュレーションして比較してみました。
つまり、両極端を比較して最大どれだけ差が出るのか?という量的な尺度を持つことが目的です。
- 2022年に600万円繰上げ返済する差引費用は33万円(利息73万円 住宅ローン控除40万円)
- 2017年に600万円繰上げ返済する差引費用は7万円(利息47万円 住宅ローン控除40万円)
先に繰り上げ返済した方が、元本にかかる利息が少なくなるので、利息費用の面では有利です。その差は10年間で26万円ほどです。
1年で2万6千円、1カ月では2千1百円です。
いかがでしょうか。
- 今年の年末に6百万円用意するのに必要な労力と今後10年の貯蓄が少なくなるリスク。
- 10年かけて自分のペースで6百万円用意するのに必要な労力と今後10年何かもっと優先すべきことが起こったときにその貯金を使える柔軟さ。
これを天秤かけて判断するということになります。
まとめ~あくまで10年後の残高が優先です
いかがでしたでしょうか。もちろん利息の費用面では早く返した方が有利です。でも、固定期間は元の金利が低いですから、さほどの節約にはなっていないです。
それよりも大事なのは10年後の残高を減らすことです。そして、その間に何かあっても対応できるような貯蓄を貯めていくことです。