共働き夫婦で住宅ローン控除のメリットを最大化する方法
夫婦共有の家屋を連帯債務により取得した場合は夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられる
ちょっと見出しが長いですけど、簡単に説明しておきましょう。
住宅ローン控除とは当初10年間、12月31日時点の住宅ローンの残高の1%を税金からマイナスする減税措置です。サラリーマンであれば源泉徴収された税金が返金(還付)されます。還付される税金は払った税金が上限ですから、借入が多すぎても意味ないんですよね。
税込年収と控除される税金等の上限金額(年末借入残高)は以下の通りです。あくまで目安です。
- 200万円⇒9万円(900万円)
- 300万円⇒17.5万円(1,750万円)
- 400万円⇒22.2万円(2,220万円)
- 500万円⇒27.5万円(2,750万円)
- 600万円⇒34.1万円(3,410万円)
- 700万円⇒40.0又は45.2万円(4,000万円又は4,520万円)
- 800万円⇒40.0又は50.0万円(4,000万円又は5,000万円)
例えば、12月31日の住宅ローンの残高が4,000万円ならば住宅ローン控除の1%は40万円です。しかし年収が400万円の場合は返金される税金の上限は22.2万円なので、40万円の住宅ローン控除の恩恵をフルには得られないということです。
ペアローンで夫婦それぞれが住宅ローンを負うことで住宅ローン控除の恩恵をフルに受ける
しかし、夫婦が共働きでペアローンを組めば住宅ローン控除を受けられる枠が拡がります。
住宅ローンのペアローンとは一つのマイホームの購入について、夫婦がそれぞれ銀行と住宅ローン契約を結ぶことです。夫婦それぞれに収入があって、納税していて、住宅ローンを負っていれば、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるということですね。
例えば、12月31日の住宅ローンの残高が4,000万円の先ほどの例が夫2,000万円、妻2,000万円のペアローンだったらどうか?
それぞれ住宅ローン控除の1%は20万円ずつです。夫婦それぞれの年収が400万円であれば返金される税金の上限は22.2万円なので、40万円の住宅ローン控除の恩恵をフルに受けられるということになります。
ただ、ペアローンの場合は、印紙代や融資手数料が夫婦二人分必要になるというデメリットがありますね。
また、夫婦それぞれが住宅ローン全額について連帯債務を負う状態なので、夫婦の片方が失業などにより無収入となった場合はもう片方に全額の債務がのしかかります。また、離婚によって夫婦関係を解消しても連帯債務は完済するまで残ります。
ペアローンでなくても夫婦の内部契約でそれぞれ住宅ローン控除を受けられる
ちなみに、国税庁のホームページを確認すると、必ずしもペアローンである必要は無いと書いてあります。
共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算-国税庁HP
共働きの夫婦が、連帯債務である借入金で、住宅を購入した場合、それぞれの住宅ローン控除の対象となる借入金は、その負担について当事者間の内部的契約がどのように定められているかによって計算することとなっているのです。
つまり、ペアローンでなくてもいいんですよ。
- 夫婦共有の家屋=夫婦共有の所有権登記をする。
- 夫婦で連帯債務の住宅ローンを組む。
- 夫婦間で契約書を作ってそれぞれの債務の負担割合を約する。
こうしておけば、ペアローンにしなくても夫婦それぞれで住宅ローン控除を受けることが出来るということです。
前置きが長くなりましたが、今回のご相談者です。
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いつも参考に読ませていただいています。
年齢、年収、共働き世帯年収、家の価格、住宅ローン、頭金
夫年齢 | 33 |
夫の年収(万円) | 420 |
妻年齢 | 30 |
妻の年収(万円) | 390 |
共働き世帯年収(万円) | 810 |
家の価格(万円) | 4,080 |
住宅ローン(万円) | 4,080 |
頭金(万円) | 0 |
- 家族構成 夫33歳、妻30歳、娘1歳4ヶ月、来年にもう一人欲しい
- 年収 夫 420万、妻 390万(共に公務員)
物件価格と自己資金
- 物件価格 4080万(新築戸建て)
- 貯金2100万
- 妻の両親より生前贈与として1000万
返済方針~一括返済で少しでも支払いを少なくさせたい
家が欲しいとずーっと思っていまして、10年固定が今よりだいぶ金利が低かった時には、ブログの記事にあるように、ペアローン頭金ゼロで10年後に全額返済しようと考えていました。
しかし、今は金利も少し上がり、状況も変わってきているのでしょうか?
今、考えているのは、三井住友信託銀行がペアローンの場合手数料が一人分無料になるとのことで、こちらで住宅ローンを組もうと考えています。
共働きであること、貯金と両親からの贈与を考えると、固定期間終了後に、一括返済も可能かなと思っているのですが・・・。
他に利子や手数料を少しでも少なくさせる方法ありますでしょうか?
回答:ペアローンも可能ですが、ペアローン以外でも有利な方法があります
ではお答えしていきますね。まず、ペアローンには『連帯債務』というおおきなデメリットがあります。
連帯債務のデメリットを理解する
- 夫婦それぞれが住宅ローンの申し込みをする方法です。
- 契約する住宅ローンは2本となり、それぞれが相手の方のローンに対する連帯保証人となります。
図に表すとこんな感じです。
- 借りられる金額が増える。
- 住宅ローン控除の恩恵が増える。
というメリットがありますが、『お互いがお互いの債務の保証を連帯して負う』という重い責任を負うことになります。連帯保証というのは、人生を担保として提供する人的保証です。主債務者ではないけど主債務者と同じ責任を負っているということです。
債権者はどっちに請求しても良いんです。主債務者が破産などしてなくても延滞したら即、連帯保証人に請求できます。
銀行からすると、もしも片方から回収が出来なければ、夫婦の財産は別ですから、本来そこで終わるところが、もう一方にも請求出来ます。夫婦それぞれが全額(1人だと払うのがしんどい額)を負っているという事です。
ですから、住宅ローンで連帯保証を付ける場合は夫婦それぞれが住宅ローンの全額を返済しようと思えば返済できるというのが千日の考える条件です。
夫婦それぞれが住宅ローンを全額返済できるか?の判定
- 三井住友信託銀行(大手銀行最安)の10年固定は0.65%
- auじぶん銀行(ネット銀行最安)の10年固定は0.58%
どちらも、まだ十分に低金利ですね。今後のことは分かりませんが、住宅ローン控除の1%をフルに利用することで十分にメリットを得ることが出来ます。
- 夫婦それぞれが住宅ローンの全額を返済しようと思えば返済できる?
これをこの2つの銀行で調べてみましょう。
《前提条件》
- 借入:4080万円 返済期間35年 元利均等返済ボーナス払いなし。
- 返済:10年固定金利で10年後に全額繰上げ返済する。
(単位:円)
支払い合計比較 | 三井住友信託 0.65% |
auじぶん銀行 0.58% |
差額 |
---|---|---|---|
毎月返済 | 108,638 | 107,360 | 1,278 |
10年返済額 | 13,036,520 | 12,883,154 | 153,366 |
10年後残高 | 30,073,550 | 29,974,969 | 98,581 |
住宅ローン控除 | -3,495,795 | -3,489,802 | -5,994 |
諸費用※ | 567,614 | 881,280 | -313,666 |
合計 | 40,181,890 | 40,249,602 | -67,713 |
※:諸費用は両行で差が出る融資手数料と保証料だけを集計したものです。印紙税、登録免許税、司法書士報酬などは差が出ないので考慮外としています。
毎月の返済額は11万円弱です。ご夫婦の年収それぞれ400万円の手取り月収を25万円とすると、その4割は10万円です。少しオーバーしていますが、10年後に完済できる貯蓄が現時点で存在します。
夫婦がそれぞれでこの住宅ローンの返済が可能であると思います。奥様の出産により収入が減少することを考慮しても大丈夫でしょう。
三井住友信託とauじぶん銀行のどちらが有利か?
次に二つの銀行のどちらが有利か?を検討します。金利だけを比較するとauじぶん銀行です。
- 三井住友信託銀行(大手銀行最安)の10年固定は0.65%
- auじぶん銀行(ネット銀行最安)の10年固定は0.58%
しかし、返済額のトータルでは三井住友信託銀行が少ない支払いになりますね。ほんのちょっとの違いですが。
- 三井住友信託銀行 40,181,890円
- auじぶん銀行 40,249,602円
なんでこうなるのか?諸費用が三井住友信託銀行の方が安いからですね。諸費用の内訳を見てみましょう。
(単位:円)
諸費用の内訳 | 三井住友信託 0.65% |
auじぶん銀行 0.58% |
差額 |
---|---|---|---|
融資手数料 | 32,400 | 881,280 | -848,880 |
保証料 | 840,888 | 0 | 840,888 |
小計 | 873,288 | 881,280 | -7,992 |
返金される保証料 | -305,674 | 0 | -305,674 |
差引合計 | 567,614 | 881,280 | -313,666 |
注:諸費用にはこれ以外に印紙税、登録免許税、司法書士報酬などが必要となります。両行で差が出ないので考慮外としています。
三井住友信託銀行の諸費用は、固定の融資手数料33,000円と融資額に応じた保証料840,888円です。そして、10年後の全額繰上げ返済で返金される保証料305,674円で差引567,614円になります。
保証料の目安と10年後の一括返済による返金額の目安はこちらの表から計算しました。
auじぶん銀行は融資手数料は融資額の2.2%で881,280円です。融資手数料は繰上げ返済しても返ってきませんので、最後まで881,280円なんですね。
金利が安い代わりに手数料が高いのがauじぶん銀行などのネット銀行のウィークポイントです。
auじぶん銀行のガン50%団信にも注目
じゃあ、三井住友信託がいいか?というと、そうとも言い切れないのですよ。auじぶん銀行の団信には『ガン50%団信』が無料で付帯するんです。ガンと診断されただけで住宅ローンの残高が50%になる保険です。
住宅ローンの疾病保障については、住信SBIネット銀行も全疾病保障を出していて話題となっていますね。どっちが有利なのか?
- 収入が夫婦の片方に偏っている場合は、住信SBIネット銀行ですが、
- 夫婦の収入が同じ位で継続する場合は、auじぶん銀行です。
夫婦の片方が、専業主婦(夫)であったりパート収入しかない場合、住宅ローン残高が半分になったところで、返済を継続することは困難です。保険の対象になっても、家を手離放さなければならなくなるのなら、意味が無いですよね。
auじぶん銀行では、がんと診断されただけでローン残高が50%になり、住信SBIネット銀行のような入院日数の条件が無いだけ有利なように見えるかもしれません。夫婦の収入がほぼ同じくらいで完済まで返済する場合は、auじぶん銀行の「ガン50%団信」のメリットが際立つでしょう。
ペアローンか?収入合算か?団信の保障が違ってくる
団信による保障を考えた場合、ペアローンにするか、収入合算にするかという選択肢があります。
ペアローンの場合は、夫婦それぞれが住宅ローン契約を結びますので、例えば夫が死亡した場合は夫の住宅ローンだけがゼロ円となり、妻の住宅ローンは残ります。
収入合算で夫が住宅ローンの名義人となり、妻が連帯保証するという方法を取った場合、夫が死亡した場合は住宅ローン全額がゼロ円となります。その一方で妻が死亡した場合は住宅ローンはまるまる残ります。
冒頭に書いたように、ペアローンでなくても夫婦が連帯保証を負って、夫婦共有で家を登記すればそれぞれ住宅ローン控除を受けることが出来ます。ペアローンにこだわらずに考えてもよいと思いますよ。