将来は売却、賃貸も視野に入れて都心7000万超のマンションを購入します

2023年12月6日

完済できるか?ちょっと微妙かもしれないけど売れるor貸せる物件を購入する

住宅ローンは完済しなければ終わりません。しかし、その物件が将来売れる、貸せるような物件であるなら完済の方法には様々な選択肢が採れます。

子どもが独立するまでの間、現役時代に人気の地域のマンションを住宅ローンで購入して住むとします。

  • 子どもが独立したら、定年退職時にマンションを売却して住宅ローンを完済して、小ぶりな賃貸に移る。

又は

  • 子どもが独立したら、マンションを賃貸に出して住宅ローンの返済を継続しつつ、夫婦で小ぶりな分譲マンションに移り住む。

こういうプランです。

  1. 住宅ローン控除によって10年間は1%のキャッシュバックがあります。増税後は13年に延長されます。
  2. 今は特に低金利であり、逆に利息が儲かるような状態です。
  3. ローン残高が多いうちは団信の生命保険が割安に受けられます。

特に当初の10年(or13年)については住宅ローン控除がありますし、今の低金利の恩恵も得られますし、団信という厚い生命保険にもほぼ無料で加入できます。

しかし、そのツケは後半に払うことになるかもしれません。売却したときに売却価格で住宅ローンの残債を完済できなければ追加でお金を払って一括返済しなければならないというリスクを負います。

そこで老後資金を使い果たしてしまうと、老後破産へ一直線です。

逆に言えば、この後半のリスクに耐えられるだけの収入があるなら、あえて完済しない住宅ローンを組むのもアリということです。

今日はそんなご相談者です。

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相談:37歳年収1100万円で7000万台の都心新築マンションを買うが住宅ローンの金額の大きさに不安あり

家族の年齢と年収 夫(37歳・会社員年収1132万)、妻(36歳・専業主婦)、子(8歳・小2)。
自己資金の額 自己資金700万。手付け金に700万入金、その中から諸費用300万近く引いたあと残金400万程のうち2〜300万を頭金にいれ残り全て住宅ローンを組む予定。
物件価格 7500万円
物件のタイプ 新築マンション、2019年より引渡し開始。都内でも値下りしにくい人気の地域です。
借入予定額 7200万円
住宅ローン 販売会社のFPさんが生活費教育費等でシュミレーションしたところ、修繕管理費込みで18万/月、年2回ボーナス時31万/回の支払いでした。
48歳で1000万、55歳で500万を繰上げ返済、60歳で1267万を退職金で支払い完済イメージで作ってくれ、資金面大丈夫ですと言われました。
相談内容 夫は死ぬまでは住まないだろうし、月々の住宅の支払いは高いが節約して新築マンションを買おうと乗り気です
しかし、私は7000万ローンを組む事に不安を感じています。
今は低金利ですし、このまま賃貸マンションにいても、さほど節約・貯蓄は出来ないと思います。購入した方がいいと思うのですが、年収に対してローンの金額が大丈夫かご意見をいただきたいです。

FPさんのシミュレーションについては、給料も少しずつ上がるとも思いますが、繰上げ返済については年間の収入-支出の残りを全て貯金にわました話なのであくまでシュミレーションと思っています。

FPさんは、途中で売却する事になっても値下りしにくい地域との事で払えない等あれば売却したら良いとの事でした。

もう少し安い中古や駅遠い新築などを買ってローン金額をおさえたら次売れなくなってしまうと困るので高くてもこの物件がいいのだろうかと悩んでおります。お忙しいと思いますがどうぞよろしくお願い致します。

回答①:身の丈を超えた危険ゾーンの住宅ローンです

まず今のご主人の収入で7200万円の住宅ローンに無理が無いか?を確認してみます。

こちらは、私の著書の家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本でご紹介している、無理なく返済できる住宅ローンを見積もる4つのルールです。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下(年収1200万からは5割以下)でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利(1.38%)
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

この4つのルールを、35歳40歳の各年収でスタートし、無理なく完済できる住宅ローンの金額として、表にすると以下のようになります。

FPさんはボーナス払いをお勧めしていますが、私は絶対おすすめしません。下記のリンクでも解説していますし、本でも書いてます。

ボーナス払いについての今までの相談事例集

(単位:万円)

年収 月収 35歳 40歳
400 20 2663 2440
600 25 3250 2860
700 30 3755 3248
900 35 4255 3680
1000 40 4714 4103
1200 50 7031 5982
1500 60 8317 7049
2000 80 10860 9160

高年収になると、住居費が5割以上になっても生活に支障は出てきませんので、年収1200万からは月収の5割でシミュレーションしています。なので、1200万から上は返せる住宅ローンの金額が上がっています。

ご相談者の年収は1100万台ですが、ほぼ1200万であるとして、5982万円~7031万円の間という金額が、返せる住宅ローンの金額ということですね。しかし、これは手取り月収の半分を住宅ローンの支払いに充てるという、住まいにかなりのお金をかける家計での前提です。

年収1000万円超の方からのご相談で、この割合について聞かれることがあるのですが、月収の半分以上を住宅ローンに使っても生活は出来ます。が、しかし、バランスが悪いなと思います。

レジャーや旅行、子どもにいろんな経験をさせる、など人生を豊かにする使い方はもっとあると思うんですよね。住まいにこだわりがあるんだという方に、そのお金の遣い方について意見するつもりはありません。

しかし、たまたまその値段のマンションが気に入った→購入できる(住宅ローンを返せる)→ならば買おう。というのであれば、考え直した方が良いと思います。

つまり、7200万円の住宅ローンはやはり、危険ゾーンの住宅ローンだということです。

住宅ローンで家を買うということは、現役時代にリスクを取って老後のリスクを減らすというものです。老後資金が貯められないような多額の住宅ローンであるならば、組むべきではありません。これが原則です。

こちら住宅ローンで家を買うということを、生涯収入と人生リスクの側面から整理したものです。
(参考)
住宅ローンを完済しないことを前提に家を買いたいなら生涯収入とリスクの配分を知るべし-千日のブログ

持ち家 現役時代 リタイア後
生涯収入 頭金と経費、420回ノーミスで続ける住宅ローンの元利均等返済額。 住居費の分は必要なくなるが年金は減る。
人生リスク 住宅ローンを払えなければ家を取り上げられ、ゼロスタートになる高リスク。 長生きしても住居費は必要無くなる。低リスク。
戦略 リタイヤ後の住居費がかからない分だけ、老後のリスクは減る。しかし年金のリスクは見えない。食費や維持費も払えなくなるリスクもゼロではない。

不動産の価値が右肩上がりに上がり続けていた時代には『土地ころがし』といった方法もあるにはありました。

しかし、これからということで考えると、いくら人気の地域であっても、土地の価格が上がることが期待できない時代です。むしろ、地域ブランドで価格に上乗せのある地域ほど下がるという予想もあります。

AIで地価予測したら意外な町が上昇し意外な町が下がる⁉ -千日のブログ

ですから、売却することで損をしてしまう可能性は基本的に高いです。人生の後半にリスクを大きく取ることになります。

では賃貸or売却することを前提としたシミュレーションをしてみましょう。

回答➁賃貸に出すならフラット35

基本的に住宅ローンを借りたまま、賃貸に出すということは出来ません。住宅ローンの金利が安いのは、そこを住居として使っているので、お金を借りている人は死ぬ気で返済にコミットするはずだという前提があるからです。

なので、賃貸するにあたっては事前に「やむを得ず、そこに住めないのですが、賃貸しながら返済してもいいですかね?」と銀行にお伺いを立てて、OKをもらわなければなりません。

一般的な「やむを得ない理由」というのは、出張や親の介護などです。

しかし、フラット35で賃貸に出す場合は、事前にそんなお伺いを立てる必要はなく、住所の変更届を出すだけでOKなのです。

住宅金融支援機構のホームページには以下のように、賃貸への転用を認めると明確に書いています。

機構の住宅ローンにより住宅を取得して入居いただいた後の取扱いにつきまして、従来は、転勤、転職、病気などのご事情により融資住宅から一時的に転居される場合は、事前に留守管理承認申請書を提出いただいた上で、お認めしておりました。

しかし、一部のお客さまには、ご事情によらず住所変更届のみをご提出いただくことにより転居ができるようにしました。 これにより、住宅に入居いただいた後に、所得の低下によって返済が困難となった場合に所得が回復するまでの間融資住宅を賃貸し、その賃料収入により返済を継続することも可能となりました。

これは賃貸事業を推奨しているものではありません。しかし、「事情によらず転居出来る」「賃料収入により返済を継続できる」ということですから、実質的に任意に賃貸への転用を認めていることになります。

大事なポイントですので繰り返しますが、あくまで最初は自宅として利用する意思で住居を購入ことが前提です。

フラット35であればARUHIがおすすめです。フラット35の取り扱い件数で国内最大手であり※、豊富な実績があります。全国170か所以上の店舗で対面の相談も可能です。

※累積融資実行件数及び金額 2023年7月 株式会社日本能率協会総合研究所調べ

アルヒは頭金を1割入れればフラット35の金利から0.05%引き下げとなるスーパーフラット9も魅力です。

関連記事

フラット35は子育て世帯で最大1%引き下げに拡大【子育てプラス(仮称)】を公認会計士が解説

回答➂:売却を前提とするなら疾病保障が無料で付帯するネット銀行の変動金利で最長35年借りる

売却時にいくらで売れるのか?については大きなリスクがあります。

その分、売却までの資金の余裕を享受して、貯金を多く貯めておくための方法がお勧めということになりますね。

以下の3つがポイントです。

  1. 住宅ローン控除の恩恵を最大に受けるために低金利の変動金利にする。
  2. 住宅ローン控除の恩恵を最大に受けるために最長の35年元利均等返済とする。
  3. 低金利で疾病保障が無料で付帯するネット銀行を利用する。

低金利が売りのネット銀行の住宅ローンの中でも、疾病保障が無料で付帯する付加価値で差別化しているのが「住信SBIネット銀行」で、ネット銀行の中でも低金利で、さらに病気になったらその後の住宅ローンがチャラになる保険付きです。

住信SBIネット銀行全疾病保障
精神障害等を除く全ての病気やケガで働けなくなったらローン返済がゼロ円になる。
8疾病で12カ月継続して働けなくなったらローン残高がゼロ円になる。
8疾病以外の病気やケガの場合でも入院により12カ月継続して働けなかったら、ローン残高がゼロ円になる。

この住信SBIネット銀行はネット銀行で唯一リアル店舗(SBIマネープラザ)での相談を受け付けています。

全疾病保障と金利の安さはそのままに、対面での相談ができるのはここだけですので、オススメです。名前と電話番号など最低限の入力項目で店舗予約できます。

回答④:住宅ローンのシミュレーション

ではアルヒのスーパーフラットとSBIマネープラザのネット住宅ローンでシミュレーションをしてみましょう。

《前提条件》

  • 借入金額7200万円
  • 35年、元利均等返済、ボーナス払いなし
  • アルヒスーパーフラット9は1月の予想金利1.35%から0.05%引き下げの1.3%とします。頭金が1割必要ですが、比較の便宜のため今の頭金(1割未満)で行います。
  • SBIマネープラザでの変動金利は0.457%とします。

資金繰りのシミュレーション

(単位:円)

7200万円35年 アルヒスーパーフラット9 住信SBIネット銀行変動金利 差異
毎月返済 213,467 185,536 27,931
10年後残高 54,649,964 52,589,561 2,060,403
60歳残高 28,447,240 25,993,046 2,454,194
65歳残高 17,130,583 15,335,531 1,795,052
住宅ローン控除 4,000,000 4,000,000 0

まず、手取りの4割or5割以下になっているか?ですが、手取り月収が約50万でボーナスが100万×2回とすれば、どちらも概ねレンジ内にあると言えます。

しかし、定年時(60歳)の残高が1000万円を大きく超えていますね。年収の倍以上です。ここにリスクがあります。60歳の残高を小さくするには年数を短くすればいいのですが、そうすると今度は毎月の返済が増えていきます。

つまり、35年返済ということで毎月の返済を続けることは出来ますが、定年での完済については高いハードルがあるのですね。そこで、賃貸or売却ということを今から考えておかなければならないということになります。

賃貸ならフラット35

フラット35の毎月返済額+管理費修繕積立金の賃貸収入で貸せるものか?というところの判断になります。つまり25万くらいで貸せるならトントンということですね。しかし固定資産税も含めると赤字になります。

あえて赤字にして節税するという考え方もありますが、収支で黒字にならなければ、定年後の負担増になるだけです。黒字にならなければならないというのが私の考え方です。

売却なら変動金利

売却の場合は変動金利でのローン残高に注目してください。10年後が52百万円ですね。中古マンションで一番人気の築年数が10年前後です。

設備は新しいし、不具合については一通り出きっています。

また、1回目の大規模修繕があるので本当の修繕積立金が分かるからです。修繕積立金は売り出し時は実際よりも低めに設定されているのが普通です。実際にはそれでは足りなくなるので、大規模修繕のたびに値上がりしていきます。

中古相場でこれくらいの値段で売れそうか?というのは難しいですね。あくまで今の市況ではなく10年後の市況だからです。10年も経てばガラッと世の中変わりますよ、今から10年前にはスマホではなくガラケーが当たり前でしたからね。

当初の10年は住宅ローン控除もあるし、修繕積立金も安いのでその間は、中古市場の価格を見ながら、貯蓄を増やしていくという作戦になります。

総支払額のシミュレーション~完済を目指すなら定年延長

60歳での残高は厳しいので、65歳まで定年を延長する場合も考えて、総支払額の比較を行いました。

もし完済を目指すなら65歳まで定年を延長して、かつ、貯蓄も頑張るというプランになるでしょう。

60歳で全額繰上げ返済

(単位:円)

7200万円35年 アルヒスーパーフラット91.3% 住信SBIネット銀行0.457% 差異
借入費用 1,852,000 1,787,200 64,800
60歳まで返済額 58,916,892 51,207,936 7,708,956
60歳残高 28,447,240 25,993,046 2,454,194
住宅ローン控除 -4,000,000 -4,000,000 0
合計 85,216,132 74,988,182 10,227,950

65歳で全額繰上げ返済

(単位:円)

7200万円35年 アルヒスーパーフラット91.3% 住信SBIネット銀行0.457% 差異
借入費用 1,852,000 1,787,200 64,800
65歳まで返済額 71,724,912 62,340,096 9,384,816
65歳残高 17,130,583 15,335,531 1,795,052
住宅ローン控除 -4,000,000 -4,000,000 0
合計 86,707,495 75,462,827 11,244,668

変動と固定では総支払額で1022万円ないし1124万円も差がありますよね。ただ、これは変動金利が上がらない前提だからです。

FPさんは適当に〇年後に〇%みたいな前提でやってましたけど、そのFPさんには申し訳ないですが、そんなの絵に描いた餅だと思います。

金利が上がったら、いくら繰上げ返済しなければならないのか?という考え方で金利の変動リスクを見るのが千日流です。

参考:7200万円を変動金利で借りる場合の金利変動リスク

変動金利で借りるのであれば、金利が上がった際の繰上げ返済も考えておく必要があります。変動金利が上がってもイキナリ毎月の返済額が増えるわけではありません。

5年ルールと125%ルールがあるからです。

  • 5年ルールとは、金利が変動しても5年は元利均等返済額を変えないというルールです。
  • 125%ルールとは、1度に上げる元利均等返済額は125%を上限とするというルールです。

しかし、金利が上がっても毎月の返済額が増えなければ元本が底だまりに残ってしまい結局は最終回に一括で返済しなければなりません。

そこで、変動金利が上がったときに毎月の返済額を維持したまま予定の年数で完済するには、幾ら繰上げ返済すれば良いか?という物差しで測ります。

7200万円を変動金利0.5%で35年元利均等返済で借り入れた場合、毎月の返済額は186,901円です。金利があがってもこの支払いを維持したまま、当初の35年で完済するには、その時点で幾ら繰上げ返済すればいいか?という金額を計算するのです。

(単位:万円)

7200万借入から金利上昇したら繰上返済すべき金額(万円)
残期間 30年 25年 20年 15年
残高 6,256 5,277 4,274 3,245
0.5%→1.0% 437 310 203 118
0.5%→1.5% 832 597 395 230
0.5%→2.0% 1,192 861 574 336
0.5%→2.5% 1,518 1,104 742 438
0.5%→3.0% 1,816 1,330 899 534
0.5%→3.5% 2,088 1,538 1,046 627
0.5%→4.0% 2,336 1,731 1,186 715

5年後には残り30年になっていて、そのときの残高は6256万円です。その時に6256万円で売れればそれでも良いという見方もありますが、ここではこれがリスクの規模だという見方になります。

その時点で金利が0.5%から2.5%に上昇したとしたら、1518万円を繰上げ返済することで、今後も186,901円の毎月の返済で完済できるということです。つまり、場合によっては1518万円の損だってあり得るということです。

1518万円の支払い増を受け入れるか?

それとも6256万円で売れるなら売ってしまうか?

金利が上がったら、そうした意思決定を随時していくのが変動金利です。

変動金利は今後5年~10年の間に上昇する可能性があると、個人的には考えています。今の基準金利である2.5%くらいまでは上がるとして、上記の太字の金額くらいは貯金として備えておく必要があると思います。

購入直後から貯蓄のスタートが必要です。こちらも合わせて参考にしてくださいね。

最初の10年で住宅ローンの完済資金1000万円を貯める方法を教えます -千日のブログ

2019年からフラット35で賃貸することは出来なくなったの? -千日のブログ

以上、参考になれば幸いです。

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