諸費用と保証料の戻りを加味した住宅ローン借り換えシミュレーションの例

2019年10月1日

借り換えの諸費用と保証料の戻りを計算して借換シミュレーションする方法を教えます

住宅ローンの借り換えを検討するときの一番の障壁になるのは何か?

借り換えにかかる費用と保証料の戻りが幾らなのか分からないということです。どれだけ金利を見比べたって、結局幾ら得になるのか、はたまた損になるのか?これが分からないと比べようが無いんですよね。

これをちゃんと計算できる人はかなり限られています。

銀行の担当者に訊けばわかるでしょ?

と思われるかもしれませんが、銀行の担当者が計算できるのは借り換えにかかる費用までです。保証料が幾ら返ってくるかは、保証会社しか分かりません。

銀行と保証会社は別会社だからです。

つまり、借換の諸費用と保証料の戻りの両方を正確に計算できるのは、保証会社の担当者だけなんですよ。「じゃあ、保証会社に聞けばいいんじゃない?」と思われるかもしれません。

でも、保証会社は住宅ローン利用者からの問い合わせには応じません。まず、連絡先を知ることすら困難だと思います。つまり、銀行の担当者を通じて問い合わせてもらう方法しか保証料の戻り額が幾らかを知る手立ては無いのです。

なので、借り換えるという強いモチベーションが無いと銀行の担当者を通じて、保証料の戻り額を問い合わせるなんてことは出来ないんですよね。そして多くの人は「まあ面倒だし」「別に支払いがキツい訳でもないし」と借換えを諦めるんです。

しかし、このサイトの借換と金利交渉のセオリー通りにやれば、誰でも借換の諸費用と保証料の戻り額を計算して借換のシミュレーションをすることが出来るんですよ。

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相談:諸費用込みで借り換える一番有利な銀行は?

2,046万円32年の住宅ローンがのこっています、毎月61,105円で金利0.875%農協で借りてます。変動金利は今後上がるかもしれないので、少しなら支払いが増えても35年固定に乗り換えたいです。でも、なるべく毎月の返済が増えないようにしたいです。

個人の小さな会社なんで定年は別にありませんが今35歳であと30年は働くつもりです。

物件は中古の戸建てです。

シミュレーションで35年固定金利の利率くらいで見ると200万円近く多く払うと出ました。みずほ、アルヒ、三井住友、sbi、楽天が安いのかなと考えてましたが、どうなのでしょうか?

団信とか諸費用などを加味してどうやって比較したらいいのか?よくわからず質問させて頂きました。手数料等も込みで借り換えたいです。よろしくお願い致します。

回答:諸費用、保証料の戻りを加味してシミュレーションします

変動金利から固定金利に借り換えるので、基本的に支払は増えますが、増えるにしてもできるだけ増額を抑えて、病気などの保障も現在借りているJAと同じレベルで受けられるようなプランを考えましょう。

また、借換にかかる手数料についても、住宅ローンの金利で借りる前提でシミュレーションします。ただし、借換え前よりも借換え後のローン残高が大きくなる場合は、住宅ローン控除について注意が必要ですので、これについても補足説明しますね。

1.借換えにかかる諸費用を銀行別に比較する

まずは、借換費用からシミュレーションしていきましょう。

住宅ローンを借りている銀行を乗り換えるには、そこそこまとまった費用がかかります。また、前払いした保証料は幾らか返ってきます。この辺のことは皆なんとなく知っているんですが、具体的に幾らかかるの?ということになると、分からないという人がほとんどですよね。

それが借換えの障壁になっています。

なので、ここでは借換えにかかる諸費用の計算を様々なタイプで計算して見せます。20年~35年の長期固定金利への借り換えで金利の安い銀行の商品で比較します。以下の4つのケースです。

① ネット銀行代表:住信SBIネット銀行20年固定1.01%

② 大手リアル銀行代表:三井住友信託30年固定1.05%

③ 4大メガバンク代表:みずほ銀行35年固定1.15%

④ フラット35代表:楽天銀行35年1.09%

(単位:円)

借換え諸費用で最も安いのはフラット35ですね。しかし後述しますが、団信に加入する場合は毎年ローン残高の0.358%の団信保険料を払う必要がありますので、トータルで計算しないとわかりません。その次がネット銀行の住信SBIです。これも後述しますが、払うのが『融資手数料』ですので、その後に期日前に全額繰り上げ返済した場合は返金されないという部分がネックです。

では各諸費用の項目ごとに内容を説明していきますね。

旧銀行で必要なのは一括返済手数料、保証料を前払いしている場合は返金される場合もある

まず全ての銀行で全額一括返済する場合は手数料を取られます。JAの場合は32,400円(税込)です。そして、保証料を前払いしている場合は、当初の約定よりも早く返す分だけ返金されることがあります。

保証料というのは、我々が住宅ローンを払えなくなったときに保証会社が代って銀行に返済してくれる(代位弁済といいます)ための料金です。住宅ローンを借りるときに一括で前払いするケースと、金利に上乗せして(だいたい0.2%であることが多いです)毎月払う場合とがあります。一括で前払いするケースでは当初の約定期間にわたって借りることを前提として計算した保証料を払いますので、約定よりも早く全額返済すればその分返金されるという仕組みなのですね。

ただし保証料の返金は銀行の保証会社によって取扱いが異なります。まったく返金されないこともありますし、返金するにしてもほんのちょっとしか返金されないケースもあります。JAの場合は返金されます。

借換と金利交渉のセオリー

借換と金利交渉のセオリーのデータから返金額を試算しました。初めに払っている保証料や、利用者に適用されている保証料率などによっても違ってきますので、あくまで目安と考えてくださいね。

ネット銀行、大手銀行(メガバンク)、フラット35で大きく差が出るのは融資手数料と保証料

これは、新規の借り入れでも同じですけど、融資手数料と保証料がポイントです。銀行によって取扱いが大きく違ってきます。

ネット銀行では融資手数料は借入金額×料率(1%から2%と消費税)になりますが、保証料はゼロ円のところが多いです。融資手数料は文字通り手数料ですので、繰り上げ返済しても返ってきません。

大手銀行(メガバンク)では融資手数料は定額で32,400円(税込)のところが多いです。その代り保証料が必要です。保証料が幾らになるかは、借りる人の信用力によって上下しますので、ここでは三井住友信託銀行のホームページにある目安の金額で統一しています。保証料はネット銀行の融資手数料よりも高いですが、前述したように全額繰り上げ返済すれば、残っている残高と期間の分だけ返金されることがあります。

フラット35を楽天銀行で借りる場合の融資手数料は1.1%(楽天口座を作る場合)です。ちなみに住信SBIでもフラット35を借りることが出来ますが、融資手数料は2.2%ですので、比較対象としては手数料率の安い楽天銀行にしました。

フラット35では保証料は不要です。その代り団信(団体信用生命保険)が別料金になっています。団信に加入するかしないかは任意ですが、団信に加入する場合は、年に1回ローン残高の0.358%を支払う必要があります。途中で退会することもできますが、再加入は出来ません。このシミュレーションでは借換え費用には入れず、この後の支払額のシミュレーションで反映させます。借り換え時点で必要な費用ではありませんので。

また、少額ではありますが、フラット35を借りる場合はその物件がフラット35を借りるにふさわしいものか検査する物件検査費用が必要になりますので、借換え費用に入れています。

どの銀行に借り換えるケースでも共通の税金費用と司法書士報酬

登録免許税は登記に必要な税金で借入金額の0.4%です。借入金額はざっくりと21,000,000円として計算しました。契約書に貼る印紙代は2万円、抵当権の設定の登記を代行する司法書士への報酬は一律7万円としました。

これらの費用は細かい部分で誤差は生じると思いますが、どの銀行に借り換えてもほぼ同じように発生する費用です。借り換え先によって差異は生じません。

2.借換え費用込みで住宅ローンを借り換える場合の注意点

ご要望のとおり、ローン残高に借り換え費用を加えて借換え後のローン残高を計算しました。

(単位:円)

借換え費用も込みで借り換えられない場合もある

新規借入の時には原則として諸費用を住宅ローンで借りることはできませんが、借換えの時にはできる銀行が多いです。銀行としては、担保になる家屋の査定と申込みをする我々利用者の信用力から、いくら貸すかを判断します。

なので「この家と人なら貸しても大丈夫」と銀行(保証会社)の審査担当者が判断すれば、直前のローン残高よりもたくさん貸すことが出来るんです。銀行としては良いお客には1円でもたくさん貸して利息を取りたいんですよ。

ということは一方で、借りられる金額が減ってしまうこともあるということですね。「この家と人ではあぶないかも」と銀行(保証会社)の審査担当者が判断した場合です。

借り換えると住宅ローン控除が受けられなくなる場合もある

まず、住宅ローンを借り換えると、住宅ローン控除が受けられなくなる可能性があります。住宅ローン控除の対象となる住宅ローンは、住宅の新築、取得又は増改築等のために直接必要な借入でなければなりません。なので、住宅ローンの借換えによる新しい住宅ローンは、従前の住宅ローンを消滅させるための新たな借入金であり原則として住宅ローン控除の対象とはならないのです。

しかし、以下の一定の要件を満たせば、借り換え後の借入金について引き続き住宅借入金等特別控除を受けられます。

  • 新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること。
  • 新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど住宅ローン控除の対象となる要件に当てはまること。

借り換えるついでに自家用車の購入代金も上乗せして借りたりしたら、即アウトです。また、早く返済したいからという理由で、借換え後の期間を10年未満にしてしまうと、これもアウトになります。その年から住宅ローン控除は受けられなくなってしまいます。

諸費用込みで借り換えると住宅ローン控除の年末残高の計算が必要になる

借換えによる新たな住宅ローンが住宅ローン控除の対象となる場合には、次の金額が控除の対象となる住宅ローン等の年末残高となります。

  • A≧Bの場合の対象額=C
  • A<Bの場合の対象額=C×A/B

A=借換え直前における当初の住宅ローン等の残高

B=借換えによる新たな住宅ローン等の借入時の金額

C=借換えによる新たな住宅ローン等の年末残高

これってどういうことかというと、借換えによって住宅ローンの残高が増えた場合は、その増えた部分については住宅ローン控除を認めないということです。諸費用込みで住宅ローンを借り換えるとローンの残高が増えますよね。その諸費用の部分についてまで減税の恩恵は受けられないようにしているのです。

3.総支払額でシミュレーションして有利なプランを選ぶ

では、総支払額で比較をしましょう。シミュレーションでは以下の前提を置きました。

  • 借入期間は最長の35年とすることで、元利均等返済額を低くします。もちろん残りの32年とする考え方もありますが、セオリーとして毎月のハードルは低いに越したことはないのです。
  • 当初固定期間の終了時には全額繰り上げ返済します。ですので、20年固定については20年後に繰り上げ返済します。定年を65歳とすると最長30年ということで、35年固定でも30年で全額繰り上げ返済します。
  • 三井住友信託銀行とみずほ銀行については「保証料」ですから、全額繰り上げ返済することによる返金額を加味しました。ネット銀行とフラット35については保証料はゼロ円ですから繰り上げ返済によって返金はありませんね。
  • 元利均等返済でボーナス払いはナシとします。フラット35の団信保険料は年に1回の支払ですが、毎月の返済額に均して加算しています。

(単位:円)

① 住信SBIネット銀行の20年固定はプラス93万5千円の支払い増

住信SBIの20年固定の場合は毎月の返済額は5万8千円となり、従前の6万1千円よりも3千円返済負担が減りますね。金利が高くなったのに返済額が減る理由は、借入期間が増えたからです。

20年後の残高は980万8千円です。JAの変動のままだったら835万円ですね。ここでしわ寄せがくるようになっています。

返済総額では残り20年で93万5千円の支払い増ということになります。簡易なシミュレーションでは200万円という結果でしたが、安くなるように工夫すれば半分以下になるのです。

② 三井住友信託の30年固定はプラス133万1千円の支払い増

三井住友信託の30年固定の場合は毎月の返済額は5万9千円となり、従前の6万1千円よりも2千円返済負担が減りますね。金利が高くなったのに返済額が減る理由は、借入期間が増えたからです。

30年後の残高は346万円です。JAの変動のままだったら145万3千円ですね。最後にしわ寄せがくるようになっています。

返済総額では残り30年で133万1千円の支払い増ということになります。

③ みずほ銀行の35年固定は173万3千円の支払い増

みずほ銀行の35年固定の場合は毎月の返済額は6万円となり、従前の6万1千円よりも1千円返済負担が減りますね。金利が高くなったのに返済額が減る理由は、借入期間が増えたからです。

30年後の残高は350万8千円です。JAの変動のままだったら145万3千円ですね。最後にしわ寄せがくるようになっています。

返済総額では残り30年で173万3千円の支払い増ということになります。

④ 楽天フラット35は347万1千円の支払い増

楽天銀行のフラット35の場合は毎月の返済額は6万5千円となり、従前の6万1千円よりも4千円返済負担が増えますね。団信保険料は年1回ですがこれを月の返済に均して加算していることが要因です。

30年後の残高は344万6千円です。JAの変動のままだったら145万3千円ですね。年数を増やしているからですね。

返済総額では残り30年で347万1千円の支払い増ということになります。借換え諸費用ではフラット35が一番安かったのですが、支払総額で比較すると一番高くなってしまいました。

4.30年固定で最安の三井住友信託と返済額が最小で全疾病保障団信の住信SBI

まとめます。量的側面と質的側面の二つの側面から判断していきます。

  • 金額面(量)
  • リスク(質)

三井住友信託の30年固定

定年退職までの30年固定で団信込み、諸費用込みで最安になるのは三井住友信託の30年固定です。30年後の残高は346万円台ですから、年に11万5千円ずつ繰り上げ返済のために積み立てていけばいいですね。

  • 金利上昇リスクが無くなる
  • 毎月の返済は2千円少なくなる
  • 定年時の残高も比較的少額

住信SBIの20年固定と30年固定

返済額を最小に抑え、団信の疾病保障がグレードアップさせるなら住信SBIの20年固定です。20年後の残高は980万8千円ですから、年に49万円づつ繰り上げ返済のために積み立てていく感じです。住信SBIの団信は全疾病保障がゼロ円で付帯するのが魅力です。今よりも保障がグレードアップしますね。

  • 金利上昇リスクが無くなる
  • 病気のリスクへの保障がグレードアップする
  • 毎月の返済は3千円少なくなる
  • 定年時の残高は少し高めになる

全疾病保障は魅力だけど、20年固定はちょっと厳しいという場合は30年固定にしてもいいですね。その場合は金利は1.23%になります。

(単位:円)

  • 金利上昇リスクが無くなる
  • 病気のリスクへの保障がグレードアップする
  • 毎月の返済は1千円少なくなる
  • 定年時の残高も比較的少額

三井住友信託の30年固定と同程度の支払となり、疾病保障のグレードアップが付いてきます。住信SBIはネット銀行には珍しく、店舗(ミスター住宅ローンREAL)もありますので対面で融資の相談をすることも可能です。

以上、参考になれば幸いです。