繰上げ返済と住宅ローン控除を賢く使ってワンランク上の家を買う方法

2017年10月26日

自分の年収で買える家は想定より実は少し高いかも

金融機関のホームページや住宅金融支援機構のホームページに行けば、色んな条件でのシミュレーションができるようになっています。

でも、ほとんどのシミュレーションは一括繰上げ返済には対応していないんです。年数を打ち込んだら、その年数の元利均等返済が出てきますけど、特に期日前一括繰上げ返済という条件を入力するシミュレーションは、まず民間の銀行のホームページには無いです。

そんなことされたら、貰える利息が減ってしまうからです。

千日は相談の回答にこの返済方法を多用します。なぜならこの期日前一括繰上げ返済を前提にする返済方法には2つのメリットがあるからです。

  1. 実際に借りる期間よりも長い期間にすることで、月の元利均等返済額を低く抑えられる。
  2. 住宅ローン控除を受けられる当初10年間のローン残高を高く維持することで住宅ローン控除の恩恵をより多く受けられる。

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元利均等返済を低くするメリット

結局は住宅ローンの元本を全額返済しないと終わらないのは確かです。

だったら同じでしょ?

と思われるかもしれませんが、違います。

元利均等返済は金銭消費貸借契約に規定する月ごと『特定の支払日』における『約定返済額』です。住宅ローンにおいては、この特定の支払日に一日でも遅れたら、返済遅延です。また、『約定返済額』に1円でも足りなければ、これも返済遅延になります。

『まあ1日位は大目にみましょ』とか『1円足りないけど、まあ払ってはくれてるから次でいいよ』なんて銀行は言いませんよ。

遅延は遅延です。イキナリ抵当権を実行しませんが、確実に目を付けられ信用情報(ブラックリスト)にその遅延の記録がされます。

住宅ローンとは35年なら420回、毎月決まった日に決まったお金を銀行に払うことです。この420回のハードルを失敗せずに越えるには、ハードルは低く設定しておくに越したことは無いのですね。

本当はもう少し高くても払えるよ。

という位がちょうどいいんです。

その分、貯金を増やして一括繰上げ返済に備えるのです。その貯金はもちろん現金ですから、もし家族や自分が大病を患ったり、何かのアクシデントでまとまったお金が必要になったときにも使えるんですよね。

年収の想定よりもワンランク高い家が買える仕組み

例えば金利1%で、3,000万円を借入期間15年で完済するには?

これを普通の銀行のシミュレーションにかけると毎月の元利均等返済額は179,548円必要と出てきます。

  • 毎月18万円のハードルを15年(180回)クリアせよ。

これは、かなり年収の高い人でないと無理です。

しかし、同じ条件で借り入れ期間を30年にすると、毎月の元利均等返済額は96,491円になります。

  • 毎月9万6千円のハードルを15年(180回)クリアせよ。

決して低いハードルではありませんが、高さが半分になりましたね。『これなら出来る』というハードルの高さを借入年数で導き出すのです。

そして、大事なのは15年後の残高です。今回は16百万円です。定年まであと15年であれば、その後の収入は途絶えるのですから、15年後に残った残高を払わねばなりません。

つまり、このようなミッションです。

  • 毎月9万6千円のハードルを15年(180回)クリアし、15年後に16百万円用意せよ。

15年で16百万円の貯金を作るには、1年平均で108万円の貯金をするということです。貯金は、遅れても債務不履行にはなりませんよね。

また、現時点で頭金をいくらか用意していれば、それを一括返済資金にすることも可能です。そうすれば、1年当たりの貯金のノルマを軽減することも可能ということです。

住宅ローン控除の恩恵をより多く得られる

また、期間が長く、毎月の返済額を少なく抑えるということは、住宅ローン控除の恩恵をより多く得られるということでもあります。

住宅ローン控除とは、当初の10年間にわたり12月31日時点のローン残高の1%をその年の所得税と翌年の住民税からマイナスする減税措置です。

つまり、住宅ローン残高(つまり借金)が多い方が多くの税金が還付されるということなんです。

先ほどの2つの例で比較してみましょう。

(単位:円)

3千万円金利1% 15年 30年
月返済額 179,548 96,492
住宅ローン控除 -1,943,781 -2,511,408

15年返済よりも30年返済の方が、住宅ローン控除は56万円ほど多くなりますよね。この差は馬鹿になりませんよ。

15年間の総支払額で比較してみましょう。

(単位:円)

3千万円金利1% 15年 30年
15年返済額 32,318,704 17,368,534
住宅ローン控除 -1,943,781 -2,511,408
15年後繰上返済 0 16,122,429
総返済額 30,374,923 30,979,555

期間を15年とした方が約60万円安く済むという結果ですね。

だったらやっぱり期間を短くした方が得じゃん?

そう思われるかもしれません。しかし待ってください、それが出来るのは…

  • 毎月18万円のハードルを15年(180回)クリアせよ。

というミッションを余裕でクリアできる人だけなのです。

そして、本当は住宅ローン控除で56万円多めに得をしているからこそ、60万円の差で済んでいるんですね。これが無ければ116万円の差がついているのです。

住宅ローン控除を上手に利用することで、当初の返済期間を長めにとっても利息の負担を軽減出来てるということなのです。

前置きが長くなりましたが、今日のご相談者です。

相談:月返済7万円台で15年の住宅ローンで2千万円の家を購入できますか?

はじめまして。

今年に入ってから、中古住宅か新築建売で住宅購入を検討しています。具体的な物件はまだ決まっていない段階ですが、予算は1,500万前後で考えています。本当は2,000万程度の物件が欲しいのですが、厳しいですよね?

  • 主人44歳 年収500万位、月28万程度
  • 妻42歳 月7万前後パート
  • 子供五歳、来年入学
  • 自己資金は諸費用含め900万で頭金に700位、残貯金は500万です。

夫の定年は60歳で、65歳までは嘱託扱いで働けるそうです。年齢を考えると20年固定で借り入れ、15年で完済したいと思っております。

そこでご相談ですが…

  1. 返済期間、どのローンを組むのがベストなのか
  2. 月々の支払いは7万以内に抑えたい場合の適切な物件価格

尚、子供の教育費に関しては、学資保険に3本入っており、800万程おりますので、大学進学する場合はそれで賄えるのかな?と考えていますが、どうでしょうか?

何よりも老後資金が心配です。

どうかアドバイス宜しくお願い致します。

回答:固定金利で十分に購入可能です

ではお答えしていきます。結論から申しますと、固定金利で2,000万円の物件も十分に可能です。

44歳からの住宅ローンについては、最初から定年退職を見据えた完済までの計画をたてておくことが重要です。

2017年40代から借り始める住宅ローンの返済計画とは?老後破たんしないために

こちらの記事は一度お読みいただいたかと思いますが、まだでしたらご一読くださいませ。

シミュレーションの前提は以下のとおりです。

  • 毎月の返済を7万円台にする。
  • 60歳までの完済を計画する(65歳まで就業可能ですが保守的に)。

三井住友信託銀行15年固定で借入期間は20年とし15年目に一括返済する

定年までは16年ですから、あまり長い固定期間は不要ですね。信託銀行ではわりと小刻みに当初固定期間が設定されています。

中でも金利の低い三井住友信託銀行を例にとりました。ただ計算するのではなく、二つのパターンを比較することにしました。

  • パターン①:頭金をゼロとして住宅ローン控除を多く貰えるようにする。
  • パターン②:頭金を700万円入れて毎月の支払と利息の負担を軽減する。

以下のようになります。

(単位:円)

頭金で比較 パターン①
頭金ゼロ
パターン②
頭金あり
当初借入 20,000,000 13,000,000
毎月返済 74,923 59,497
頭金 0 7,000,000
15年返済額 13,486,080 10,709,411
住宅ローン控除 -1,596,879 -964,312
15年後残高 8,573,635 3,485,001
支払い合計 20,462,836 20,230,100

毎月の返済は、やはり頭金をたくさん入れた方が楽になりますね。月に1万4千円位の違いが出てきます。

住宅ローン控除は、毎年の12月末のローン残高の1%をその年の所得税と翌年の住民税から控除する減税措置です。ローン残高が多い方が控除は大きくなりますね。詳しくは

税金のセオリー

をご一読ください。

そして15年後の残高は一括返済します。

頭金をゼロとした方は857万円ですが、住宅ローン控除が159万円ありますので差引すると700万円以下になりますよね。

ということは、頭金をそのまま何かのために温存しておいて、住宅ローン控除にも手を付けなければ現時点の貯蓄で確実に一括返済できるということです。

頭金を700万円入れた場合は、15年後の残高は348万円です。この348万円は住宅ローン控除の96万円と月々の支払いが1万4千円少ないので、その分をまるまる貯金すれば一括返済できるという計算です。

頭金を入れても、入れなくても住宅ローン控除があるので、さほど変わらないという結果になります。貯蓄を置いておけるという点で、頭金を入れない方がリスクには強い返済方法かと思います。

ARUHIのスーパーフラット35で借入期間は20年とし、16年目に一括返済する

続いてはフラット35です。物件価格に対して用意されている頭金が多いので、検討に入れました。これは頭金を2割入れることによって、フラット35の金利から一律に0.1%優遇するものです。

2017年3月時点のフラット35の20年の金利は1.01%ですから、そこから0.1%優遇となると0.91%ですね。三井住友信託銀行の15年固定よりも安い金利です。

しかも、半民半官ですから、営利目的ではないので審査にも通りやすいことで定評があります。

しかし、団信(団体信用保険)が任意となっており、別料金です。これがそこそこ高いのです。ARUHIの場合は金利に0.3%上乗せとなります。

そこで以下の2パターンでシミュレーションを行いました。

  • パターン①:頭金を物件価格2千万円の2割の4百万円入れて団信に加入しない。
  • パターン②:頭金は同じで、0.3%の金利を上乗せして団信に加入する。

以下のようになります。

(単位:円)

団信で比較 パターン①
団信不加入
パターン②
団信加入
当初借入 16,000,000 16,000,000
毎月返済 72,942 75,092
頭金 4,000,000 4,000,000
16年返済額 14,004,952 14,417,628
住宅ローン控除 -1,185,729 -1,194,072
16年後残高 3,437,002 3,516,841
支払い合計 20,256,226 20,740,397

毎月の返済は、団信に入ることで2千円アップしますね。

住宅ローン控除はそんなに変わりはありません。120万円弱というところです。

16年後の残高は343万円ないし351万円です。

一括返済の資金は、三井住友信託のように住宅ローン控除を充当すると、230万円~240万円ですね。当初700万円入れるはずだった頭金を400万円に抑えているので、ちゃんと払えることが今から計画できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

融資実行の時に金利はどうなるか分かりませんが、現時点の感じでは2千万円でも購入して貯金をしながら十分に返済が可能であるという結果になりました。

以上、参考になれば幸いです。