フラット35のリニューアル団信に落ちたなら旧団信か民間生命保険かどっち?

2018年10月28日

身体障害保障が付いて値下げされたフラット35の団信だが念のため民間生命保険も検討しよう

フラット35の団信がリニューアルしました。

  1. 団信保険料は実質値下げ。従来年一回ローン残高の0.358%を払う方式だったが、今後はフラット35の金利に0.28%上乗せとなり毎月の返済と一緒に支払う。
  2. 住宅ローン残高がゼロ円になる保障の範囲は拡大。従来高度障害と死亡が条件だったが、今後は身体障害(身体障害者福祉法1級or2級)についても保障の範囲に含まれる。

2017年10月以降にフラット35を申し込む人はすべてこのリニューアル団信になります。しかし、9月以前に申込をした人は旧団信なんです。このリニューアル団信に加入するには、生命保険会社の審査を受けなおす必要があります。

旧団信とリニューアル団信では保障の内容が異なります。具体的には以下のような差異ですね。

項目 リニューアル団信 旧団信 備考
死亡 住宅ローンがゼロ円
身体障害 身体障害者福祉法に定める障害等級(1・2級)の「身体障害者手帳」を交付されれば住宅ローンがゼロ円になる。保障の要件が具体的。 高度障害よりも軽い障害であっても保障される。
高度障害 非常に重い障害状態でその後の生活に重大な支障をきたす状態になると住宅ローンがゼロ円になる。保障の要件が抽象的。 高度障害の一部については、新団信では保障対象ではなくなるものもある。

リニューアル団信では例えば以下のような場合も住宅ローンがゼロ円になります。

  • ペースメーカを植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される場合(1級)
  • 人工透析を受けており、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される場合(1級)

こういった比較的可能性の高いリスクについて住宅ローンの残高がゼロ円になるのは大幅なグレードアップですが、その人の健康状態によっては、旧団信に加入出来た人でもケースによってはリニューアル団信に加入できない場合もあり得るのです。

安くなって保障が充実した半面、加入にあたっての健康上のハードルが上がってしまっているのかもしれません。もしリニューアル団信に加入できなかったら旧団信に入るしかないのでしょうか?

今日のご相談者です。

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相談:旧団信と民間生命保険、どっちに入るべき?

こんにちは。フラット35の旧団信か民間生命保険に入るべきか、相談させてください。

年齢、年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 36
夫の年収(万円) 600
妻年齢 36
妻の年収(万円) 現在無職
共働きの世帯年収(万円)
家の価格(万円) 3300
住宅ローン(万円) 2700
頭金(万円) 600
  • 自分:36歳 年収600万
  • 奥さん:36歳 無職(仕事復帰予定)
  • 娘:2歳と7か月。

土地と建物が約3300万の契約を終え、フラット35で住宅ローンを組む予定です。優良住宅ローンで借りる予定です。借入金額は2700万です。

長期優良住宅と子育て支援の制度を利用できるので金利は以下のようになる予定です。10月より前の旧団信のフラット35です。

  • 5年間は-0.55%
  • 次の5年間は-0.3%

ここで、借入金額を2900万円ぐらいに増やせたら手持ちの金額もある程度ですが、残るかなと考えています。この考えはどうでしょうか?

旧団信か民間生命保険か

フラット35の団信ですが、10月より前の団信には加入できたのですがリニューアルした団信に落ちてしまいました。奥さんは、それでも前の団信に加入した方が言いと言っています。

ですが、会社の生命保険(自分の職業しか入れない保険。)で、3000万の死亡保障に2つ加入しているので、さらに保障をつけなくてもいいのでは、と考えてます。

その保険は2つとも、5年区切りで掛け金が変わり、年度末に剰余金の還元があります。

  • 36~40・・・月々4000円
  • 41~45・・・月々6000円
  • 46~50・・・月々8000円
  • 51~55・・・月々12000円
  • 56~60・・・月々18000円
  • 61~65・・・月々27000円
  • 66~70・・・月々45130円(一つのみ。もう一つは保証なし。)

どちらの保険もほぼ同じような掛け金です。毎年、剰余金としてどちらも47%~53%ぐらいの掛け金が戻ってきています。自分に万が一があった場合は、一括でもらうか自分で期間を選び年金のような感じでもらえます。(25年・20年・15年・10年)

これでも団信には加入した方がいいでしょうか?よろしくお願いします。

回答:旧団信より民間生命保険の方が得ですが、二つ掛ける必要は無いです

団信は生命保険ですので、保障が重複するのでどちらかが不要になります。

  • 団信は後半になると保険料が安くなり、保障も安くなります。その反面病気のリスクは上がります。
  • 民間生命保険は、後半になると保険料が高くなり、保障は変わらずです。保険料が高くなるのは病気のリスクが高くなるからですね。

2つ入る必要はありません。

一方の生命保険から死亡保障を抜くなどして、保険料を安くする方法もあります。10月以前の団信は割高なので、民間生命保険を残す方が得になるケースが多いですね。

また、似たタイプの保険を2つ掛けているのは、掛けすぎのようにも思います。いずれにしてもどちらか片方で良いのではないでしょうか。書かれている保険料×2の保険料を毎月払うのですよね?家計を圧迫してしまうのではないでしょうか。

住宅ローンの千日メソッド-団信生命保険について-千日のブログ

こちらもご一読ください。貯蓄もまた「保険」ですよ。では旧団信と民間生命保険(有配当)を比較してみましょう。

生命保険の配当金は約束されたものではない

生命保険には有配当の商品と無配当の商品があり、今回のご相談は有配当の商品ですね。支払った保険料の一部は将来の満期金等のために積み立てられ、その際に運用を行うわけですが、運用が予定していたよりも好調で、予定利率以上で運用できたとします。この場合には実際の運用利回りと予定利率との差(利差益)を配当として我々に還元されます。

今はデフレで低金利なので、運用益は少ない時期です。その環境下で5割ほど配当として還元されるのですから、良い保険だと思います。

ただ、この配当はあくまで保険会社の運用によるわけですから、確実なものとは言えません。ですから二つのパターンで比較をします。

  1. 今の配当率が維持された場合
  2. 全く配当が無い場合

少なくとも、この1.と2.の間で推移するはずですからね。ではやってみましょう。

《前提条件》

  • 保険は団信か民間生命保険かどちらか一つだけ入る。(今民間生命保険に2つ入っていますが、どちらか一つとします)
  • 保険に入るのは定年退職60歳までの間とする。(住宅ローンは定年までの完済を前提にするので民間生命保険もローン完済までとする。)

①今の配当率が維持されるなら

まず、毎年の保証料の支払額を比較してみましょう。団信は期初のローン残高×0.358%を前払いします。これに対して民間生命保険は毎月払いで年1回か2回配当で返ってくるんですね。5割配当があるとして、差引が年間支払額という考え方で比較しました。

交差するのは50.5歳です。つまり、50歳までは民間生命保険の方が年毎の支払は少なくなりますけど、51歳からは団信の方が支払いが少なくなるということですね。これは民間の生命保険はリスクに応じて高くなり、団信はローンの返済に応じて安くなるからです。

ではローン返済期間の累計でどうなるか?比較してみましょう。以下のグラフのようになります。

つまり、5割配当されるという条件が定年までずっと続くならば、民間生命保険の方が得になるだろうと言えますね。ただ、ちょっとリアルじゃない感じがあります。

②配当がずっとゼロなら

続いて最悪のパターンで考えてみましょう。有配当の保険商品なのに今後全く配当が無いというケースです。これもリアルじゃないですが、先ほどのケースとの対比で考えればよいわけです。

交差するのは45歳です。つまり、45歳までは民間生命保険の方が年毎の支払は少なくなりますけど、46歳からは団信の方が支払いが少なくなるということですね。先ほどよりも若い段階で境目がやってきます。

ではローン返済期間の累計でどうなるか?比較してみましょう。以下のグラフのようになります。

51歳で交差しています。つまり51歳までは支払い累計で民間生命保険の方が安くなりますけど、52歳からは団信の方が安くなるということですね。

結論の考え方

①と②を累計で比較します。

  • ①ずっと50%配当なら60歳定年まで民間生命保険が有利
  • ②ずっと無配当なら51歳まで民間生命保険が有利

こういうことですから、ほぼ民間生命保険の方が有利になる可能性が高いと言えるのではないかと思います。

また、団信の補償金額は『ローン残高』です。②のケースで51歳の時点で比較すると、民間生命保険は3000万円の補償額ですが、団信の場合は2700万円借りたときの51歳残高ですので1635万円です。

トータルで考えて、少し支払が高くなった程度ならば民間生命保険の方が保障が厚いと判断できるでしょう。

おまけ(借入額は妥当か?)

借入額は今のところ2700万円としていますが、2900万円ではどうか?と考えておられますので、無理のない借入額になっているかの検討もしておきましょう。こちらの千日メソッドに沿って判定してみます。

https://jutakuloan-muryousoudan.com/theory-jutakuloan/

  • 支払いは手取り月収の4割以下にする。
  • 定年時の残高は1千万円以下にする。

(単位:円)

毎月返済と定年時残高 2700万円 2900万円
当初5年0.54% 70,566 75,793
次の5年0.79% 73,177 78,598
その後1.09% 75,870 81,490
定年時24年後残高 9,433,650 10,132,425

年収600万円の手取り月収を30万とすると、4割は12万です。毎月の返済額については、どちらも余裕がありますね。

定年時の残高はおおむね1千万円以下のレンジ内に入っています。2900万にするものアリだと思いますよ。ただ、1千万円というのは少ない金額ではありません。もちろんお分かりかと思いますが、これの繰上げ返済資金の貯蓄が重要になります。

そういう意味でも、保険をリストラすることをお勧めします。

以上、参考になれば幸いです。

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