30代で少し身の丈を超えた家を買う住宅ローンの組み方

2024年2月26日

「自分には幾らの家が買えるのか?」

この問いに対しては、私の著書「家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本」の中で一つの答えを出しました。

自分が買える家の価格=今手持ちの現金-購入手数料+自分に無理なく返せる住宅ローンの金額

です。このうち自分に無理なく返せる住宅ローンの金額は以下の4つのルールで計算します。

  1. 毎月の返済額は手取り月収の4割以下にする。
  2. 元利均等返済、ボーナス払いなしとする。
  3. シミュレーションの金利は固定金利とする。
  4. 定年時の残高は1000万円以下にする。

このルールを具体的に当てはめた表が以下のものです。

(単位:万円)

年収月収25歳30歳35歳40歳45歳
3001519971997199719971768
4002026632663266324402110
6002533293339325028602451
7003039953995375532482780
9003546614661425536803074
10004053275327471441033404
12005083257996703159824877
15006099899509831770495689
20008013320124491086091607390

例えば「購入手数料だけなら現金で用意できるよ」という人にとっては、上記の表がムリなく買える家の値段ということになりますね。

住宅ローンの身の丈は、年齢(定年までの年数)と現時点の年収から計算するということです。

では、このレンジ(=身の丈)を超える家を買ってはいけないのでしょうか?

私はそうは思いません。超えているなら超えているで、やりようはあるのです。大事なことは、身の丈を超えていることを自覚し、そのリスクに対する適切な備えをすることです。

今日はそんなご相談者です。

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背伸びをして家を買うときの住宅ローンの組み方

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質問:30代で身の丈を超えた家を購入するときの対策を教えてください

住宅購入に当たって、千日さんの「家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本」を拝読し、そこからブログたどり着いた者です。

家族の年齢と年収夫  34才  会社員年収  880万円(住宅手当て45000円×12か月含)
妻  34才  専業主婦
第一子  4才 年少
第二子  今春出産予定
自己資金の額300万円(400万円手元に残す)
物件価格5000万円
物件のタイプ注文住宅 年内に完成引き渡し予定
借入予定額5000万円
住宅ローン千日さんの著書やブログで示されている適正なローン借り入れ額をオーバーしてしまっています。
相談内容第二子が幼稚園入園(4年後)とともに妻が働きだす予定です。その場合、保育園児として切り替え可能な園です。妻は出産前、教職に就いており、資格を生かした仕事に復職したいと思っています。
子どもたちが小さいうちは扶養内で…と思っていましたが、ローン返済的には、フルタイムの方が良いでしょうか?
また、このようなタイプでのローンの選び方等、アドバイスいただけましたらありがたいです。

アドバイスいただけましたらありがたいです。関西に住んでおりますので、今後、千日さんの有料相談も行かせていただきたいと考えてさせています。

回答①:身の丈を超えた価格の家を買うリスクを知り、それを減らす3つの方法

まずリスクを減らす3つの方法を先に列挙します。

  1. 前半は毎月の支払を低く固定させる。
  2. 前半の間に定年時にオーバーしている分の貯蓄をする。
  3. 可能な限り頭金を入れる。

リスクを知れば、それに対する対策が見えてきます。まずは「身の丈」を超えた価格の家の「身の丈」とは何か?からです。

私の著書を読んでいない方なら、5000万円という住宅ローンの金額に目がいくかもしれません。冒頭の表で35歳年収900万の住宅ローンが4255万円ですから、それとの差額745万円超えているということですね。

しかし、それは違います。住宅ローンの金額はタダの数字です。注目すべきは毎月の返済額なのです。4つのルールの一つ目「1.毎月の返済額は手取り月収の4割以下にする」としていますね。これが「身の丈」です。

「毎月の返済額で無理なく払える金額」からいくらオーバーしているか?=「身の丈」を幾ら超えているか?つまり毎月の返済額で測ることが大事なのです。

1.前半の毎月返済を低くすることを優先する

毎月の返済額は資金繰りの安全度という側面です。住宅ローンで一番重要なのは資金繰りです。

私が住宅ローンとは何か?と訊かれたら「毎月決まった金額を銀行に35年なら420回払うことだよ」と答えます。これが正確な定義でないことは百も承知ですが、一番大事なのは資金繰りの安全度だというメッセージなのです。

住宅ローンの前半はローン残高が大きく、これをどうにか出来る人は少ないです。返済を続けられなくなったら売るしかないんですよね。

だったら、少なくとも前半のうちに、続けられなくなってしまう可能性を減らすことが大事なのです。

なので、返済期間は最長の35年とし、かつ当初の年数は金利が引き下げになる住宅ローンの商品を選ぶことが定石となります。

そうすれば、普通の固定金利で「手取り月収の4割=身の丈」を超えてしまう場合でも、なんとか身の丈に納めることができる場合があるのです。

2.毎月返済が少ないうちに一括返済資金を貯める

毎月の返済を少なく抑える理由はもう一つあります。その間に定年時の繰上げ返済資金を貯蓄するということです。

大きな住宅ローンの金額で、前半に毎月返済を少なくすると後半にそのツケがやってきます。そのツケの分を余分に貯金しておくということです。

4つのルールの4つ目で「4.定年時のローン残高は1000万円以下」をお勧めしています。最初の10年でこの1000万円を貯めることが理想ですが、身の丈を超えている人では、定年時のローン残高が1500万円とか2000万円とかになっているはずなんです。

ですから、身の丈に合った住宅ローンを借りている人よりも、より計画的に家計を見直して、定年時のローン残高を最初の10年のうちに貯めてしまう覚悟が必要なのです。

3.途中で売ることになった場合に住宅ローンを完済できるように頭金を入れる

1.と2.を実行すれば、確実にリスクをゼロにできるわけではありませんよね。

また、身の丈に合った住宅ローンを組んでいる人であっても、運悪く収入が減るなどして、売却しなければならなくなることがあります。

現時点で身の丈を超えているならばなおさら、売ることになった場合のことを想定しておく必要があります。

そういう時は、基本的にお金に余裕が無いときです。家を売ったとしてまだ借金が残っていたら泣き面に蜂なのですよ。

ほぼ完済できる、あわよくば住宅ローンを完済してお金が残る状態にしておけば人生の再建の助けになります。

フルローンではなく、最低でも1割は頭金を入れておくことをお勧めします。それによって、現金がゼロになってしまう場合は別ですよ。

回答②:身の丈を超えた住宅ローンのシミュレーション

では、この3つの方法を適用して、実際の住宅ローンを組み立ててみましょう。

ご相談者は手数料だけはキャッシュで払い、頭金ゼロのフルローンを検討されています。小さなお子さんも2人いますので、ある程度貯蓄をのこしておきたいところですが、もう少し入れて頭金を1割とすることをお勧めします。

頭金を1割入れることによって、3つの方法に合致する住宅ローンの選択肢がグッと増えるからです。何とか捻出してください。

1割頭金を入れると候補になる京都銀行とフラット35S

京都銀行20年固定金利は1割の頭金を入れることで1.05%となります。5月のフラット35金利は1.29%ですが、それより低い金利で20年間は固定されます。その間に繰上げ返済資金を貯蓄するということが可能ですね。

またフラット35には「S」という補助金の制度があり、一定以上の性能の住宅で当初10年の金利を0.25%引き下げになります。フラット35の金利が1.3%として、当初の10年は1.05%となります。

フラット35は融資手数料や購入手数料も融資対象となっていて、その9割まで融資してもらえます。つまり、家の価格が5000万円で、購入手数料等が300万円なら合計5300万円ですね。5300万円の9割の4770万円まで融資対象となります。

そこで、以下の条件で京都銀行とフラット35Sを比較しながら、身の丈を超えた住宅ローンのリスクをどう料理するか見ていきましょう。なお、どちらも注文住宅で必須となる「つなぎ融資」に対応しています。

 京都銀行20年固定1.05%フラット35S1.05%→1.3%
頭金530万円530万円
借入4770万円4770万円
返済方法20年後に完済する60歳定年時の26年後に完済する

シミュレーションは、お馴染みの3つの側面から行います。

  • 資金繰りの比較シミュレーション
  • 借入費用の比較シミュレーション
  • 総支払額の比較シミュレーション

資金繰りの比較シミュレーション

まずは資金繰りからです。最も重要なのがこの切り口です。

まずは二つの住宅ローンで「1.毎月の返済額を手取り月収の4割以下にする」をクリアさせ、次に「4.定年時の残高は1000万円以下にする」に対してどのくらいオーバーしているかを確認します。

(単位:円)

物件5300万
借入4770万
京都銀行20年固定1.05% フラット35S
1.05%→1.30%
差額
頭金 5,300,000 5,300,000 0
毎月返済 135,764 135,764 0
11年後毎月返済 135,764 139,871 -4,107
20年後残高 22,601,262 22,862,867 -261,605
60歳残高 14,165,449 14,248,491 -83,042
住宅ローン控除 4,306,500 4,306,500 0
住宅ローン減税は増税後の13年としています。

手取り月収が35万円だとすれば、その4割は14万円です。つまり何とかレンジ内に収めることが出来ました。

しかし、定年時の残高にしわ寄せが来ています。約1400万円とオーバーしています。これを住宅ローン減税がある13年(増税後)の間に作る必要があります。

13年で均すと年110万円です。必ずしも妻もフルタイムでなければ不可能な感じではありませんね。4年間の間に様子を見て決めればよいと思います。

借入費用の比較シミュレーション

(単位:円)

物件5300万
借入4770万
京都銀行20年固定1.05% フラット35S
1.05%→1.30%
差額
印紙 20,000 20,000 0
登録免許税 47,700 47,700 0
保証料 983,574 0 983,574
事務手数料 55,000 515,160 -460,160
司法書士報酬 60,000 60,000 0
フラット35物件検査 0 66,000 -66,000
合計 1,166,274 708,860 457,414

民間銀行とフラット35で借入にかかる費用を比較すると、フラット35のほうが半分に抑えられることがわかりますね。

上記の手数料はアルヒのフラット35Sをネット申込で行った場合を前提にしています。

アルヒはフラット35の取り扱い大手で、審査のスピードが早くブログでよくオススメしている住宅ローン専門の金融機関です。

全国175店舗を展開していますが、店舗で申し込むと手数料率が2%+税と高くなってしまい、京都銀行と同じ位の費用となります。今からならネットでの申し込みをお勧めします。

毎年多くの人がネットで申し込んで、融資を受けています。ぜひチャレンジしてみてください。

総支払額の比較シミュレーション

(単位:円)

物件5300万
借入4770万
京都銀行20年固定1.05% フラット35S
1.05%→1.30%
差額
借入費用 1,166,274 708,860 457,414
頭金 5,300,000 5,300,000 0
20年or60歳まで返済額 32,583,360 43,146,912 -10,563,552
20年後or60歳残高 22,601,262 14,248,491 8,352,771
住宅ローン控除 -4,306,500 -4,306,500 0
保証料払い戻し -96,020 0 -96,020
合計 57,248,376 59,097,763 -1,849,387

京都銀行の20年固定の方は20年後に一括繰上げ返済することを前提に計算しています。これは20年固定は20年後の店頭金利で再度金利を決めることになるので、現時点ではいくらになるか分からないからです。

20年後の残高は2260万円ですね。つまり20年後に約2000万円のキャッシュがあれば、その時点で金利がどんなに高くなっても問題ありません。年に100万円のペースです。

もちろん、貯蓄は住宅ローンのためだけに行えば十分ではないです。お子さんの学費も必要になります。毎月の返済プラス、年間で100万円を少なくとも住居の費用として貯めていけるようにするということです。

フラット35の方は60歳で完済することを前提にしています。その時点の残高は1424万円でしたね。ずっと金利は固定になっているので、60歳残高だけが目標額ということになります。

両者の差では京都銀行20年固定の方が185万円安くなりました。これは20年後に早期に2260万円を繰上げ返済するために安くなるのです。

言い換えれば20年後に2260万円のローン残高に対して金利の変動リスクを負う代わりに安くなるということです。

まとめと今回紹介した住宅ローン

そもそも、住宅ローンの金額は年収の何倍もの金額ですし、その期間は自分の年齢と同じかそれ以上の期間になることもあります。そういう視点からすると、全ての住宅ローンは自分の身の丈を超えているのです。

そういう意味で、この記事で書いたことというのは、一般的な住宅ローンの組み方のうち、特に確実に完済するための計画にウェートを置いた方法ということになるでしょう。

今回紹介した住宅ローンは京都銀行20年固定とアルヒのフラット35Sです。

京都銀行は当初固定金利が安い地銀

京都銀行は関西を営業エリアとしていて、住宅ローンに力を入れている地銀です。20年固定で1.05%というのは、メガバンクやネット銀行と比べてもかなり低いですよね。

また、注文住宅では必須となるつなぎ融資にも対応しているので、お勧めです。

フラット35最大手のアルヒ

フラット35Sであれば業界ナンバーワンのアルヒがおススメです。ARUHI スーパーフラットをお申し込みの場合は「ご融資額×2.2%(消費税込)」※最低事務手数料220,000円(消費税込)です。

ちなみに「S」には、その住宅の性能によって、当初10年間の引き下げとなる金利Aプランと当初5年間金利が引き下げとなる金利Bプランがあります。

この住宅性能はバリアフリー度や断熱性能、省エネ性能などです。注文住宅を建てるにあたっては、デザインやコストだけでなく、こうした基準をクリアしておく方が良いですよね。

仕様の決定の際に、ハウスメーカーにフラット35Sを使うことを言っておくことをお勧めします。断熱材なども変わってきますので。

以上、参考になれば幸いです。

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