新築マンションで手付金を入れた後から値引き交渉は可能ですか?

手付金を払ったら他に良物件が出るというジンクス

千日が4000万円の新築マンションを購入したときは契約時の手付金を1割の400万円入れました。で、入れた後から他に欲しい物件が出てきたんです。滅多に出ない同じ駅前の中古物件です。しかも600万円位安かったと記憶してます。

  • 手付を打ったのは駅徒歩7分(実測10分)の8階(新築4000万)
  • 出てきたのは同じ駅徒歩1分(実測30秒)の20階?(当時築13年3400万)

私の両親が見つけて来ました。どうも前の持ち主はプロ野球選手だったそうです。新築当時は億近くしたかもしれませんね。ただ、出てきた中古マンションの方は、やはり値段なりのものであったと思います。

つまり、こういうことです。

契約した新築マンション 後から出た中古マンション
価格 4000万円 3400万円
手付放棄 なし 400万円
合計 4000万円 3800万円
  • 契約した新築マンション:もともと4000万円のものを4000万円で買う。
  • 後から出た中古マンション:もともと3400万円のものを3800万円で買う。

私の感覚として、後から出た中古マンションの方で400万円、現実的なラインとしては200万円値引してもらえなければ手付放棄できない感覚でした。それと妻は当時、絶対に中古はイヤだと申していましたので、さらに妻の説得も必要になるということで、後ろ髪を引かれる思いをしながら後から出た中古マンションを諦めました。

しかし、この二つの物件がほぼ同じ条件であったならどうだったでしょうか?今日のご相談者はそういうケースです。

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相談:手付放棄について相談させてください

千日さんこんばんは。

新築マンションの手付放棄で悩んでおり、新築マンション手付金の相場と交渉方法~言いなりに払ってはダメです-千日のブログに同じようなケースがあり拝読させていただきました。

私も6月末に都内23区内で駅から5分の小規模新築マンションを購入して手付を500万払っているのですが、同駅徒歩6分のタワーマンションにデベロッパーの未入居物件が出てきて、そちらが欲しくなってしまいました。

竣工は2年前なのですが部屋は未入居という特殊な例です。

契約した小規模マンション 後から出たタワマン 差額
価格 9990万円 9180万円 810万円
手付放棄 なし 500万円 △500万円
合計 9990万円 9680万円 310万円

小規模
管理費18950円
修繕積立金8500円
タワー
管理費24430円
修繕積立金9200円

面積はタワーマンションの方が5㎡ほど大きく間取りはほぼ変わりませんが何より大手デベロッパーのタワーなので10年後の資産価値が購入した小規模物件と差が出ると思い、手付放棄してこちらを購入しようか迷っております。

とはいえタワーマンションは10年ほどで手放す人も多く、大規模修繕問題や長周期地震の問題なども今後出てくる気もして一概に大手のタワーマンションだからといって住み続けるリスクがあるのではないかという気もしております。(自分も同じように10年で住み替えればいいのですが・・・)

千日さんは同様なケースでは手付放棄はやめたとブログで書かれていましたが、上記の内容で何かアドバイスいただけたら幸いです。

回答:条件がほぼ似通っており手付放棄の覚悟があるなら値引き交渉のチャンスかも?

億ションの手付金として500万円は約5%ですから、手付金を低めに抑えられましたね。これによって『手付を払ったら後から良物件が出る』というジンクスに対応できる状況ということです。

迷われているように、どちらも良い点、悪い点があり決め手が無く悩ましいところですが、それは逆に価格による差別化を売主に求める良い機会であるともいえます。資産価値や構造については言及されていますので、他の要素についてまず比較してみましょう。

購入後の維持費と固定資産税に大きな差がない

まず、管理費についてはタワーマンションの方が6千円高くなっています。これはおそらく付加サービスや共用スペースに対する対価ですね。これがタワーマンションの魅力でもありますので、それに対して支払いが増えるのは当然です。したがって、管理費について6千円高いというのは費用面での増加とは考えないこととします。

これが負担だと思うなら、そもそもタワーマンションに魅力など感じないはずでしょう。

次に修繕積立金についてはほぼ似通った金額ですね。これは、タワーマンションが今のところ割安なのだと思います。タワーマンションは高層建築物ですから、メンテナンスにすごくコストがかかります。最初で同じということは、あとからタワーマンションの方が高くなります。

どの程度、高くなるのか?これはタワマンの歴史がまだ短いので未知の世界ということですね。それもあって10年ほど、つまり1回目の大規模修繕を前にして売却する人が多いのです。

固定資産税については以下のような関係になります。

契約した小規模マンション 後から出たタワマン 差額
固定資産税、都市計画税 土地の負担大 土地の負担小 僅少
建物の負担小 建物の負担大

固定資産税、都市計画税は毎年の1月1日に土地や家屋を所有している人にかかります。なので、売買契約を結ぶときに固定資産税を日割り計算して、所有していた日数分だけ払うように調整することになるのが一般的です。例えば先ほどの例だと購入者は売主が払った固定資産税のうち364/365を売買代金に上乗せして払うんですね。

固定資産税はその評価額×税率となっていますので、評価額が高いと固定資産税も高くなる仕組みになっています。

  • 土地の価値は路線価という、その敷地が面している道路のレベルと面積で決まります。
  • 建物の価値はその建物の建築費用によって決まります。

なので、立地が良いということは固定資産税が高いということです。さらに市街化地区なら都市計画税もかかりますから、なおさらです。こういう点から特に固定資産税が高くなるマイホームは何といっても駅近のマンションです。

そして、マンションは区分所有ですから、まず建物全体の固定資産税と都市計画税が計算されて、それを各区分所有者に按分する方法で課税されるんですが、按分基準は床面積の割合となっています。ですから、下の部屋も上の部屋も床面積が同じなら同額の固定資産税になるんですよ。

ということは、小規模マンションは部屋数が少なく、タワーマンションは部屋数が多いということですので、住民一人当たりの土地の固定資産税の負担は、小規模マンションが大きく、タワーマンションは小さくなるということです。

しかし、建物の固定資産税の負担はタワーマンションの方が大きくなるでしょう。これは高層建築物になるので、小規模マンションよりも建築費用が高くなるからです。

2年入居が無いタワマンの部屋の問題点は?

ご相談者は2年入居が無かった理由については、言及されていませんが、2年前の竣工で駅から徒歩6分の一流デべのタワーマンションで2年間売れなかったのには、必ず何か理由がありそうですよね。

その理由が何か、はっきりさせないことにはちょっと危ないと思います。入居して出て行ったのではなく、最初から入居していないのですから、おそらく少し注意深く調べれば理由が分かるような気がします。

値引交渉に持ち込むポイント

では、値引き交渉に持ち込むポイントです。再度条件を並べて解説します。

契約した小規模マンション 後から出たタワマン 差額
価格 9990万円 9180万円 810万円
手付放棄 なし 500万円 △500万円
合計 9990万円 9680万円 310万円
値引の要請 310万円値引(3.1%) 250万円値引(2.7%)
  ↓
リアルなライン 290万円 180万円

端数は下げてくれと言えば引いてもらえる

契約した小規模マンションについては、値引き交渉はしていないのではないでしょうか?というのも、『90万円』という端数があるからです。この端数は基本的に『言えば引いてもらえる』レベルの数字です。抽選になるような物件だとダメですので絶対ではありません。

また、後から出たタワマンについては80万円というのが端数です。これも言えば引いてもらえるレベルの数字です。

先に契約した小規模マンションの値切りは手付放棄を前提

既に契約した後に値切るのですから、基本的にタワマンの方を買っても良いと思える状態であることが前提です。つまり、手付放棄してタワマンをやめてもいいと思えるラインが値引の要請金額となります。

つまり、『合計』の差額の310万円ですね。

310万円は、物件価格の3.1%です。例えば、社員割引がある場合は5%位値引きになるケースがありますので、3.1%というのは十分に交渉の余地のある数字と言えます。

基本的な姿勢としてはかなりタワマンに傾いているというムードが必要です。もしかしたら、そういう交渉の過程で、タワマンが2年間売れていない理由を同業者情報から聞き出せるかもしれません。

ただ、このマンションの竣工は来年の4月で、まだ販売の可能性はありますから先方も「ハイそうですか」と引いてもらえるとは思えません。先ほどの『端数』のセオリーから、290万円の値引きが出てくれば、それで妥結して良いと思います。

また、タワマンの方は、前述の大規模修繕の不確実性、2年間全く入居が無いリスクをはらんでいますので、この交渉によってダメ元でも値引きを引き出せれば良いという考え方もアリだと思います。

後から出たタワマンは『2年売れていない』がポイント

何と言っても、2年全く入居が無いというのがポイントです。これは業界的に異常事態です。ただし住友不動産なら割と普通にあり得ます。デベロッパーによって、完成までに値引きをしてでも完売することを目標にするところと、そうでないところがあります。

詳しくは、新築マンションの値引き交渉のタイミングはデベロッパーによって違います-千日のブログをご一読ください。

現在の価格は、もうギリギリの値引額なんです!

営業マンは眉をへの字にして言うでしょうが、まだまだイケます。端数の80万円がその証拠です。というか、それなりの価格で売れれば何でもイイやというのが売り手の本音です。

毎月の事業部会議で、この『売れ残り』の説明をさせられているんですから。

なので、既に入れた手付金の500万の半額である250万は引いてくれというのは、リアルに行ける数字だと思います。なお、これは物件価格の2.7%ですね。値引いた上でという見方をすれば丁度良いラインでしょう。

また、近くの億ションの契約を済ませているというのもプラスに働きます。買える人って限られてきますから。そう簡単に手放さないでしょう。やはりお金のある人は『売れ残り』というだけで忌避します。値段を下げればすぐに売れるようなクラスの物件ではないのです。そこで2.7%の値引きで買うという人が現れたら、タダでは帰したくないのが普通の判断です。

以上、参考になれば幸いです。