住宅ローン控除は借りれば借りるほどトクってわけでもない所得によるリミッター

2021年3月2日

住宅ローン残高は多い方が得だが借入が大きくなることに漠然とした不安

住宅ローン控除は年末の住宅ローン残高の1%が最大10回、その年の所得税と翌年の住民税からキャッシュバック(還付)される減税制度です。

今の変動金利は1%未満ですから、当初の10年については払う利息より返ってくる税金の方が大きく、逆に儲かってしまうような事態になっています。

なので、当初の10年については…以下の4つの法則があります。

  1. 当初の借入は多い方がトク!
  2. ローン残高がゆっくり減るように借入年数は長い方がトク!
  3. 前半の期間にローン残高の減りが遅い元利均等返済がトク!
  4. ローン残高を減らすと損だから繰上げ返済はしない方がトク!

とは言え…とわいえ、野放図に借りまくって良いものか?という不安を感じるのも人情ですよね。頭でわかっていても、心が納得していない感じです。

先に結論から言いましょう。

最初のローン残高で住宅ローン控除の上限まで使うような資金計画を立てる限りは、借り過ぎにはならないようになっています。

では今日のご相談者です。

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相談:住宅ローン控除をフルに活用するためにローン金額を増やした方が良いか悩む…年収1100万42歳

住宅ローン控除のメリットを得るために借入額を増やすことの是非についてアドバイスを頂ければ幸いです。

居住予定の家族の年齢と年収 夫(わたし) 、42歳、年収1,100万円
妻、43歳、専業主婦
子、6歳、幼稚園年長
自己資金の額 4,300万円(自己資金3,000万円+親援助1,300万円)
物件価格 8,900万円。うち土地価格は仲介手数料込みで5,200万円。建物価格は外構工事・照明・カーテン等を含めて3,600万円、銀行手数料や火災保険等で100万円となっています。
物件のタイプ 新築戸建、長期優良住宅。土地の引渡しが今年の12月中旬、着工は来年の1月中旬、完成が来年の6月上旬の予定。
借入予定額 4600万円~
住宅ローン 10年固定2,300万円、20年固定2,300万円のミックス
さらに変動金利で借りるか?
相談内容 長期優良住宅の住宅ローン控除(年間最大50万円)のメリットを享受するため、変動金利でローンをプラスするかどうか悩んでいます。

①ローン手続きに要する手数料(保証料又は融資手数料)

②変動金利とローン控除率(1%)の差額

この比較かと思うのですが(②の方が少し大きいので少し得をする)、ローン総額が大きくなることに漠然とした不安があります。

家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本を拝読し、本当にお返事が来るのかなぁと思っていましたら、本当に来ました!ありがとうございます。

回答①:住宅ローン控除の所得による上限というリミッターを超えなければ大丈夫

住宅ローン控除の上限には建物の種類による上限所得による上限の2つの上限があります。そして、所得による上限を超えなければ、極端な借り過ぎにはならないようになっているんですよ。

こういう法律を考える人ってほんとアタマ良いんですよね。どういうことかっていうのを説明していきましょう。

建物の種類の上限

2021年12月31日までに居住の用に供した場合の上限は以下のように定められています。

  • 一般の住宅:最高40万円(売主が個人で消費税が非課税又は5%消費税の場合20万円)
  • 認定長期優良又は低炭素住宅:最高50万円

ご相談者の場合、認定長期優良住宅なので50万円が上限ですね。

所得による上限

住宅ローン控除のもう一つの上限は所得税+翌年度の住民税(上限13万6,500円)です。

さすがに税金がマイナスになるということは無いということです。こうすることで、自分が課税されている税金で頭打ちになるので借り過ぎを抑止することになるんです。

これを理解していないと借り過ぎて、利息の負担と借入のリスクだけ大きくすることになってしまいます。

税き前の額面年収と所得税、住民税の目安は以下の通りです。あくまで目安です。

(単位:万円)

年収 所得税 住民税 住宅ローン控除
200 2.80 6.35 9.15
300 5.53 11.81 17.34
400 8.64 18.02 22.29
500 13.94 24.44 27.59
600 20.36 30.86 34.01
700 31.91 38.08 45.56
800 47.54 45.90 50
900 62.76 53.50 50
1000 79.93 62.09 50
1100 99.20 71.53 50
1200 120.77 80.91 50
1300 142.97 90.56 50
1400 174.64 100.22 50
1500 205.12 109.45 50

なので、各年収に対応するローン残高の上限を並べると以下のようになりますね。

  • 年収200万円→住宅ローン上限915万円
  • 年収300万円→住宅ローン上限1734万円
  • 年収400万円→住宅ローン上限2229万円
  • 年収500万円→住宅ローン上限2759万円
  • 年収600万円→住宅ローン上限3401万円
  • 年収700万円→住宅ローン上限4556万円
  • 年収800万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収900万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1000万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1100万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1200万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1300万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1400万円→住宅ローン上限5000万円
  • 年収1500万円→住宅ローン上限5000万円

上限を5000万としていますが、もちろん建物の種類がによって上限が2000万ないし4000万となることもあります。

つまり、年収700万円を超えた辺りからは、いくら借りたところで頭打ちになるんですよ。

では年収700万円までの住宅ローン上限は無理の無い借入になっているのでしょうか?

所得による上限と千日の無理なく返済できる住宅ローンの表を重ねて検証

著書の家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本にもあった年収と年齢で、無理なく返済できる住宅ローンを見積もる4つのルールです。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

これをザックリ当てはめて無理なくへ完済できる住宅ローンの金額を表にすると以下のようになります。

(単位:万円)

年齢/月収 15万 20万 25万 30万 35万 40万
25歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
30歳 1997 2663 3329 3995 4661 5327
35歳 1997 2663 2972 3535 4125 4714
40歳 1997 2357 2630 3043 3550 4057
45歳 1768 2029 2263 2515 2934 3354

その手取り月収に対応する税込み年収と住宅ローン控除の上限は次の通りです。

手取月収/税込年収 15万/300万 20万/400万 25万/600万 30万/700万 40万/900万 45万/1000万
住宅ローン控除 1734 2229 3401 4556 5000 5000

住宅の第一次取得者の多い30代では、ほぼ良いセン行ってますよね!

手取り月収30万(額面年収700万)のところは住宅ローン控除オーバーしていますが、そのほかの年齢層では概ねレンジ内かニアリーなところに落ち着いていいます。

最初、この近似に気づいたときは、ほんと上手いことできているよなーと感心しました。

ご相談者の場合は42歳で年収1100万円です。この表で見ると、ちょっとオーバーしているかも?という金額ですね。確認してみましょうか。

なお、「余裕があるので、上限以上に借りることで住宅ローン控除を増やすというのは経済的に合理的なのか?」という疑問もあるかと思います。こちら千日のブログで解説しています。

関連記事

住宅ローンは住宅ローン減税の上限より少し超えて借りた方が実はトクなのか⁉プロの視点から解説 |千日のブログ

回答②:42歳年収1100万で5000万円借りても大丈夫か?シミュレーション

5000万円借りる前提でミックスローンを考えます。ご相談者は10年2300万と20年2300万のミックスでさらに変動金利もミックスするか?と検討されていますが、一般的にミックスできる金利タイプは2つまでです。

なので、ここでは10年2500万と20年2500万のミックスでシミュレーションしてみます。どうせですから変動金利とミックスするケースとの比較シミュレーションをしてみますね。

変動金利で最も低金利なのは住信SBIネット銀行です。団信には全疾病保障の特約が無料で付帯するのが魅力です。

ミックスローンでは三井住友信託銀行のワンライティングミックスローンがオトクですね。印紙が1枚で済みます。

2500万+2500万ミックス 住信SBIネット銀行 三井住友信託銀行
10年後繰上げ返済 変動金利0.447% 10年固定0.8%
18年後(定年時)繰上げ返済 20年固定1.35% 20年固定1.2%

そして以下の3つの比較シミュレーションを行います。

  1. 資金繰りの比較シミュレーション
  2. 借入手数料の比較シミュレーション
  3. 総支払額の比較シミュレーション

1.資金繰りの比較シミュレーション

(単位:円)

5000万円35年 住信SBIネット銀行
変動+20年固定
三井住友信託銀行
10年+20年固定
差異
毎月返済 139,034 141,190 -2,156
11年目~ 74,722 72,925 1,797
10年後繰上げ返済 18,251,550 18,555,955 -304,405
60歳残高 13,613,865 13,451,473 162,392
住宅ローン控除 4,308,900 4,319,900 -11,000

最初の10年の毎月返済は約14万です。月収45万とすると、住居費として問題ない割合でしょう。

そして、10年後には変動金利(又は10年固定)の方だけ全額繰上げ返済します。その金額は1825~1855万円ですね。住宅ローンを返済しながらする貯蓄は1年に180万円です。ボーナスに手をつけなければ良いですし、月々積み立てても良いと思います。

そして60歳の残高は1345~1361万円ですね。1000万円を超えていますが、年収も高いですからそれほど大きなハードルとは言えません。

変動金利をミックスする住信SBIネット銀行の方は2500万円を変動金利で借りるのでその金利変動リスクがあります。

変動金利では毎月の返済額の4分の1を貯蓄した上で、貯蓄も合わせて手取り月収の4割以下にすることをお勧めしています。

金利タイプ選びのセオリー

これもクリアしているので問題ないでしょう。

2.借入手数料の比較シミュレーション

(単位:円)

5000万円35年 住信SBIネット銀行 三井住友信託銀行
ワンライティング
差異
印紙 40,000 60,000 -20,000
登録免許税 50,000 50,000 0
事務手数料 1,080,000 1,080,000 0
司法書士報酬 100,000 100,000 0
合計 1,270,000 1,290,000 -20,000

三井住友信託銀行の方は手数料型と保証料型がありますが、手数料型としました。三井住友信託銀行は全額繰上げ返済しないと保証料が返金されないので、金利の低さを取った方がトクと判断しました。

手数料に有意な差は無いですね。

3.総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

5000万円35年 住信SBIネット銀行
変動+20年固定
三井住友信託銀行
10年+20年固定
差異
借入費用 1,270,000 1,290,000 -20,000
60歳まで返済額 42,108,942 42,499,555 -390,613
60歳残高 13,613,865 13,451,473 162,392
住宅ローン控除 -4,308,900 -4,319,900 11,000
合計 52,683,907 52,921,128 -237,221

総支払額では住信SBIネット銀行の方が23万7千円安くなるという結果になりました。

当初の10年間、2500万円を変動金利0.447%で借りるか10年固定金利0.8%で借りるかの違いですね。

今後の住宅ローンの金利動向としては10年固定、20年固定ともに上昇傾向にあります。

長期金利が急上昇!民間銀行の長期固定金利で住宅ローンを借りる人はどう備えるべきか? |千日のブログ

変動金利は当分低金利が続くでしょうから、変動とのミックスを行う住信SBIネット銀行と10年固定とのミックスを行う三井住友信託の両方で仮審査を通しておくことをお勧めします。

住信SBIネット銀行はネット銀行でありながら店舗での相談が可能

なお、住信SBIネット銀行はつなぎ融資の対応がありませんので、土地については別途無担保融資を借りる必要があり、完成時に住信SBIネット銀行に借り換えるという手続きになります。

手続きの段取りについては、住信SBIネット銀行はリアル店舗(SBIマネープラザ)での融資相談サービスがありますので積極的に利用されることをお勧めします。

ネット銀行は店舗を持たないことから低金利なんですけど、店舗アリで低金利を受けられるのはメリットですね。

以上、参考になれば幸いです。

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