つなぎ融資と分割融資どっちが有利か?シミュレーションで比較

2018年10月28日

注文住宅の着工から完成までの住宅ローンの借り方は二つある

 

注文住宅で家を建てるには土地を自分の所有にしておかなければなりません。

そこでまず、土地の代金を払う必要があります。でも、その時点では住宅はまだ存在しませんので、住宅ローンを借りることは原則として出来ないのです。

そこでみんなどうしているのか?というと、つなぎ融資か分割融資という方法で土地の代金や建築工事の着手金や中間金を払っているんです。

この、つなぎ融資と分割融資、どっちが有利なんでしょうか?今回はそれをシミュレーションしてみました。

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つなぎ融資とは何か?その特徴

つなぎ融資は建物が完成して住宅ローンの融資実行が出来るようになるまでの「つなぎ」として借りる融資で、基本的には無担保で融資を受けるものです。なので、金利は住宅ローンよりも遥かに高くなるのが特徴です。

家が完成したら、つなぎ融資分と残代金の合計で住宅ローンを借りて、つなぎ融資のローン残高を返済します。そこから先は普通の住宅ローンです。

分割融資とは何か?その特徴

分割融資は建物が完成する前に住宅ローンを申し込み、完成前から分割して融資を受ける方法です。この回数は通常2回までとされているようです。契約は住宅ローンの一部となりますので、金利は住宅ローンの低い金利が適用されます。

しかし、融資を受けるタイミングで土地に対して抵当権を設定する必要があります。そのため、住宅購入時の優遇税率は受けられず、少し割高な登録免許税となります。また抵当権の設定を代行してもらう司法書士への報酬も融資のタイミングで必要になります。

ちなみに通常の抵当権の設定税率は0.4%で、住宅購入時の優遇税率は0.1%ですので、0.3%割高になるということです。1000万円の土地なら3万円です。これに加えて司法書士の報酬、銀行への融資手数料などが追加費用となります。

注文住宅を建てるにあたって、つなぎ融資と分割融資どちらが良いか?というのはケースバイケースで実際に計算してみればわかるのですが、それを比較するのはちょっと複雑なのですよね。では、今日のご相談者です。

相談:地銀のつなぎ融資かみずほ銀行の分割融資か?

初めまして、いつもブログを拝見させていただき、大変参考かつ勉強になっております。

注文住宅を建てるにあたって、住宅ローンについて悩み悩み、眠れない日々が続く中、藁にもすがる思いで検索してたところ、千日様のブログにたどり着くことができ、大変気持ちが楽になりました。心からお礼申し上げます。

さて、本題ですが、現在注文住宅のつなぎ融資の住宅ローンをどこにすべきか迷っており、アドバイスをいただければと思います。

年齢、年収、共働き世帯年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 34
夫の年収(万円) 600
妻年齢 34
妻の年収(万円) 160
共働き世帯年収(万円) 760
家の価格(万円) 4,000
住宅ローン(万円) 3,460
頭金(万円) 540
  • 私(34歳)公務員 年収約600万円(額面)
  • 妻(34歳)パート看護師 年収約160万円(額面)
  • 子供2人(小学4年と幼稚園年少)

貯蓄約600万円(そのほか学資や財形貯蓄で数百万円)借金なし。今後親から約420万円の援助を受ける予定。

土地代約1430万円、上記土地代含め、総予算4100万円(諸費用込み。ただし家具家電引越し代金除く)。

住宅ローンについて

  1. 住宅財形融資760万円←土地の購入代金に充てました。
  2. 銀行ローン2700万円←つなぎ融資か分割融資か、今回悩んでるところです。

1.住宅財形融資→土地購入代金として借入済み

  • 融資額760万円
  • 返済期間15年間(元金均等返済)
  • 5年固定変動
  • 金利0.66%→子育て家庭特例により0.46%
  • 月約2万3000円
  • ボーナス12万6000円×年2回

※自己資金+財形住宅融資で土地代取得に充てるため15年しか返済期間選べなく、やむえずボーナス払い併用しました…千日様セオリーに反してしまいました泣

そして既に貸付受けており、今月から返済が始まります。

早く借りすぎたかなと思いましたが8月貸付は0.51%に上がるとのことなので住宅ローン控除は少し減るものの金利考えたら得だったのでしょうか?

2.住宅ローン2700万は地銀のつなぎ融資か都銀の分割融資か?

3つの選択肢で悩んでいます。

①地方銀行 建築会社提携ローンのつなぎ融資

  • 当初10年 金利1.05%
  • 残り25年 金利1.85%
  • 団信+八疾病+妻が女性特有のがんなら100万円一時金
  • 保証料0円
  • 融資手数料27000円
  • つなぎ融資金利2.85%

②みずほ銀行 自分の会社の提携ローンの分割融資

  • 固定35年1.18%
  • 団信のみ
  • 保証料約60万円前払いor金利0.2%上乗せ
  • つなぎ融資はないため分割融資
  • 手数料32400円×2倍
  • 収入印紙も2倍

③三井住友信託 自分の会社の提携ローン

  • 30年固定
  • 1.05%
  • つなぎ融資や手数料は未確認
  • 30年だと支払い厳しいか?

というような感じで銀行ローンに悩んでます。

一番いいのかなと思ってるのは可能なら地銀を争わせて少し金利下がれば嬉しいなとか思ってますが不可能でしょうか?

建築会社は地銀の提携ローンおしです、これは紹介料が発生するからなのでしょうか?

そもそも変動の方がいいのかとか、他にいいのがあるのかとか、無難に地銀がいいのかと決め悩んでます。

ちなみに段階金利にしようと思うのは、毎年昇給があるため10年後には金利上がってもいいかなと思ったからです。5年がんばれば財形融資の返済も終わりますし。

どうぞよろしくお願いします。

回答:つなぎ融資と分割融資のシミュレーションと比較方法をご説明します

ではお答えしていきますね。つなぎ融資のシミュレーションは完成までと完成後で金利が異なってきますので、ちょっとシミュレーションが複雑になりますよね。

地銀のつなぎ融資か都銀の分割融資か?

地銀のつなぎ融資と都銀の分割融資のそれぞれの返済計画をシミュレーションして比較します。比較するうえでの考慮事項と前提をまずご説明しておきましょう。

《シミュレーションの考慮事項と前提》

  • 元本と利息を合わせた支払額で比較します。これが個人の家計を考えるうえで最も実践的だと思っています。
  • 期間を二つに分けます。つまり建物の完成までの支払と建物の完成後の支払いに分けて比較します。
  • 公務員の定年の60歳までに完済することを前提にシミュレーションします。住宅ローンの期間は35年ですが、60歳になる25年目に残額を一括返済する前提です。この一括返済は退職金ではなく、それまでの貯蓄によって賄うようにします。
  • 融資に必要な経費は差が生じるものだけをシミュレーションに入れます。なので、シミュレーションの支払い合計は実際の支払い合計よりも全体的に少なくなりますが、差額はほぼ正確なものになります。

工事中の支払い額を比較するとつなぎ融資の方が5万3千円有利となる

(単位:円)

つなぎ融資は、無担保の融資ということになりますので、通常の住宅ローンよりも金利が高くなります。その分だけ返済額が増えるので、分割融資の方が支払いが安くなります。

しかし一方で、分割融資の方は土地の抵当権設定に追加費用が必要になってきます。税率が0.3%割高になるのと、追加的に司法書士報酬が掛かるということで、約10万円多めにかかるとしました。

差引としては5万3千円地銀のつなぎ融資の方が有利となりました。

完成後の支払い額を比較すると分割融資の方が65万7千円有利となる

(単位:円)

(注:実際にはこの他に登録免許税、司法書士の報酬などが必要になります。)

ここからは完成直後の費用と毎月の返済額にそれぞれ差が出てきますね。

完成直後の費用ではつなぎ融資の方が60万7千円有利

分割融資は金利が安い代わりに融資手数料と印紙代がダブルで必要になります。また、今回のケースでは保証料が別途必要になりますね。ですから完成直後のイニシャルコスト(初期費用)としては分割融資の方が費用が多くなります。差額は約60万7千円です。

毎月の返済額は大丈夫か?

どちらも当初の10年は7万円後半ですね。先に借りている土地の住宅ローンの返済が2万3千円ですから、合計10万円です。これが無理なく払える金額かを確認しておきましょう。

住宅ローンの千日メソッドでは、毎月の返済額を手取り月収の4割以下に抑えることをお勧めしています。

住宅ローンのセオリー

額面600万円の手取り月収を27万円とすると、その4割は10万8千円ですね。レンジ内に収まっています。加えて奥様の収入がありますので、大丈夫だと思いますよ。

ちなみに三井住友信託銀行の30年固定1.05%にした場合は、毎月の返済は11万円(土地含む)となりますので、若干オーバーしますね。しかし、奥様の収入を入れればレンジ内に入ります。ダメということは無いと思いますよ。

トータルではみずほ銀行の方が65万7千円有利となる

今回のケースでは金利の違いがミソになります。

  • 地銀:当初10年1.05%でその後1.85%
  • みずほ:35年通しで1.18%

均すと、みずほの方が支払いは少なくなるのです。また、少額ですが、35年の約定の住宅ローンを25年で完済することで前払いした保証料の戻りがあります。

ということで次は工事中と完成後の合計をまとめてみました。

金利が全体的に低い分割融資の方が60万3千円有利となったが、繰上げ返済すれば逆転もある

(単位:円)

  • 工事中で5万3千円分割融資が高くなった理由は、融資費用が割高だからでした。
  • 完成後で65万7千円分割融資が安くなった理由は、金利が低いからでした。

常にこうなるとは限りませんが、全体として金利の低いみずほ銀行が、手数料の高さや保証料を入れても有利になるということです。ということで、私ならみずほの分割融資にすると思います。

ただ、地銀の方は疾病保障が無料で付帯するというのが、数字にできないメリットですね。考えようによってはその疾病保障の金額が70万円であるというような見方も出来るでしょう。

ちなみに、今回、地銀が負けた理由は10年経過後に1.85%という高い金利になるからだ、とも言えます。10年の住宅ローン控除の期間が過ぎたらある程度繰上げ返済するわけですから、繰上げ返済が多ければ、この順位が逆転することもあるのです。

下の表はもし10年後にそれぞれ全額繰上げ返済したら?という仮定でシミュレーションしたものです。

順位は逆転して、地銀のつなぎ融資の方は71万5千円安くなりますよね。10年後に2千万円を一括返済するというのはちょっと現実的ではありませんが、1千万円位ならまだ現実的です。感覚的なものですが、このちょうど間の1千万円繰上げ返済するかどうか?というのが損益分岐点になりそうですね。

(単位:円)

まとめ

以上が検討結果です。どちらが良いというのは一概に言えるものではありませんでした。それぞれに支払いのタイミングで必要な金額が違ってくるのと、繰上げ返済の時期によって総額が変わってくるという二つの要素があります。

ご自身の資金計画としてどちらで行くのか?というところで決められるのが良いと思いますよ。

なお、土地代金のローンについてはボーナス払いにしてしまいましたが、済んだをことをあれこれ思い悩んでも詮無いことです。ボーナス払いにしたのは本体の住宅ローンではなく、また、返済期間は15年ということですので、さほど気にしなくて良いと思います。

つまりこういうことです。

  • リスクの大きさ=756万円である。つまり今後貯蓄を増やしていつでも一括返済できる金額まで貯金があれば怖くない。

まだコントロールしようのあるリスクであると思います。

以上、参考になれば幸いです。

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