夫婦連生団信ならアルヒスーパーフラット8か普通のフラット35か?

2020年4月18日

夫婦連生団信は、夫婦のどちらかが死亡や高度障害となった場合に住宅ローンの全額をゼロ円とするものです。夫婦の収入を合算して住宅ローンを組み、夫婦がそれぞれ主債務者と連帯債務者(又は連帯保証人)になる場合に、この夫婦連生団信に加入することが出来ます。

もしも、夫婦連生団信に加入せず、団信に加入していない方が死亡や高度障害になった場合には、住宅ローンはそのままの残高で残ることになります。

なので、夫婦の収入がほぼ同じくらいであり、実態として夫婦二人の収入で住宅ローンを返済していく場合には、夫婦連生団信に加入することが、リスクに対応した保険ということになりますね。

一般的に団信の保険料は最初から住宅ローンの金利に含まれていますが、それは一人分の保険料です。夫婦連生団信に加入する場合は、夫婦2人が保険に加入することになりますので、その分が金利に上乗せとなるのが通常です。

今日は夫婦連生団信を検討しているご夫婦からのご相談です。

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相談:ARUHIフラット35Sかスーパーフラット8Sの団信で迷っています

ブログや家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本で推奨している4つのセオリーがあります。

家族の年齢と年収夫41才自営10年330万(所得) 妻自営5年41才320万(所得) 子供予定無し。
自己資金の額800万円
物件価格3200万円(諸経費込み)
物件のタイプ注文住宅2020年3月完成引き渡し予定
借入予定額2400万円
住宅ローン共に自営業で夫は電気工事士、妻はCADオペレーター。お互いの収入が不透明なので夫婦収入合算で住宅ローンを組みます。ARUHIスーパーフラット8 25年ローンで仮審査を通しました。
相談内容夫婦共にがん保険に入っていないので、連生がん団信に加入したいと思ったのですが、アルヒスーパーフラットで夫婦連生がん団信に加入すると金利に+0.58%上乗せと割高です。
普通のフラット35であれば、がん保障はつけられませんが夫婦連生で金利に+0.18%と割安です。

現在検討しているアルヒスーパーフラット8Sの夫婦連生ガン団信と普通のフラット35Sの夫婦連生団信を支払総額で比較すると以下のようになりました。

(単位:円)

借入2400万円25年 スーパーフラット8S
+0.58%夫婦連生ガン団信
フラット35S
+0.18%夫婦連生団信
差額
借入費用 708,000 444,000 264,000
頭金 8,000,000 8,000,000 0
65歳まで返済額 26,764,740 25,833,756 930,984
65歳残高 2,303,339 2,230,408 72,931
住宅ローン控除 -2,261,000 -2,247,500 -13,500
保証料払い戻し 0 0 0
合計 35,515,079 34,260,664 1,254,415

アルヒスーパーフラット8で0.1%金利が下がっても、夫婦連生がん団信で0.58%も金利が高くなるので、総支払額で125万円も高くなります。ならばいっそフラット35に変えて機構団信を検討した方が良いのでしょうか?
それとも妻は団信ではなく生命保険の加入の方が良いのか?
がん団信ではなく連生団信の方が良いのか?
選択肢が多くなかなか考えがまとまりません。アドバイスを頂ければ幸いです。

回答①:団信の保障と金利上乗せで一番有利なパターンを知るべし

夫婦連生団信によって上乗せとなる金利は住宅ローンの種類によって様々です。例えばフラット35でも、アルヒスーパーフラットと普通のフラット35で夫婦連生団信で上乗せされる金利がかなり違います。

まずは、どんな組み合わせが一番有利なのか?という切り口から行います。アルヒスーパーフラット8と普通のフラット35金利と団信がどのような組み合わせになるのか整理してみました。

金利と団信アルヒスーパーフラット8普通のフラット35
金利0.1%引き下げ
身体障害保障なしあり
連生団信+0.28%+0.18%
連生ガン団信+0.58%
団信不加入-0.28%-0.20%

アルヒスーパーフラットは団信不加入が最も有利

アルヒスーパーフラット8は2割の頭金を入れることで、フラット35の金利から全期間にわたって0.1%引き下げになります。しかし、機構団信のメリットである身体障害保障が付帯しないという弱点があります。

さらに、夫婦連生団信にすると+0.28%になるので、普通のフラット35の連生団信と同じ金利になりますね。ならば身体障害保障が付いている分だけ普通のフラット35の方が有利だということになります。

ましてや夫婦連生でガン団信まで付けると+0.58%です。どう考えても割高ですのでお勧めしません。

一方で団信不加入としたときには-0.28%となり、これは普通のフラット35よりも大きい引き下げとなります。つまり、アルヒスーパーフラット8で最も有利になるのはあえて団信に加入しないケースなのです。

但し、団信そのものは生命保険としてかなり有利な面もあるのは確かです。具体的に計算をして一般の生命保険の保険料とどっちが安いのか?保障との兼ね合いで比較をしなければちゃんとした結論は出せません。

団信の保障と保険料で得になる人と損になる人

団信の正式名称は団体信用生命保険です。住宅ローンを利用する人が団体で加入するので保険料が均されているのです。

つまり、病気やケガのリスクが高い人は団信に加入することでトクをしていると言えるわけですね。

一般的に年齢が高い人は病気のリスクが高いです。そして、仕事で車を運転したり、危険な場所で作業を行うことが多い人はケガのリスクが高いと言えます。

例えば今回のご相談者ではご主人は年齢では住宅ローンを購入する人の中では少し上の42歳からスタートする上、建築現場で電気工事を業務として行いますから常に感電等のリスクと隣り合わせにあります。

つまり、どちらかと言えばご主人の方が団信に加入するメリットが高いと言えるでしょう。

団信の保障は住宅ローンの残高であるというポイントを理解する

また、団信の保障の対象は住宅ローンの残高です。死亡や高度障害となった時点の住宅ローンがゼロ円となるのです。

ということは、団信の保障という側面から考えると、住宅ローンは多い方がトクということになりますよね。支払利息は多くなりますが、それは行ってみれば保険のコストなのだと考えれば、保障額に応じた保険料を払っているのと同義です。

現在、住宅ローンの期間を25年とされていますが、最長の35年にしておく方が団信の保障を最大限に享受できます。

例えば25年返済とすると65歳の残高は230万円ほどですね、保障額としては心もとないです。最も病気のリスクが高くなるタイミングの住宅ローンの残高は大きくしておき、その分貯金として温存しておく方が良いです。

返済期間を35年にすると、65歳残高は9百万円台になります。借金としては大きくなりますが、その分貯蓄を貯めておけば怖くないですし、65歳でもしものことがあったら、その9百万のローンがゼロ円となり、繰上げ返済用にと貯金していたお金がまるまる残るのです。

生命保険という側面から団信を考えるのであれば、返済期間は35年としておくことをお勧めします。

また、加えて、返済期間を35年とすることによって、毎月の返済額が少なくなりますので、現在は夫婦二人の収入合算で住宅ローンの審査を通していますが、ご主人一人の収入であっても審査に通る可能性が高いです。

では、千日のお勧めする住宅ローンの借り方で比較を行いましょう。

回答②:団信の保険料と生命保険の保険料を比較するためのシミュレーション

以下の4つを比較します。徐々に支払が大きくなる代わりに保障が充実していきます。団信の保障に対して上乗せになる金利は割高ではなく、経済的に合理的な範囲のボリュームになるようにしています。

  • 支払をミニマムにする:アルヒスーパーフラット8Sで団信不加入→0.28%引き下げで最も支払が少なくなる借り方
  • 通常の借り方で支払を少な目:アルヒスーパーフラット8Sでご主人だけ団信加入→スーパーフラットの0.1%金利引き下げが活きる借り方
  • 通常の借り方で身体障害保障:普通のフラット35Sでご主人だけ団信加入(身体障害保障つき)→夫単独で借りる場合に一般的なフラット35の借り方
  • 夫婦連生で身体障害保障:普通のフラット35Sで夫婦で団信加入(身体障害保障つき)→夫婦の収入合算で夫婦連生団信で手厚い保障を受けたい人の借り方

もちろん、この他にもいろんなパターンはありますが、割高な金利を払うようなものは排除し、そこに足したい保障の部分を民間の生命保険で補うようにします。

4つの金利を比較して並べると以下のようになります。徐々に保障が厚くなるにつれて、すこしずつ金利が上乗せになっていることが見て取れますね。

金利当初10年11年目から
アルヒスーパーフラット8Sで団信不加入0.64%0.89%
アルヒスーパーフラット8Sでご主人だけ団信加入0.92%1.17%
普通のフラット35Sでご主人だけ団信加入(身体障害保障つき)1.02%1.27%
普通のフラット35Sで夫婦で団信加入(身体障害保障つき)1.20%1.45%

金利以外の条件は以下のように共通とします。

  • 返済期間は(25年ではなく)35年、元利均等返済、ボーナス払い無し。
  • 65歳の残高を一括返済する。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

借入2400万円35年 スーパーフラット8S団信不加入 スーパーフラット8S団信加入 フラット35S フラット35S
+0.18%
頭金 8,000,000 8,000,000 8,000,000 8,000,000
毎月返済 63,796 66,857 67,972 70,008
11年目~返済 65,762 68,891 70,031 72,111
65歳残高 8,978,383 9,251,219 9,349,015 9,525,671
住宅ローン控除 2,375,800 2,389,700 2,394,600 2,403,000

35年返済とすることで25年返済よりも毎月の返済額は少なくなります。これによって審査での借入可能額の上限が上がります。

年収から借入可能額を計算|住宅金融支援機構のシミュレーションが開きます

こちら、年収から借入可能額を計算する住宅金融支援機構のシミュレーターです。やってみてください。

ブログや家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本で推奨している4つのセオリーがあります。

  1. 毎月の返済額は手取り月収の4割以下にする。
  2. 元利均等返済、ボーナス払いなしとする。
  3. シミュレーションの金利は固定金利とする。
  4. 定年時の残高は1000万円以下にする。

この4つを全てクリアできていると思います。自営業の所得は夫婦それぞれで3百万円台ですが、節税対策をされているでしょうから、実質的な収入としてはそれぞれ4~5百万円と思われます。

借入費用の比較シミュレーション

(単位:円)

借入2400万円35年 スーパーフラット8S団信不加入 スーパーフラット8S団信加入 フラット35S フラット35S
+0.18%
印紙 20,000 20,000 20,000 20,000
登録免許税 24,000 24,000 24,000 24,000
保証料 0 0 0 0
事務手数料 528,000 528,000 264,000 264,000
司法書士報酬 70,000 70,000 70,000 70,000
フラット35物件検査 66,000 66,000 66,000 66,000
合計 708,000 708,000 444,000 444,000

アルヒスーパーフラットの手数料は借入額の2%+税となりますので、最初に払う額が増えますね。しかし、金利が安くなりますのでトータルとしては安くなるケースがほとんどです。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

借入2400万円35年 スーパーフラット8S団信不加入 スーパーフラット8S団信加入 フラット35S フラット35S
+0.18%
借入費用 708,000 708,000 444,000 444,000
頭金 8,000,000 8,000,000 8,000,000 8,000,000
65歳まで返済額 17,914,392 18,769,836 19,081,476 19,650,276
65歳残高 8,978,383 9,251,219 9,349,015 9,525,671
住宅ローン控除 -2,375,800 -2,389,700 -2,394,600 -2,403,000
合計 33,224,975 34,339,355 34,479,891 35,216,947
スーパーフラット8S団信不加入との差 1,114,380 1,254,916 1,991,972
一般団信1人分 身体障害保障1人分 身体障害保障2人分

この総支払額の差額が、ご自身にとっての団信の保険料ということになります。42歳からスタートして住宅ローンを完済する65歳までの23年間に加入する保険料です。

一般の団信1人分の保険料は111万円

まず、スーパーフラット8Sの団信不加入と団信加入(ご主人)の差は111万円ですね。この111万円は夫が一般団信生命保険に加入する保険料です。そして、その保障の内容は以下の通りです。

  • 加入者は夫のみ
  • 期間は42歳から65歳までの23年間
  • 死亡と高度障害
  • 保障の最低額は65歳残高の925万円

妻の方が加入しても良いのですが、前述のように団信でトクをするのはリスクの高い夫の方ですので、ここでは夫が加入することを前提としています。また、住宅ローンについても、35年とすれば夫単独で組むことが可能です。

一般団信の保険料が111万円というのは、意外と高いなと思われたかもしれませんね。ご相談者が30代前半で室内勤務であれば、アルヒスーパーフラットで団信不加入が一番有利となるでしょう。

団信不加入で最も低金利となる!

身体障害保障付き団信1人分の保険料は125万円

次は、スーパーフラット8Sの団信不加入と普通のフラット35Sの団信加入(ご主人)の差で、125万円になっています。普通のフラット35の機構団信は「身体障害保障」が付いています。

  • 加入者は夫のみ
  • 期間は42歳から65歳までの23年間
  • 死亡と身体障害1級又は2級
  • 保障の最低額は65歳残高の934万円

身体障害保障は障害者手帳1級又は2級が交付されたら、その時点の住宅ローンがゼロ円になるもので、一般団信の高度障害よりも軽度の障害で住宅ローンがゼロ円になるので、より手厚い保障と言えます。

加えて、65歳時点の残高も934万円と先ほどよりも保障の最低額が少しですが、大きくなっています。

保障の違いと最低額の違いで保険料が高くなっているのですね。

身体障害保障付き団信2人分の保険料は199万円

最後は、スーパーフラット8Sの団信不加入と普通のフラット35Sの夫婦連生団信の差で199万円です。さっきは夫1人分だけでしたが、妻も加入するとした場合には、人数が増える分高くなるのですね。また、保障の最低額も少し増えています。

  • 加入者は夫婦2人
  • 期間は42歳から65歳までの23年間
  • 死亡と身体障害1級又は2級
  • 保障の最低額は65歳残高の952万円

回答➂:団信か生命保険か?複数の生命保険と比較してみる

前述の方法で住宅ローンの借入期間の保険料の総額が分かれば、これを毎月平均幾らになるか計算できますよね。

  • 一般団信1人分:4037円/月
  • 身体障害保障付き団信1人分:4546円/月
  • 身体障害保障付き団信2人分:7217円/月

団信の考え方と住宅ローンの選び方についてはこちらのランキングもご一読ください。

一般の生命保険であれば、死亡保障に加えていろいろなオプションやガン保険を付けることもできます。各社の保険料の見積額と上記の団信保険料とを比較すれば、明確に数字で優劣を判断できますね。

もちろん、完全に団信と同じ保障というものはありません。しかし、住宅ローンの残高に合わせた保険金や、毎月の返済額に合わせた年金額にするなどすれば、代替可能な保障があります。

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以上、参考になれば幸いです。

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