ネット銀行で借りると借入後の一括返済・借換は損って知ってました?

2018年10月28日

将来的に一括返済や借換を視野に入れるならネット銀行は損です

ネット銀行はリアル銀行よりも金利が安く、また、融資手数料もトータルで安くなることが多いですね。その一方で審査が厳しめだったり、原則として借入後の金利交渉が出来ないというデメリットもあります。

ただ、意外と見落としがちなのが、期限前に全額一括返済したり、他の銀行に借換をするために新たな銀行から借りた資金で一括返済するときにも損をする。というのは意外と知られていない上に、見落としがちなのです。

なぜか?

ネット銀行の多くは保証料が無料で、その分を『融資手数料』で取るからです。トータルでは融資手数料の方が割安だったりするのですけど、ね。

保証料とは、住宅ローンの利用者が返済できなくなったときに保証会社が代わりに銀行に弁済する(代位弁済といいます)ために保証会社に払う費用です。

ただし、それで終わりではなく、保証会社は払えなくなった住宅ローンの利用者に請求します(求償といいます)。多くは物件を処分(任意売却や競売)して、保証会社が代位弁済した額を払うこととなります。

つまり、銀行だけが得をする仕組みですね。

それはさておき、保証料は前払い型と利息上乗せ型があるのですが、前払い型というのは住宅ローンの借入期間にわたる保証料を前払いするということです。

つまり、期日前に一括全額返済したら、借りていない期間に相当する部分は払い戻されるのが普通なのです。ただしどの程度返ってくるかは、金融機関の提携する保証会社によって違いますので、事前に確認する必要があります。

ネット銀行の場合はこの保証料が無料というところが多いですね。

ラッキー?

いえ、ほぼその保証料に相当する金額を『融資手数料』という名目で利用者から取るのです。融資手数料は文字通り、融資のための手数料ですから、融資した時点でおしまいです。つまり、期日前に一括返済したからといって返してもらえるような性格の費用ではありません

つまり、ネット銀行の場合は金利が安く、融資手数料もトータルでは安いけれども、そのかわり期日前に全額一括返済や借換をするのは損な仕組みになっているということですね。

では、今日のご相談者です。

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相談:固定金利か変動金利か10年固定と20年固定のミックスローンか?

千日さま

初めまして。いつもブログを楽しく読ませていたたいだております。

この度は、新規で借り入れる住宅ローンの金利タイプの決定に当たり、変動金利にすべきか固定金利にすべきか中々決めきれていないため、ご助言を賜りたく、ご相談させていただきました。

以下、私の属性と住宅ローンの状況、相談内容について記載いたします。

年齢、年収、家の価格、住宅ローン、頭金

夫年齢 33
夫の年収(万円) 900
妻年齢 不詳
妻の年収(万円) 専業主婦
共働き世帯年収(万円)
家の価格(万円) 4,500
住宅ローン(万円) 3,300
頭金(万円) 1,200

子供2人(7歳、1歳)です。

  • 物  件:新築マンション4,500万円
  • 金融機関:住信SBIネット銀行(決定)
  • 金  額:3300万円(決定)
  • 期  間:35年(決定)
  • 返済方法:元金均等(決定)

金利タイプは以下の2つで検討中です。

①通期引下げ型変動金利(適用金利:0.494%)

②当初期間引下げ型30年固定金利(適用金利:1.04%)

※適用金利はいずれも2017年1月適用のものであり、実際には引渡月の金利が適用される。

引 渡 月:2017年4月(融資実行)

(注)②の金利タイプは、正確に言えば変動金利の一種であると思いますが、私の基本的な方針としては、繰上返済により
60歳までには完済させることを目標としておりますので、ここでは「固定金利」と扱わさせていただきます。

その他の考慮事項

①②のいずれのタイプであっても、将来の繰上返済の原資のために、返済額+貯蓄額=15万円/月となるよう貯蓄を行う予定です。

相談内容①変動か固定か?

現在、上記①②のどちらのタイプに決めるかで非常に悩んでおります。私の性分はどちらかというと、支出は極力抑えたいがなるべく(今後の金利上昇の)リスクは取りたくない、長期間に亘って金利の心配をしたくない、というものなので昨秋までは②と決めていたのですが、トランプショック以降の金利上昇を受けて、変動もアリか?と心揺れ動いているところです。

4月まで金利上昇が続くとなると、変動と固定の金利差がより大きくなるのでは、と思い、そうなると変動の方がお得なのでは?と考えてしまっているところです…

変動金利にしたとしても千日さまの推奨する金利タイプ選びのセオリー『2つの四』はクリアできそうであること(※1)や、今後の金利上昇も極端に大幅なものではないと思われること(※2)から、最近では変動金利の方にかなり傾いている状況です(※3)。

※1 但し、私は元金均等を選択しているので、本当に基準をクリアできていると言えるのか、少し心配です

※2 リーマンショック直前の短プラが現在のものから+0.5%程度(現在の変動と固定の適用金利の差分程度)であることや、
国債の利払い等のことを考えれば、「政策的に」大幅な金利上昇を国は認めないのではないかという妄想などによる
完全な個人的見解です(←かなり危険な思い込みでしょうか…)

※3 変動金利が全期間を通じて1%以下になってくれれば、住宅ローン控除の関係もあり、非常に「お得」になるのでは、という皮算用を行い、変動金利に傾いている状況です

とは言え、やはり将来何が起きるかわからない(最悪デフォルト等…)ということや、これから子供達の教育費にもかなりの支出が見込まれることなどを踏まえると、やはりリスクを取らない(数百万円の支払いで安心を買う)という考えも捨てきれず、踏ん切りがついていない状況です。

相談②10年固定と20年固定のミックスローンは取れるか?

昨日の投稿の10年固定と20年固定のミックスローンのポイントとは?には興味を持ちました。元々、典型的な(固定と変動の)ミックスローンには興味がなかったので、8月の記事は題名を見ただけでスルーしていました…

約定リスクが増える点は、確かに気になるところですが、検討する余地はあるのかなと感じております。

このように非常に優柔不断な内容(得とリスクを天秤にかけている状況)ではありますが、千日さまから何らかのアドバイスやご見解を頂戴できれば幸甚でございます。

(不足している情報等がございましたらお申し付けください)

深夜のメールで大変恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

長文失礼いたしました。

回答①:変動・固定のどちらも可能ですが金利変動リスクを取っても良いケースだと思います

ではお答えしていきます。

まず変動か固定かという大きな基本方針を決める必要がありますよね。

収入との比較で行きますと、変動金利と固定金利のどちらでも可能なケースです。

変動金利について

変動金利は元金均等返済であるため、前半の期間は返済額が大きいですが、後半に楽になります。金利上昇可能性は、現時点の極めて短期的な予想では上がる要素に乏しいので、前半に元本を減らしておくことは理にかなっています。

固定金利について

長期金利はトランプ新政権によって上昇の兆しがあるものの、まだ歴史的に低い水準です。今、その低水準で金利を確定させておく事は、万人向けにオススメする方法です。

私がもし今住宅ローンを借りるなら、まず固定金利で安い所を探します。そういう点で住信SBIの30年固定1.02%はフラット35よりも低金利であり(2017年1月のフラット351.12%)理にかなった選択です。

資産の面では流通性の高いマンションであること

負債(住宅ローン)の面で決定的な違いが出ないので資産(物件)の流動性に注目しました。例えば、注文住宅を建てる場合と、マンションを購入する場合とでは明らかに物件の処分可能性が違うからです。

当然、後者の方が立地や性能の面で流通性が高いですね。また、所有の考え方についても、将来的な売却という事を想定して購入されていると考えられます。

そのように考えると、購入形態としては全借入期間に渡り所有するとは限らず、途中で売却する可能性も視野に入れられるケースです。

勿論これは『売らなければならない』『売らなければ損』という事ではありません。

比較的流動性のある物件であり、売却が現実となった際に、よりロスの少ない住宅ローンを選ぶ事がより合理的だという視点もある、という事です。

その場合は、固定よりも変動が明らかに適していると考えられます。

金利変動リスクを取る前提で元金均等返済か元利均等返済か

金利変動リスクを取る視点から考えると、元金を早く減らすよりも、安い金利の間は借りておくという考え方が理にかなってきます。

特に当初の10年は住宅ローン控除がありますので、元金均等返済と元利均等返済の利息の負担は相殺されるのです。

元金が高く利息が高い前半は、住宅ローン控除の金額も高くなるという事です。

ならば、変動金利を選択する場合も元利均等返済にしておいた方が良いという事になります。元金均等返済は後半まで借りなければ、元が取れない仕組みだからです。

こちら金利ラボの元利均等返済と元金均等返済の節をご一読ください。

金利ラボ

回答②:10年固定と20年固定のミックスローンも取れますがネット銀行であるのがネックです

そういう点では、10年固定と20年固定のミックスは、とても理に適った方法です。以下は昨日の投稿記事からの抜粋です。

  • 紺と黄色が10年固定の支払利息の推移です。
  • 水色と赤が20年固定の支払利息の推移です。
  • 紺と水色は当初の固定期間の利息を意味します。その間、金利が上がることはなく、固定されています。
  • 黄色と赤は当初の固定期間の終了後の利息を意味します。急激に上がっているのは優遇金利が減ることが分かっている分だけ増やしているからです。

10年固定を固定期間終了後に一括繰上げ返済すれば黄色い折れ線グラフで表した多額の利息は発生しません。

20年固定の固定期間終了後は、元本もかなり減っていますから少々金利が上がっても影響は小さいですね(赤い折れ線グラフ)。

その時の金利が高ければ20年固定も一括返済しちゃっても良いですね。

つまり、当初固定金利の低さというのを利用し、当初固定期間が終わった瞬間に一括返済してしまう方法です。

10年固定と20年固定のミックスローンのポイントとは?

 

メリット

  • 10年は金利変動リスクがありません。(変動金利に対するメリット)
  • 今特に金利の安い10年固定をミックスするため、10年以内に売却した場合のロスが少なく出来ます。(固定金利に対するメリット)

デメリット

  • 10年経過時点で10年固定部分については一括返済する必要があります。(変動、固定両方に対するデメリット)
  • 20年固定を混ぜる事で、住宅ローン控除の恩恵が減ります。(変動金利に対するデメリット)

10年後に10年固定を一括返済するという部分をクリアすれば、20年に渡り金利を固定しつつ金利負担を減らせるというのが魅力ですね。

また売却した場合の支払い済みの利息のコストも低く抑えられます。

住信SBI=ネット銀行の注意点~一括返済は損

ただこのケースで考えると、住信SBIはベストな選択とは言えません。

住信SBIは保証料が無料ですが、「融資手数料」が融資金額の2%プラス消費税です。これはリアル銀行の都銀などでは「保証料」に相当する費用です(トータルでは安いこともありますが)。

  • 融資手数料は文字通り融資の手数料です。
  • 保証料は返済を保証する前払の保証費用です。

保証料ならば全額一括返済すれば残り期間に相当する保証料は払戻される事になりますが、「融資手数料」として取られたものは、取られっぱなしになります。

ですので、一括返済するとその分損になってしまうという事です。

10年固定と20年固定のミックスでは10年固定を全額一括返済することが前提になっていますので、少なくともその分については余分にコストを払うことになります。

あわせてこちらをご一読ください。

借換と金利交渉のセオリー

一括返済を前提とするのであれば、当初の借入をする金融機関は、融資手数料ではなく、保証料を取る都銀や信託銀行がお勧めなのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。昨日公開した10年固定と20年固定のミックスローンについては、予想外に反響がありました。ちょっと一般的な方法ではないのですが…

10年固定で全額一括返済するほどの蓄えは無くてもほぼ、金利変動リスクを取らずに住宅ローンの当初固定金利の安さを有効に活用できる方法ではあります。

ただ、やはり『全額一括返済』という変則的な方法を取ることにより、通常ならば問題にならない部分、例えば今回のケースであればネット銀行は期限前に全額一括返済しても融資手数料は返ってこないというような部分について、大きな差が出てきます。

色んなところに十分な注意を払う必要があります。

以上、参考になれば幸いです。

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