脳動脈瘤でマイホーム購入に黄信号⁉ワイド団信以外のベストな備えとは?

健康に不安がある場合の住宅ローンのリスク対策について

 

住宅ローンが心配だ…と言うと大抵出てくるのが「団信」ですね。これは主債務者が死亡や高度障害となるもしもの時に住宅ローンをゼロ円にしてくれる保険です。ですから、もちろん安心をくれるものの一つではあります。

しかし、住宅ローンのリスク対策は団信だけではありませんよ。家計バランスシートで分かりやすく解説しておきましょう。バランスシートは日本語では貸借対照表といい、企業の決算日時点の財政状態を一覧表示する決算書の一つです。家計の財政を一覧するのが家計バランスシートです。

  • 左側が資産です。現金預金や機械や備品、不動産などを書きます。
  • 右側が負債です。借金です。
  • 資産と負債の差額が純資産です。

団信はもしものときに住宅ローンをゼロにしてくれる保険ですね。その「もしも」とは死亡と高度障害です。シャレにならない不幸に見舞われた際の保険ですが、そこまでのことでなくても失業や病気などで住宅ローンの返済が難しくなるということはあります。むしろそっちの方が可能性が高い。

頭金を多くいれておけば、家の売却代金で住宅ローンを完済できる可能性が高まります。お金に困っているときですから、売った後に借金が残らないということはとても重要なポイントです。

流通性の高い物件であれば、売りたいタイミングで売ることが出来ます。また、立地が良く賃貸したときに借り手がすぐにつくような物件も良いですね。困ったときに選択肢が多いということは大事です。

貯金はオールマイティな保険です。団信に疾病保障特約を付ければ病気をカバ―してくれますけど、人生のリスクは病気だけじゃありませんよね。貯金は自分の貯めた額までという上限がありますけど、カバーする範囲としてはほぼオールマイティな保険なのです。

今日は、住宅ローンを組むにあたり脳動脈瘤が発見され、健康上に大きなリスクが顕在化してしまった方からのご相談です。

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相談:脳ドックで動脈瘤を発見!もしもの時の多額の住宅ローン返済に不安を感じています

昨年12月の脳ドックで未破裂動脈瘤が見つかりました。その後 急激に大きくならないタイプかを鑑別するため、今年の3、6月にも検査をしましたが大きさは変わらず。次回は12月(前回から半年後)に検査をする予定です。

家族の年齢と年収 夫(43)病院勤務医。昨年年収1800万。
妻(37)専業主婦。
子(7)、子(4)
自己資金の額 4200万 (頭金は3000万程度と考えている)
物件価格 8700万(土地 5500万住宅 3200万)
物件のタイプ ログハウスの注文住宅
借入予定額 6000万
住宅ローン 下記それぞれの提携銀行で当初固定金利の適応金利より-0.2%の優遇です。
広島銀行:脳動脈瘤の既往の件を話してもらったところ、検査後に経過観察の状態であれば、団信加入ができるかもしれないそうです。10年固定で1.35%その後基準金利-1%(変動金利の基準金利2.725%)、ワイド団信なし。
中国銀行:ワイド団信なら加入できるかもしれないといった状況です。住まーと!プラン35年固定1.5%、ワイド団信+0.3%。
相談内容 このような状況で住宅ローンを組む場合、どのようなタイプの保険の選択・返済の仕方がベストでしょうか?

以下の生命保険に加入しています。

  • 養老保険…死亡保障1000万円(56歳満期)
  • 終身保険…死亡保障1000万円
  • 定期保険…収入保障10万円/月(保険期間60歳まで・確定保証期間5年)
  • 子が18歳時にそれぞれ700万払い戻しの学資保険に加入

フラット35を団信なしで契約し 代わりに生命保険を充実させることも念頭におき、保険代理店でお話を伺ってきました。たとえ小さなものでも未破裂動脈瘤がある場合には、新たに加入できる保険はないとの厳しい回答でした。

逆に、脳動脈瘤が大きく手術をした場合であれば、手術後1か月から保険加入できるそうです。

団信加入ができない場合、もしもの時の多額の住宅ローン返済に不安を感じています。団信以外のベストな備えなどありましたら、アドバイスを頂けますと幸いです。

回答①:年齢リスク・健康リスクと団信の関係

冒頭に書きましたように、住宅ローンのリスクへの備えは団信や保険だけではありません。以下の4つの手段があります。

  1. 団信(一般の生命保険などを含む)
  2. 十分な頭金を入れる
  3. 流通性の高い物件
  4. 十分な貯蓄

住宅ローンはリスクに応じた備えが必要です。特に40代という年齢は、一般的に以下の理由から団信に入っておいた方がオトクな年齢層だと言えます。

  • 病気による死亡や高度障害のリスクが高くなる年齢(50歳~)で多額の住宅ローン残高があり20代30代よりもリスクが高い。
  • 団信の保険料は銀行が払うが、利息にオンされて利用者が均一に負担している。
  • 40代はリスクが高く保険料が高いので負担が均一だとトクをする。

収入が大黒柱に偏りかつ健康リスクがあるならワイド団信を優先

もともと40代という年齢で住宅ローンをスタートする場合は団信に入るのがトクとだという前提があります。

さらに、住宅ローンの主債務者に持病があって一定以上の健康リスクがあるという前提では、基本的にその健康リスクを直にカバーするべきです。

また、住宅ローンの返済が夫の収入だけが頼りの場合はさらに団信(保険)の必要性が高まります。

一般論として、住宅ローンのリスクへの対策は「団信だけではない」と言えます。しかし、収入が夫だけ(妻は専業主婦)であり、その夫の健康にリスクがあるのなら、まずワイド団信です。

ワイド団信に加入できない場合は他のリスク対策は万全にすべき

もしも、ワイド団信にも加入できない場合は?

団信以外のリスク対応を万全にすることをお勧めします。このご相談者の場合はどうか、一つ一つ当てはめてみましょう。

まず、十分な頭金があります。新築戸建ては、住んだ瞬間に2~3割くらい市場価値が下がります。しかし約34%の頭金を入れる計画なっていますので、もし夫にもしものことがあっても、家を売却したその代金で住宅ローンを完済できる可能性が高いですね。

次に流通性があるか?ですが、これはクリアできていません。マンションと比較して戸建ては販売しにくいですし、賃貸に出すにしても、駅前などの立地の良いマンションと比較して借り手も付きにくいです。

「売れれば高く売れる」「貸せれば高く貸せる」そういう物件であったとしても買いたい人、借りたい人が居なければ実現しないのです。

貯金は平均以上にありますし、貯蓄系の保険もあります。住宅ローンを組まなくても購入できる位の貯金があることが理想的ですが、購入後に貯蓄を貯めていけばある程度の額を貯めることは出来るでしょう。

ワイド団信に加入できない場合は購入する家を再検討することをお勧めします

団信に加入せず、貯蓄が貯まる前に、大黒柱にもしものことがあれば、家を売却して住宅ローンを完済することが現実的な選択となるでしょう。

そうなったときに、ネックになるのが家の「流通性」です。家が思うようなタイミング、値段で売却できないと、遺された家族のその後のお金に影を落とします。

十分な貯蓄が貯まるまでの間は、そうしたリスクに晒された状態なのだということですね。住宅のタイプについて、いったん白紙に戻す勇気が必要になるでしょう。

回答②:定年の無い40代医師のおすすめは長期固定金利

住宅ローンの金利タイプについては、どのようにして完済を目指すか?という視点から考えます。

医師には基本的に定年がありませんよね。普通の40代会社員であれば60歳定年であと20年で完済を目指すようなプランとなりますが、医師の場合は70歳までというスパンで考えます。そうなると、30年とか35年の長期固定金利がジャストサイズな固定期間となります。

また健康面にリスクがありますので、好んで金利の変動リスクを取る必要は無いと思いますね。なのであえて変動金利を選ぶ理由は無いと思います。

そこで今回は長期固定金利で以下の3つを比較したいと思います。

金融機関 金利タイプ 金利(ワイド団信込み) ワイド団信の保険会社
中国銀行 35年固定 1.6% クレディ・アグリコル生命保険
アルヒ(ランキング1位) スーパーフラット8S(金利Aプラン) 当初10年1.4%
その後1.65%
クレディ・アグリコル生命保険
みずほ銀行(ランキング3位) 35年固定 1.725% 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険

ワイド団信の引受保険会社のリストはこちらにもありますので、あわせて参考にしてください。

中国銀行は提携ローンで35年固定金利が安いですね(広島銀行は35年固定が高いのでとりあえずは外しました)。アルヒスーパーフラット8Sとみずほ銀行35年固定はこちらのランキング上位から長期固定金利の住宅ローンをピックアップしました。

こちらのランキングも合わせて読んでおいてくださいね。

共通する前提条件は、43歳スタートの35年元利均等返済ボーナス払いなし、70歳で一括繰上げ返済するというプランです。

以下の2つの側面から比較をします。

  1. 資金繰り面の比較シミュレーション
  2. 総支払額の比較シミュレーション

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

6000万円35年 提携ローン中国銀行1.6% アルヒスーパーフラット8S1.4%→1.65% みずほ1.725%
毎月返済 186,663 180,785 190,395
当初終了後 186,663 186,168 190,395
10年後残高 46,129,546 45,739,066 46,370,548
70歳残高 16,809,936 16,732,007 17,061,195

3つの住宅ローンで金利に大きな差はありません。ここでは、固定金利で住宅ローンを返済する資金計画について把握しておきましょう。

毎月の返済は18万円から19万円ですが、この金額は日本国民の平均年収400万円の手取りの月収と同水準です。やはり医師としての収入があって初めて維持できる住宅ローンです。

53歳となる10年後の残高で、まだ4千万円もの残高が残っています。現在の貯蓄額と同じくらいの金額ですね。貯蓄を安全圏に貯めるまでには、それなりの期間を要します。

仮想の定年となる70歳残高は1千7百万円ほどです。この金額にはそれほど問題は無いと思います。その年齢まで元気で働けていれば安全圏です。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

6000万円35年 提携ローン中国銀行1.6% アルヒスーパーフラット8S1.4%→1.65% みずほ1.725%
借入費用 1,647,040 1,516,000 1,489,000
70歳まで返済額 60,478,812 59,672,472 61,687,980
70歳残高 16,809,936 16,732,007 17,061,195
住宅ローン控除 -4,000,000 -4,000,000 -4,000,000
保証料払い戻し -28,800 0 -28,800
合計 74,906,988 73,920,479 76,209,375
提携ローンとの差 -986,509 1,302,387

借入費用は概ねの目安です。アルヒスーパーフラット8S(金利Aプラン)ならばワイド団信に加入したとしても、当初の10年は十分な低金利で借りられます。

ワイド団信の引受保険会社は中国銀行と同じクレディ・アグリコル生命保険ですので、中国銀行のワイド団信に通るようでしたら、アルヒスーパーフラットの方が総支払額でメリットがあります。

もしも、クレディ・アグリコル生命保険のワイド団信に加入できなかった場合はみずほ銀行ですね。こちらのワイド団信の引受保険会社は損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険ですので異なる基準で審査されます。

この二つとも通らなかった場合は広島銀行のカーディフ損害(生命)保険です。カーディフは他に三井住友銀行などでワイド団信の取り扱いをしていますが、金利の上乗せが高いのが難点です。

以上、参考になれば幸いです。

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