住宅ローンフラット35の頭金は1割か2割かどっちにすべき?
2割の頭金を入れると0.1%金利が安くなるが住宅ローン控除の恩恵は減る
フラット35の中には頭金を2割入れることで、フラット35の金利から0.1%の金利が引き下げになる商品があります。私の知る範囲では以下の3つの金融機関で出しています。
金融機関 | 商品名 | 対象者 | ホームぺージ |
財形住宅金融㈱ | フラット35エース | 頭金2割 提携企業に勤務 |
www.zaijukin.co.jp/ |
日本住宅ローン㈱ | MCJフラットプレミアム8 | 頭金2割 提携ハウスメーカーで購入or建築 |
http://www.mc-j.co.jp/ |
SBIアルヒ㈱ | スーパーフラット8 | 頭金2割 返済負担率30%以内(400万円未満)/35%以内(400万円以上) |
ARUHI |
頭金を沢山入れれば、その分だけ借入金が少なくなりますよね。
なので、その分だけ利息を節約することが出来ます。さらにこれらの商品であれば、金利も低くなるのですからダブルで利息を節約することが出来るのです。
ですから、普通に考えたら頭金を2割用意できるのなら、2割入れた方がオトクです。
しかし!
話はそこまで単純では無いんですよ。住宅ローン控除というものがあるからです。
住宅ローン控除は当初の10年間の年末の住宅ローンの残高の1%を税金からキャッシュバックする減税制度です。年間キャッシュバックの上限は新築住宅で40万円(中古住宅など非課税の場合は20万、長期優良住宅の場合は50万)ですから10年で最大400万ですよ!
なので、当初の10年は住宅ローンの残高は多い方が得なんですよね。ならば頭金をあえて温存しておいて、住宅ローン控除が終わってから繰上げ返済した方が良いとも言えるのです。
それに、家を買った直後って色々とお金が入用になり、貯金が最も少なくなる時期です。自己資金をある程度温存しておく方が不測のアクシデントに強いとも言えるのですね。
では、今日のご相談者です。
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相談:最初に2割の頭金を入れるか?10年後に繰上げ返済するか?どっちにすべきでしょうか
はじめまして。いつもブログを拝見させていただき勉強させていただいています。
自己資金の支払い時期について悩んでいます。
居住予定の家族の年齢と年収 | 夫:32歳 年収440万円 妻:32歳 年収350万円(現在時短勤務。5年後フルタイムで働く予定) |
自己資金の額 | 最大950万円 |
物件価格 | 4500万円 |
物件のタイプ | 注文住宅 |
借入予定額 | 3600万円(頭金2割)か4050万円(頭金1割) |
住宅ローン | MCJローンのフラット35(夫婦収入合算、連帯債務)で住宅ローンを組もうと考えています。 頭金の金額で金利が変わります(2018年7月時点) ・物件価格の80%以内の金額を借り入れる(プレミアム8) 当初10年0.99% 11年後~1.24% ・物件価格の90%以内の金額を借り入れる(フラット35) 当初10年1.09% 11年後1.34% |
相談内容 | ① 頭金を20%以上支払い、10年後は繰上げ返済をしない (貯金ができていれば繰り上げ返済したい) ② 頭金を10%以上支払い、残った金額を10年後に一部繰上げ返済として支払う住宅ローン控除での利益と金利優遇の利益を考えた場合、どちらの選択がよいのかわかりません。 |
比較をしようにも知識がなくシュミレーションの仕方がわかりませんでした。お忙しいところ申し訳ないのですが教えて頂きたいです。よろしくお願いします。
回答:頭金1割よりも2割の方が総支払額は少なく済みますが…資金繰りの安全も考慮して決めましょう
では早速お答えしていきますね。住宅ローンを決める際には2つの面から判断するようにしています。量と質です。
- 量的側面:どちらが総支払額が少なく済むか?
- 質的側面:どちらが不測のアクシデントに強いか?
つまり、総支払額で少なくなるのは良いことですが、それによって不足のアクシデントに弱いものになると本末転倒なんですね。
今回のご質問では、結論として量的には2割の頭金を入れた方が総支払額が少なくなることはシミュレーションするまでもなく明らかです。
しかし、
- いくら少なくなるのか?
- それと引き換えに負うリスクは?
これを把握すればいいですね。
①資金繰り面の比較シミュレーション【質的側面】
- 頭金2割:MCJフラットプレミアム8(当初10年0.99%その後1.24%)
- 頭金1割:MCJフラット35S(当初10年1.09%その後1.24%)
この二つを資金繰り面で比較してみます。
(単位:円)
物件価格4500万円 | プレミアム80.99%→1.24% | フラット35S1.09%→1.34% | 差異 |
頭金 | 9,000,000 | 4,500,000 | 4,500,000 |
当初10年返済 | 101,455 | 116,032 | -14,577 |
その後毎月返済 | 104,531 | 101,875 | 2,656 |
10年後残高 | 26,952,606 | 30,457,796 | -3,505,190 |
10年後繰上げ返済 | 0 | 4,500,000 | -4,500,000 |
60歳残高 | 9,548,792 | 9,269,097 | 279,695 |
住宅ローン控除 | 3,109,700 | 3,506,700 | -397,000 |
- 頭金を450万円多く入れる代わりに当初の10年間の毎月返済は14,577円少なくなります。
- 10年経過したところで10年後の残高は頭金2割(頭金を450万多くいれた)の方が約350万少ないですね。頭金1割だった場合はそのタイミングで450万の繰上げ返済をしますので、ローン残高はそこから逆転します。
- なので11年目から最後までの毎月返済は頭金1割の方が2,656円少なくなります。
- 60歳時点の残高は頭金1割の方が、約28万円少なくなりますが敢えて問題にするほどの差ではありませんね。
- 住宅ローン控除は10年合計で39万7千円頭金1割の方が恩恵が大きくなります。ローン残高大きいからです。
資金繰り面で一番考慮すべきは「1.頭金を450万多く入れる代わりに当初10年間の毎月返済は14,577円少なくなる」という面です。
千日の住宅ローンのセオリーでは毎月の返済額は手取り月収の4割以下にすることをお勧めしています。仮に旦那様の手取り月収22万円、奥様の手取り月収を16万円とすると、今の返済額はどちらにしても一人では厳しく、二人合わせればOKという水準ですね。
奥様は出産に子育て、時短勤務によるキャリアの中断とリスクを負う時期でもあります。既に、その部分で毎月の返済額には大きめのリスクを負っている状態と言えます。
資金繰り面のリスクのバランスを取るという意味で、頭金を多く入れて月々の返済を少しでも少なくすることを優先する、というのが一つの考え方です。
では次に支払総額での比較をしてみましょう。つまり量的な側面です。
②支払総額の比較シミュレーション【量的側面】
(単位:円)
物件価格4500万円 | プレミアム8 0.99%→1.24% |
フラット35S 1.09%→1.34% |
差異 |
頭金 | 9,000,000 | 4,500,000 | 4,500,000 |
借入費用 | 672,896 | 746,408 | -73,512 |
10年後繰上げ返済 | 0 | 4,500,000 | -4,500,000 |
60歳まで返済額 | 33,498,924 | 34,706,340 | -1,207,416 |
60歳残高 | 9,548,792 | 9,269,097 | 279,695 |
住宅ローン控除 | -3,109,700 | -3,506,700 | 397,000 |
合計 | 49,610,912 | 50,215,145 | -604,233 |
合計で頭金2割の方が60万4千円ほど有利であるという結果になりました。量的にも頭金を2割入れた方が得になるという結果です。
なので、今回のご相談者のケースでは質的にも量的にも頭金を2割入れることをお勧めするという結果になりましたね。量と質のどちらを優先するべきか?というと私は個人的に質(リスク)の方を優先させます。なので、質的側面で頭金2割という結果が出た時点でほぼ答えが出たようなものだったんですが、一応念のためという感じです。
オマケ:10年後に幾ら繰上げ返済すれば、頭金2割と同じになるか?
ここからはオマケです。毎月の収入に対する返済額には余裕があるけど、いざというときのための貯金を多く残しておきたいという人にとっては、質的には頭金を温存しておいた方が良いという結果になるでしょう。
もし、質的側面から考えたときに、頭金を1割にしておいた方が良いという結果になったとして、支払総額で頭金2割と同じにしたいなら、10年後に幾ら繰上げ返済すればいいのでしょうか?
気になりますよね?なので計算してみました。
(単位:円)
物件価格4500万円 | プレミアム8 0.99%→1.24% |
フラット35S 1.09%→1.34% |
差異 |
頭金 | 9,000,000 | 4,500,000 | 4,500,000 |
借入費用 | 672,896 | 746,408 | -73,512 |
10年後繰上げ返済 | 0 | 8,500,000 | -8,500,000 |
60歳まで返済額 | 33,498,924 | 31,503,744 | 1,995,180 |
60歳残高 | 9,548,792 | 7,840,763 | 1,708,029 |
住宅ローン控除 | -3,109,700 | -3,506,700 | 397,000 |
合計 | 49,610,912 | 49,584,215 | 26,697 |
なんと850万円です!
頭金の時点で450万円温存するかわりに10年後に850万円繰上げ返済して、トントンになる感じです。
- 繰上げ返済10年の時間差
- 全期間で0.1%の金利差
それを途中の繰上げ返済で取り戻すにはそれだけの繰上げ返済の増加が必要になります。
資金繰り面の比較シミュレーションも出しておきましょう。
(単位:円)
物件価格4500万円 | プレミアム8 0.99%→1.24% |
フラット35S 1.09%→1.34% |
差異 |
頭金 | 9,000,000 | 4,500,000 | 4,500,000 |
当初10年返済 | 101,455 | 116,032 | -14,577 |
その後毎月返済 | 104,531 | 86,176 | 18,355 |
10年後残高 | 26,952,606 | 30,457,796 | -3,505,190 |
10年後繰上げ返済 | 0 | 8,500,000 | -8,500,000 |
60歳残高 | 9,548,792 | 7,840,763 | 1,708,029 |
住宅ローン控除 | 3,109,700 | 3,506,700 | -397,000 |
最初に450万多めに入れるのと、10年後に850万多めに入れるのが支払総額では同じ結果になるんですね。基本的に頭金を沢山入れておくことは、万人にオススメできることです。
このように書くと、一部の数字に明るい人から「貨幣の時間的価値を無視している」という突っ込みが入るでしょう。
しかし、その利回りの概念が生きるのは企業会計においてですよ。資産家ならいざ知らず、投資利回りという概念の無い一般的なサラリーマンの家計にそのまま適用して良いものではありません。
上記の表で、これが10年後の差だ、これが定年完済時の差だ、という感覚で把握するのが実践的なのです。
《追記2018年9月28日》
フラット35の頭金の裏ワザについて記事を書きました。こちらも良かったら読んでください。
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