家を買うときに残すべき貯金の最低額はいくら?

2018年10月28日

セーフティネットを有効に活用し家族の生命と生活を守れる貯金の額

アルヒや日本住宅ローンでは自己資金を2割以上入れると金利が0.1%優遇されるというフラット35の商品があります。

とても有利な住宅ローンですね。しかし、それによって貯蓄が減っていざという時に困ってしまうのでは本末転倒です。

貯金は家族を守る城壁のようなものです。一家の大黒柱として、その城壁の高さと厚さ、堅牢さをどう設定するかが肝になります。

家を買った直後は最も貯金が減り、家族を守る城壁が低く、脆くなる瞬間です。

ですからその後からさらに高く厚くしていくように努めるのはもちろんですが、買った瞬間にどこまで貯蓄を取り崩してよいかというポイントの決断が必要です。

今日はとても大事なテーマでご相談を頂きました。

では始めますね。

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相談:利息が減る恩恵と貯蓄が減る危険をどう考えたらいいですか?

お世話になります。その節はありがとうございました。大変参考になりました。現在フラット35で3,600万を借入れる計画でほぼ決定というところまできました。

ただ、一点アドバイスをいただきたいことがあり、再びメールさせていただきました。

年齢、年収、共働き世帯年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 35
夫の年収(万円) 530
妻年齢 35
妻の年収(万円) 500
共働き世帯年収(万円) 1,030
家の価格(万円) 4,000
住宅ローン(万円) 3,200
頭金(万円) 800

子供1人(2歳)。私も妻も30代半ば。毎年昇給し、リストラの可能性は低いです。子供はもう1人と考えています。

日本住宅ローンで借りる予定なのですが、自己資金を2割以上入れると金利が0.1%マイナスになるプランがあります。

具体的には、当初10年0.8%が0.7%に、11年目から1.1%が1.0%になります。

あと200万自己資金を入れるとそのプランを選べるのですが、貯金の4分の1程度を入れることになって貯金が600万円に減ってしまいます。

長い期間かけて受ける恩恵と、今貯金の4分の1が無くなることを比較した時に、後者に対する不安があり決めかねています。

そこで、千日さんはどのようにお考えになるかお聞かせください。

回答:貯金の最低ラインは(家族の人数―1)×200~300万円

とても大事なテーマについてのご質問をありがとうございます。

ではお答えしていきます。

国は国民の生命と健康を守るために各種の健康保険制度や社会保険制度を準備しています。なので、基本的に貯金がゼロになっても、ちゃんと利用すれば家族が路頭に迷うということが無いようには、なっています。

しかし、これから家を買おうという人の要求水準は、それよりももう少し上ですよね。

  1. 購入した家を維持する。
  2. そのうえで、家族の生命と健康を守る。

この二つのミッションを家長として遂行するのに必要な最低ラインの貯金額は死守する。

これが、家を購入した瞬間に許容してもいい、貯金額の下限です。

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千日は以下の計算式で計算します。

(家族の人数-1)×200万円~300万円

この根拠を説明します。

高額医療保険制度では1カ月の治療費を先払いして翌月給付される

高額医療費制度をご存知でしょうか。ある月の1日から末日までにかかった医療費が高額になって自己負担の限度を超えた場合に、超えた分のお金を払い戻してもらえる健康保険の制度です。

限度額は年齢(70歳未満かどうか)と年収(標準報酬月額)によって違ってきます。

70歳未満の場合の計算表

所得区分  自己負担限度額
①区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
②区分イ
(標準報酬月額53万円~79万円の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
③区分ウ
(標準報酬月額28万円~50万円の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
④区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
 57,600円
⑤区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
 35,400円

70歳未満で標準報酬月額28万円から50万円なら80,100円+(1カ月の総医療費-267,000円)×1%が限度額です。

70歳未満で標準報酬月額26万円以下なら57,600円が限度額です。

つまり、がんの放射線治療などで300万円の治療費がかかったとしてもこの制度で払い戻しを申請すれば翌月には上記で計算した限度額を超えた部分のお金が返ってくるんですね。

ただ、まずお金を払わなければ治療は受けられません。つまり「×200万円から300万円」という金額の根拠は先進医療を受ける場合の支払額の目安ということです。

家族全員が一挙にそうなる可能性は相当低いでしょうから「家族の人数-1」です。

なお、医療費が高額になりそうなときは『限度額適用認定証』を利用すると、窓口の支払いが最初から高額医療費制度の自己負担限度額までになります。

これが認められると、先払いの額も抑えられますが万一間に合わなかった場合のための貯金ということになります。

詳しくは高額医療費簡易試算-全国健康保険協会をご一読ください。

標準報酬月額は幾らか?

ここで大事なのが「標準報酬月額」ですよね。

国が保険料を計算するための便宜上の月給です。これが高いほど、健康保険料が高くなります。勤め先の人事に聞けば教えてもらえますけど、簡易に給与明細から計算する方法もあります。

給与明細の「健康保険料」を見てください。それは標準報酬月額に保険料率を乗じて計算されたものです。

自己負担の保険料率は地域によって違いますがだいたい5%ちょいです。つまり給与明細の健康保険料を20倍すれば自分のだいたいの標準報酬月額を計算することができます。誤差は数千円です。

正確に知りたい場合は会社に聞くのが間違いないでしょう。

傷病手当金は標準報酬月額の3分の2で最長1年6ヶ月

家族が病気になった場合は国の健康保険制度でほぼ何とかなります。問題は自分が病気になって働けなくなった場合ですね。

傷病手当金という制度があります。病気療養中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。被保険者が病気やケガのために会社を休み、十分な給料が受けられない場合に支給されます。

大きな会社なら、病気療養中でもそこそこ長く給与が払われるのでしょうが、それが打ち切られたときの命綱になります。

傷病手当金が支給される期間は支給開始から最長1年6カ月です。つまり、会社から支払われる給料がゼロになってから起算して1年6カ月までは、支給されます。

支給される傷病手当金の金額は標準報酬月額の3分の2です。

住宅ローンのセオリーでは元利均等返済額を手取り月給の4割未満に抑えるようにおススメしていますね。標準報酬月額と手取り月給はほぼ近似するか少し下がるくらいなので(調べてみればそうなっていると思います)、少なくとも傷病手当金が支給される間は何とか回せるでしょう。

もちろん、そうなった場合はパートナーの協力は不可欠です。

これが終了した後も働けないという状態になったら、住宅ローンの条件緩和交渉、パートナーに住宅ローンの名義を移すなどの方法に移らざるを得ないでしょう。

ただ、これは貯金が無いからという局面ではなく、貯金が十分にあったとしても考えなければならない状況です。もとからそういう状態であれば家を買おうとは思わないはずですよね。

民間の住宅ローン及びフラット35で団信加入の場合

団信に加入している場合(民間の住宅ローンは必須、フラット35では任意の団信に加入している場合)は、自分の存命中には住宅ローンの支払いを維持し続けられる態勢を作っておくことが必要です。

つまり、以下のプランです。

  • 住宅ローンの名義人である世帯主が存命中には健康保険制度による傷病手当金の範囲内で住宅ローンの支払いを継続できるようにしておく。
  • 死亡後は団信生命保険で残額が支払われる。

フラット35で団信未加入の場合

団信に加入していない場合は、自分の存命中については同じですが、死亡後が異なります。

つまり、以下のプランです。

  • 死亡後は任意に売却して住宅ローンを清算するか、フラット35を借りたままで賃貸し完済を目指す。

フラット35の場合は借入後に返済が厳しくなった場合は物件を賃貸に出して返済を継続することが認められています。

フラット35では自宅を将来賃貸に使途変更できる?が参考になると思います。

また、一般社団法人移住・住みかえ支援機構が住宅を借り上げて第三者に賃貸することにより、家賃を受け取るとともに、仮に空き家となってもフラット35の利用者に対して家賃を保証する制度があります。

家賃返済特約付き【フラット35】

上記のような特約を最初からつけておくという方法もあります。ちなみにこの特約がつけられるフラット35の取り扱い金融機関は以下のとおりです。

  • 日本住宅ローン株式会社
  • アルヒ株式会社
  • 株式会社優良住宅ローン
  • 日本モーゲージサービス株式会社

利用される予定の日本住宅ローンも取扱っているんですね。確認してみて、詳しく話を聞いてみてもよいのではないでしょうか。

以上、参考になれば幸いです。

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