3年固定の固定期間が終わった後は借り換えか?金利交渉か?
変動金利は上がるらしい…今のうちに20年固定へ借り換えか?金利交渉か?
住宅ローンの3年固定金利というのは3年間は変動金利よりも低い金利であることが多いですが、その3年が経過すると少し変動金利よりも高くなってしまうのが普通ですね。
ですから、3年固定を選ぶ場合というのは、最初から変動金利で借りているような感覚でいるのが良いかと思います。
この2018年に3年固定の固定期間が終わったという方からご相談が来ましたので、同じ状況の方は参考にしてくださいね。
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相談:3年固定が終わりました
居住中の家族の年齢と年収 | 家族構成:夫 35歳(会社員) 年収 737万 妻 34歳(医療関係)前年年収 491万←育休中で時短のため350万になる予定 子 3歳、0歳 |
当初借入額 | 3950万円 |
物件のタイプ | 新築一戸建て |
当初借入日 | 2015年2月 |
借入残高 | 3578万円(今まで繰上げ返済したことはない) |
現在の住宅ローン | 35年元利均等返済 地方銀行3年固定0.5%その後0.725% |
相談内容 | 借り換えるべきか?借り換えるべきであればどのタイプでどんなタイミングが良いかアドバイスいただけませんでしょうか。
また、ミックスタイプの場合、どんな比率で、どんな返済方法が有効かアドバイスを頂戴できませんでしょうか。 |
- 固定に借り換え案:りそな銀行20年固定1.1%で繰上げ返済しながら残り20年で完済する。
- 変動・固定の折衷案:変動・固定のミックス型でリスクを減らしつつ支払の増加も抑える。
- 変動のまま案:借り換えずに繰上げ返済によって今後の変動リスクを減らすということも考えています。
よろしくお願いします。
回答①:借り換えと金利引き下げ交渉を天秤にかけましょう
3年固定が終わったばかりで、まだかなりの期間(30年超)が残っていますので少しの金利差でも借り換えのメリットがあります。
借り換えのメリットがあるかどうかは3つの要素で決まります。
- 残り期間が長い方がメリットが出やすい。
- 借入残高が大きい方がメリットが出やすい。
- 金利差が大きい方がメリットが出やすい。
よく残り期間は10年超、借入残高は1000万超、金利差1%超などという情報がインターネットに流れてますが、これはデマです。それぞれの要素によって違ってきます。
それをちゃんと計算するために、現在の銀行に対して保証料の返金額を聞くことと、そのついでに金利の見直しを要請することをお勧めします。
この方の場合は…
- 保証料の返金額は58万9千円である。
- 金利は見直しすれば0.6%くらいにできる。
このような回答が得られています。最初に前払いした保証料が返金されることを知らない人が多いですが、こんなに返ってくるんですよね!すごくないですか?
あるメガバンクに相談したら、借り換えの費用に90万円くらいかかると言われていたんですが、この保証料の返金を加味していない数字だったんですよ。実質的な借り換え費用は31万円ほどということです。
ですので、以下の3つのパターンでシミュレーションしてみました。
- ①今の住宅ローンのまま
- ②0.6%に金利を引き下げてもらう(印紙代や手数料が少しかかります)
- ➂住信SBIネット銀行0.428%に借り換える(借り換え費用は31万円)
まずは毎月の返済額と定年時の残高での比較シミュレーションです。
(単位:千円)
3578万円残り31年 | 現状0.725% | 0.6%に引き下げ | 住信SBI0.428% | りそな20年1.1% |
---|---|---|---|---|
毎月返済 | 107 | 105 | 103 | 114 |
60歳残高 | 7,567 | 7,454 | 7,301 | 7,909 |
もともとの金利が低いということもあって、そんなに劇的な変化は無いですよね。しかし、塵も積もれば山となるという言葉もあります。
総支払額の比較シミュレーションをしてみましょう。
(単位:千円)
3578万円残り31年 | 現状0.725% | 0.6%に引き下げ | 住信SBI0.428% | りそな20年1.1% |
---|---|---|---|---|
追加費用 | 0 | 74 | 310 | 310 |
60歳まで返済額 | 32,227 | 31,628 | 30,816 | 34,067 |
60歳残高 | 7,567 | 7,454 | 7,301 | 7,909 |
合計 | 39,794 | 39,157 | 38,427 | 42,285 |
メリット | 0 | 637 | 730 | -2,491 |
この条件ならば0.6%に引き下げてもらえるなら、それでいいかなとも思いますよね。
回答②:変動から固定に借り換えるかどうかの考え方
りそなの20年固定に借り換えた場合のシミュレーションは条件をそろえるために、60歳まで1.1%で固定としています。
本当は20年だけ固定ですから55歳の時までしか固定にはならないんですが、それまでに繰上げ返済していけば、ここに出ている数字とそんなに大きな差にならないはずです。
20年固定に借り換えると、約250万円の支払いの増加となります。
ただし、変動から固定に借り換えるときに考えるのは差額ではなく毎月の返済額です。そもそも家を買った2015年2月の時点で固定を選ぶか変動を選ぶかという意思決定をしていたはずです。
その当時のフラット35(21年~35年)の金利は1.37%でこれに団信0.358%が別でしたから、合計すると1.7から1.8%というのが固定金利の相場だったわけですね。
それが現在は1.1%に下がっているという考え方になります。
つまり以下のような比較シミュレーションです。
- 最初から1.7%の固定金利で借りていた場合
- 今の1.1%の固定金利に借り換える場合
毎月の比較シミュレーション
(単位:千円)
3578万円残り31年 | 過去1.7% | りそな20年固定1.1% |
---|---|---|
毎月返済 | 124 | 114 |
60歳残高 | 8,469 | 7,909 |
だいぶ違いますよね。だからこそ固定にはしなかったということもあるのでしょう。では残りの期間の総支払額で比較してみましょうか。
(単位:千円)
3578万円残り31年 | 過去1.7% | りそな20年固定1.1% |
---|---|---|
追加費用 | 0 | 310 |
60歳まで返済額 | 37,143 | 34,067 |
60歳残高 | 8,469 | 7,909 |
合計 | 45,612 | 42,285 |
メリット | 0 | 3,327 |
31万円の追加費用を払ったとしても、333万円も今のタイミングで借り換えることがトクになります。
なので、2015年2月の当時では変動にして、今のタイミングで固定に借り換えるというのは十分に合理的な選択なのですよ。
そもそもは固定にしたかったけど、固定金利が高すぎるので変動金利にしたという経緯があるのであれば、今のタイミングで固定金利に借り換えるべきです。
回答➂:変動と固定のミックスはお勧めしません
では次に、変動と固定のミックスについてお答えします。変動金利と固定金利の中間のようなイメージを持たれていると思うのです。
変動金利とは短期プライムレートによって銀行が金利を上げたり下げたりする金利タイプです。金利は安いですけど上がるリスクがあります。
固定金利とは借入時の適用金利が全期間にわたってずっと適用される金利タイプです。金利は変動より高いですけど上がるリスクはありません。
『確かに、お互いのメリットを打ち消しあってしまうかもしれないけど、同時にデメリットも小さくなるんだから、それはそれでアリじゃないの?』こんな風に考える人もいるでしょう。しかし、2つの大事なことを忘れているんですよ。
- 金利タイプは2つあっても、借りる人は1人しかいません。
- 金利タイプは2つあっても、担保となる家は1つしかありません。
複数の収入がある人なら良いけれど、そうではない
固定金利が向いている人は、公務員など収入が景気の影響を受けにくい人です。好景気のインフレ時には金利は上がり、不景気のデフレ時には金利は下がる法則があります。
公務員のように、収入が景気の影響をあまり受けない人にとって、ローンの負担を一定にする効果があるということです。
なので、固定金利に変動金利を混ぜると、せっかく一定にしたローンの負担を変動させてしまうことになります。
一方で変動金利が向いている人は、収入が景気の影響を受けやすい業種のサラリーマンや自営業の人です。不景気でデフレの時は収入が減りますが、金利が低く抑えられているので負担は軽減されます。逆に好景気でインフレの時は収入も増えてますので金利が高くても負担は大きくありません。
変動金利は景気と連動する傾向があるので、収入が景気の影響を大きく受ける人にとっては負担を一定にする効果があるのです。
なので、変動金利に固定金利を混ぜると、景気で上下する収入に関係なく一定の高いローン負担を負うことになります。
つまり、金利タイプをミックスすることで『それぞれのデメリットを相殺している』という面もありますが、同時に『自分の収入タイプに合っていない金利タイプを混入させている』という面もあると私は考えています。
家を二つに分けられるんだったら良いけれど、そうではない
さっきは住宅ローンを『借りる人の収入面』から金利タイプをミックスする意味を説明しましたので、今度は住宅ローンの『担保に入れる家の面』から考えてみましょうか。
変動金利が向いているのは、これから家族が増えるかもしれない、また海外への転勤などで家を手放す可能性もある。こういった理由から、この家にずっと住むとは限らない。という人です。
一方で固定金利が向いているのは、基本的にこの家にずっと住み続けるつもりなので、この住宅ローンを長く借りるという人です。
固定金利にはその期間の金利を固定するというコストが乗っているんです。住宅ローン契約の全期間にわたって金利が変わらないのが固定金利ですから、買い替えなどによって大幅に早く完済するというのはロスになるんです。
家は一つしかありません。
変動金利の部分だけを売却して完済し、固定部分には長く住むので借り続けるなんて、不可能です。
つまり、形だけ金利タイプをミックスしたところで、家についての方針は一つしかありえません。けして馴染むことのない水と油だという考えです。本当に突き詰めて考えれば、変動か固定かは自ずと決まってくるはずです。
なので、例えば収入が公務員的固定給と自営業的売上との2種あってそれぞれで返済していくというのなら、その収入の割合で変動と固定をミックスするという考え方があります。
ただ、そういう人ってかなり限られていると思うので、基本的には変動と固定のミックスはお勧めしていません。
後日、結果のご報告を頂きました。
ご回答を拝見しました。大変詳しく親身なアドバイスに感動いたしました。ありがとうございます。
我が家は、やはり金利変動リスクに怯えたくないという思いから、りそなの長期金利へ借り換えることを決断いたしました。
借り換えは先月完了いたしました。お金の面では損した部分も多くあると思いますが、自分たちの生活や気持ちに合ったプランを選ぶことができたと思います。
これは千日先生のブログ、アドバイスなしにはできなかったことです。本当に感謝しております。
これからも先生のブログを拝見させていただき、勉強を重ねていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
こちらこそ、多くの人が迷いを持っている、とても良いテーマを頂きました!ありがとうございます。
そして、このようにフィードバックしていただけて感激しております。
これからも良い情報を発信していくべく頑張りますので、たまにのぞいてくださいね!
(でもってお知り合いにオススメしてください笑)
千日太郎