建築家設計の注文住宅でつなぎ融資を受けるときのリスク

2018年3月8日

つなぎ融資は建築請負契約書、建築計画が固まってなければ受けられない

 

注文住宅で土地の代金や中間金のお金を払うために銀行から受ける融資を「つなぎ融資」と言います。先行して必要となるこれらの代金は住宅ローンで借りることが出来ません。

なぜなら、そのお金が必要となる時点で「住宅」が存在しないからです。これから建てるんですから当然ですよね。

なので、「つなぎ融資」は住宅ローンではなく、原則として無担保で銀行が貸す融資です。

銀行がこのつなぎ融資をするのには、一定の条件があります。

ほぼ確実に住宅が建設されるであろうという確証です。

ですから、融資の時点で、

  • ちゃんと家が建つこと=施主の意思
  • 家を建てる工務店が決まっていること=工務店の意思
  • 幾らで建てるのか=不動産の担保価値

これらが確定していることを要求するのです。では今日のご相談者です。

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相談:建築家設計の注文住宅で先行して土地を買うのでつなぎ融資を受けたいです

居住予定の家族の年齢と年収 私:31歳400万円
妻:38歳350万円
長男:3歳次男:2歳
自己資金の額 自己資金:1300万円
両親の援助:600万円
物件価格 4500万円(土地 2850万円、建物1650万円)
設計費、諸費用:650万円
物件のタイプ 建築家設計の注文住宅
借入予定額 3300万円
住宅ローン 未定
相談内容 土地と建築家は決まっていますが、設計はこれからのため、工務店とは契約していません。(土地はこれから契約します)工務店は設計が出来たあとにいくつか見積をとりたいと思っております。
ろうきんの無担保ローンなどで、土地を購入した後に、フラット35で借りなおすしか方法が無いのではと思っているのですが、他に良い方法があるのではと、自信が持てません。
他にも借り方があるのでしょうか?

回答:設計と工務店が未定で土地だけ購入するのは相当のリスクを覚悟しましょう

気に入った土地を先に見つけて、そこにハウスメーカーではなく建築家に設計を依頼して家を建てる。その資金を住宅ローンで払おうとする場合には、どうしてもつなぎ融資が必要になると思います。

しかし冒頭で述べたように、つなぎ融資には、原則として工務店との建物請負契約書が必要になります。

じゃあ、結局建築家設計の家を建てるのにつなぎ融資を使えないということになってしまいますよね。

自己資金で土地を買える人か、既に土地を持っている人でなければ無理なのか?

そんなことはありません。建築事務所の図面と概算の見積であっても、先行で土地代金を融資してくれる金融機関もあります。

ただ金利がその分高くなってしまいますよね。

それが言われている「ろうきん」の無担保ローンです。しかし、無担保ローンは金利が高いです。なぜかというとそれだけリスクが高いからなんですよ。

当然、マイホームを建築するために土地を購入されたのですから、家を建てるに決まってるでしょ!と思われると思います。しかし、客観的には家が建たない可能性が相当あるんですよね。

私は、この建築家の方を存じ上げませんし、どんな仕様で家を建てようと考えているのかもお聞きしていません。だから信用していない、という面もあるのでしょう。

しかし、銀行の融資担当という立場もまた、私と同じなんです。

具体的にどのように建つのか、それが幾らなのか?決まってなければ、それは絵空事とたいして変わらないという見方なんです。

建築費が大幅にオーバーするリスク

設計が決まっていないということは、その土地に建つ予定の建物が予定の1650万円で建築できる保証は有りません。建築家がそのような設計図を書いてくれるとは限らないです。

また、建築家として「十分この予算で可能だ」と考える設計図を作ったとして、実際に工務店がその予算内で見積もりを出すとも限らないです。

1650万で確実にできるという仕様で作った設計があったとして、それが自分たちの希望に沿うレベルのものであるとは限りません。

設計が無ければ工務店も見積もりを出すことが出来ません。つまり、幾らになるのかある程度の幅のリスクを負った上での、今の予算というものから大幅にオーバーする可能性も有りながら、の土地の購入であるということですね。

設計や工務店の選定に時間をかけるとそれだけ利息コストがかさむ

工務店については、複数の相見積もりを取る予定です。

もちろんそれが基本ではありますが、予算を抑えつつ、後悔しない家にするために設計の見直しや工務店との交渉をしていくこととなりますが、完成までの期間が延びるということはそれだけ高い金利の借り入れ利息を払い続けることになります。

例えば2000万円を金利5%で借りると1年で100万円を利息だけで支払うことになります。

  • 自分の「こだわり」にいくらまで払う?
  • 本当に熟慮すべきことなのに流してしまってる?

果たして、この見極めが素人につくのか?というハードルがあります。

オーバーした予算で審査に臨むと審査に通らないリスクを負う

そして、当初の予算をオーバーした請負金額で本番の住宅ローンの審査を受けるということになった場合に、確実にローンの審査に通るのか?というリスクがあるのです。

住宅ローンを借りる場合、既に土地の借入があるとその分は審査上マイナスとなります。

もちろんこれから借りる住宅ローンで完済するのですが、その際の審査の考え方というのは金融機関によっても少しずつ違います。

また、実際に家が出来上がる時点での自身の収入や金利によっても借入できる金額は変わってきます。

最終的に家の建築代金を払えなければ、家の引き渡しを受けることは出来ません。

残代金を払えない可能性のある施主の建築を請け負う工務店のリスク

つなぎ融資が受けられないということは、この工事を請け負う工務店にとってもリスクがあるということになります。

契約どおりに家を完成させても、最後に代金を回収できないリスクということですね。

つまり、銀行からの融資がある程度確実に受けられるということを示さないと、請け負ってくれる工務店の幅は大きく制限されるということになります。

回答:多少の無理をしてでも、つなぎ融資の条件を揃えることをお勧めします

つまり「お金を払えない」ということが、今後のあらゆることの障害になっていきます。

普通のハウスメーカーの家を買うとか、出来上がっている中古物件を買うとかいう場合であれば十分な自己資金と言えるのですが、建築家の注文住宅で土地を先行して購入する前提で考えると、心もとないのです。

以下の2つのどちらかをお勧めします。

  1. 土地の購入を借金無しで乗り切る。
  2. つなぎ融資の条件がそろうまで土地を購入せずに押さえる。

1.土地の購入を無借金で乗り切る

  • ご両親から追加援助してもらう、または、借りるなどして、自己資金のみで土地を購入する。
  • 又は、ご両親に土地を購入してもらい、その上に家を建てる。

土地の購入で借金があると、それが足かせになって、建物の建築に濃い影を落とすことになります。

なので、借金をせずに家を建てるための土地を確保するのです。

2.頭を下げて設計と工務店が固まるまで土地を押さえる

手付金によっておさえられる期間は数か月までです。急ぎで設計を確定させ、つなぎ融資が受けられる前提で工務店を確定して請負契約書を固めれば、前述のリスクは回避されます。

その分のリスクは土地の売主に負ってもらうんですね。

自分が負うと…借金を負って多額の利息を払いながら目的のマイホームを建てられないリスク。ヤバすぎです、再起不能でしょう。

土地の売主のリスクは…手付金を受け取って、残代金がもらえるまでの間、長く待たなければならないという負担。でももし家が建たない場合はその手付金は自分のものになる。自分が負う場合よりも断然マシですよね。

ですから、頼み込めば、呑んでもらえる可能性は十分にあるのです。はっきり言って不動産屋は、嫌がると思いますけど、彼らはリスクを負いませんからね、ここは頑張って交渉する価値のあるポイントです。

こちらの状況を誠意をもって説明し、筋を通して頼めば、案外OKしてくれるものですよ。

参考:住宅ローンのシミュレーション

参考として、この予算で住宅ローンが組めた場合のシミュレーションを行いました。

無理の無い金額とは言えず、リスクはあります

まずは3300万円の借り入れが無理なく返済できる額か?です。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

固定金利を1.38%とすると、月収と年齢でざっくりとした目安をつくることが出来ます。下表は頭金ゼロで購入できる家の値段の表です。

言い換えれば無理なく返済できる住宅ローンの金額ということになります。

(単位:万円)

 年齢/月収 15万 20万 25万 30万 35万 40万
25歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
30歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
35歳 1997 2663 2972 3535 4125 4714
40歳 1997 2357 2630 3043 3550 4057
45歳 1768 2029 2263 2515 2934 3354

前提条件:元利均等返済、ボーナス払いなし、定年60歳、固定金利1.38%

旦那様は31歳年収400万で月収20万とすると、2663万円ですね。つまり3300万円住宅ローンは若干足が出ている状態ということです。

審査ではこの基準よりも少し多めに借りられることがありますが、予算をオーバーしたときのリスクは「高めだ」と考えました。

奥様とのペアローンにすれば可能性はありますが、そこは出来ればオススメしたくないところです。

資金繰り面の比較シミュレーション

固定金利ならば、頭金が2割以上ありますので、アルヒのスーパーフラット8Sが使えますね。現時点の固定金利では支払が最安になる住宅ローンです。

変動金利としては、中央ろうきんの変動金利0.625%としました(ろうきんの無担保ローンを検討されているようですので)。

(単位:円)

3300万円 ①スーパーフラット8S1.01%/1.26% ②ろうきん変動
0.625%
差異
前半毎月返済 93,308 87,498 5,810
後半毎月返済 96,135 87,498 8,637
10年後残高 24,728,789 24,295,775 433,014
60歳残高 6,663,146 6,181,702 481,444
住宅ローン控除 2,230,000 2,230,000 0

固定金利の場合でも旦那様単独では、毎月の返済額は厳しいものになります。奥様のとの2馬力であれば大丈夫です。

変動金利の場合は二つの「4」のハードルがあります。

  1. 毎月の返済額の4分の1を繰上げ返済用に貯蓄する。
  2. 毎月の返済額と上記貯蓄を合わせて手取り月収の4割以下にする。

金利タイプ選びのセオリー

これを考えると、固定金利の方がお勧めということになります。

 

支払総額での比較シミュレーション

(単位:円)

3300万円 ①スーパーフラット8S1.05%/1.3% ②ろうきん変動
0.625%
差異
借入費用 929,600 864,530 65,070
60歳まで返済額 33,115,740 30,449,304 2,666,436
60歳残高 6,663,146 6,181,702 481,444
住宅ローン控除 -2,230,000 -2,230,000 0
保証料払い戻し 0 -8,514 8,514
合計 38,478,486 35,257,022 3,221,464

変動金利の方が322万少ない支払額となりますが、金利変動リスクがありますので、絵にかいた餅ですね。

金利が上がった場合に対応できる貯蓄を作っておく必要があります。

変動金利で住宅ローン金利が上がったら繰上げ返済すべき金額の一覧表-千日のブログ

が参考になると思います。

以上、参考になれば幸いです。