安全な住宅ローンの組み方と繰上げ返済のやり方を教えてください

2020年4月18日

住宅ローンとは何か?と聞かれたら、私は「毎月決まったお金を35年なら420回銀行に払うことだよ」と答えます。これが正確な定義でないことは百も承知ですが、住宅ローンで家を買う人にとっての本質です。

  • 420回のミッションをコンプリートすれば、家は自分のものになる。
  • 途中で出来なくなったら、家を取り上げられる。

これが住宅ローンのルールです。

なので、安全な住宅ローン=支払を継続できる住宅ローンです。支払を継続できる住宅ローンは、必ずしも支払が最安の住宅ローンとは限りません。

リスクがあるけど最安になりうる住宅ローンも存在します。あえてリスクを取りたいという人や住宅ローンのリスクが致命的にならない人(お金持ちや高収入の人)にはそうした住宅ローンをお勧めすることもあります。

もちろん、万人向けではないですね。

今回は、多くの人にお勧めできる安全な住宅ローンという枠内で、リスクを抑えつつ、出来るだけ支払を少なくする住宅ローンの組み方、繰上げ返済の方法についてのご質問です。

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安全な住宅ローンと繰上げ返済のやりかた

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質問:この住宅ローンは大丈夫ですか?繰上げ返済はどのタイミングでいくらづつ行うべきですか?

家族の年齢と年収主人37歳650〜700万、妻37歳扶養内パート、長女8、長男5才。
自己資金の額1000万円
物件価格4200万円
物件のタイプ注文住宅2020年3月完成
借入予定額3700万円
住宅ローン60歳完済予定、京都銀行変動金利0.65、もしくはauじぶん銀行、楽天銀行を候補にしています。
返済は月10万円代にして、会社から支給される月2.5万の家賃手当(年収とは別)を13年後の控除が終わった時点で貯金と合わせて繰り上げし、期間を短縮しようと思っています。
相談内容500万を頭金にしようとしましたが、外資系の保険マンから、諸費用だけ現金を入れて、控除額を上げ、年利3パーセントのドル建て保険を勧められました。調べると外資は手数料が高いので個人でネットから積み立て投資の方が良いように思いました。
この住宅ローンは無理のない範囲と言えるのでしょうか?また、繰り上げはどのタイミングでどれくらいずつ返すのが良いのでしょうか。よろしくお願いします。

回答①:安全性重視なら頭金を最低でも1割入れるべき理由

無理なく返済できる額か?については、私の著書の家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本でご紹介している、無理なく返済できる住宅ローンを見積もる4つのルールに沿って検討します。

  1. 毎月の返済は手取り月収の4割以下でボーナス払いなし
  2. 返済額が一定になる元利均等返済方式
  3. シミュレーションの金利は固定金利(1.38%)
  4. 定年時のローン残高は1000万円以下

これを具体的に当てはめて、年収と年齢で表にすると以下のようになります。

(単位:万円)

年収月収35歳40歳
4002026632440
6002532502860
7003037553248
9003542553680
10004047144103
12005070315982
15006083177049
200080108609160

ご主人は38歳で年収650万~700万ということですので、上表では35歳700万と40歳700万の間くらいですね。頭金を500万入れて借入額3700万とすると何とかライン上にある感じです。

安全な借入金額の目安として、500万程度の頭金を入れておく方が良いでしょう。また、頭金を入れるべき理由はこの借入額だけではありません。

注文住宅、新築戸建ては特に頭金を入れておくべき理由

特に新築は買った瞬間に中古となり、不動産市場では価値が下がります。特に建売住宅は3割くらい下がると言われています。

ならば、下のグラフのように3割くらい頭金を入れておけば、ほぼ全期間にわたってローン残高よりも高い価値を維持できますね。

ただし、これは極端な例です。不動産の価値は最後までゼロにはなりませんが、住宅ローンの金額は返済によって最後はゼロ円になりますので、どこかのタイミングで不動産の価値が住宅ローンを上回るようになっています。

しかし、全く頭金を入れなかったら、不動産の価値が住宅ローンの残高を上回るのはかなりの期間が経過してからになりますよね。後半に近くなるでしょう。

  • 頭金を多く入れる=大半の期間で不動産の価値が住宅ローンの残高を上回る。
  • 頭金を入れない=大半の期間で不動産の価値が住宅ローンの残高を下回る。

こういうことになります。そもそも前半で家を売るときというのは、お金が無いときです。そんなときに家を売却して、なおローンが残るというのは弱り目に祟り目、泣き面に蜂状態なんですよ。

つまり頭金を入れることが、なんらかのアクシデントで収入が減ってしまって、家を維持できなくなった場合の保険になるのです。保険は保険会社が売る商品だけではありません。

あなたの頭金は狙われている!向こうから来る美味しい話には注意

頭金を入れない方が計算上はトクになるという営業トークは以下のようなものです。

住宅ローン減税に対応する借入額は最大5000万円あるので、当初の10年間(増税後は13年間)はその範囲内であれば住宅ローンを借りておいた方がトクです。

保険会社や銀行の保険営業マン

また、こう畳みかけてきます。

余ったお金を遊ばせておくのはもったいないです。利回りが高く、病気や万が一のときに保障がある外貨建て保険に入っておけば、減税+高利回りで賢く資金運用できます。

保険会社や銀行の保険営業マン

言い方としては丁寧ですが「こんな簡単で美味しい話に乗らない人って賢くない=バカ?」というメッセージです。

基本的に向こうからやってくる美味い話には乗らないのが正解です。特に今回の外貨建ての保険を住宅購入者に勧めてくるのは「よくある手口」なので気を付けてくださいね。千日のブログで詳しく解説しています☟

https://sennich.hatenablog.com/entry/foreign-currency-Insurance-ex-risk

積み立てる外貨(ドル)の具体的な使い途が無い人にとっては、10年単位で為替リスクを負い、途中解約すると損をし、満期で円に交換するときには高額の手数料を取られます。

新築の戸建てで頭金を入れない=売却のときのリスクを取るということです。ただし、その頭金相当額をあえて預金で遊ばせておけば、その預金が保険として機能します。

しかし、その預金を外貨建て保険に突っ込むと、さらに10年超の為替リスクという未知のリスクを取っていることになります。

頼んでもいないのに、向こうからやって来る美味い話にはウラが付き物です。計算上でおトクなのは、それだけリスクを取っているからなのですよ。

回答②:変動金利と固定金利の比較で金利変動リスクを測る

ご相談者は京都銀行の変動金利0.65%を第一希望としています。固定金利を検討されていないのですが、京都銀行は35年固定が1.2%ですのでむしろ固定の方がお得な銀行です。

また、注文住宅ではつなぎ融資や分割融資の必要が出てきますが、京都銀行は分割融資に対応していますので、土地の取得から低金利の住宅ローンで借りられることがメリットです。

そこで、まずは京都銀行の金利を利用して、変動金利か固定金利かという検討を行うこととしました。

前提条件は以下の通りです。

  • 頭金500万入れて借入は3700万円。
  • 変動金利0.65%、35年固定金利1.2%。
  • 借入期間は最長の35年で元利均等返済、ボーナス払いなし。
  • 60歳時点の残高を一括返済する。

そして、資金繰り面の比較と総支払額の比較を行います。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

物件4200万
借入3700万
変動0.65% 固定1.2% 差額
頭金 5,000,000 5,000,000 0
毎月返済 98,519 107,929 -9,410
13年後残高 24,228,941 25,031,700 -802,759
60歳残高 14,733,772 15,582,378 -848,606
住宅ローン控除 3,570,200 3,611,800 -41,600

毎月の返済は10万前後ですので変動でも固定でもしんどいことは無いでしょう。

変動金利の場合は、二つの「四」をクリアすることを推奨しています。

  • 毎月返済額の4分の1を貯蓄する。
  • 4分の1の貯蓄と毎月返済額の合計で手取り月収の4割以下にする。
https://jutakuloan-muryousoudan.com/theory-jutakuloan/kinri-type/

これは5年ルールと125%ルールを前提とすると、どんなに金利が高騰しても最初の10年間は毎月返済額が上がるのは125%が上限になることから導きだしたルールです。

98,519円×125%=123,148円を手取り月収の4割とするには月収31万円が必要です。奥様のパート収入込みならばレンジ内になりますね。

13年後の残高は増税後の住宅ローン減税が13年間だからです。いわばこれは折り返し地点の残高という位置づけです。

60歳残高は15百万円前後ですね。4つのルールでは1千万円以下にすることをお勧めしていますので、これはレンジを超えているということになります。

特に繰上げ返済資金を計画的に貯めていくか、積極的に繰上げ返済していく必要があります。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

物件4200万
借入3700万
変動0.65% 固定1.2% 差額
借入費用 916,200 916,200 0
頭金 5,000,000 5,000,000 0
60歳まで返済額 26,009,016 28,493,256 -2,484,240
60歳残高 14,733,772 15,582,378 -848,606
住宅ローン控除 -3,570,200 -3,611,800 41,600
合計 43,088,788 46,380,034 -3,291,246

総支払額では変動金利の方が330万円安くなるという結果になりました。これは金利の上昇リスクがあるのに、上がらなかったという前提で比較をしているからです。

もしも金利が上がったら、どれだけ支払が増えるのか?=金利変動リスクのボリュームを表にしてみました。金利は0.65%ではなく、0.5%ですが有意な差にはならないでしょう。

(単位:万円)

3700万借入から金利上昇したら繰上返済すべき金額(万円)
残期間 30年 25年 20年 15年
残高 3,215 2,712 2,196 1,667
0.5→1.0% 224 160 104 61
0.5→1.5% 428 307 203 118
0.5→2.0% 613 442 295 173
0.5→2.5% 780 567 382 225
0.5→3.0% 933 683 462 275
0.5→3.5% 1,073 790 538 322
0.5→4.0% 1,200 890 609 368

この表の使い方を、30年の3,215万円とその下の224万円は何を意味するか?ということで解説します。

5年後=残期間30年で、住宅ローン残高は3,215万円になっています。

このときに例えば金利が0.5%→1.0%に上がったら、その時点で224万円を繰上げ返済します。

金利が上がっていても、元本が減っていますので、その後も当初と同じ毎月返済額と60歳残高を返せば完済出来るということです。

何年後に何パーセント上がるかは神のみぞ知るです。しかし、この表の金額を見て「こうなったら破産かも」「むりムリ無理」と思う人は金利変動リスクへの体勢が出来ていないということです。

こちらの千日のブログも読んでみてくださいね☟

https://sennich.hatenablog.com/entry/mortgage-floating_or_fixed

現在の自己資金が1000万円でそのうち500万円を頭金とすると残るのは500万円です。その他にも引越しや家具家電などでお金が減っていきます。

金利変動リスクへの備えとしては、手薄な方に属しますので、私としては固定の方がお勧めします。

回答③:効果的な繰上げ返済のタイミングと金額

繰上げ返済は一日でも早く、一円でも多く行うことで利息の削減効果があります。

シミュレーションでは、簡単のためにまとめて繰上げ返済することとしています。早期に繰上げ返済する方が、利息の軽減効果が高いです。

また、繰上げ返済はネットで手続きすれば手数料は無料ですから、こまめに早期に行う方が利息は少なくなります。

「最も効果的な繰上返済=頭金」と言えば分かりやすいと思います。

繰上返済は13年の住宅ローン減税が終わってから

最初の13年は住宅ローン減税があります。当初の10年は住宅ローンの年末残高の1%が所得税及び住民税からキャッシュバックされます。

そして、次の3年間では年末残高の1%か建物価格の2%×3分の1のいずれか少ない方が所得税及び住民税からキャッシュバックされます。

なので、住宅ローン減税がある13年間は住宅ローンの残高が多い方がお得なのですね。ここで「余ったお金」をギャンブルに突っ込むのではなくちゃんと繰上げ返済可能な状態にしておく必要があります。そもそも、お金が余っている人なんて、いないです。

13年で1300万円を繰上げ返済資金として貯めておく

繰上返済を開始するのが住宅ローン減税の13年が終わってすぐとします。そして、1年で100万円づつ繰り上げ返済資金を貯めていったとすると、13年後には1300万円の貯金が繰り上げ返済用資金として貯まっている計算ですね。

本当は13年後の「折り返し」でゴールの60歳時点の残高(約1500万円)が貯まっていることが目標なのですが、保守的に1300万円としました。

回答④:期間短縮型と返済額軽減型どっちにするか?の考え方

この1300万円はあえて繰上げ返済しなくても良くて、その時の状況に応じて決めれば良いのですが、ここでは繰上げ返済に使うこととします。

繰上返済には二つのタイプがあり、その都度選択します。

  • 期間短縮型:毎月の返済額は変えず、返済回数を短縮させる。
  • 返済額軽減型:返済回数は変えず、毎月の返済額を少なくする。

利息の負担をより減らせて、60歳残高をより減らせるのは前者の期間短縮型です。後者の返済額軽減型も利息や60歳残高を減らすことが出来ますが、それよりも毎月の返済額を減らす方にウェートを置いたやり方です。

実際にどれほど違ってくるのか?固定金利で13年後に1300万円繰上げ返済するとして比較してみました。

資金繰り面の比較シミュレーション

(単位:円)

物件4200万
借入3700万
60歳で一括 期間短縮型 返済額軽減型
頭金 5,000,000 5,000,000 5,000,000
毎月返済 107,929 107,929 107,929
13年後残高 25,031,700 25,031,700 25,031,700
繰上返済 0 13,000,000 13,000,000
14年目~毎月返済 107,929 107,929 51,877
60歳残高 15,582,378 1,180,307 7,489,768
住宅ローン控除 3,611,800 3,611,800 3,611,800

「60歳で一括」は前半のシミュレーションの方法です。毎月の返済は約10万8千円で60歳まで払い、60歳のときにその時の残高1558万円を一括返済します。

「期間短縮型」は13年間は毎月10万8千円払うのは同じですが、13年後にそれまで貯金した1300万円を繰上げ返済します。毎月の返済額は変更なしで返済期間を短縮するので完済年齢は61歳となり、60歳残高は118万円に減ります。

「返済額軽減型」は13年間は毎月10万8千円払うのは同じで、13年後に1300万円を繰上げ返済します。返済期間を変えず、毎月の返済額を軽減するので14年目からの毎月返済は約5万円と半減します。ちなみに60歳残高も749万円と概ね半減します。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

物件4200万
借入3700万
60歳で一括 期間短縮型 返済額軽減型
借入費用 916,200 916,200 916,200
頭金 5,000,000 5,000,000 5,000,000
60歳まで返済額 28,493,256 41,493,256 35,439,640
60歳残高 15,582,378 1,180,307 7,489,768
住宅ローン控除 -3,611,800 -3,611,800 -3,611,800
合計 46,380,034 44,977,963 45,233,808
利息の節約額 1,402,071 1,146,226

総支払額を比較すると、13年後に1300万円を繰上げ返済することによる利息の節約額が分かります。

期間短縮型では約140万円の節約、返済額軽減型では約115万円の節約ですね。

損得だけでなくリスクの側面からも判断すべし

単純に損得だけを比較すると、期間短縮型の方がお得なように見えます。しかし、その裏返しにあるリスクも込みで考えると、あらゆるケースで期間短縮型が正解なのだとは言えないのですよ。

分かりやすく、リスクとコストでマトリックス表に整理してみました。

繰上返済のリスクとコスト 期間短縮型 返済額軽減型
手持ち資金のリスク 1300万円減るのでリスクが増える
毎月返済のリスク 減らない 半分に減る
60歳残高のリスク 10分の1に減る 半分に減る
利息のコスト 140万円節約 115万円節約

期間短縮型は手持ち資金のリスクが上がるわりには毎月返済のリスクは減らず、その代わりに60歳残高のリスクが大きく減り、利息のコストも大きく減る。

返済額軽減型は手持ち資金のリスクが上がる代わりに、毎月返済リスク60歳残高リスクともにまんべんなく減り、利息のコストもそこそこ減るのです。

こうしてリスクとコストをセットで考えると返済額軽減型の方がバランスが取れているのです。

なので、繰上げ返済をする場合には、その金額でまずどのリスクを減らしたいのか?その反面手持ち資金がいくら減るのか?ということをその場その場で把握した上で行う必要があるのです。

以上、参考になれば幸いです。

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