フラット35で実質無料のガン50%団信とネット銀行のガン50%団信どっちがいいか?
40代共働きでガン団信を付けたい場合の住宅ローン
ネット銀行を中心に、無料の疾病保障団信が付く住宅ローンが人気です。現在は以下の4つがそうですね。
金融機関 | 保障特約名と引受保険会社 | 保障の内容 |
---|---|---|
auじぶん銀行 | がん50%保障(引受保険会社:クレディ・アグリコル生命保険) | 死亡、所定の高度障害、6か月の余命宣告で住宅ローンがゼロになる。 ガンと診断確定されたときにローン残高が50%になる。 |
ソニー銀行 | ||
住信SBIネット銀行 | 全疾病保障(引受保険会社:カーディフ損害保険) | 死亡、所定の高度障害で住宅ローンがゼロになる。精神障害、妊娠・分娩等を除く病気とケガにより就業不能状態が1年超続いたとき住宅ローンがゼロになる。 8疾病以外の病気とケガはさらに「入院」が条件。 女性限定でガン診断給付金30万円が支払われる。 |
楽天銀行 | 全疾病特約(引受保険会社:楽天生命保険) | 死亡、所定の高度障害、6か月の余命宣告で住宅ローンがゼロになる。精神障害、妊娠・分娩等を除く病気とケガにより就業不能状態が1年超続いたとき住宅ローンがゼロになる。 |
ネット銀行が低金利なのは変動金利ですが、35年固定金利で無料のガン50%団信を付ける裏ワザがあります。
アルヒが取り扱っている「スーパーフラット」は、通常のフラット35に比べて金利を0.1%、または0.05%引き下げています。
商品名 (通常のフラット35との金利差) | 頭金(手持金) | 返済負担率 |
---|---|---|
スーパーフラット8 (金利▼0.10%) | 2割以上 | 30%以内(年収400万円未満) 35%以内(年収400万円以上) |
スーパーフラット9 (金利▼0.05%) | 1割以上 | 20%以内 |
このスーパーフラットでフラット35を借りる場合は、アルヒのガン50%団信を付けることが出来ます。
アルヒのガン50%団信の保険料は金利にして0.05%ですので、実質的にフラット35の金利に追加の金利なしで加入できるというわけです。
今日はこの疾病保障団信を付帯するネット銀行の変動金利かアルヒのスーパーフラットでガン団信を付けるか?というお悩みです。
相談:基本ガン団信を付けたいです。ネット銀行の変動かアルヒフラット35のどっちを選ぶべきでしょうか?
インターネットで『住宅ローン相談』で検索してブログを拝見しました。よろしくお願いします。
家族の年齢と年収 | 夫41歳、前年年収470万、妻34歳、前年年収380万、共に会社員、子供2人、保育園です。 |
自己資金の額 | 自己資金500万その他貯金が300万ほど有価証券等は約50万です |
物件価格 | 3800万(土地1320万、諸費用込) |
物件のタイプ | 注文戸建て。土地代決済が2019年1月予定、引渡し時期 2019年11月予定 |
借入予定額 | 3300万 |
住宅ローン | 楽天銀行(全疾病特約)、ソニー銀行(ガン50%保障)の変動金利かアルヒスーパーフラット9Sで考え中です。がん団信をつけたいと思ってます。 |
相談内容 | 変動金利かフラット35Sかで考えすぎてわからなくなってしまいました。 また、団信については、楽天や住信SBIネット銀行のような1年の就業不能で保険金が出るタイプと、ガン団信のように診断が出た時点で保険適用になるタイプで悩んでおります。 |
考えをお聞かせくだされば幸いです。
回答①:まず無理なく返済できる住宅ローンの金額かを判定します
では、まず夫婦の収入で3300万円の住宅ローンに無理が無いか?を確認してみましょう。
下の表は私の著書の家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本でご紹介している、無理なく返済できる住宅ローンを見積もる4つのルールです。
良かったら、本の方も読んでくださいね!ブログでは分散しているノウハウを体系的にまとめていますので頭の中を整理できると思います。
- 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
- 返済額が一定になる元利均等返済方式
- シミュレーションの金利は固定金利(1.38%)
- 定年時のローン残高は1000万円以下
この4つのルールを、無理なく完済できる住宅ローンの金額として、表にすると以下のようになります。
(単位:万円)
年収 | 月収 | 35歳 | 40歳 |
---|---|---|---|
300 | 15 | 1997 | 1997 |
400 | 20 | 2663 | 2440 |
600 | 25 | 3250 | 2860 |
700 | 30 | 3755 | 3248 |
900 | 35 | 4255 | 3680 |
1000 | 40 | 4714 | 4103 |
1200 | 50 | 7031 | 5982 |
1500 | 60 | 8317 | 7049 |
2000 | 80 | 10860 | 9160 |
- 夫:年収470万円で41歳なので2440と2860万円の間。
- 妻:年収380万円で34歳なので約2663万円。
- 世帯収入:850万円で40歳と考えると3680万円よりちょっと少ないくらい。
質的な側面=リスクの面からは固定金利がお勧め
これから借りる住宅ローンは3300万円ですから、個人では安全圏を超えてますが、世帯年収ではレンジ内の住宅ローンです。
片方が働けなくなると返済が厳しい、ということで団信を付けたい気持ちがあるのだと思います。だとすると、変動金利はさらに金利の変動リスクを負いますので、あまりお勧めしません。
アルヒのスーパーフラット9の条件を満たしているので、全期間0.05%引き下げとなります。ガン50%団信の保険料0.05%が実質無料となる、賢い選択だと思います。加えてフラット35Sの恩恵を得られますので当初10年は0.25%引き下げになりますので、さらに有利です。
リスクの面からは、フラット35の固定金利でガン団信を付帯させるというのがオススメです。
では次に金額の面=量的な側面から検討してみましょう。
回答②:変動金利と固定金利の資金繰り面と総支払額での比較をします=量的な側面
では金額面での比較を行います。以下の二つを比較します。おっしゃるように変動ばかりに偏って審査を出しすぎましたね。
- ネット銀行の変動金利(ガン50%)団信としてauじぶん銀行の0.457%
- アルヒのスーパーフラット9Sにガン団信を付ける(当初10年1.15%、その後1.40%)
ガン50%団信ではソニー銀行に審査に出してるのになぜauじぶん銀行?
と思われるでしょう、理由を説明します。ソニー銀行は借入の際の手数料の面でauじぶん銀行よりも安いですが、その代わりに変動金利の5年ルールと125%ルールの適用が無いのです。
- 5年ルール:金利が上がっても5年間は最初の元利均等返済を維持する。
- 125%ルール:毎月の元利均等返済額の増加は直前の125%を上限とする。
この二つのルールが無いと、金利が上がると即毎月の返済額が跳ね上がります。返済額が上がっても対応できる豊富な貯蓄のある人や、十分な余裕のある住宅ローンを組む人なら良いです。しかしそうではない場合はお勧めできないんです。
ご相談者の場合は、個人ではレンジを超えた住宅ローンとなっていますので、ソニー銀行はお勧めできないです。となると、消去法でガン50%団信が無料で付帯するもう一つの銀行はじぶん銀行ということです。
コチラのランキングの『50:50の共働き夫婦に最適な住宅ローンランキング』が参考になると思います。世帯年収は違いますが、タイプとしてはこれがマッチしています。
41歳から35年元利均等返済ボーナス払い無し、定年の60歳で繰上げ返済する前提です。以下の二つの面から比較をします。
- 資金繰り面の比較シミュレーション
- 総支払額の比較シミュレーション
資金繰り面の比較シミュレーション
(単位:円)
3300万円35年 | アルヒスーパーフラット9Sガン団信 | auじぶん銀行変動金利 | 差異 |
---|---|---|---|
毎月返済 | 95,478 | 85,037 | 10,441 |
10年後毎月返済 | 98,354 | 85,037 | 13,317 |
60歳残高 | 16,909,596 | 15,741,705 | 1,167,891 |
65歳残高 | 12,025,905 | 10,945,476 | 1,080,429 |
60歳定年としたときの残高は1000万円を大きく超過しますので、65歳まで定年を延長したら?というケースも入れました。
計画的な繰上げ返済を行いつつ、定年の延長も行うというプランであれば、完済できる住宅ローンです。
あとポイントは変動金利の方が毎月の返済で1万円以上少なくなるという点ですよね。資金繰り上、これは大きいです。しかし、変動金利には金利上昇リスクがあります。
変動金利の二つの「4」をクリアしているか?が重要
資金繰りの面において、変動金利を選んで良いかどうか?は二つの「4」をクリアできるか?ということの方が重要です。
- 毎月の元利均等返済額の4分の1以上を貯金する。
- 上記の貯金と元利均等返済額の合計を収入の4割(40%)未満にする。
詳しくはこちらをどうぞご一読ください。変動金利の5年ルールと125%ルールを根拠にしています(ソニー銀行はこの前提を取れないのでパスしたのです)。
https://jutakuloan-muryousoudan.com/theory-jutakuloan/kinri-type/
変動金利の毎月返済額は85,037円です。なのでその4分の1を貯蓄するということは、21,259円を貯蓄するということです。
そして85,037+21,259=106,296ですね。これを手取り月収の4割以下にします。
世帯月収の手取りは約40万円ですからその4割は16万円ですね。レンジ内にあります。しかし、夫単独で考えると手取り月収の4割は約9万円です。
基本的に二人で返済する前提であれば変動金利でも大丈夫です。これは、二人ともが失業しないし病気にもならないし、離婚もしないという前提です。
なので、最初の10年は夫単独でも現時点でギリギリ払える固定金利の方がお勧めということになるのです。
頑張って頭金を2割入れてスーパーフラット8Sにすれば、もう少し楽な支払になるでしょう。両親から借りるとか、引き渡しまで頑張って倹約してお金を作るということを考えても良いと思います。
総支払額の比較シミュレーション
(単位:円)
3300万円35年 | アルヒスーパーフラット9Sガン団信 | auじぶん銀行変動金利 | 差異 |
---|---|---|---|
借入費用 | 900,600 | 835,800 | 64,800 |
65歳まで返済額 | 27,980,832 | 24,490,656 | 3,490,176 |
65歳残高 | 12,025,905 | 10,945,476 | 1,080,429 |
住宅ローン控除 | -2,861,200 | -2,814,000 | -47,200 |
合計 | 38,046,137 | 33,457,932 | 4,588,205 |
変動金利の方は458万円少なく済みますね、ただこれは変動金利に金利上昇リスクがあるからです。
また、注意が必要なのは、返済額がそのままで金利だけが上がると、元本の減りが遅くなることです。底だまりになった元本は最終回に返済することになります。
住宅ローンは完済しなければ終わりません。当たり前ですよね。
変動金利の支払い総額のリスクを金額にしてみると…?
そこで、変動金利で確実に完済しきるには、どういう条件をクリアする必要があるのか?という判断の物差しが必要になってきます。
例えば3300万円を変動金利0.5%で35年元利均等返済で借り入れた場合、毎月の返済額は85,663円です。金利があがってもこの85,663円を維持したまま、当初の35年で完済するには、その時点で幾ら繰上げ返済すればいいか?という金額を計算するのです。
(単位:万円)
3300万円借入から金利上昇したら繰上返済すべき金額 | ||||
---|---|---|---|---|
残期間 | 30年 | 25年 | 20年 | 15年 |
残高 | 2867 | 2419 | 1959 | 1487 |
0.5→1.0% | 200 | 142 | 93 | 54 |
0.5→1.5% | 381 | 274 | 181 | 106 |
0.5→2.0% | 546 | 395 | 263 | 154 |
0.5→2.5% | 696 | 506 | 340 | 201 |
0.5→3.0% | 832 | 609 | 412 | 245 |
0.5→3.5% | 957 | 705 | 480 | 287 |
0.5→4.0% | 1071 | 793 | 543 | 328 |
例えば借入から5年後には、残期間30年になっていて、そのときの残高は2867万円です。
その時点で金利が0.5%から2.5%に上昇したとしたら、696万円を繰上げ返済することで、今後も85,663円の毎月の返済で完済できるということです。
つまり総支払額の面では、以下のように考えてください。
- 固定金利を選ぶ=458万の保険料を払う。
- 変動金利を選ぶ=54万円~1071万円の支払い増を許容する。
変動金利のこの表を見て支払い増がストレスだと感じるなら、固定金利をお勧めします。
回答➂:40代の50:50の共働き夫婦に適合した疾病保障団信の選び方
最後に「楽天や住信SBIネット銀行のような1年の就業不能で保険金が出るタイプと、ガン団信のように診断が出た時点で保険適用になるタイプどっちがいいか?」というご質問にお答えしなければですね。
基本的に40代からは団信に加入する方がオトクな年齢となります。それは無料の疾病保障団信であっても同じです。
さらに40代の住宅ローンの特徴として、定年時の残高が大きく、完済にリスクがあるということがあります。ご相談者もそのパターンですよね。
つまり、年齢が高いときにローンの残高が大きいので、団信のリターンも安定して大きいので、ガン50%団信でも、全疾病保障団信でも、どちらでも費用対効果の高い年齢層と言えるのです。
なので、絶対的にどっちがオススメとも言えないのですよ。基本的にどっちもオススメです。
強いて言えば、ご相談者は夫婦の収入がほぼ同じくらいで、妻も定年までフルタイムで働くという50:50の共働き夫婦に該当します。であれば、早い段階で保障が受けられるガン50%保障がマッチすると思います。
夫がガンと診断された時点でローン残高が50%になります。つまり、今後の毎月返済は半分ということですので、妻は今の家に住みながら夫の看病を続けることが出来ますからね。
これに対して収入が一方に偏っている夫婦の場合は全疾病保障がマッチするでしょう。ローンがゼロにならなければ、家を手放すことになってしまう可能性が高いからです。