30代共働きで妻の収入が多く子どもは今後欲しい場合のペアローンの組み方とは?
今は妻の方が収入が多いが育休に入ると収入は減る…だけじゃない!?
現時点で共働きであり、子供を産んだ後も両方がまた働きたいという意欲があるならば、夫婦の収入を合算して住宅ローンの返済計画を考えることは、理にかなっていると思います。
今後そういう夫婦が多数派になっていくんじゃないかと思います。
こうした実態を反映して銀行の方も共働き夫婦を想定した商品を用意してきています。「ペアローン」です。
前からあった商品ではありますが、あまり一般的では無かったんです。夫単独というのが一般的でした。
ペアローンとすることでより多くの金額の融資を受けることが出来ます。そして、住宅ローン控除も夫と妻、それぞれが受けることが出来るので節税面のメリットもあります。
しかし、良いところばかりじゃなくて、夫婦がそれぞれ連帯保証を負うというリスクもあります。
これまでも色々なケースに答えてきましたので、ぜひこちらも読んでみてくださいね。住宅ローンを組む時点の年齢、それぞれの収入、子どもの有無と今後の予定によっても、そのリスクの程度、対処法は異なってきます。
そして今日は、現時点(30代)で妻の方が少し収入が多く、これから子供も欲しいというケースのご相談です。
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相談:30歳共働きで妻の方が少し収入が多い、子どもは今後欲しい夫婦のペアローン
居住予定の家族の年齢と年収 | 夫(会社勤め正社員30歳年収470万)、妻(会社勤め正社員29歳年収570万)※現在子供はいませんが、近いうちに2人は欲しいと思っています。 |
自己資金の額 | 800万円※諸経費込みのフルローンを希望するため、貯蓄として全額残す予定 |
物件価格 | 4,500万円 |
物件のタイプ | 新築戸建て(分譲建売)引渡し2018年12月予定 |
借入予定額 | 4790万円 |
住宅ローン | 某メガバンクの融資手数料型で0.470%の金利で事前審査に通りました。現状の収入でしたら、変動金利にしても、著書の中でおっしゃっていた、変動金利を借りても良い条件を満たすことが出来ます。
不動産会社からは、ペアローンで住宅控除をフルに受けることを勧められています。 |
相談内容 | 住宅手当の関係で、妻にも所有権を持たせることが条件(割合不問)となりますし、現状は妻の方が収入も高いため、私たちもペアローンで考えていたのですが、今後妻の産休育休での減収を考えると、ベストな住宅ローンの組み方が分からず、ご相談させていただきました。
住宅ローンの種類や金額配分について、アドバイスいただけませんでしょうか。よろしくお願い致します。 |
回答①:ペアローンで無理なく返済できる住宅ローンの金額とは?
私は著書家を買う時に「お金で損したくない人」が読む本の中で「無理なく完済できる住宅ローン」をシミュレーションするために、4つのルールを提唱しています。
- 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
- 返済額が一定になる元利均等返済方式
- シミュレーションの金利は固定金利
- 定年時のローン残高は1000万円以下
これをざっくりあてはめて無理なく返済できる住宅ローンの金額をマトリックス表にすると以下のようになります。
(単位:万円)
年齢/月収 | 15万 | 20万 | 25万 | 30万 | 35万 | 40万 |
25歳 | 1997 | 2663 | 3329 | 3995 | 4661 | 5327 |
30歳 | 1997 | 2663 | 3329 | 3995 | 4661 | 5327 |
35歳 | 1997 | 2663 | 2972 | 3535 | 4125 | 4714 |
40歳 | 1997 | 2357 | 2630 | 3043 | 3550 | 4057 |
45歳 | 1768 | 2029 | 2263 | 2515 | 2934 | 3354 |
この表に当てはめると、夫(30歳)単独の場合は、月収約20万円ですので、2663万円です。単独融資とすると、4790万円は少しオーバーしているということになります。
そこで夫婦共働きを前提にするのであれば、妻(29歳)の月収25万円の3329万円がオンされるということになり、2663万円+3329万円=5,992万円でレンジ内になるということはありません。
夫婦というのは、それぞれ別の人間です。合体して一つの人間になりえないのと同じように、この上限の金額を合体させるというのは、あり得ないのです。
あくまで夫は2663万円、妻は3229万円それぞれ別々という概念です。
結婚は解除する可能性のある契約
毎年結婚する夫婦の数の約3分の1の数の夫婦が離婚しています。つまり、平均すると3組に1組が離婚するのです。自分たち夫婦がどちらに属するかは分かりませんけど、少なくとも自分たちが離婚すると思って結婚する人はいませんよね。
つまり、離婚した人達もかつては今の自分のような感覚だったということです。客観的に考えて、自分たちだけは離婚しないという前提でこの物事を決めるべきではありません。
結婚は解除する可能性がある契約であり、日本では統計的に3分の1の夫婦が解除しているという事実があるのです。
皮肉なことに、少なくとも住宅ローンを貸す銀行は「夫婦は離婚する可能性がある」という前提で「ペアローン」という商品を設計しています。それは夫婦がお互いの債務に連帯保証するという点です。
夫婦がその家に同居し続け、お互い助け合うのが確実ならわざわざ連帯保証人をさせる必要など無いはずです。
この人がどうなろうと、もう私には関係ない。
こんなことは絶対に言わないという保証がないからこそ、連帯保証人をやらせるのです。
住宅ローンを貸す銀行の方がそういうドライな姿勢で私たちに対峙している(何も問題ない間はフレンドリーですが)のに、私たちの方は「夫婦なんだから」と根本的なリスクから目を背けて重要な意思決定をすると、知らず大きなリスクを負うことになります。
ペアローンでなければ…という時点で大きなリスクを負っている
例えば、夫婦がそれぞれ単独で住宅ローンを組めるけど、あえてペアローンにする。という場合は実質的に普通の住宅ローンと変りません。例えば今回のご夫婦のケースであれば2500万円くらいの住宅ローンを組む場合です。
これに対して、ペアローンでないとムリという金額の住宅ローンを組むということは、仮に夫婦を解散したときに、それぞれ単独では身の丈を超えた負債を負うということです。
夫婦円満なときには見えてこないリスクですが、とても大きなリスクを現実として負うのです。
出産に伴う生命のリスクを忘れずに
また、現在は子どもがおらず、将来的に子どもを作るということは、妻が出産に伴う生命のリスクを負うことが予定されているということでもあるのです。
子どもの誕生は喜ばしいことですが、現実的には一定の生命の危険を伴うことであるということを肝に銘じておかねばなりません。
こちら、千日のブログで書いたことがあります。
【共働き夫婦の住宅ローン】出産リスクはペアローン・収入合算の審査にどこまで影響するか?
こちらにも書いていますが、住宅ローンを貸す金融機関の方は「妊娠」を「生命のリスク」と捉えています。妊婦であるという理由で住宅ローンを断られる、連帯保証人になれない、ということがあるんです。
出産により産休に入ると収入が減る。
これは、母子ともに無事に出産できた喜ばしい面だけを見た想定です。
出産によって妻に万が一のことがあった場合には、妻の持分の住宅ローンは団信生命保険によってゼロ円となります。
だったら、出産を予定している妻の方を多めにしておけば「ワンチャン」あるということか…
と、こんな風に考える人はおそらくサイコパスです。
しかし、遺された自分と子どもの損得を真面目に考えると…?
ペアローンなら他のリスクは極力回避するプランで行く
- 今後の共働きをめぐる労働環境は不確定で流動的です。
- 今後、共に生きていく夫婦関係は不確定で流動的です。
- しかし住宅ローン契約によって毎月支払う金額は35年にわたって確定的です。
ですから、ペアローンということを前提に計画するのであれば、他の要素についてはリスクを基本的に回避するような計画にするのです。
つまり、金利変動リスクについては負わない=固定金利にすることでリスクのバランスを取ります。
そして、夫婦の債務の割合については、夫婦のどちらかに万が一のことがあっても遺された方が単独で無理なく返済できる金額に設定します。つまり、現在の収入の割合で按分することをお勧めします。
月並みなようですが、一周回って、当たり前に落ち着くという感じでしょうか。
しかし、大きなリスクに対して、最悪の状況を可能な限り回避できる方法ということになります。
回答②:共働きで固定金利で返済するシミュレーション
固定金利については三井住友信託銀行30年固定と住信SBIネット銀行の30年固定がおすすめです。住信SBIネット銀行については諸費用を借りると金利が高くなってしまうので、物件価格のみを借りる前提で比較をしてみます。
9月の金利はそれぞれ以下のようになっています。
- 三井住友信託銀行30年固定:1.23%(一般団信)
- 住信SBIネット銀行30年固定:1.39%(全疾病保障団信)
金利は三井住友信託銀行の方が低いですが、住信SBIネット銀行には全疾病保障団信が付いてます。
最長の35年借りて元利均等返済、ボーナス払い無しとし、30年後(定年60歳)に一括返済する前提にします。
- 資金繰り面
- 借入費用
- 支払総額
この3つの面から比較をします。
資金繰り面の比較シミュレーション
(単位:円)
4500万円 | ①三井住友信託銀行30年固定1.23% | ②住信SBI30年固定1.39% | 差異 |
毎月返済 | 131,909 | 135,371 | -3,462 |
60歳残高 | 7,672,080 | 7,841,900 | -169,820 |
住宅ローン控除 | 3,813,700 | 3,825,100 | -11,400 |
金利が低い分三井住友信託銀行の方が総じて支払額や60歳の定年時の残高が少なくなるという結果になりましたね。
夫の月収20万の4割で8万、妻の月収25ま万の4割で10万円、それぞれ出し合えばレンジ内です。ただし、それぞれ単独では13万円の支払いはキツめですね。
60歳の完済までの大部分の期間について、基本的に夫婦共働きで生きていくということが前提であれば、問題なしです。
借入費用の比較
三井住友信託銀行には手数料型と保証料型がありますが、今回のシミュレーションでは手数料型の方にしています。なので借入費用ではほとんど違いは無いでしょう。
(単位:円)
住宅ローン経費 | ①三井住友信託銀行の手数料型 | ②住信SBIネット銀行 | 差異 |
印紙 | 20,000 | 20,000 | 0 |
登録免許税 | 45,000 | 45,000 | 0 |
事務手数料 | 972,000 | 972,000 | 0 |
司法書士報酬 | 100,000 | 100,000 | 0 |
合計 | 1,137,000 | 1,137,000 | 0 |
総支払額の比較シミュレーション
(単位:円)
4500万円 | ①三井住友信託銀行30年固定1.23% | ②住信SBI30年固定1.39% | 差異 |
借入費用 | 1,137,000 | 1,137,000 | 0 |
60歳まで返済額 | 47,487,240 | 48,733,560 | -1,246,320 |
60歳残高 | 7,672,080 | 7,841,900 | -169,820 |
住宅ローン控除 | -3,813,700 | -3,825,100 | 11,400 |
合計 | 52,482,620 | 53,887,360 | -1,404,740 |
三井住友信託銀行の方が総支払額で140万円少ないという結果になりました。
となると自動的に三井住友信託銀行ということになりそうですが、両者の違いはそれだけではありません、最初に書きましたが団信に違いがあるのです。
住信SBIネット銀行は全疾病保障団信が付くのがポイント
住信SBIネット銀行の団信には「全疾病保障が無料で付帯する」という、数字にならないメリットがあります。
三井住友信託銀行の団信は通常の団信であり、死亡又は高度障害となった場合にその時点のローンがゼロ円になる保険です。
ざっと比較してみましょう。
三井住友信託銀行 一般団信 | 住信SBIネット銀行 全疾病保障団信 |
死亡と高度障害で住宅ローンがゼロ円になる。 | 死亡と高度障害のほか、精神障害等を除く全ての病気やケガで働けなくなってもローン返済がゼロ円になる。 |
なし。 | 8疾病で12カ月継続して働けなくなったらローン残高がゼロ円になる。 |
なし。 | 8疾病以外の病気やケガの場合でも入院により12カ月継続して働けなかったら、ローン残高がゼロ円になる。 |
ですから、支払が多い分(140万円)というのはこの場合全疾病保障の値段という風に捉えられると思います。
30年間の保険で全ての病気とケガが対象となり、1年以上の就業不能状態で、最初は4500万円で定年直前は784万円の保険金が支払われる保険です。
支払う140万円は月に平均すると、3,888円ですね。既に入っている保険と比較して検討してみてください。
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千日 太郎 様
急ぎご対応いただきまして、誠にありがとうございました。
あくまで他人同士であること、あまり目を向けていなかったことでした。
リスクを最小限にするなど、リスク管理をしていきたいと思います。また、ローン控除についての最新情報もありがとうございます。
2019年10月消費増税10%に合わせて住宅ローン減税が拡充!政府が検討する減税、補助金をチェック|千日のブログ
ブログを拝見して、様子を見たいと思います。引き続き勉強させていただきます。
誠にありがとうございました。
こちらこそ、参考になる事例を頂きましてありがとうございます!
センシティブな話をずけずけと言ってるのですが、前向きに受け止めて頂けて良かったです。
引き渡しまでにはまだ時間がありますので、色々リサーチしてみて下さい。お勧めしたものは、私の知る限りで最も低金利の商品ですが、たまに地銀ですごく安い金利を出してるところもあります。
もしそういうのが見つかれば、情報提供頂けますと幸いです。