当初固定期間をミックスする住宅ローンを組むときはテールヘビーに注意
10年と20年のミックスローンを組む場合はテールヘビーな資金計画になるので注意
今回千日が解説するミックスローンは変動と固定のミックスローンではなく当初固定期間のミックスです。
固定期間の長さをミックスするミックスローンは比較的多くの人にお勧めできます。10年固定と20年固定をミックスするという例で、固定期間をミックスするというミックスローンを説明します。
- 10年固定と20年固定でそれぞれ半々の割合で借ります。
- 10年固定の方は固定期間が終わる10年後に繰上返済します。残るは20年固定だけです。
- 20年固定の方は固定期間が終わる20年後に繰上返済します。住宅ローンを完済します。
縦軸に利息、横軸に期間でグラフにすると下のようになります。
- 紺色と黄色が10年固定の支払利息の推移です。
- 水色と赤色が20年固定の支払利息の推移です。
- 紺色と水色は当初の固定期間の利息を意味します。その間、金利が上がることはなく、固定されています。
- 黄色と赤色は当初の固定期間の終了後の利息を意味します。急激に上がっているのは優遇金利が減ることが分かっている分だけ増やしているからです。
10年固定を固定期間終了後に一括繰上げ返済すれば黄色い折れ線グラフで表した多額の利息は発生しません。
20年固定の固定期間終了後は、元本もかなり減っていますから少々金利が上がっても影響は小さいです(赤い折れ線グラフ)。その時の金利が高ければ20年固定も一括返済しちゃっても良いですね。
ちなみにですが、フラット35S(当初の10年の金利がフラット35の金利から0.25%引下げになる(2017年9月申込までなら0.3%))で借りて、10年後に繰上げ返済しても同様の効果を得ることが出来ます。
いえーる すみかるで連載している、こちらの記事でも詳しく解説していますので、よかったら一度読んでみてください。
一定期間固定金利のミックスローンとは何か?by 千日太郎|いえーる すみかる
今日はこのミックスローンで住宅ローンを検討されている方からのご相談です。
相談:10年と20年のミックスローンを組んで大丈夫でしょうか?
初めて質問させていただきます。今度2500万の住宅ローンを組むことになりました。
年齢、年収、家の価格、住宅ローン、頭金
夫年齢 | 38 |
夫の年収(万円) | 600 |
妻年齢 | 不詳 |
妻の年収(万円) | 専業主婦 |
共働きの世帯年収(万円) | |
家の価格(万円) | 2,500 |
住宅ローン(万円) | 2,500 |
頭金(万円) | 0 |
世帯主は公務員38歳 年収600万
妻 育休中で収入なし
子供7才と0歳です。
ミックスローンの計画
初めは20年固定で全額組もうと思っていたのですが、住宅ローン控除のことや、子供の教育費のタイミングなど考え、当初固定金利10年800万と、当初固定金利20年1700万のミックスローンでいこうと思います。
千日様のブログでも、ミックスの場合、10年と20年固定は大丈夫とのことで受け取りました。この方法でだいたいあっていますでしょうか。
唐突なお尋ねで申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
回答➀:後半に多額の支出を控えている人は後半の支払いが少なくなるミックスローンがマッチする
ご相談ありがとうございます!早速お答えしますね。お子さんの大学入学11年後と公務員の定年60歳がポイントです。
上のお子さんの大学入学が11年後で、この時を境に教育費が大きくなります。また、公務員の定年退職は今のところ60歳で再任用は1年単位の更新です。老齢年金の支給開始の65歳までの5年を乗り切る貯蓄も必要ですね。
- 当初10年は住宅ローン控除の恩恵を受けるために繰り上げ返済せず低めの金利を享受するために10年固定をミックスする。
- 10年後に10年固定の方を全額繰り上げ返済すると、その後は20年固定だけの支払いとなるので、お子さんの教育費が増える時期のローン返済負担を減らせる。
- ただし、全額10年後に繰り上げ返済するというハードルを確実にクリアしなければならない。
このように、10年経過してから、毎月の返済を抑えられるという点で、10年固定と20年固定のミックスローンが適合するケースだと思います。では、ミックスローンに無理が無いかをシミュレーションしてみましょう。
回答②:ミックスローンのシミュレーション
毎月の返済のハードルを低くし、加えて住宅ローン控除の恩恵を増やすために元本の減るペースを抑える目的がありますので、返済期間は最長の35年とし、元利均等返済でボーナス払い無しとします。
これでチェックするポイントは2つです。
- 毎月の返済に無理はないか?
- 繰上げ返済に無理はないか?
《前提条件》
- 800万円 10年固定0.7% 35年 元利均等返済 ボーナス払い無し
- 1700万円 20年固定1.05% 35年 元利均等返済 ボーナス払い無し
1.毎月の返済に無理はないか?
- 10年固定の毎月返済 21,481円
- 20年固定の毎月返済 48,395円
当初の10年間の毎月返済額は上記合計の7万ですので、年収から考えて問題無いと思います。
2.繰上げ返済に無理はないか?
- 10年後の10年固定の残高 591万円
- 20年後の20年固定の残高 805万円
当初10年固定を全額繰り上げ返済する必要があります。年に約60万円の貯蓄です。ボーナスを半分くらい残しておけば可能なものです。
20年後に805万円の残高は普通であれば問題無い額ですが、当初10年の繰り上げ返済と二人のお子さんの教育費、定年後の生活資金の貯蓄などを鑑みると少し重い金額です。
回答③:テールヘビーになりがちなミックスローンのリスクとその対応方法
今から予定されている大きな支出をまとめると以下の4つですね。
- 10年後の繰り上げ返済
- 二人のお子さんの教育費(大学進学)
- 20年後又は定年時の繰り上げ返済
- 60歳から65歳までの生活資金
後半に多額の支払いがあることを『テールヘビー』といい、一般的にリスクが高いものとされます。
ミックスローンは後半に多額の支払いが予定されている人の後半の毎月返済を軽減するメリットがありますが、同時にテールヘビーになりやすいというデメリットがあります。メリットとデメリットがセットなんです。
これらに充てられる蓄えが現時点であるなら、その貯蓄の分だけテールヘビーが解消されるということです。例えば、10年後の繰り上げ返済資金は今の時点で温存出来ていれば、かなり軽減されるでしょう。
またテールヘビーになるのは、返済年数を長めの35年にしている為だとも言えます。これによって毎月の返済はかなり軽くなっています。前半から積極的に貯蓄を増やすことによって後半にかかり過ぎた比重を前に持って来るような工夫が必要ですね。
計画どおりに残高を繰上げ返済できるか?貯蓄があればその分リスクを減らせる
今回のご相談者については、貯蓄額や頭金についてはお聞きしていません。
あとは現時点の貯蓄や積立保険などを加味すれば判断の指針になるかと思い、上記のような内容で回答しました。
すると、これに対してすぐ回答がありました。
(ここから回答メールです)
千日様お返事ありがとうございました。
頭金は入れておりませんで、全額ローンです。
現在、貯蓄額は600万、別に子供用に550万、毎月引き落とされる分で学資保険が大学入学時にそれぞれ300万ずつ出るものに入っています。私が看護師ですので来年から再就職を考えています。(月10万ほどのパートを予定しています)
10年間は毎月7万の支払に加え、貯蓄もしていかないといけないですね。11年目の繰り上げ返済はできるとしても、そのあとの生活もあるので、、、
11年後から支払額が毎月5万ほどと減るので、その分は教育費にも充てていかないといけないと思います。
なかなかライフプランを踏まえてのアドバイスをいただける機会がないもので、本当に勉強になります。
ありがとうございました。
まとめ
ご相談者のケースくらいに貯蓄があれば、テールヘビーになっている資金計画のリスクはかなり軽減されると思います。
なお、ここで書いたことは、あくまでメールでお聞きした範囲から判断したご提案ですのでローン完済に関して『絶対に大丈夫』という保証を与えるものではありません。
用法用量を守って参考にして下さいね。