【速報】2017年1月フラット35は下がり10年固定金利は上がる 今後の動向は?

2018年10月9日

住宅ローンの金利上下の理由と今後の動向

2017年1月のフラット35の金利と10年固定金利が発表されました。15年~20年の短いフラット35の金利は0.01%下がり、21年~35年の長いフラット35の金利は0.02%上がりましたね。

これに対して10年固定金利は大手3行で0.05%上がりました。

フラット35の2017年1月金利(住信SBI)

  • 15年~20年 1.03%⇒1.02%
  • 21年~35年 1.10%⇒1.12%

10年固定の2017年1月金利

  • 三井住友信託銀行 0.45%⇒0.50%
  • 三菱東京UFJ銀行 0.6%⇒0.65%
  • みずほ銀行 0.775%⇒0.825%

長期金利の上昇が住宅ローンに波及してきています。

本当は0.07%位上げたかったというのが銀行の思惑なんですけど0.05%に止まったのは日銀の力が影響しているのかもしれませんね。

日銀としては、まだ金利を上げたくないからです。それがフラット35の20年までの短期の金利が下がったことに出ています。そもそもの長期金利の上昇の原因はトランプ氏の期待からアメリカの長期金利が上昇したことが要因ですから、国としては上げたくないのです。

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アメリカの金利がなぜ日本の住宅ローンに波及するのか?

アメリカの長期金利が上がったのは、次期大統領に当選したトランプ氏の政策によってアメリカ国内景気が良くなるという期待があるからです。それが日本に波及したというのが大方の見方です。

それにしても、なんで期待が上がると長期金利が上がるんでしょうか?

それにしても、なんでアメリカの長期金利が上がったからといって日本の住宅ローンが上がらないといけないんでしょうか?

なんか、ちょっと腹がたちますよね。

今日はその理由について解説していきます。この理由が分かれば『なんか知らないけど、金利が上がり始めて何となく不安』というところから一つステップアップできると思います。

景気が良くなると長期金利が上がる仕組み

長期金利には2つの面があります。

  • 長期の資金を調達するコストという面
  • 長期の投資に対する利回りという面

つまるところ金融というのは、お金の融通ですよね。需給関係なんです。借りたい人と貸したい人のニーズで決まるのです。

景気が良くなると、設備投資をしようという企業や住宅という人生最大の買い物をしようとする個人が増えますよね。つまり、長期間の資金を必要とする人が増えます。

そうすると、長期の資金の調達コストである長期金利は少しくらい高くても借りようとするんですよ。だって景気が良いですから、利息が高くても問題なく返せるというムードが高まるんです。

これが主にコスト面の長期金利の性格です。貸す金融機関も他の銀行から資金を調達するときに借りる金利が高くなりますので、さらに企業や我々個人に貸す場合は高くなります。

アメリカドルの上昇⇒円安と国債価格の低下⇒長期金利上昇

金融の世界に国境はありません。

アメリカがトランプ氏への期待で景気が上がると、アメリカの長期金利が上がることは前に述べたとおりですね。

そうすると、世界の投資家はアメリカドルに投資するんです。貨幣の量は有限ですから、アメリカドルに人気が集中すると、それ以外のところが薄くなります。つまり、円が売られるんですね。

円安ドル高という状態です。

売られる円には日本国債も含まれます。特に日本の10年国債は日銀のイールドカーブコントロール政策によってゼロ%付近に維持されていますから、みんな利回りの高いアメリカ国債を買おうと動きます。

こうして、日本の国債の価格は下がり、長期金利が上がってしまっているのです。

国債の価格と国債の利回りは逆方向に動くのです。

金利とは利回りを言います。利回りとは投資した元本に対して投資の成果として得られる利益が年に何パーセントかという割合です。下記の前提で説明します。

  • 10年国債
  • 額面金額100円
  • 券面利率2.0%

国債の価格が100円の場合の利回りは2%

券面利率は2%ですから、100円に対して毎年2円の利息を受け取ります。10年後の満期には100円の元本が返ってきます。 100円投資して毎年2円の利益ですから、運用利回りは年2%です。

国債の価格が95円に下がると利回りは2.6%に上がる

額面100円の国債が95円に値下がりしている時に買えば、毎年2円の利息を受け取る上に満期で額面の100円が返ってきます。購入価格との差額である5円が値上り(キャピタルゲイン)として手に入ります。 95円投資して毎年2.5円の利益ですから、2.5÷95で運用利回りは2.6%です。

このように、日本の景気が悪いまま、国債への投資利回りが上昇します。そうすると、それを基準に取引されるようになります。

だって、苦労して広告を出して住宅ローンを安く貸すより、国債の利回りが上がってきたら国債を買った方が楽だし確実だと思うのが普通じゃないですか。

10年固定金利が決まるプロセス

このように、金融市場の資金の需給関係で長期金利が上がったり、下がったりしています。しかし、住宅ローンの金利が決まるにあたっては、もう一つの段階があるんです。

住宅ローンはいわば銀行の商品です。金利というのは、銀行が付ける『売値』のようなものです。結局のところ、仕入と売上なんですよ。

借りてくる資金の金利に自分の利益を上乗せしてお客さんに貸すという商売です。

お寿司屋さんをイメージしてください。魚市場(金融市場)からその時々の旬の魚(資金)を仕入れ、それに利益を乗せて売っているような感じです。

銀行が売り出す10年固定金利の住宅ローンの金利というのは、その時に銀行が金融市場から10年固定でお金を借りる金利に利益を上乗せしているというわけです。

銀行が10年固定で顧客に貸すお金は、元をたどると10年固定で金融市場からお金を借りてきて貸しているお金です。

なので、長期金利が上がるということは、銀行にとっては仕入値が上がるということなんですね。仕入値が上がったのに売値を安く維持するとその分利益が減ってしまいます。それもその月だけでなく、その後10年にわたって利益が減ってしまうことを意味します。

長期金利は11月から既に上昇していました。なので、11月から12月にかけて10年固定が上がっても良かったのです。しかし、大手銀行は上げずに我慢したんです。でも今回は我慢できなかったということでしょう。

その時だけサービスというわけにはいかないのが、金利の世界なんですよね。お寿司屋さんと違うところです。

それは我々にとっても同じなんです。私が複数の金融機関で本審査を通し、決定はギリギリまで粘り、今月の方が金利が安い場合は融資を前倒しにし、来月の方が金利が安い場合は翌月に延ばすことを推奨している所以でもあります。

今は長期金利が上昇トレンドにありますから、出来るだけ前倒しで融資を受けるほうがオトクな局面です。

フラット35の金利が決まるプロセス

10年固定は銀行の商品ですけどフラット35は違います。フラット35は住宅金融支援機構という国が運営する団体が債権を買い取る又は返済を保証するという形になっています。

つまり住宅ローンの利用者が返済出来なくなっても、すでにその債権を国に買い取ってもらっている又は国が代わって銀行に弁済してくれるんですよ。フラット35の取り扱い銀行は融資の手続きを代行するだけです。

ですから、銀行が市場から仕入れて…という仕組みで金利が決まるのではありません。

フラット35の金利は、住宅金融支援機構が毎月発行する月次債の利回りに利益を乗せて決まります。下図のような仕組みです。

つまり毎月、住宅金融支援機構が投資家に機構債を売る代金がフラット35の資金になっているんですね。

詳しくはこちらをどうぞ。

金利ラボ

その機構債の利回りというのは、機関投資家が投資してもいいかな?と思うような利回りでなければなりません。つまり、長期の投資の利回りです。

ここにも市場の原理が働いているんですね。

ですから、結局のところ長期金利が上がったら、フラット35の金利も上がらざるを得なくなります。ただ、銀行の10年固定などと違う点は、銀行が私企業であり、住宅金融支援機構は国だという点です。

  • 銀行は自らの利益を追求する。
  • 国は国民の利益を追求する。

こういう点で結果として違う動きをすることがあります。

当初、私はフラット35の金利は12月よりも0.07%上昇すると予測していました。なぜなら、この機構債の利回りが0.07%上昇していたからです。普通に考えれば、同じだけ平行移動でフラット35の金利は0.07%増加するはずですよね?

しかし、フタを開けると…

  • 15年~20年では0.01%の下降
  • 21年~35年では0.02%の上昇

でした。なんと、短い期間ではありますけど、下がったんです!全く逆方向に動いている。これは驚くべきことです。

この差額(機構債の表面利回り0.07%の上昇との差額)の部分は国が損をかぶっているということです。

 

金利は上がったがその上昇幅は極力抑えられている

なんで上げずに差額を国が負担するのか?ただし、そのお金の出処は『税金』ですから、国民全員で広く浅く負担しているんですけどね。

それは、今このタイミングで住宅ローンの金利が上がるのは日本経済にとって良くないと国が判断しているからです。

日本経済にとって良くない理由、それは日本はまだまだ不景気だからです。

政府としては、日本の景気は少し回復基調にあると判断していますが、まだまだ、消費者には上昇する金利に打ち勝つだけの消費マインドはありません。

そもそも給料も上がってませんし、ブラック企業が話題になっているような状況です。投資家達が日本国債を売り、国債価格が下がったというだけで住宅ローンの金利が上がり、唯一上向いていた住宅の消費が冷え切ってしまうと日本経済の浮かぶ瀬が無くなってしまうんです。

だからこそのイールドカーブコントロール政策なんですね。アメリカに引っ張られて、実を伴わずに上がろうとする長期金利の上昇を食い止めるために、国債の買い入れや差値オペで対抗しているのです。

詳しくはこちらをどうぞ。

政治経済ラボ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

住宅ローンの金利の動きというのは、世界の金融市場の影響を強く受けて上下しているんですね。ただ、市場原理だけで決まるのではなく、最終的に銀行が値段を付ける=金利を決めるまでには、銀行や国の思惑というのが強く影響しているんです。

ニュースの記事を書いている人は、たぶんその辺も考えているんでしょうけど、基本が分かっている前提で書かれている記事が多いです。

普段あまりこういった経済ニュースを見ない人には理解しにくいですね。ですので、出来るだけわかりやすく書きましたが、ちょっと理解しにくいという部分がありましたら、コメントやメールでご意見をお寄せください。

ちゃんと記事に反映させます。

今後どうなるのか?その大もとの答えは金融市場だけが知っているのですけど、市場は我々でもあるんです。直接市場に参加して売買しているわけではありませんけど、個人消費の大きな流れを作っているのは我々なんですよね。

短期的には、まだまだアメリカに引っ張られて上がろうとする長期金利を日銀が抑え込むという状況が続きそうです。

目が離せませんね。

以上、参考になりましたら幸いです。